*柴日記*
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#50 [向日葵]
それだけ言って立川君は早々と行ってしまった。

え……好き……?
い、いっやー美男子にそんな事言われちゃったら……照れるなぁー!

立川君!私も君が好きだよ!
ってかクラスみーんな大好きだぁ!

好意をもたれる事は嬉しいのでルンルン気分で職員室にパンフレットを運び、鼻歌なんか歌いながら下駄箱へ向かった。

さぁて、今日の晩御飯何しよっかなー。

「あ、おねーちゃぁん!」

「へ?」

⏰:08/03/23 03:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#51 [向日葵]
前方を見れば、門の所からパタパタと走って来る苺を発見。
そのまま私の足に抱きつく。

「おかえりぃー!」

「ただいまー!……って和んでる場合じゃない……。苺ぉ、どうしてここにいんの?」

苺を抱き上げながら校門を通り過ぎようとした時、横から声がした。

「一緒に来たからだよ」

そこにいたのは不機嫌丸出しの柴だった。
壁に背を預けて腕組みしてる。

⏰:08/03/23 03:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#52 [向日葵]
「柴ぁ!どうしたのこんなとこまで!」

「“どうしたの”……じゃなぁい!今何時だと思ってんの!?」

学校の時計を見ればもう5時だ。
どうやら柴が言いたいのは4時半に帰ると言いながら何故帰ってないのか!……と言う事だ。

「だって仕事があったんだもん。仕方ないでしょー?」

「しばちゃんね、ずーっとおねえちゃんまだかなーっていってたのぉ!」

柴は黙って私が抱き上げてた苺を自分が抱くと、スタスタ足早に帰宅方向へ歩いて行ってしまった。

私も急いで追いかける。

やっぱり連絡しておくんだったなー。

⏰:08/03/23 03:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#53 [向日葵]
「柴、ごめんね。すぐ終わると思って……」

謝ると、柴は足の速度を落とした。
少しホッとして、私は柴の横を歩く。
チラリと柴の顔を見れば、やっぱりまだどこか拗ねていた。

「電話だってしたのに……」

ボソリと文句を言う柴。

「うんごめんね。でもね柴、校則じゃ携帯は禁止されてるから簡単には出せないの。柴も高校時代があったなら分かってくれるよね?」

軽くため息をつきながら、柴は小さく「うん」と言った。
柴は言えば分かってくれる素直さを持っているから嬉しい。

⏰:08/03/23 03:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#54 [向日葵]
たまにワガママの度が過ぎてる時もあるけど……。

それでも不服そうな彼は、眉を寄せて灰色の目を細める。

そういえば……。

「柴の瞳はなんで灰色なの?両親どちらか外国の人?」

少しずり落ちた苺を抱え直しながら柴は「いや」と答えた。

「おばあちゃんがそうなんだ。だからクォーター」

「へーカッコイイねー。どこの国?」

「知らない」

うんそんな予感した……。

⏰:08/03/23 03:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#55 [向日葵]
柴はじっと私を見つめた。
私は笑顔で見つめ返す。

柴はまた軽くため息をつくと、いつの間にか寝てしまった苺を片手で抱いて、空いてる方の手を私の手に絡めた。

大きな柴の手は私の手をあっという間に包んでしまう。

「本当はもっと怒りたいけど……カッコイイって言ってくれたからいいや……」

そう言って柴は微笑む。

柴がそうやって微笑んでくれると私も嬉しい。
柴が私の近くで、過去に囚われず幸せを感じてくれてるのだと思うから……。

⏰:08/03/23 03:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#56 [向日葵]
フワフワした雰囲気で返っていると、後ろから私を呼ぶ声が。

「神田さん!」

振り向くと、自転車に乗った立川君が近づいてくる。

「立川君!どうして……」

「自転車の鍵、落としてたでしょう。だから届けに来ました。自転車ごと……」

そうなのだ。
実は帰る間際、自転車置き場に行こうと鞄のポケットに手を入れたけど、いつもある筈の鍵がなくて軽くパニックを起こしていた。

⏰:08/03/23 03:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#57 [向日葵]
どうしても見つからなかったから、諦めて徒歩で帰ろうと思ったのだ。
帰れない距離でもないし、少し遠いけどなんとかなると思って、自転車は置いてきたのだ。

「ありがとうー……!良かったよー鍵があってー」

すると立川君は手を繋いでいる柴に目線を動かした。

「こちらは……」

「ああ、うちで住んで……」

「越言わなくていいから行こう」

柴は乱暴に私の手を引く。

⏰:08/03/23 23:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#58 [向日葵]
「あ、ちょっと待って柴!」

柴の手を振り払って、立川君が乗って来てくれた私の自転車を受け取る。

籠に鞄を入れて、私はもう1度立川君にお礼を言った。

「本当にありがとう。部活頑張ってね。また明日」

「いえ……また明日」

立川君は私に微笑んでからまた柴をチラリと見て走って行ってしまった。

私もチラリと柴を見ると、せっかく治りかけていた柴の機嫌がまたもとに戻って悪くなっていた。

あちゃー……と内心頭を抱える。

自転車を押しながら、また帰りだす。

「さっきの奴……誰」

⏰:08/03/23 23:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#59 [向日葵]
「同じクラスの子だよ。学級委員一緒にやっててね」
「知らない奴に俺の事ペラペラ喋るのやめてよ。俺は今の家と…………越が知ってくれてたら、それでいい……」

「柴……」

それじゃ柴の世界が狭くなってしまわないだろうか……。
もっと色んな事を知ったり、色んな人に自分を受け入れてもらった方が、きっと柴の幸せに繋がると思うのに……。

でも、柴が自分でそう言うようになってからでいいのかもしれない。
柴にとって、今他人と触れ合うのは少し怖いかもしれないから……。

⏰:08/03/23 23:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#60 [向日葵]
「うん……ごめんね柴……」

柴は視線だけで私を見ると、少しうつむいた。
そしてクスリと笑う。

「なんか、今日越謝ってばっかりだね。」

それは柴のせいじゃん……。

「でも越に謝られるって……なんかグッとくるなー」
柴って……ドS……?

柴の新たなる人格(?)が分かったと思いながら、夕暮れ時の街を歩いて帰った。

家に帰ると、空と桜がもう帰っていた。

「お姉ちゃんお帰りー。遅かったね」

「あ、柴!早く昨日のゲームの続きやろうよ!」

空に引っ張られるので、柴は苺を私に渡して空と2階へ行ってしまった。

⏰:08/03/23 23:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#61 [向日葵]
桜はエプロンしているから、遅くなった私の代わりに晩御飯を作ってくれてたらしい。

私も着替えを済ませると、桜の手伝いをする為エプロンをつける。

「ごめんね遅くなって」

「いいよこれくらい。あたしもたまたま早かったから。今日はカレーとサラダだよ」

カレーに入れる野菜を炒めてる横で、私はサラダにするキュウリを刻む。

「でも今日なんで柴も一緒だったの?」

桜が聞いて来たので、柴が私をわざわざ迎えに来た経緯を話した。

⏰:08/03/23 23:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#62 [向日葵]
話し終えた時、桜はなんとも言えない顔をしていた。

「お姉ちゃん……やるね」

「え?キュウリの輪切り?そりゃ桜よりは慣れて」

「あー違う違う違う……。……てかお姉ちゃん、分からないの?」

「何が」

この時桜が「鈍感だとは思ってたけどここまで鈍感てはっ!」と心の中で衝撃を受けていたなんて私は知らない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「たっだいまぁぁ!」

⏰:08/03/23 23:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#63 [向日葵]
皆でカレーを食べてる時、陽気なお母さんの声がした。

こういう声の時は100%酔ってる……。
でもそこまで酔うって事は、何か嫌な事があったのかもしれない。

そうでなければ7時半と言う酔うには早い時間にここまでベロベロにはならないだろう。

私達が食事をしているリビングに、お母さんを抱き上げているお父さんが顔を出した。

「ごめんね皆。お母さんこのまま寝かしてくるから気にせず食べてて」

「ハーイ」

お父さん達が部屋に行ったと同時に柴が呟いた。

「祐子さんのキャラ濃すぎて一朗さんが薄く見える……」

⏰:08/03/23 23:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#64 [向日葵]
因みに祐子(ユウコ)とはお母さん、一朗(イチロウ)とはお父さんの事である。

元気で男っぽいお母さんとは違い、お父さんは優しくてもの静かな。

2人のなれそめを聞けば、やっぱりと言うか告白したのはお母さんかららしい。

「越姉、明日お粥作った方がいいかもよ。また母さん気分悪いとか言いそうだし。」

空の忠告に、素直に私は頷く。

「おかあさんだいじょうぶー?」

「大丈夫よ苺。母さん強いから」

苺が心配しているのを、桜がなだめる。
やっぱり小さい子って、雰囲気とかを敏感に感じとっちゃうのかなー……。

⏰:08/03/24 00:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#65 [向日葵]
>>64

※訂正※

×もの静かな

○もの静かだ

⏰:08/03/24 00:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#66 [向日葵]
「あ、そういえば桜。お姉ちゃん明日から遅くなるかも」

「もーすぐ体育祭だもんね。練習とか?」

「うん。あと応援グッズとかね」

「え、また越遅くなんの?」

途中で柴が割り込んできた。

眉を寄せて納得いかないような顔をしている。

「ご、ごめんね柴……」

「柴ワガママ言うなよな!越姉だってやらなきゃいけないことあんだからさ」

⏰:08/03/26 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#67 [向日葵]
22歳が10歳に怒られるってどうなの……。

柴はムーッとしながらも小さい声で「分かってる」と言った。

全然分かってなさそうだけど……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

宿題をしている時、私の部屋を誰かがノックした。

音楽を聞きながらやっていたので、イヤホンを耳から外してドアを開ける。

そこにいたのは苺だった。

「おねーちゃぁん……」

「どうしたの苺。寝たんじゃなかったの?」

⏰:08/03/26 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#68 [向日葵]
いつも一緒に寝ているパンダのぬいぐるみを小さな手で抱えて、目をこする苺は少し泣きそうだった。

どうやらぐずってるみたい。

抱き上げて、背中をトントン優しく叩いてやる。

「こわいゆめ見そうなの……。きょうおねちゃんとねていい?」

「お姉ちゃん宿題あるから電気つけてるよ?苺電気ついてたら寝れないでしょう?」

それでも苺は一緒に寝たいのか、私の腕の中で「んー……」と体を少しよじりながら唸る。

⏰:08/03/26 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#69 [向日葵]
困ったなー……どうしよ。
桜と空はもう寝てるし……。

「何してんの」

お風呂あがりの柴が、タオルを頭に被せたままやって来た。

最終的に私に拭いてもらう予定だったのか、髪の毛からはいくつか雫がポタポタと落ちていた。

柴は私と苺を交互に見てから苺に手を伸ばした。
そして私がやったようにあやす。

「苺ー。大丈夫。怖い夢は見ないよ。」

⏰:08/03/26 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#70 [向日葵]
「ほんと?しばちゃん」

「俺が寝るまで一緒にいてあげたら絶対ね」

苺は柴の腕の中でしばらく考えると、私の方を見て「おやすみなさい」と言った。

それから柴と一緒に部屋へ行った。

私はそのままドア近くでぼんやりと壁にもたれながらいた。

苺がぐずるのは今日みたいにお母さんが酔っ払って帰って来た日のみ。

お母さんの身にまとってる雰囲気が違っているのに小さいながら戸惑っているみたい。

⏰:08/03/26 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#71 [向日葵]
さっきも言ったけれどお母さんが酔っ払うのには理由があった。

1つは仕事。
上司が気持ち悪いくせに偉そうだとか、お客さんが理不尽な事注文してくるとか。

2つめは……家族の事。
やっぱり、私達のような家族は陰口をされる事が少なくない。

血が繋がってないのがそんなに駄目なのかな……。

「越?」

ハッとして目線を上げれば、目の前に柴がいつの間にかいた。

「あ……苺ありがとう。」

「ぼんやりして……どうしたの?」

⏰:08/03/26 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#72 [向日葵]
心配そうな灰色の瞳に見つめられて、不思議とホッとした。

「なぁんでも。ありがとう柴」

「そう?」

ホッとしても、胸の中のモヤモヤは簡単には取れない。だから宿題する気にはなれない私は、柴と喋る事にした。

「苺すぐ寝たんだね。」

「部屋のドア開ける頃にはもううとうとしてたから。」

「そっか……。でも今日はおまじない効かなかったなー……」

⏰:08/03/26 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#73 [向日葵]
“おまじない”が何か知らない柴は首を傾げる。

私はフッと笑って“おまじない”が何かを教えてあげた。

「さっきみたいに眠れない時はね、力一杯ギューッて抱き締めてあげるの。そしたら安心して寝れるっておまじない」

「ふーん……」

柴はまだボタボタの頭のまま部屋に入り、私のベッドに座ると自分で頭を拭きだした。

居座る気なのか、その内出て行くのか分からないので、私はとりあえずドアを閉めた。

⏰:08/03/27 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#74 [向日葵]
頭を切り換えて、また宿題を再開しようと机に向かう途中に柴が喋り出した。

「越は?」

「え?」

「おまじない。しなくていいの?」

タオルと濡れた髪の毛の隙間から、灰色の瞳が覗く。

私はそれを見つめ返した。

驚いた。
そんな事を言われたのは初めてで、今まで私はおまじないを実行する立場であって、してもらう事はなかったから……。

⏰:08/03/27 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#75 [向日葵]
その不思議な目が、私の中の何かを見透かしている気がして、不自然に心臓が動いた。

「何で、そう思ったの?」

「……何か、辛そうな感じがしたから」

柴はどちらかと言えば子供みたいで、心はとても純粋だと思う。

だから苺みたいに、私の雰囲気の違いに鋭く気付いたのかもしれない。

沈黙が流れた。

私は何も答えられないまま、何かを導き出そうとしている柴の目を見つめた。

⏰:08/03/27 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#76 [向日葵]
「大丈夫っ。私がしっかりさなきゃ、皆暗くなっちゃうし!私は元気だよ柴!」

言い終えると同時に、柴が私の手を引いた。
そして立ち上がる。

拭ききれてないのか、柴の髪の毛から滴る水滴が顔にかかって片目を瞑った。
その水滴を、柴の指先が拭う。

「おまじない、しなよ」

「柴人の話聞いてた?」

「うん。越は甘えたいんだなって思ったんだけど?」

呆然として、瞬きを繰り返す。

⏰:08/03/27 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#77 [向日葵]
どうして本質的なものを簡単にとらえてくれるのだろう。

でも……甘えるだなんて、あまりした事がない私はわからなかった。

「い、いいよ柴!私は大丈夫って言ってるじゃない!」

「じゃあさせて」

「へ?」

許可を出す前に柴の腕が私を包んだ。

まだ熱りが収まってないその体は暖かくて、心地よかった。

柴は分かってくれたんだ。
私が自分から頼む事が出来ない事。
だから柴自ら、いつもみたいに抱きついてくれたんだ。

⏰:08/03/27 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#78 [向日葵]
「越。俺ならいいよ」

「何が?」

「甘えるの。いつも越は俺に甘えさせてくれてるでしょ」

柴って不思議だなー……。

無邪気で純粋で甘えん坊で……。なのにスルスル気持ちを引き出してしまう。


多くは語らないのに、ちゃんと何が言いたいか、何をして欲しいかを分かってくれる。

その安らかにさせてくれる柴の温もりが、私の心の中に残っていたモヤモヤを取り除いてくれる。

⏰:08/03/27 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#79 [向日葵]
しばらくすると、柴は腕をほどいて「おやすみ」と出て行った。

私の体は、柴の体温でまだ温かい。

柴が出て行ったドアを見つめながら私は微笑む。

子犬のように、癒しをくれる柴。
その不思議な力に魅了されていくなんて、この頃の私はまだ知らなかった……。

⏰:08/03/27 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#80 [向日葵]
―2日目―

柴のワガママってどうにかならないのかなー。いい加減にしないとお姉ちゃん怒ると思うんだよね。気をつけた方がいいよー。お姉ちゃん怒るとこっわいんだからーっ!
(神田家・次女・桜談)





「しぃぃばぁぁっ!!」

桜が叫んだので、びっくりしてせっかく作った唐揚げを落としてしまいそうになった。

珍しく早く家に帰れた私は、普段通り晩御飯の用意をしていた。

⏰:08/03/27 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#81 [向日葵]
何事かと台所から顔を出せば、目をつり上げた桜と、そんな桜に動じずにソファーでゆったりと寝転んでる柴。

桜の手には、何やら袋が持たれていた。

「ここに置いてたクッキー、勝手に食べたでしょ!」

「うん。それが何?」

「調理実習で作って皆で食べたかったのに!アンタだけ食べちゃダメじゃんかぁっ!!」

あちゃー……。それはダメだよ柴。

晩御飯の用意している手を一旦止めて、仲介役で私は2人の間に入る。

⏰:08/03/27 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#82 [向日葵]
「まぁまぁ桜、クッキーならまた一緒に作ろう。柴も、人の物勝手に食べたりしちゃダメでしょ?」

「だってお腹減ってたんだもん」

「だからって了承もせずに食べるな!」

桜と柴は少し相性が悪いのか、よくケンカしている。

桜は気が強いからケンカしだしたら止まらない。
私はいつも2人のやりとりをハラハラしながら見ている。
柴の態度が態度だから桜の怒りが更にアップ。
正に火に油。

ケンカする程なんとやらだけど……。
これはどちらかと言うと犬猿の中だね。

桜には悪いけど桜は猿だな……。

⏰:08/03/27 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#83 [向日葵]
「お姉ちゃん!もっと柴叱ってよ!柴は勝手すぎるしワガママすぎる!!そしてお姉ちゃんは柴に甘すぎる!!」

痛い事言うなー桜ちゃん……。
柴を甘やかし過ぎたと思った事は無いけど……。
とりあえず注意はしなきゃね。

私は柴の前まで来ると、彼を座らせて目線を合わせた。

「いい?柴。人の物は許可なく好きにしてはダメなの。柴だって大事な何かを誰かに勝手に触られたりしたら嫌でしょ?」

「俺の大事な物はいつも触られっぱなしだけどね。許可なく。」

⏰:08/03/27 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#84 [向日葵]
「柴の大事な物はなに?」

聞けば柴は指差した。
指差した方向は私。
思わず笑ってしまった。

「アハハハ!柴、それは嬉しいけど私は人だよ。私が言ってるのはもーの!」

すると柴は不機嫌な顔をして口を尖らせてまた寝転んでしまった。

ソファーの後ろでは桜がそっぽを向きながら口を手でおさえてプルプルしていた。

「え?え?柴?桜、どうして笑ってるの?」

「柴、これが天罰よ。これに懲りたらもうしないでよね」

⏰:08/03/27 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#85 [向日葵]
「そんなの俺の自由だし」

「アンタねー!!」

柴の機嫌も、何故か悪くなってしまったので、桜と柴のケンカは暫くおさまりそうにはなかった……。

――――――……

「そー……しんっとぉ!」

前の事もあって、遅くなる日には柴にメールを入れる事にした。

学校は体育祭の準備で慌ただしく、特に私の役職である学級委員は大変だった。

⏰:08/03/27 23:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#86 [向日葵]
実行委員と打ち合わせたり、足りなくなったペンキとか、その他諸々の調達をしなくちゃならなくて、学級の中を駆けずり回っていた。

柴は私との時間が減った!とか言うし、桜は柴がまた何かやらかしたと怒るし……。
学級と家で私は手が一杯になっていた。

「神田さん。大丈夫ですか?」

「あ、立川君。大丈夫だよ。平気平気!」

「何かあれば、頼って下さいね」

それだけ言うと、立川君を呼んだクラスメイトの所へと行ってしまった。

⏰:08/03/28 00:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#87 [向日葵]
やっさしいなー立川君……。私はその一言でまた頑張れるよ!ありがとうー!!

「気を付けなよー」

「わ!美嘉!」

いきなりニュッと現れた美嘉に驚いて、私は文字どおり飛び上がってしまった。
その後ろに控えめに椿がいる。

「気を付けるって……何を?」

「どんっっかんな越でも分かってる通り」

そんな力込めて言わなくても……。
ってか私鈍感なの?

⏰:08/03/28 00:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#88 [向日葵]
「立川って人気じゃん?だから越は仲良いし、目つけられるかもよっつってんの」

「あーそっか。なるべく気を付けるよ。でも学級委員だから喋ったりするのは仕方ないんだけどなー」

「中には、情熱的な方もいらっしゃいますから……気にくわない方も多くいるんですよ……」

うーん。
私って立川君を好きな子からしたら邪魔なのかー。
それは申し訳ないなー。

「越ちゃーん!赤のカラーテープ無くなっちゃったー!」

⏰:08/03/28 00:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#89 [向日葵]
クラスメイトの要望を聞いて、美嘉達に「後でね」と言うと、私は教室を出た。

「えーと……」

カラーテープの青と赤、ペンキの緑、ゴミ袋、それからー……。

色々考えながら歩いてると、女の子に肩がぶつかった。

「あ、っと。ごめんなさい!」

謝ったと言うのに、少し化粧をしたギャルっぽい女の子は私をギッと睨んできた。

念のため、頭を少し下げてから私はその場を去ろうとした。

「拾いもんばっかの家族のくせに……でしゃばんじゃねーよ」

⏰:08/03/28 00:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#90 [向日葵]
確かに、そう聞こえた。
大した音量で言った訳じゃなかったけど、聞こえた。

止まってしまいそうな足を動かして、なんとか歩き出す。

あれは……多分立川君を好きな子なんだろうなぁ……。

歩きながら深呼吸して、なんとか気分を変える。

大丈夫。
そんなの言われ慣れてる。
いくらでも言えば良い。

馬鹿にされても、自分は柴も含めてあの家族に誇りを持ってるんだから。

⏰:08/03/28 00:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#91 [向日葵]
思い直して、私は胸を張って歩く。

恥ずかしい事なんて、何もないんだから。

――――――…………

皆がパラパラと帰りだしてきた。
時刻は5時。さっきまで騒がしかった周りが、少しずつ静かになり始める。

教室で自分の分のポンポンを美嘉、椿と一緒に作っている。

私達のクラスはB組なので、体育祭のクラス色はオレンジ。
と言う事でオレンジのポンポンだ。

⏰:08/03/28 00:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#92 [向日葵]
「しっかし、体育祭って腕鳴るよねー!リレーめちゃくちゃ楽しみ!」

「美嘉はアンカーだよね」

美嘉は見た目通りスポーツ万能なので、各種目に引っ張りダコだった。
各種目のリーダーがじゃんけんした結果、100mリレーに出る事になった。

「美嘉ちゃんはいつも早かったですよね……。中学の頃は3人も抜きましたしね……」

「あれは爽快だったなぁぁ!後で他のクラスの連中が嘆いてたしね!」

美嘉は豪快にアッハッハッハと笑う。

⏰:08/03/28 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#93 [向日葵]
そんな中、私はぼんやりとしていた。

「……」

―拾いもん―

「ハァ……」

ひどいなぁ……別にそこまで言わなくていいじゃない。

思い直しても、やっぱり大きな塊が私の胸につっかえてるみたいで、さっきから息を何度も吐いてるけれど、すっきりする事は無かった。

私だって、皆が快適に作業出来るように動いてるだし、別に媚てるとかそんなの無いのになぁー……。

⏰:08/03/28 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#94 [向日葵]
「……つ。越っ」

「え……。あ、ゴメン、何?」

「作業5時半まででしょ?そろそろ帰らない?」

「あ、そだね。よしっ、かいさーん!」

辺りに散らばるゴミを拾って捨ててから変える支度。
誰もいないのを確認してから、教室を出た。

私は自転車があるので、椿のベンツで帰る美嘉と椿にバイバイと言った。

しかし……。

私はチラリと校門を見る。

⏰:08/03/28 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#95 [向日葵]
黒いベンツ。
さすが椿。お嬢様なだけあるなー……。

椿が近づいていけばSPみたいな人が出て来てガチャリとドアを開けているのが見えた。

あれかな……やっぱりああいう時って、「おかえりなさいお嬢様」とか言っちゃうのかな……。

うわー生執事言葉聞いてみたいなー!

とかくだらない事を考えながら自転車の鍵をガチャリと入れる。

早く帰って桜の手伝いしてやらないと、桜も大変だな。

⏰:08/03/28 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#96 [向日葵]
風を感じながら、自転車をこぐ。
秋に入る前とは言え、やっぱりまだ暑い。

涼しいなぁーとのんびりした気分で校門を出た時だった。

「越!」

「え?」

ブレーキをかけるのが遅くて、数m離れた所でキキーッと停止。

後ろを振り向けば

「柴ぁっ!」

柴はにこぉと笑うと、私の所へテクテクとやって来た。

⏰:08/03/28 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#97 [向日葵]
>>94

※訂正

×変える支度
○帰る支度

⏰:08/03/28 01:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#98 [向日葵]
柴が目の前で止まると同時に、私は自転車を降りた。
カサと音が聞こえたので下を見ると、柴の手にスーパーの袋が持たれていて、入りきらないネギがニョキリと出ていた。

「桜にパシられた」

おそらく昨日の仕返しだろう。

不服な顔をしながら私の前に袋を出す。
そんな柴が少し笑えた。

「で、帰りに越がいるかなって」

それで私が帰ってたらどうするつもりだったんだろう……。

⏰:08/03/30 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#99 [向日葵]
それでも待っていてくれた事が嬉しかった。

陰口なんて気にしていたらダメだ。
だって皆、私の家族は暖かい……。

柴と夕焼けでオレンジに染まる街を歩いた。
そんな街を見ているだけでも、胸に残って重たかった気持ちが薄れていった気がした。

――――――…………

そして次の日。

相変わらずザワザワと騒がしい学校。
ドタバタ走り回るっている人ばかりなので曲がり角の所でよく人が衝突事故を起こしそうになっていた。

⏰:08/03/30 00:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#100 [向日葵]
私は相変わらずポンポン作ったり、無くなった道具を補充したり……。

そして今も、ハサミが足りないと言う事で美術室へ物色しに来てたり……。

美術室は別棟なので、静かだった。
でもそのせいで石膏の人物像が不気味に感じる。

すばやく道具置きの場所からハサミを何個か持って早足でクラスへ戻る。

体育祭はあと何日だっけなー……。

自分の指を折りながら数えていると、トンと誰かにぶつかってしまった。

⏰:08/03/30 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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