*柴日記*
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#701 [向日葵]
髪の毛を撫でられれば、ホッとして硬直していた体から力が抜けた。

「好きだよ……。祐子さん」

誰かの為に変わる事は、悪くない。

祐子は初めてそう思えたのだった。

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「お母さん、まだ寝ないの?」

戸口から顔を出した越は椅子に座っている祐子に話かける。

現在夜の11時。
空や苺はもう寝てしまい、越は今お風呂から出たみたいだった。
柴はおそらく越の部屋にでもいるのだろう。

⏰:08/10/26 00:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#702 [向日葵]
「一朗さんがまだ帰ってこないからね。晩御飯用意しなきゃだし。アンタは明日も学校なんだから、柴にあんまかまってないで早く寝なさいよ」

「べ、別にかまってる訳じゃなくて、柴がくっ……ついて……」

お風呂上がりの熱気ではない越の赤面に、祐子は自分もこんなのだったのかと若かりし頃を思い出す。
そして2人がもう“家族”という間柄ではない事も知っている。

「柴に変な事されそうになったらちゃんと拒むのよー」

祐子がからかうと、越は更に顔を赤くさせた。

「そ、そんな事されませんっ!おやすみっ!」

⏰:08/10/26 00:21 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#703 [向日葵]
駆け足で階段を上がっていく越に、祐子は喉の奥でクククッと笑う。
からかいがいがある愛娘は面白くて仕方がない。

頬杖をつき、時計を見る。
規則正しく動く秒針は、祐子の眠気を誘う。

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「進路……調査……っっ」

と言う紙を握り締めて睨みつける初夏のある日。

祐子は目の前にある紙にかいてあるものがこの世のものとは思えないという顔で見ていた。

「祐子さん、顔が恐い」

⏰:08/10/26 00:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#704 [向日葵]
祐子の前の席に座っていた一朗は彼女の眉間に指をあてほぐそうとする。
されるがままになりながら祐子はまだ紙をみつめている。

放課後、2人で喋るのは日課になっていた。
あの事件後、2人の仲は皆から容認され、“一朗彼女説”は、坂上が言った口から出任せだったと本人が自白。

それからは周りが羨む程の仲良い恋人同士となり、祐子も皆から更に慕われ、今では祐子は恋愛相談をよくされるようになった。

だからと言って、そこから何か将来の事に結びつけられるかと言ったらそうではないのだ。

「将来ねぇ……圭ちゃんの道場継ぎたいんだけどなぁ……」

⏰:08/10/26 00:36 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#705 [向日葵]
正直にそう言えば、思いきりダメだと言われた。

「じゃあさ、いっその事、僕のお嫁さんにならない?」

「は?」

あっさり言われたので空耳かと間違う。
言った本人はにっこりと笑う。
いつもと変わらない笑みだったので、やっぱり空耳なのかと首を軽く傾ける。

「僕、祐子さんと結婚するつもりでいるんだけど?」

「とうとう脳みそ溶け始めたのか……?」

結婚?と頭がはてなだらけになっていく。
一朗は別に気にしてない風に話を続ける。

⏰:08/11/08 00:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#706 [向日葵]
「遅かれ早かれ、すると分かってんだったらいつしても同じだと思うんだけど」

「ちょ、ちょっと待て。ちょっと待てっ!」

勝手に話を進めていくものだから祐子は片手を突き出して一朗を黙らせる。

進路で迷ってるから結婚!?
いくらなんでもあり得なさすぎる。そして極端すぎる。

一朗は不思議そうに祐子を見る。まるで、今言った事に何か問題でも?とさえ思っていそうな顔だ。

どうして最終結論が結婚なんだ。

「あのな、あたし達まだ若い。そういう一時の情熱に身を任せれば、後で痛い目みるぞ」

⏰:08/11/08 00:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#707 [向日葵]
「大丈夫だよ。僕の情熱は冷めないだろうから」

いやだから。

「経験つむのは大切だ。進学はしなくても……と言うか出来るかわからないけど、ともかく!少しは働いて社会を知っておきたい」

「じゃあ僕のプロポーズは断るってわけか……。残念だな」

とか言いながら微笑むのは、祐子がそう言うだろう事を予想していたからだろうか。

本気ではなかった?
じゃあ本気で悩んだ自分は馬鹿ではないか。

祐子は苛立ちを覚える。

「もう帰る」

⏰:08/11/08 00:57 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#708 [向日葵]
不機嫌になりながら立ち上がる。

正直、祐子は一朗の事があまり分からない。
彼はいつも楽しそうに、そして余裕そうに微笑んでいるだけだ。
例えば必死な顔や、本気の怒りだって見た事がない。

好きなのは自分だけなのか?と時々不安にもなる。

それでも優しく祐子に触れる指先は、祐子が好きだと語っている気もするから独りよがりではないと信じたいし、信じている。

「僕も一緒に考えるから、焦らずゆっくり考えよう」

なだめるように言う一朗に結局負けてしまう。
柔らかく髪の毛を撫でられれば一瞬で不機嫌な気分は消えてしまう。

⏰:08/11/08 01:02 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#709 [向日葵]
いつものように、下駄箱で靴を履きかえる。
自転車置き場に行こうとした時だった。

「一朗ーっ!」

その声に祐子が振り向けば、数歩離れて歩いていた一朗に、誰か抱きついていた。

祐子は目を見開く。
一朗は抱きつかれた勢いに耐えれず倒れこんだ。

「久しぶりねっ!元気だった!?杏は超ー元気だったよーぅ!」

肩まである黒い髪の毛は外側に愛らしく跳ねているその少女は、祐子達と同じくらいに見える。
祐子は口を変な形にして2人を凝視している。

⏰:08/11/08 01:09 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#710 [向日葵]
「杏……っ、アメリカじゃなかったの?」

「1人暮らしの許しを得たのっ!これからはどんな時も一緒よ一朗っ!」

無邪気に微笑んで彼の頬にキスするものだから、さすがの祐子も我に返り2人を引き剥がす。
やっと祐子の存在に気づいた杏と名乗る少女は、つり目がちの目を更につり上げると祐子を睨む。

「勝手にベタベタすんのやめろよな」

「なぁにあなた。ベタベタするのは当たり前よ。私は一朗のお嫁さん候補なんだから」

「は?」と声を上げた祐子は一朗を見る。
一朗は額に手を当ててため息を吐く。

⏰:08/11/08 01:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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