よすが
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#291 [蜜月◆oycAM.aIfI]
コンクリートの建物の中には、何も無かった。ただコンクリートの壁が床と天井と四方を囲っているのみ。
照明器具もなく、あたしとサトルが確認したように窓もない為真っ暗だった。
ただでさえ怯えていたあたしとハナは、そのせいで余計に心細さを感じた。
その上、あたしが予想した通り内部はかなり寒かった。暖房などあるわけもなく、真冬の空気はコンクリートをしっとりと、しかし確実に冷やしていた。
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:08/05/01 19:33
:SH903i
:gckU4PYk
#292 [蜜月◆oycAM.aIfI]
次の日、男は厚手の毛布と電池式の懐中電灯を三つほど用意してきてそれをあたしとハナに与えた。
あたしたちは閉じ込められている間、真っ暗な闇の中で毛布を体に巻き付け懐中電灯を点し、恐怖と寒さをやり過ごした。
それでも抑え切れず、二人で抱き合って泣いたこともあった。
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:08/05/01 19:34
:SH903i
:gckU4PYk
#293 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしが男から解放されたのは、確か二週間ほど過ぎた頃だった。
その時まで、ほとんどの時間をあたしとハナはコンクリートの箱の中で過ごした。
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:08/05/03 21:44
:SH903i
:wLA6FCfI
#294 [蜜月◆oycAM.aIfI]
男がそこに来た時だけ、あたしたちは外に出ることを許された。
男は大概昼前に来て、外側にくくりつけた南京錠を外しドアを開ける。
そして昼食を与え、外に出てあたしたちが食べ終えるのを待つ。
しばらくすると再びドアが開き、あたしかハナのどちらかを選んで連れてゆく。
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:08/05/03 21:45
:SH903i
:wLA6FCfI
#295 [蜜月◆oycAM.aIfI]
男は正気を失っていた。
あたしとハナのことを“ユウコ”と呼ぶのだ。死んだ娘の名前だった。
外に連れ出したあたしやハナをそう呼び、まるで本当の娘であるかのように接する。
そして自分の妻のことや家族三人の思い出を、いつもあたしたちに語りかけた。そうしている間はとても優しかった。
あたしもハナもそれに相槌を打ち話を合わせ、彼の娘のように振る舞った。そうしなければ、後に待ち受ける仕打ちが恐ろしかったのだ。
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:08/05/03 21:47
:SH903i
:wLA6FCfI
#296 [蜜月◆oycAM.aIfI]
しかし長くは続かない。
必死に頭を巡らせ男の望む返答をしようとするが、どうしてもわからないこともある。
男が問いかけてくることに、娘でないあたしたちは答えられないのだから。
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:08/05/03 21:49
:SH903i
:wLA6FCfI
#297 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしたちが返事に困って黙り込んだり男の記憶と食い違ったりすると、男は豹変する。優しかった微笑みは恐ろしい顔に変わり、目を剥いて怒鳴り始める。
「お前……オレを騙したのか! ユウコをどこにやった! オレのユウコを返せ!」
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:08/05/03 21:50
:SH903i
:wLA6FCfI
#298 [蜜月◆oycAM.aIfI]
そんなことを叫びながら、あたしやハナを痛めつけるのだ。
頬をはたかれ、首を締められ、頭を殴られ、地面に倒される。
腹を蹴られ、足を掴んで引きずられ、背中を踏み付けられる。
あたしは怖くてどうしたらいいのかわからなくて、謝り続けていたように思う。
「ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
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:08/05/05 00:11
:SH903i
:Nqg5T9kk
#299 [蜜月◆oycAM.aIfI]
すると男はある瞬間、パタリと動きを止める。
そしてまた豹変するのだ。
「あ、あ、ああ……すまない、大丈夫か? 本当にすまない、悪かった……」
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:08/05/05 00:11
:SH903i
:Nqg5T9kk
#300 [蜜月◆oycAM.aIfI]
男は正気を取り戻す。我に返ってあたしを抱きしめた。
その時にはもう、男にとってあたしやハナは娘ではなく、衝動的に掠ってしまった見知らぬ女の子なのだ。
自分がした恐ろしい行いを詫び、コンクリートの箱に連れ帰って傷を手当てされた。
包帯を巻いたり消毒液を塗ったりしながら、男は自分に起きた不幸や誘拐の理由を語る。
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:08/05/05 00:12
:SH903i
:Nqg5T9kk
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