*柴日記*
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#90 [向日葵]
確かに、そう聞こえた。
大した音量で言った訳じゃなかったけど、聞こえた。

止まってしまいそうな足を動かして、なんとか歩き出す。

あれは……多分立川君を好きな子なんだろうなぁ……。

歩きながら深呼吸して、なんとか気分を変える。

大丈夫。
そんなの言われ慣れてる。
いくらでも言えば良い。

馬鹿にされても、自分は柴も含めてあの家族に誇りを持ってるんだから。

⏰:08/03/28 00:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#91 [向日葵]
思い直して、私は胸を張って歩く。

恥ずかしい事なんて、何もないんだから。

――――――…………

皆がパラパラと帰りだしてきた。
時刻は5時。さっきまで騒がしかった周りが、少しずつ静かになり始める。

教室で自分の分のポンポンを美嘉、椿と一緒に作っている。

私達のクラスはB組なので、体育祭のクラス色はオレンジ。
と言う事でオレンジのポンポンだ。

⏰:08/03/28 00:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#92 [向日葵]
「しっかし、体育祭って腕鳴るよねー!リレーめちゃくちゃ楽しみ!」

「美嘉はアンカーだよね」

美嘉は見た目通りスポーツ万能なので、各種目に引っ張りダコだった。
各種目のリーダーがじゃんけんした結果、100mリレーに出る事になった。

「美嘉ちゃんはいつも早かったですよね……。中学の頃は3人も抜きましたしね……」

「あれは爽快だったなぁぁ!後で他のクラスの連中が嘆いてたしね!」

美嘉は豪快にアッハッハッハと笑う。

⏰:08/03/28 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#93 [向日葵]
そんな中、私はぼんやりとしていた。

「……」

―拾いもん―

「ハァ……」

ひどいなぁ……別にそこまで言わなくていいじゃない。

思い直しても、やっぱり大きな塊が私の胸につっかえてるみたいで、さっきから息を何度も吐いてるけれど、すっきりする事は無かった。

私だって、皆が快適に作業出来るように動いてるだし、別に媚てるとかそんなの無いのになぁー……。

⏰:08/03/28 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#94 [向日葵]
「……つ。越っ」

「え……。あ、ゴメン、何?」

「作業5時半まででしょ?そろそろ帰らない?」

「あ、そだね。よしっ、かいさーん!」

辺りに散らばるゴミを拾って捨ててから変える支度。
誰もいないのを確認してから、教室を出た。

私は自転車があるので、椿のベンツで帰る美嘉と椿にバイバイと言った。

しかし……。

私はチラリと校門を見る。

⏰:08/03/28 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#95 [向日葵]
黒いベンツ。
さすが椿。お嬢様なだけあるなー……。

椿が近づいていけばSPみたいな人が出て来てガチャリとドアを開けているのが見えた。

あれかな……やっぱりああいう時って、「おかえりなさいお嬢様」とか言っちゃうのかな……。

うわー生執事言葉聞いてみたいなー!

とかくだらない事を考えながら自転車の鍵をガチャリと入れる。

早く帰って桜の手伝いしてやらないと、桜も大変だな。

⏰:08/03/28 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#96 [向日葵]
風を感じながら、自転車をこぐ。
秋に入る前とは言え、やっぱりまだ暑い。

涼しいなぁーとのんびりした気分で校門を出た時だった。

「越!」

「え?」

ブレーキをかけるのが遅くて、数m離れた所でキキーッと停止。

後ろを振り向けば

「柴ぁっ!」

柴はにこぉと笑うと、私の所へテクテクとやって来た。

⏰:08/03/28 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#97 [向日葵]
>>94

※訂正

×変える支度
○帰る支度

⏰:08/03/28 01:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#98 [向日葵]
柴が目の前で止まると同時に、私は自転車を降りた。
カサと音が聞こえたので下を見ると、柴の手にスーパーの袋が持たれていて、入りきらないネギがニョキリと出ていた。

「桜にパシられた」

おそらく昨日の仕返しだろう。

不服な顔をしながら私の前に袋を出す。
そんな柴が少し笑えた。

「で、帰りに越がいるかなって」

それで私が帰ってたらどうするつもりだったんだろう……。

⏰:08/03/30 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#99 [向日葵]
それでも待っていてくれた事が嬉しかった。

陰口なんて気にしていたらダメだ。
だって皆、私の家族は暖かい……。

柴と夕焼けでオレンジに染まる街を歩いた。
そんな街を見ているだけでも、胸に残って重たかった気持ちが薄れていった気がした。

――――――…………

そして次の日。

相変わらずザワザワと騒がしい学校。
ドタバタ走り回るっている人ばかりなので曲がり角の所でよく人が衝突事故を起こしそうになっていた。

⏰:08/03/30 00:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#100 [向日葵]
私は相変わらずポンポン作ったり、無くなった道具を補充したり……。

そして今も、ハサミが足りないと言う事で美術室へ物色しに来てたり……。

美術室は別棟なので、静かだった。
でもそのせいで石膏の人物像が不気味に感じる。

すばやく道具置きの場所からハサミを何個か持って早足でクラスへ戻る。

体育祭はあと何日だっけなー……。

自分の指を折りながら数えていると、トンと誰かにぶつかってしまった。

⏰:08/03/30 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#101 [向日葵]
「あ、ごめんな……」

と途中で止まってしまった。

何故ならぶつかった相手がまたもや昨日の陰口を言った女の子だったからだ。

女の子は眉間にしわを寄せて上から下までジロジロと見てくる。

大丈夫。
今日は立川君とそんなに喋ってないし、因縁つけられる事もないと……思いたい。

変な汗が額に滲んできたところで、女の子が喋った。

「アンタさ、前も向いて歩けないの?」

「えと……ゴメンネ、ちょっと考え事してて」

⏰:08/03/30 01:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#102 [向日葵]
女の子はまた私をジロジロ見出した。

行き交う生徒は私達の事なんか一切気にしない。

どちらかと言えば、今は気にして欲しい気もするんだけど。
この気まずい空気から早く解放してほしい。

女の子は私を一通り観察し終わると、にっこり笑った。

それにホッとした私も笑い返そうとした。

――――その時だった。

「また捨てられたの?」

「……え」

⏰:08/03/30 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#103 [向日葵]
頭の中で、同じ言葉が鳴り響く。
めまいさえ起きそうだ。

「やっぱり拾いもんは出来が悪いから、すぐにポイッてされるんでしょ?可哀想に」

全然可哀想だなんて思ってない口調に表情。

その私をを見る姿を一言で言えば……嘲笑。

胸の奥が熱くなってくる気がした。
知らずの内に、スカートを握り締めて、歯を食い縛る。

膝に力を入れておかないと、崩れて……ううん、何かしてしまいそう……。

⏰:08/03/30 02:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#104 [向日葵]
「やめて……」

「え?」

私は何を言われても良い……。
でも。

「私の家族を馬鹿にしないで。拾いもんだろうがなんだろうが貴方には関係無い。立川君を好きなら、私につっかかってないで言えばいいじゃない。」

毅然と言えた。
そう思った瞬間、左頬が熱くなって、目がチカチカしだした。

何が起こったか分からないまま、数回瞬きを繰り返して女の子を見た。

⏰:08/03/30 02:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#105 [向日葵]
女の子は目をつり上げて顔を赤くしていた。
その様子から見れば、私はその子にひっぱたかれたみたいだ。

さっきまで私達に気が付かなかった生徒が、それを合図に一気に私達に注目する。

「ゴミの分際で、いっちょまえな事言ってんじゃねぇよ」

ゴミ……。

「――……ですって……?」

叩かれた頬をさすりながら、女の子に聞き返す。

周りのざわめきが聞こえないのは、皆がヒヤヒヤして私達を見ているからだ。

⏰:08/03/30 02:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#106 [向日葵]
「ムカついたからって、言って良い事と悪い事があるでしょ?それに、手を上げたら負けって小さい頃言わなかった?」

「うるさいっ!」

更に頭に血を上らせた女の子は私に掴みかかってきた。
急な事態に動き遅れた私は、胸ぐらを掴まれて壁に押し付けられた。
背中を強打して、心の中で「いったー!!」と叫ぶ。

周りが止めに入っても、彼女は私から手を離さなかった。

「上から物言うな!アンタなんかあたしらより格が下って分かんねぇのかよっ!」

⏰:08/03/30 02:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#107 [向日葵]
これじゃもう因縁と言うか八つ当たりと言うか、そんなもの関係ないからとりあえずコイツ絞めとこうみたいな感じだなー。

と冷静に考える反面、頭の肝心な糸が切れなくて良かったと思った。

そんな事を考えてる間にも、髪の毛を掴まれたり胸を叩かれたりやられっぱなしだった。

防御はしても攻撃はしなかった。
それで気が済むならいいかと思ったし。

でもそうはいかなかった。

「コラ!何やってんだっ!」

⏰:08/03/30 02:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#108 [向日葵]
先生が来てしまった……。

あ、ヤバイな……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

応接間みたいな所に私と女の子は案内された。

柔らかい黒革のソファーに座ると同時に、女の子は泣き始めた。

私は別に悪い事はしてないと、叩かれたり引っかかれたりした所をさする。

しばらくしてから、先生に連れられて、女の子のお母さんと、うちのお母さんがやって来た。

「ちょっと、どういう事ですか!?」

⏰:08/03/30 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#109 [向日葵]
女の子の派手なイメージとは全く逆の、教育ママみたいな眼鏡をしたお母さんは先生に詰め寄る。

一方うちのお母さんは私に駆け寄り、至る所にある私の体の傷を見て心配そうにハンカチを当てた。

どうやら血が出てた所があったみたい。

そしてもう1つ影が。

「なんで柴がいるの」

「越の話したら『俺も』って言うから……」

柴は大人しく私の後ろにぴったりとつく。

ようやく事情説明を聞き終えた教育ママさん風のおばさんはこちらに向き直りながら眼鏡をクイッと上げた。

⏰:08/03/30 02:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#110 [向日葵]
「失礼ですけど神田さん。貴方のご家族は皆様施設の子ですの?」

お母さんが答えた。

「それが何か?」

「まぁ……なら問題を起こして当たり前ですわね。よその子なんてもらうから手がつけられなくて野蛮な子になってしまうんですよ」

お母さんの応答する声が、1オクターブ低くなる。

「野蛮ですって?」

私も目を険しくさせた。
おばさんはそんな私達に有利に立ったつもりなのか、軽く胸を反らして見下すように私達を見る。

⏰:08/03/30 02:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#111 [向日葵]
「ええ。うちの玲奈ちゃんにこんな事させるなんて……最低じゃございません……?」

謝る気なんて一切ない。

自分の子供を贔屓に見すぎている。
明らかに被害を被ったのはこちらだし、ケンカを仕掛けたのはあちらだ。

私より遥かに堪忍袋の緒が短いお母さんは、ソファーを握りしめて怒鳴りそうになるのを堪えてた。

おばさんはそんな様子を知ってか知らずか、私達から視線を外し、私の後ろを見る。

「そちらも、お拾いになられたんですか?」

⏰:08/03/30 02:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#112 [向日葵]
柴の事だ。

「この子は、居候ですが……」

さっきより更に1オクターブ低い声でお母さんが答えた。

「あーやだやだ。そんなに集めてどうするおつもり?お子さんが今回のような事を毎回やられては困るんですよ?そんなのを増やし、外にやってもいいんでしょうか。……気に入りませんわ、わたくし。」

それ以上言わないで……。

「せいぜい監獄行きにならない事を祈りますわ。さぁ玲奈ちゃん、今日は帰りましょう」

⏰:08/03/30 02:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#113 [向日葵]
頭の中で、ブチンと勢いよく何かが弾ける音が聞こえた。

何の音だか分からないまま、私はゆらりと立ち上がる。

「待ちなさいよおばさん……。」

ドアに手をかけようとするおばさんがピクリと動き、また眼鏡を上げながらこちらを見る。

「おばさん?」

「貴方しかいないでしょ?……ねぇ、気に入らない事があったら何言ってもいいの?」

拾いもん、ゴミ、監獄行き……。
色々聞いてきたけどもう我慢ならない!!

⏰:08/03/30 02:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#114 [向日葵]
「拾いもんとかゴミとか人を人とも思ってない人がえっらそうな事を言うなっ!!アンタ達何様よ!?神様!?なら神々しく輝いてみなさいよ!大体ねぇ、お母さんは私達を大事に大事に育ててくれてる!少なくとも人の事を嘲るような目で見るようには育てない!」

それに……。

「柴の事、見ただけなのに何もかも分かったみたいに私の家族を悪く言うな!!こんの馬鹿親子っっ!!」

部屋に、私の声が反響する。
ワーンと耳の中で自分の声が響く。

先生も、女の子もおばさんも、お母さんも柴も、口をぽっかり開けたまま私を見つめていた。

⏰:08/03/30 03:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#115 [向日葵]
握り拳で息をゼーハー繰り返している事に気付いた私は、ハタッと我にかえる。

そして皆をみれば、今自分がした事に一気に血の気が引いた。

「あ……えと……だ、だから、あまり悪口は言わないで下さいって事です……」

私がそろそろ座ると同時に、お母さんが豪快に笑った。

その声に皆ハッとして、瞬きを繰り返した。

「とりあえず、和解って事でよろしいかな?奥さん」

⏰:08/03/30 03:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#116 [向日葵]
「な、なんて……人なの……。もう帰らせて頂きます!」

そそくさと、おばさん達は出て行って、その後を先生が追って行った。

横でお母さんがソファーにゆったりと座り、足を組んでポケットからタバコを取り出した。

そんな一連の動作を見ていた私に気付いたお母さんは、ニカッと笑って頭をぐしゃぐしゃ撫でてくれた。

「ありがとう。家族の為に怒ってくれて。」

「そんな、私……」

戸惑う私を、お母さんは抱き締めてくれた。

⏰:08/03/30 03:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#117 [向日葵]
「アンタ達の事よその子だなんて思った事はないよ。皆あたしとお父さんとのだーいじな子供」

お母さんは柴の方を向いて優しく微笑む。

「柴、アンタもおんなじようなもんなんだからね」

そんなお母さんに、私は泣いてしまった。

どうして誰も分かってくれないんだろう。

血が繋ってないからって嘆く事が無いくらいお母さんやお父さんは私達を大切に育ててくれた。

なのに何故、ダメなんだろう……。

⏰:08/03/30 03:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#118 [向日葵]
しゃっくりをしながら泣く私をあやすように頭を撫でてくれるお母さん。
服にタバコの匂いがついてて、お母さんらしい。

くやしい。
歯がゆい。

どうすれば伝わるんだろう。

幸せだよって、伝わるんだろう……。

――――――……

お母さんと柴は帰り、先生から事情をまた聞かれた。

1から10まで真実を話し、その場にいた人を連れて来てまでのちょっとした大事になってしまった。

⏰:08/03/30 03:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#119 [向日葵]
幸い、クラスの方は立川君がしっかりと指示してくれてたおかげで問題なかったらしい。

クラスの皆に侘びれば、快く許してくれた。

1人だけ作業が遅れたので、放課後引き続きポンポン作りと、紙で花を作る。

気づけば5時を回っていた。

「フゥ……」

軽くため息をして、イスの背もたれに身を預ける。

明日は迷惑かけないようにしなきゃなぁ……。
クラスにも、お母さんにも……。

⏰:08/03/30 03:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#120 [向日葵]
こんなだから、私がしっかりしないから、今日みたいな事があるんだ……。

ため息をついて、少しぼんやりした後、戸締まりをして帰る支度を始めた。

自転車の鍵を片手に校舎を後にして、いつものように家路を急いだ。

暗い気分を自転車で走ってる間に消し去ろうと決意して、顔を上げると、校門に誰かいた。

その誰かも、こちらに気付いた。

「やっど出てきた」

「柴……っ!今まで待ってたの!?」

長時間待っていただろう柴だけれど、別に気にした風もなく私に近づく。

⏰:08/03/31 02:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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