*柴日記*
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#465 [向日葵]
柴をちらりと見る。
柴はこちらを向いたままだった。それだけで胸が苦しい。

「お……お父さんと大丈夫で良かったね!心配してたんだー。柴がもしイジメられてたりしたらどうしようって」

恥ずかしさを紛らわそうとすれば、早口になった。
柴は一層笑みを深くする。

「話をする前ね、すっごく恐かった。でもね、越の声が聞こえたんだ。そしたら胸の中が軽くなって勇気が出た」

柴は握っている手に少し力を入れる。

「それくらい特別だよ。越は」

柴がここまで自分を好いてくれるのが嬉しい。
私は柴に笑顔を向ける。

⏰:08/08/02 00:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#466 [向日葵]
「ありがとうっ。柴っ」

柴は急にニヤリと笑う。
どうしたのかと私は首を傾ける。

「祐子さんがね、越を寂しくしないようにって俺に言ったんだ。だから悪いけどね越、俺は絶対越から離れたりしないからね」

「大袈裟……っ」

私は笑う。
柴も笑う。

幸せ。
2人一緒だからもっと幸せ。

柴は私を必要としてくれて、その必要は、柴の幸せと繋がっていて、そしてその柴の幸せは私に繋がっている。

⏰:08/08/02 00:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#467 [向日葵]
帰ろう。

皆が待ってるあの家へ。
全てが始まったあの家へ。
これからずっと一緒に住むあの家へ。

温かい、あの家へ……。

――――――――…………

「おかえりなさいっ!」

家へ戻って来ると、笑顔で皆が玄関に勢ぞろいしていた。

「ただいま。ってか、すっごく短い旅行だよ」

「せっかくお土産期待してたのにぃー」

ちゃかす桜と顔を見合わせてアハハと笑う。

⏰:08/08/02 00:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#468 [向日葵]
「さて柴、色々話てもらうかな。リビングにやって来な。桜、空と苺連れて2階にいて」

桜はお母さんの指示に、従う。
私は柴とリビングへ向かった。
柴はさりげなく私の手を握る。
どうしたのかと柴を見れば、苦笑いを浮かべて耳元でこそこそ話す。

「1発くらい、殴り飛ばされそうで恐い……」

それにクスリと笑う。

「ま、ヤバイと思ったら歯を食い縛ったらいいよ」

リビングにある机をはさんで、お母さんと向かい合わせになる。
お母さんはタバコを1本取り出すと火をつけ、ふぅ……と煙を吐く。

⏰:08/08/09 02:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#469 [向日葵]
「柴。まずアンタの事を喋れる範囲で喋りな。帰って来たって事は、越のそばにいるんだろ?なら自分の娘を預ける相手が、どんな奴か知っておく必要があるからね」

「……ハイ」

柴は淡々と話し出した。

自分は本当は伊勢屋 大和と言って、何故あの場所にいたのか。
この4〜5日間何をやっていたのか。

お母さんは相づちを打ちながら柴の話に耳を傾ける。

「これで全部です」

「なるほどね……」

タバコをギュッと灰皿に押し潰し、最後に吸い込んだ煙を吐く。

⏰:08/08/09 02:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#470 [向日葵]
「柴、アンタは越のそばにいるってあたしに言ったけどさ、越の事本当に大切に出来る?中途半端な思いなんだったら、帰れって言うよ」

「越が俺をいらないって言わない限り、俺はいつも越の隣にいます」

そういえば、なんで柴は今お母さんに敬語なんだろう。

そう思いながら、隣にいると宣言してくれた柴を嬉しく感じていた。

「じゃ、越。今度はアンタが柴に話す番だよ」

そう言うと、お母さんは立ち上がって、桜達がいる2階へと行った。

⏰:08/08/09 02:13 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#471 [向日葵]
「越が俺に何を話すの?」

「……。柴は自分に闇があるって前に言ったよね」

柴はこくりと頷く。

「……私にもあるの。深い深い場所に、ずっと巣くってる小さな闇が」

それは、小さい頃。
親に捨てられた、ほんの少しの記憶。

「ただただ、その捨てられる時の事しか覚えてないけれど、私はあの瞬間で、小さいながら色々な事思った。」

自分が捨てられてしまうのは、お母さん達にとって自分はいらない存在で、どうして振り向いて、最後に手を降ってはくれないんだろうとか、そこまで嫌われていたのに、私はどうして気づかなかったのかとか……。

⏰:08/08/09 02:20 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#472 [向日葵]
「お母さんやお父さんは私がいて幸せな時あったかな……とか……」

考えれば考える程、闇は私の中の光を食べていった。

そんな時、今のお母さんが私を見つけてくれた。

暮らしているうちに、この人は私がいて幸せなんだって思えるようになったけれど、同時に恐かった。

嫌いになられたらどうしようって……。

「お母さんはそんな気持ちになってる私に気づいてくれたの。そしたら……」

[越。あたしは絶対嫌いになんかならないよ。だからね、もっと壁を越えてあたし達に甘えな。それが迷惑だなんて、思わないからさ]

⏰:08/08/09 02:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#473 [向日葵]
お父さんも、優しく笑って頷く。

[君は自分が嫌いなんだね。でもまずは自分を好きになろう。越、君のこの名はね、色んな試練の壁を乗り越えれる子になって欲しいからつけたんだ]

だからね、辛い事にぶち当たっても、頑張って行こう。
越1人でじゃなくて、家族で……。

その言葉が、どれだけ嬉しかったか。
当時の私は、緊張の糸が切れたように泣いた。

「だからね、柴の事も、仕方ないって思ったの。例え今は辛くても、きっと越えられる。ただ、時間がかかるけどって……」

⏰:08/08/09 02:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#474 [向日葵]
「越……」

柴は座ったまま私を抱き締める。
柴の体温に、私は身を任せる。

「どこにも行かない。越のそばに、ずっといる……。だから、越の中の光を、見失わないで……」

うん。もう大丈夫。
だって私は、柴という光を見つけた。
柴が、そばにいてくれるなら、私は光を失う事はもう無い。

「ありがとう……柴……」

見つめあう。
綺麗な灰色の瞳には、私が映っている。

今度は緊張しない。
そう思いながら、近づいてくる唇を受けとめようとした。

⏰:08/08/10 11:15 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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