よすが
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#325 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男はとうとう木の根に腰をおろして、頭を抱えてしまった。
あたしはこのまま逃げてしまおうか、そう考えたけれど、ハナに何も言わずここから去るのは嫌だった。

――戻ってこよう。

うずくまる男から視線を外して、あたしは自由になった体で歩き出した。

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⏰:08/05/11 22:15 📱:SH903i 🆔:1rttUfes


#326 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
一人で森を歩けるのが嬉しくて、あたしは随分遠くまで来てしまっていたらしい。
男が来てあたしに声をかけた。

『ユウコ、もう暗くなるよ』


――あぁ、あの夢はこの時だ。最後の日だったんだ。

指輪が光る手をとり、あたしたちはコンクリートの箱に帰ろうと山道を歩く。

木の向こうにコンクリートが見えてもう少しで着く、というところで男が豹変した。
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⏰:08/05/11 22:15 📱:SH903i 🆔:1rttUfes


#327 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
頬を平手打ち――痛い――また頬を――耳がちぎれそう――引っ張らないで!――押し倒され――頭を地面に打った――割れそう――背中に激痛――目に液体が――血!――お腹――肩――腿――頭――痛――止まらない――脇腹――嫌な音――もうやめて!


――意識を失いそうだった。
あたしはやはり謝り続けていたけれど男の手はいつまでたっても止まることなく、あたしは、死を覚悟した。
その時。

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⏰:08/05/11 22:16 📱:SH903i 🆔:1rttUfes


#328 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「パパ!」


ハナの……声だ。


「パパ、やめて!」


あたしの体に降り注いでいた痛みが止み、男が振り向いた気配を感じた。血が目に膜を張ってよく見えない。

⏰:08/05/12 22:14 📱:SH903i 🆔:58D7rq3M


#329 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ユウコ……」

「パパ、やめて。あたしの大事な友達なの」

ハナの声が少し震えている。でもその言葉ははっきりとあたしの耳に届いた。

――やっと……きた。

これがあたしたちの考えた方法だった。
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⏰:08/05/12 22:16 📱:SH903i 🆔:58D7rq3M


#330 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「友達?」

「そう、あたしの、……ユウコの友達。だからやめて」

地面に倒されたまま、あたしは目だけを動かしてハナの姿を探した。
世界が赤い。流れてくる血が眼球にまとわりついて視界が赤くぼやけている。
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⏰:08/05/12 22:17 📱:SH903i 🆔:58D7rq3M


#331 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「友達……ユウコの……」

「そうだよ、もう帰らないといけないの」

涙が血を洗い、少しずつ周りの様子が見えてくる。
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⏰:08/05/13 21:48 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#332 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
暮れ始めた薄赤い空の下に男が立っていて、その顔は向こう側に向けられている。
男の視線の先には、ハナが立っていた。拳を握りしめ、強張った表情でじっと男を見つめている。
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⏰:08/05/13 21:48 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#333 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは体を支えようと腕に力を入れた。
ズキン、と右肩が痛む。
それでも歯を食いしばり、なんとか上半身を起こした。
まだハナと男は見つめ合っている。
あたしの荒い呼吸だけが、静かな森の中に響いていた。
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⏰:08/05/13 21:49 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#334 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……友達?」

男が同じ言葉を繰り返す。今度はあたしの方をチラリと見た。

「そう、友達」

ハナは男から目を離さない。ほとんど睨みつけるようにしながら震える声で呟いた。
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⏰:08/05/13 21:50 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


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