よすが
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#208 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
毎日毎日病院に通ってくれた両親。
母は朝から晩まであたしに付きっきりで世話をしてくれた。
面会時間の許す限り、母はあたしの隣にいてくれた。
睡眠も充分に取っていなかったのだろう、母の顔はいつも疲れていた。
けれどあたしの前では、いつも笑顔だった。いつも優しかった。
傷が痛いとうめけば、体をさすってくれた。
一人で寝るのが怖いと言えば、宿泊許可をとって隣で眠ってくれた。
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⏰:08/04/19 22:32 📱:SH903i 🆔:AmiMOAoA


#209 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その優しさは今もずっと変わっていないけれど、一度だけ、母に叱られたことがある。

高校生になってすぐの頃、あたしは仲良くなった友達と遊びに出かけ、帰りが遅くなったのだ。
いつもなら連絡するのだが、その日はたまたま携帯電話の充電が切れていた。
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⏰:08/04/19 22:33 📱:SH903i 🆔:AmiMOAoA


#210 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは母がどれだけ心配するかなんて少しも考えず、連絡しないままにしてしまった。
友達と別れた後、怒られるかな、なんてのんきに考えながら帰りの電車に乗った。

家に着いて、なぜかあたしは出来るだけ音を立てずにリビングに向かった。
これだけ遅くなったのだから、もう怒られるのは避けられない。
だから、出来るだけ刺激したくないという無意識がそうさせたのだろう。
ドアを開けると、父と母が目を赤くして待っていた。
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⏰:08/04/19 22:34 📱:SH903i 🆔:AmiMOAoA


#211 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
……泣いていたのだろう。
それを見て、あたしはなんてことをしてしまったのだろう、と激しく自分を責めた。
その時初めて母に叱られたのだった。

そういえばその次の日、母は「はい、これプレゼント!」と言って持ち運べる充電器をくれたんだっけ。
母の優しさを形にしたそのプレゼントは、あたしが肩にかけているバッグの中に今も入っている。

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⏰:08/04/19 22:34 📱:SH903i 🆔:AmiMOAoA


#212 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
父は、いつも忙しそうだった。
飲食関係の仕事をしていたので、土日はいつも家にいなかった。
朝早く家を出て、夜中になってやっと帰ってくる。
あたしはそれが淋しかったけれど、平日にたまに早く帰って来て外食に連れていってくれる父が大好きだった。
もちろん、今も大好きだ。

そう考えると、あたしがまだ入院していた時はかなり無理をしていたのだろうか。
曜日に関わらず、いつも夕方には病院に来てくれていた。
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⏰:08/04/19 22:35 📱:SH903i 🆔:AmiMOAoA


#213 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
仕事先からそのまま来ていたので、あたしにとってその頃の父といわれて思い出すのは、飲食店特有の、油の匂い。

母は、臭いからシャワー浴びてから来てよね、などと散々文句を言っていたけれど、あたしはその匂いも引っくるめて父が大好きだった。
油まみれの仕事着を来た父に抱き着いて、息を思いきり吸い込む。
それが、父が病室に来たらまず一番にする、あたしの日課だった。

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⏰:08/04/19 22:36 📱:SH903i 🆔:AmiMOAoA


#214 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そんな父と母に守られながら、あたしは生きてきた。
退院してからもそれは変わらなかったけれど、もう一人、あたしの側にいてくれる人が増えた。
それが、サトル。

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⏰:08/04/20 01:35 📱:SH903i 🆔:bC7weAIo


#215 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
サトルとの出会いは、いきなり訪れた。
新しい学校に初めて登校する日、サトルがあたしの家に迎えにきた。
あたしは久しぶりの学校に緊張していて、朝からずっと泣きそうだったのを覚えている。
そんなあたしに母が、新しいお友達よ、と言ってサトルを紹介してくれた。
サトルは、今はもう見慣れたあの人懐っこい笑顔で、「サトルです! ユキちゃんよろしく!」と言って、学校まであたしの手を引いてくれたっけ。
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⏰:08/04/20 01:36 📱:SH903i 🆔:bC7weAIo


#216 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
どうして母がサトルを知っていたのかあたしは知らないけれど、そのおかげで今となっては一番の友達だ。

サトルはひとつ年下なので、学校ではあまり顔を合わさなかったけれど、行き帰りや休日はほとんど一緒だった。
あたしが同じ学年の友達と遊ぶ時でも、サトルはみんなに混じって遊んでいた。
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⏰:08/04/20 01:36 📱:SH903i 🆔:bC7weAIo


#217 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
サトルとは中学校も同じで、あたしに合わせたんじゃない、と本人は言っていたけれど、部活まで一緒だった。同じ、バレーボール部。
サトルは運動神経が良いからか、どの試合でも活躍していた。
あたしはといえば、万年補欠。
なぜバレーボール部に入ったのか、と聞かれてもおかしくないほど下手だった。
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⏰:08/04/20 01:37 📱:SH903i 🆔:bC7weAIo


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