よすが
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#181 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしはきっぱりと答えると、目の前を遮る細い枝を押し曲げて道をつくる。
その向こうに張り出している少し太めの枝を、同じように避けて一歩進む。

怖いとか不安だとか、もう何も感じないように、あたしは目の前の障害物に意識を集中した。
サトルも尖った枝から自分の身を守るので精一杯のようで、一心不乱に手と足を動かしている。
一歩一歩、枝や幹を避けながらゆっくりと地面を踏み締める。

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⏰:08/04/14 00:23 📱:SH903i 🆔:a42MtXbw


#182 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
数メートル進むのに何分かかっただろうか。
あたしたちの両手がひっかき傷でいっぱいになった頃、目の前にぽっかりと空間が現れた。
空間といっても、直径はあたしとサトルが並んで両手を広げたぐらいだ。

密集している周りの木々と比べ、その内側だけは不自然なほど何も生えていない。
しかし、そこを囲む木の枝が空間のほとんどを覆っていて、明るさはそれほど変わらなかった。

あたしは意を決し、空間に足を踏み入れた。
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⏰:08/04/14 00:24 📱:SH903i 🆔:a42MtXbw


#183 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
柔らかい土が、あたしの靴底を受け止める。
思っていたより自分の気持ちが落ち着いていることに、逆に驚く。

ゆっくりと足を進め、あたしは空間の中心に到達した。
茶色い土、太い木、枯れた草、落ち葉。ぐるりと見回しても、それ以外何もない。
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⏰:08/04/14 00:25 📱:SH903i 🆔:a42MtXbw


#184 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
この空間の中にあたしは倒れていたのだろう。
二人してこれほど苦労してたどり着いた場所にいたあたしを、なぜ発見出来たのかわからない。

昔はここまで荒れていなかったのだろうか。
それとも散歩中の犬かなにかが嗅ぎ付けたのだろうか。

もし、見つけてもらえなければ多分……あたしも死んでいたかもしれない。


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⏰:08/04/14 00:26 📱:SH903i 🆔:a42MtXbw


#185 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしはその場に寝転んでみた。
空間のど真ん中に大の字になって、木や葉の隙間から空を仰ぐ。
また何か思い出せるかもしれないと思ったのだ。

横向きに寝転んだり、俯せになったりしてみた。
場所を変えて、木にもたれ掛かってみたり、座ってみたりもした。
けれど、何一つとして浮かび上がってこない。

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⏰:08/04/14 22:28 📱:SH903i 🆔:a42MtXbw


#186 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
しばらくの間、ごろごろ転がりながら待ってみたけれど、二度目の変化は訪れなかった。
あたしは諦めて立ち上がり、服についた土を払う。
すると、サトルがなにかを見つけたように木々の間を見つめているのに気付いた。

「どうしたの?」

「ねえ、これ……道じゃない?」
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⏰:08/04/14 22:28 📱:SH903i 🆔:a42MtXbw


#187 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そう言ってサトルが指差した方をじっくりと観察してみると、トンネルのように一本につながった隙間があった。
わずかにだが、枝が折れていたり靴跡らしきものがあったり、人が通ったかのような痕跡も見て取れた。

――こんなところ、一体誰が通るんだろう?
もしかして、十年前あたしを見つけてくれた人……?

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⏰:08/04/14 22:29 📱:SH903i 🆔:a42MtXbw


#188 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしの目の前に、ひとつの手掛かりが現れた。
それをみすみす逃す訳にはいかない。

「行こう」

ここで立ち尽くしていても何も思い出せそうにもない。
かと言って、このトンネルの先には何も無いのかもしれないけれど。

それでも、自分から動かなければ何も見つけられない。
そう考えたあたしは、この道の先に行くべきだと思ったのだ。
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⏰:08/04/14 22:30 📱:SH903i 🆔:a42MtXbw


#189 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
サトルがいつもの笑顔で頷くのを見て、あたしは道とも言えない道に足を進めた。

狭いし、飛び出している枝は多いし、足場は悪い。
後ろを振り返るのは難しいけれど、葉や土を踏み締める靴音で、サトルが後ろからついてきてくれているのがわかる。
不安は、無い。

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⏰:08/04/14 22:31 📱:SH903i 🆔:a42MtXbw


#190 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
トンネルのようなこの道を進むにつれて、あたしはひとつの確信を得た。

やはりこの道を使っている人がいる。

さっきの空間までの道のりを考えると、今歩いているところはかなり歩きやすかった。
ちょうど人ひとりが通れるギリギリの隙間が続いていて、足元に落ちている葉や草の量も他の場所より少ない。
飛び出している枝はどれも、少し体をひねればうまく避けられる。
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⏰:08/04/15 22:03 📱:SH903i 🆔:OfU8ov5.


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