よすが
最新 最初 🆕
#238 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
――今は大丈夫だ。



え?

……今は?

あたしは確かに今、そう思った。
けれど、全く意味が解らない。今のはあたしの意識ではない。
でもあたしじゃないなら一体誰の?
.

⏰:08/04/22 23:12 📱:SH903i 🆔:.2zmGT5A


#239 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そう思ったけど、あたしは考えるのをやめた。
これは夢だ。夢というのは有り得ないことが起きても良い世界なんだ。
そして夢というものは、しばしば現実とリンクする。現(げん)に今、あたしは過去のあたしを夢に見ている。
このまま夢に飲み込まれてしまえば、この世界で全ては明らかになるんじゃないか。
あたしはそれを期待し、夢の世界に潜っていく。


.

⏰:08/04/23 13:04 📱:SH903i 🆔:n.zKpr4g


#240 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
小さな体のあたしは、男の大きな手に引かれながら坂道を歩いている。
あたしの小さな影と男の大きな影が、足元から進む先に向かって長く延びていた。
あたしは自分の影の頭を踏もうと、出来る限り歩幅を広げてみたけれど爪先さえ届かない。
そうこうしている内に、ただの遊びにいつの間にか真剣になってしまっていた。
躍起になって、飛んだり走ったりして影を追う。

.

⏰:08/04/23 13:05 📱:SH903i 🆔:n.zKpr4g


#241 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしが自分だけの影踏みに熱中していると、いつの間にか辺りが暗くなっていた。


いや、暗くなったと言うよりも、この世からあたし以外のものが全て無くなったようだ。

どこを見ても闇、闇、闇。

さっきまで手を繋いで隣を歩いていたはずの男も、空をオレンジに染めていた太陽も、あたしが踏み締めていたはずの地面さえも、今はどこにも見当たらない。

.

⏰:08/04/23 13:05 📱:SH903i 🆔:n.zKpr4g


#242 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そう。これは夢なんだ。
夢だから、何が起きてもおかしくない。どんなことも起こり得る。

光が無いように見えるのに、あたしの手ははっきり見えた。
そこで、あたしは自分の体をもう一度見下ろしてみる。
やはり、小さいままだった。
.

⏰:08/04/23 13:06 📱:SH903i 🆔:n.zKpr4g


#243 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
周りを見回しても、やはり永遠に続く闇しかない。
しかし夢だと解っているからなのか、恐れは無かった。

自分がどこに立っているのかも解らないまま、あたしは歩き始めた。
一歩、また一歩、さらに一歩。
右足と左足を交互に前に出す。
.

⏰:08/04/23 13:07 📱:SH903i 🆔:n.zKpr4g


#244 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
地面を踏む感覚はあるのに、あたしの足の下は深い闇。何も、無い。
前に進んでいるつもりだけれど、実は後ろに進んでいたとしてもあたしは気付かないだろう。

.

⏰:08/04/25 00:30 📱:SH903i 🆔:ZORuxzbU


#245 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
どれだけ歩いても、あたしの瞳に映るのは黒過ぎるほどの黒だけだった。
景色が変わらないため、十キロ歩いたのか、十メートルしか進んでいないのか、全く解らない。

「はぁ……」

あたしは思わずため息をついてしまった。
.

⏰:08/04/25 00:30 📱:SH903i 🆔:ZORuxzbU


#246 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
何だか疲れた。
頭も体も、疲労という重りを付けられたような鈍さを感じる。
あたしは音もなく、見えない地面に静かに寝転んだ。

このまま、泥のように何も考えず、何も感じずに眠ってしまいたい。
.

⏰:08/04/25 00:31 📱:SH903i 🆔:ZORuxzbU


#247 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは目を閉じ、夢の中で眠りにつこうとした。


……。


…………。



………………?

.

⏰:08/04/25 00:32 📱:SH903i 🆔:ZORuxzbU


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194