*柴日記*
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#415 [向日葵]
自分は誰かから抱き締めてもらいたかったし、抱き締めたかった。
成長する過程で、親が赤ん坊を抱くのを大切とするように。
自分は、抱き締められた記憶すら、小さい頃にはなかった。
「じゃあ、今何をしたいか分かるの?分かるなら、俺が出ていく時、早代に酷い事したの?」
まだ納得してないような態度をとり、父の本当の気持ちを引き出すよう尋問する。
父は苦い顔をして机に寄りかかり、目を伏せた。
「あれは、確かに酷かったと思う……。怒りに任せてしていい事ではない……」
:08/07/10 23:50
:SO906i
:☆☆☆
#416 [向日葵]
伏せた目を覆うように、片手で目元を隠す。
そしてボソリと呟く。
「怖かった……。また去っていくのかもしれないと思うと……」
柴は、実は知っていた。
前の母親が出て行ってしまった日、柴は通りかかったのは父の書斎だった。
少し開いたドアの隙間から見る父は、窓辺に手をつき、肩を落としていた。
それこそが、父の本当の姿ではないのか?と思ったのを、柴は今でも覚えている。
「それでも早代がそばにいてくれたのが嬉しかった。私はこんなだから、それを詫びる事も未だ出来ていないが……本当に申し訳なかったと思ってる……。早代も、大和……、お前も……」
:08/07/10 23:58
:SO906i
:☆☆☆
#417 [向日葵]
>>319に感想板があるので良ければお願いしますm(__)m
:08/07/10 23:58
:SO906i
:☆☆☆
#418 [向日葵]
父は柴に歩みよる。
何も言わず、ただじっと柴を見つめたかと思うと、ためらいがちに手を伸ばし、柴の頭を柔らかくくしゃりと撫でた。
「本当は、抱き締めてみたいものだけど、今はこれが精一杯みたいだ……」
父が苦笑いを浮かべる。
柴は目が潤む。
この温かな瞬間を、どれほど自分は待ち望んでいただろうか。
抱き締めてくれなくてもいい。
不器用に撫でてくれる手から、何もかもが伝わってくる。
「大和、うちへ戻ってきなさい……」
柴はうつむいて、ひそかに目をこすった。
:08/07/16 00:38
:SO906i
:☆☆☆
#419 [向日葵]
「もう少し……考えさせてほしい……」
こちらに戻るというのは、越達と離れなきゃならないということ。
柴はまだ、越や他の皆とは離れたくない気持ちでいっぱいだった。
「分かった……とりあえず、お互いのリハビリもかねて、2、3日ここで泊まるというのはどうだ?」
越や、越達は、心配してるかな……。
ふと柴は思う。
父の問いには答えず、柴は唐突に言う。
「電話を貸してくれる?」
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仕事が休みだった主婦祐子はリビングで雑誌を読みながら軽く茶をしばいていた。
:08/07/16 00:45
:SO906i
:☆☆☆
#420 [向日葵]
今日の午後の予定をあれやこれや考えていた祐子は越の様子が気になっていた。
いつも通り、朝早く起きて皆の為にご飯を作って、苺や空の面倒を見てから学校へ行く。
それは別にいいのだ。
行動がおかしいのではない。
越が身にまとっているそのいつも通りすぎる雰囲気がおかしいのだ。
ちょうど4日程前。
祐子は残業で遅く帰っていた。
玄関を開ける前にふと気づく。
リビングの明かりがついているのだ。
どうせ消し忘れだろうと、「ったく」と思いながら帰宅した祐子を待っていたのは、ソファに縮こまって座っていた越だった。
:08/07/16 00:52
:SO906i
:☆☆☆
#421 [向日葵]
帰ってきた祐子に気づいた越は、祐子の方に顔を向けて薄く笑った。
[お帰り……]
[どうしたの……?]
[ん……?ちょっと、目が覚めちゃって……]
そんな風には見えなかった祐子は眉を寄せる。
越の隣に腰を下ろす。
[お母さん……。お父さんの幸せの為なら、悲しいのも寂しいのも我慢出来る……?]
淡々と静かに語る越。
何故こんな事を聞くのかが分からなくて、あまり考えず祐子は[うん]と肯定した。
:08/07/19 15:24
:SO906i
:☆☆☆
#422 [向日葵]
すると越は力を抜くようにして微笑んだ。
[じゃあ、仕方ないね……]
[……越、何があったの?]
膝を抱えていた越は、自分の膝に顔を埋めた。
小さく微かに肩が震えているのは気のせいだろうか。
[柴が……行っちゃった……]
どこに、なんて聞かなくても、あの謎めいた甘えん坊の彼がどこへ行ってしまったか祐子は分かった。
[寂しいけど……大丈夫だよね……。またいつもの生活に戻っただけだもんね……]
明るい声を出しながらも、微かに滲んでいる悲しみの色や、微かに震えている声は、大丈夫じゃなかった。
:08/07/19 15:35
:SO906i
:☆☆☆
#423 [向日葵]
それでも、越は弱音を吐かない。
どんなに聞いても、何もないと微笑むだけ。
そんな越を、優しく包み、癒してくれていたのは、突然雨の日にやってきた、あの青年だけなのだった……。
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突然鳴り出した電話に祐子は回想の世界から帰ってきた。
「ハイハイ」と立ち上がって、電話の所まで行く。
「もしもし」
{あ……祐子さん……}
「柴……っ!?」
:08/07/19 15:42
:SO906i
:☆☆☆
#424 [向日葵]
「アンタどこにいるの!」と怒ってしまいそうになったが、怒鳴ったところで何も解決しないので、祐子はその言葉をを飲み込んだ。
{越は?}
「時間見れば分かんでしょ。まだ学校よ」
{そっか……}
祐子は密かにため息をついて微笑む。
どんな時でも、柴は越が第一か……。
「携帯に連絡したらいいでしょ。電話は無理でもメール見てくれるかもよ」
{あ……うん……ありがとうっ}
「柴」
{……何?}
祐子はしばらく黙った。
黙って、ここ最近の越をまた思い出していた。
「アンタの幸せを1番に考えなさいね……」
:08/07/22 10:31
:SO906i
:☆☆☆
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