*柴日記*
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#731 [向日葵]
それでも、と、半ば意地になって、許してしまいそうな自分をなんとか抑えて、祐子はじっと空を見つめる。いや睨む。

すると祐子を苛立たせる声がした。

「あーっ!もう一朗こんなとこにいたのー!?」

祐子の脅しもなんのその。
ケロリと忘れてしまっているのか、杏はずかずかと教室に入ってきた。
祐子の事をわざと無視して一朗の腕を引く。
一朗は祐子の方を気にしたが、二人を見れば更に怒りはおさまりそうにない祐子はそっぽを向いたままだった。

一朗は肩を落とし、小さく「またあとで」と言って教室をあとにした。

⏰:08/11/29 22:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#732 [向日葵]
一朗がいなくなってすぐ、クラスの女子が祐子の元へと集まる。

「祐子さん、なんなのあの子っ!」

「……幼なじみらしいよ」

「あー……よくあるパターンだよね。“幼なじみは将来の旦那さま”っていう法則みたいなの」

そんな法則は滅びればいいと思う。

「でも一朗くんもまんざらじゃなさそう……」

「馬鹿っ!」

何気にそう言った誰かの口を、皆が一斉に塞ぐ。
皆が祐子をそろりと見るものだから、祐子は苦笑いするしかなかった。

⏰:08/11/29 22:23 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#733 [向日葵]
「気にしなくてもいいよ」

本当はどうしようもなく不安。
それでも一朗を信じたいから、次来た時には仲直りしようかと心を入れ替える。

大丈夫だと思った。
こんな小さなすれ違いくらい……。

――――――――…………

ところが、お昼休みになっても一朗は現れなかった。
気になった祐子は、一朗の分まで作った弁当を持って、一朗の教室へ行く。

すると人だかりが出来ていた。
なんだと間から見れば……。

「はいアーン!」

「だからいらないって。僕にはお弁当が」

⏰:08/11/29 22:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#734 [向日葵]
小さく、一朗と杏の姿が見えた。
杏は一朗の口に何かを運び、無理矢理入れようとしている。
皆はおろか、野次馬すら、祐子がいる事に気づいてはいない。

ふつふつと、また祐子に怒りが蘇る。
最早この怒りはどちらに向けられる怒りか分からない。
怒りながらも、祐子はしばらく二人の様子を見る事にした。

「いいからっ」

ぐっと強制的に箸が一朗の口に入れられる。
困りながらも、しばらく噛んでいた一朗は、段々と顔を輝かせていった。

「これ……」

「懐かしいでしょ?野菜があまり得意じゃない一朗の為の私のうち特製かき揚げ。何故か昔からこれだけはよく食べてたよね」

⏰:08/11/29 22:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#735 [向日葵]
野菜が……得意じゃない……?

初耳だった。
弁当には、いつもなんらかの形で野菜が入っていた。
それでも一朗は、何も言わず、いつも笑顔で「おいしいね」と食べていた。

好きな人の、好き嫌いさえしらない……。

祐子は持っていた弁当をぎゅっと抱き締め、静かに後退りした。
すると弁当が音を立てて落ちた。
それに気づいた野次馬が、やっと祐子の存在に気づき、ざっと顔を青くする。
一朗と杏はまだ気づかない。

弁当を拾う気力すらおきない。
それでも力なくしゃがみ、ゆっくりした動作で弁当を拾う。

⏰:08/11/29 22:37 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#736 [向日葵]
どうして、こんなに惨めな気持ちにならなきゃならないんだろう。
一朗の恋人は自分で、いつも隣で笑って食事してるのも自分の筈なのに。
朝早いのがあまり得意じゃなくても、弁当はちゃんと一朗が笑顔で食べてくれるよう頑張ってるのに。

「祐子……さん……」

顔を上げれば、一朗がやっと気づいたのか、立ち上がってこちらを見ている。
杏は勝ち誇ったように、祐子を見てニヤリと笑っていた。

涙で視界が滲み出す。

「違うんだ祐子さんっ……」

皆がいる前では泣きたくなかったから、居ても立ってもいられず、歯を噛み締めて祐子はその場を駆け出した。

⏰:08/11/29 22:42 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#737 [向日葵]
いく場所も分からず走る。

「祐子さんっ!」

後ろから一朗が追いかけてくる。
こんな時、いつも抜けている筈の彼はこけてもおかしくないのに、すごい早さで祐子に追いつく。

腕を引かれ、祐子は止まるしかなかった。
走りながら流れてしまった涙を見られたくはないから、うつむいてそっぽを向いたまま腕を振り払おうとする。

「祐子さん、話を聞いてっ!僕は今から祐子さんの所へ行こうとしてたんだ!」

今更何を言われても信用出来ない。

⏰:08/11/29 22:46 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#738 [向日葵]
祐子は腕を振り払うと、その勢いに任せて一朗の弁当を床に叩きつけた。
弁当箱が一部破損し、中身が少しばかり出てしまった。

無意識に、息が荒くなる。

「もういい……」

声がかすれる。

「あたしは……アンタが野菜嫌いだなんて知らなかった。そうならそうで、言ってほしかった……」

「それは……」

「もうアイツに作ってもらえよ!あたしだって…………アンタの弁当を毎朝作るなんてごめんなんだよ!」

⏰:08/11/29 22:50 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#739 [向日葵]
祐子は階段を駆け降りる。
もう一朗は追ってこなかった。

辿り着いた場所は、いつも喧嘩で呼び出されていた校舎裏だった。
そこで座り込み、空を見上げる。

[そばにいるよ]

まだ素直になれていない頃、一朗がそう言った。
でももう無理だ。
自分と一朗は、やはり住む世界が違いすぎたんだ。

それでも、冗談でも、結婚しようと言ってくれた事は嬉しかった。恥ずかしくて、つい可愛くない事を言ってしまったけれど、本当は一朗のそばにずっといてもいい証を約束する事は、これ以上ないほど嬉しかった。

⏰:08/11/29 22:55 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#740 [向日葵]
でももういい。

あの杏とか言う奴と、くっつけば……。
祐子の心は、段々と真っ暗になっていった。

するとそんな祐子の元へ、いくつかの足音が近づいてきた。
座り込んでいた祐子が顔を上げると、何人かの女子が祐子を囲んでいた。

「おい森下。お前も腑抜けになったなぁ?」

耳障りな甲高い笑い声が響く。
祐子に恨みをもったグループらしい。

「丁度いいや。お前からうけた拳の数々、今返してやるからよぉっ!」

⏰:08/11/29 22:59 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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