よすが
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#171 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは、両親と妹の為に記憶を取り戻すと決めたのだ。
もしかしたら、全てを知った後、知らなければよかったと後悔するかもしれないけれど。
それも含めてあたしは後悔しない。

――あたしは、知らなきゃならないんだから。


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⏰:08/04/12 22:21 📱:SH903i 🆔:xQx.Xh9k


#172 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしとサトルは、さらに悪くなっていく山道を歩き続けた。
あたしの足は疲れて棒のようになり、あれだけはしゃいでいたサトルも、ただひたすら道の先だけを見て足を進めている。
狭い道の両側に広がる森は雰囲気を変え、妖しい空気を放つようになっていた。
不安定な足場と急な傾斜のせいで、息も白くなる寒さの中、あたしたちの顔には汗が流れている。
お互い肩で息をしていて、話す余裕も無かった。

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⏰:08/04/12 22:22 📱:SH903i 🆔:xQx.Xh9k


#173 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
黙々と歩き続け、二つ目の分かれ道を通り過ぎた。
頭上を見上げると、木々の葉の間から辛うじて差していた光さえ弱り、その隙間からはどんよりとした空が見える。
昼間はあんなに晴れていたのに、今にも雨が降り出しそうで、空気も冷たくなってきた。
新聞の記事によれば、あたしが発見された場所はもうすぐそこだった。
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⏰:08/04/13 21:56 📱:SH903i 🆔:HMtueqDg


#174 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
一心不乱に歩く。
だが、疲れのせいか、怖れのせいか。
無意識の内に、あたしの歩くスピードが落ちていた。
サトルが随分先にいる。

あたしは気を引き締め、走ってサトルに追い付いた。
サトルもかなり疲れていたようで、あたしが遅れていたことに気付いていなかった。
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⏰:08/04/13 21:57 📱:SH903i 🆔:HMtueqDg


#175 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしが走ってきたのに気が付いたサトルが、足を止める。
うーん、と伸びをして、彼は自分の足をさすった。

「ちょっと疲れたね」

あたしもサトルの横で足を止め、息を整えながらこくこくと頷いた。
足は悲鳴をあげる寸前だし、腰にも鈍い痛みを感じる。
体は汗をかくほど暑いのに、顔と指先は冷たくて感覚もないくらいだ。
サトルは、顔の前で手を丸めて、息を吐きかけている。
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⏰:08/04/13 22:03 📱:SH903i 🆔:HMtueqDg


#176 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「この辺かな……」

サトルが辺りを見回しながらそう言うので、あたしは新聞のコピーを差し出した。
まだ苦しくて、言葉を発する余裕が無かった。
あたしはコピーを渡すと同時に、疲れに負けて腰を下ろす。

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⏰:08/04/13 23:43 📱:SH903i 🆔:HMtueqDg


#177 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「すぐそこだ」

そう呟いて、サトルは山道から木々が立ち並ぶ山の中に入り込んでいった。
枝葉をかきわけ、一歩一歩確実に進んでいく。


あたしはそれを見ていた。
サトルの背中を、見つめていた。
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⏰:08/04/13 23:43 📱:SH903i 🆔:HMtueqDg


#178 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
――なんでだろう。
サトルは足を止めないのに、あたしはなんで立つことも出来ないんだろう。


一度休んでしまった体は、再び動き出すのを拒む。
あたしの目は、枝をかきわけて進むサトルの背中に釘づけだった。

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⏰:08/04/13 23:44 📱:SH903i 🆔:HMtueqDg


#179 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
――だめだ、……あたしも変わらなきゃ。後ろから見てるだけじゃだめ。
あたし自身のことなんだから。ほら、早く!

自分に喝を入れ、二本の足に、動け、と呼び掛ける。
それを何度も繰り返して、ようやく動き出すあたしの体。
ほっとしたような、緊張が増したような。
行きたいような、行きたくないような。
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⏰:08/04/13 23:45 📱:SH903i 🆔:HMtueqDg


#180 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
しかし、あたしはこんがらがった感情をその場に置き去りにして、行動を開始した。
サトルがかきわけて出来た枝の隙間をくぐり、彼の横に並んだ。

「ユキは後ろにいなよ。枝で顔に傷ついちゃうよ?」

「いいの、それぐらい」
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⏰:08/04/13 23:46 📱:SH903i 🆔:HMtueqDg


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