*柴日記*
最新 最初 🆕
#668 [向日葵]
耳の奥で、迫力ない声が聞こえる。

“女の子が喧嘩しちゃ駄目っ!”

「分かったなら、もうつきまとわないでくれよな」

どいつもこいつも好き勝手言って。
あたしはあたしだ。
自分が思ったように行動するだけだ。

そこで祐子は気づいた。
一朗の事を、一朗の気持ちを、分かろうとしたくなかったのは、自分らしくなくなっていってるのを感じたからだ。

しかし恋人がいた?
じゃあ彼は祐子をからかっていただけなのだろうか?

⏰:08/10/09 01:27 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#669 [向日葵]
それなら、一朗の気持ちを分かろうとしないでいい。

私は……私だ。

「待てよ……」

祐子は坂上を呼び止めた。
坂上は眉を寄せて祐子の方を向こうとした。
しかし、その瞬間、横っ面に激痛が走る。
目がチカチカして立っていられず、坂上は尻餅をついた。

祐子は殴り飛ばした、拳を突き出したままの状態ままで静止していた。
そしてゆっくりとその腕を下ろす。
祐子の周りは、不穏な空気が流れていて、それを感じ取った坂上は血の気が引いていくのが分かった。

⏰:08/10/10 23:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#670 [向日葵]
「どうして……」

祐子は呟き、歯を噛み締める。

「どうして……お前にそんな事言われなきゃなんないんだっ!!」

祐子は坂上に馬乗りになり何発も殴りつける。
何人もの生徒が周りに集まったり、祐子を止めようとする。

自分なりに生きてきた。
それをたった4文字で片付けられた事がすごく嫌だった。
好きでこうなったんじゃない。

何も知らないくせに、何も分かろうともしないくせに……。
あたしの何がいけないの……っ。

祐子には、いつの間にか何も見えなくなっていた。
勝手に動く拳を止める気もなく、そのままにしている。
ただ、遠くの方で、教師のの太い怒鳴り声が聞こえた気がした。

⏰:08/10/10 23:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#671 [向日葵]
気がつけば、目の前に翠がいた。
誰もいない学校の応接間みたいなところのソファーに力なく座り、どこを見ているか分からない祐子を心配そうに見ている。
そっと、繊細な肌を持った指先が、祐子の頬を撫でる。

祐子はぼんやりと、自分が翠のようであれば、何も言われず、平和に素直に生きていけたのだろうか。

「ママ…………」

かすれた声で、翠を呼ぶ。
いつもは呼び方を否定する翠が、首を少し傾げて優しく「なぁに」と聞いてくる。

「あたし……間違ってるの…………?」

⏰:08/10/10 23:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#672 [向日葵]
「祐子ちゃん……」

自分らしく生きる事はそんなにも許されない事……?

祐子は分からなくなっていた。

誰も、自分を分かってなんかくれない。
誰も、祐子の孤独を分かってはくれない。
誰も……。

[祐子さんっ]

目の奥に、一朗の笑顔が浮かぶ。

呆れるくらい、まるで犬みたいにつきまとってくるくせに、真剣な声で自分がそばにいると言った。
噂よりも祐子自身を信じてくれた。

何も恐れず、“森下 祐子”が好きだと言った。

⏰:08/10/10 23:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#673 [向日葵]
あぁでもそれは嘘なのかもしれないんだったか。
それでも信じたい。
噂を信じなかった彼。
ならば自分も彼の口から聞いた事しか信じたくはない。

そう思うのは、きっと彼が好きだからだ……。
無邪気な笑顔を向けてくれる彼が、好きなんだ……。

いつの間にか、祐子の頬が濡れていた。
流れる滴は丸くなり、スカートの上にポトポトと落ちてゆく。

「ママ……ごめん……っ」

両手で顔を覆い、声を押し殺すようにして泣く。

いくら自分らしくと言ったって、両親に迷惑をかけてばかりの自分。

⏰:08/10/10 23:26 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#674 [向日葵]
全ての気持ちが、一朗を好きだと気づいた事により溢れ出す。

祐子はただ翠に「ゴメン」と謝り続ける。
何度も繰り返す祐子に、翠は優しく抱き締める。
まるで子供をあやすように背中をポンポンと叩くものだから、祐子は更に涙が溢れた。

これ以上、誰にも迷惑をかけてはいけない。かけたくもない。
一朗は将来有望の医者になるらしい。
ならば、周りからみた自分の印象は分かるから決めた。

一朗がなんと言おうと、彼から離れよう。

彼が無邪気に笑い続けてくれるなら、この気持ちが伝わらなくてももういい……。

⏰:08/10/10 23:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#675 [向日葵]
祐子は1週間の停学処分にされた。
その噂はクラスからクラス、学年から学年へと早々に伝わっていった。

この頃おとなしかった祐子なだけに、生徒は祐子の存在を再度思い出し、そして怖がった。
1部のクラスと、生徒を除いては…………。

珍しく遅刻をしてしまった一朗は、ホームルームが始まってなくてホッとする。
しかし、周りがやけに騒がしいので変だとは思っていた。

そこへ一朗のクラスの学級委員が、「あと10分したらホームルーム始める」と伝えに来た。
時間があるので、一朗は祐子の所へ行こうと教室を出た。

⏰:08/10/12 01:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#676 [向日葵]
一朗は5組、祐子は1組だったので少し遠い。
祐子の教室へ近づく度、ざわめき声がひどくなるのは何故だろう。1組に着いた一朗は、戸口で祐子を探す。
が、探す前にクラスの女子が一朗に群がった。

「神田君来るの遅いっ!」

「何やってるのよ!」

一朗は何故怒られているかが分からず、びっくりして後ずさりする。

「な、何が?」

「まさか知らないの?」

「知らない?」

女子が顔を見合わせる。
神妙な顔で、口を開いた。

⏰:08/10/12 01:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#677 [向日葵]
「森下さんがね……」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女子から説明を受けた一朗は驚きを隠せないでいた。

彼女が停学。
それも自分のせいで。

一朗はショックを受けながらも自分の持っているものを見つめた。先ほど祐子のクラスから彼女から預かったものだと一朗に渡された。

それは、自分が頼んで待ち望んでいたお弁当だった。

力なく席についた一朗は、ドアから顔に湿布とガーゼと絆創膏だらけの坂上を見つけた。
彼は一朗を見つけるなり、この傷を勲章だと言わんばかりの顔をして彼の元へとやって来た。

⏰:08/10/12 01:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194