よすが
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#17 [蜜月◆oycAM.aIfI]
傷が治って退院した後、あたしは新しい学校に転入した。
そもそも、前の学校のことも友達のことも何も覚えていないのだから、あたしにとっては同じことだった。
後になって父から聞いたのだが、あたしたちはもともと田舎の方に住んでいたらしい。
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:08/04/03 00:34
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#18 [蜜月◆oycAM.aIfI]
父も母も、あたしの記憶が無い頃の話を未だにしようとしないが、その話をした時の父はひどく酔っていた。
田舎から、同じ県内の中心部であるこの街に引っ越して来たのだと言ったきり、父は黙ってしまった。
その時あたしは、父が普段なら絶対に口にしない過去の話をしたことと、いつもとは違う父の雰囲気に驚き、何も言えなかった。
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:08/04/03 00:34
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#19 [蜜月◆oycAM.aIfI]
それからは元通り、父も母も過去の話には触れなかった。
転校してからは特に不自由なこともなく、中学に上がり、受験戦争を乗り越え高校に入学、と普通の毎日を過ごしてきた。
両親が望んだ通り、普通の生活。
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:08/04/03 00:36
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#20 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしは今、その普通から飛び出そうとしているのかもしれない。
自分の記憶を取り戻すことによって、今の普通で幸せな生活が壊れてしまうかもしれない。
そうなった時、あたしはどうすればいいのだろうか。
――怖い。
傷だらけになり記憶をなくした幼い自分が蘇る。またあんな風になってしまうのか……。
恐怖、その感情があたしを支配しそうになる。
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:08/04/03 00:38
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#21 [蜜月◆oycAM.aIfI]
けれど、あたしは過去を受け入れる。そう決めたのだ。
ぎゅっと目をつむり、恐怖を向こう側へ押しやる。
しかし、父と母にはもう心配をかけたくなかった。悲しませたくなかった。
何があったのか、二人には聞けない。
でも、他に手掛かりは無い。
――あたしの過去に続く道は何処……?
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:08/04/03 00:39
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#22 [蜜月◆oycAM.aIfI]
騒がしい声が聞こえてきて、思考を中断させられた。
屋上を囲っている柵越しに校庭を見下ろすと、家に帰ろうとする者や部活の準備をしている生徒が大勢歩いている。
とりあえず家に帰ろうと教室に戻ると、一人の男子生徒があたしを待っていた。
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:08/04/03 00:42
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#23 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「ユキー、どこ行ってたんだよー? 保健室行ってもいないし。鞄置きっぱなしだし。午後の授業出なかったんだってー?」
この男子生徒、サトルは、あたしが転校した小学校で出会った、一つ年下の幼なじみのようなもの。
彼とは家が近く、学校の行き帰りを共にすることも多かった。
「ごめんごめん、ちょっと考え事してたらこんな時間になってた。帰ろうか?」
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:08/04/03 00:43
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#24 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしは笑って答えながら鞄を手に取った。
「うん!」
サトルを見ていると、人懐っこい子犬みたいだといつも思う。
眩しいくらいの笑顔で返事をするサトルを見て、なんだか安心してしまった。
――あたしは変わらない。
例え何があろうと、あたしには大切な人たちがいるから。
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:08/04/03 00:44
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#25 [蜜月◆oycAM.aIfI]
学校を出て、サトルと並んで歩いていた。
そうしていても、昨日の夢のことが頭を巡ってしまう。
「ユキ、ユキ!」
サトルがあたしの顔の前で片手を振っている。
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:08/04/03 00:46
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#26 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「どうしたの? なんか今日変だよ、ユキ。何かあった? 誰かに虐められた?」
サトルが本気で心配してくれているのが解る。
「サトル、今日時間ある?」
「あるけど、何?」
あたしはサトルを連れて学校の近くのコーヒーショップに入った。
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:08/04/03 01:09
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