よすが
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#350 [蜜月◆oycAM.aIfI]
ハナの苦しげな表情があたしにのしかかる。
頭の中に疑問が渦巻いた。
あたしはそれを解くために重い口を開く。
「……どうして……ねぇ? ……今なら……帰れる……のに……ハナ……お父さんと……お母さん……安心……させたいんでしょ……?」
「あの人が……」
――あの人?
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:08/05/16 23:13
:SH903i
:kSaLjsmM
#351 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「あたしを必要としてるから」
ハナのいうあの人、それはあの男のこととしか考えられない。
必要としてる? ただ殴ったり蹴ったりするだけじゃないの?
依然として苦しげな表情をしたハナの向こうの空はオレンジ色を失いつつある。
あたしが険しい顔をしていたからか、ハナは言葉を続けた。
「うちの家族は……幸せだよね? ユキも幸せだったよね?」
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:08/05/16 23:14
:SH903i
:kSaLjsmM
#352 [蜜月◆oycAM.aIfI]
ハナが何を言いたいのか解らず、あたしは戸惑いを隠せなかった。何も言えずにハナの顔を見つめる。
すると、ハナはふっと表情を柔らげてあたしに微笑みかけた。
「あたしは……幸せだって思い込んでただけみたい。ユキとかお父さんお母さんを嫌いなんじゃないよ、大好きなんだけど……大好きだから……」
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:08/05/16 23:15
:SH903i
:kSaLjsmM
#353 [蜜月◆oycAM.aIfI]
微笑んだまま、ハナの目に涙が溢れ出す。一筋流れた涙が、ポツリ、あたしの頬を濡らした。
「……ハナ……?」
「辛かったの。お父さんとお母さんがユキを可愛がるのも。ユキがお父さんとお母さんに甘えるのも。あたしには無かったから」
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:08/05/17 23:05
:SH903i
:r2FaV5hA
#354 [蜜月◆oycAM.aIfI]
ハナの顔にはさっきまでと同じ微笑みが浮かんでいたけれど、そこには苦しみが混じって見えた。
優しい顔。だけど、恐ろしくもある。
ハナにそんな苦しみがあったなんて、考えもしなかった。
あたしは我が儘な子どもだったと思う。父と母はいつもそれを許してくれた。
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:08/05/17 23:06
:SH903i
:r2FaV5hA
#355 [蜜月◆oycAM.aIfI]
でもハナはいつもいい子だった。両親の言うことをよく聞く真面目な子どもだった。
おもちゃが欲しくてあたしが駄々をこねても、ハナは何も言わずに下を向いていた。
結局父や母が折れておもちゃを買ってくれることになり、ハナに何がいいかと聞いてもハナは首を横に降って「あたし、いらない」と言うのだった。
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:08/05/17 23:07
:SH903i
:r2FaV5hA
#356 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしはそれがハナだと思っていた。普段から真面目で親に迷惑をかけることのない、しっかりした妹だと。そう思っていた。
それにあたしはハナが羨ましかった。あたしより成績もよかったし、親戚が集まった時なんかに褒められるのは決まってハナだったから。
父や母が親戚からハナを褒められて嬉しそうにしているのがすごく羨ましかった。
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:08/05/17 23:08
:SH903i
:r2FaV5hA
#357 [蜜月◆oycAM.aIfI]
でもハナは、親戚から褒められることよりも父と母の愛情を欲していたのだ。
両親がハナよりもあたしに多くの愛を注いでいたとは思わない。
けれどハナにはそう思えてしまったのか。
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:08/05/18 22:09
:SH903i
:eMAjbdcw
#358 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「家族四人でいても、真ん中にはいつもユキがいた。あたしが何か言っても、すぐユキの話になっちゃうでしょ?
お父さんもお母さんもユキの話に夢中だったしあたしの話なんていつも聞いてくれなかった。
あたしがテストで毎回百点とるより、ユキがとった一回の八十点の方がお母さんは喜んでた」
ハナの微笑みは消えない。でもあたしの顔は崩れる一方だった。
呼吸はさらに激しくなり、胸の上下運動は速度を増していく。
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:08/05/18 22:10
:SH903i
:eMAjbdcw
#359 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「あの人にここへ連れてこられるまで気付かなかったの……あたしはあの家にいても独りぼっちだった。誰も必要としてくれなかった」
――違う、そんなことない!
そう言おうとしたけどあたしの声は出なかった。寒さと痛みで唇が動かない。
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:08/05/19 23:06
:SH903i
:t3uEDHYM
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