よすが
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#636 [○○&◆.x/9qDRof2]
私は死んでしまった。だけど、夢くらいは見ても罰は当たらないだろう。
希望くらいは持っても、神様は許してくれるだろう。母の隣を歩いて、やがてある建物に着いた。ここは、

「病院?」

 白に統一された建物を見て、私の気持ちは高鳴った。落ち着け、私。まだ早い。答えは母について行けばわかるだろう。施設に入ると、内部を一瞥してから母は受付を済ました。

⏰:22/10/25 18:04 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#637 [○○&◆.x/9qDRof2]
エレベーターで三階に上がると、廊下を通り抜けてある病室の前で立ち止まる。母がドアを開ければ、中は個室になっていた。室内を見た私は、目を丸くした。

「なんで?」

そこには、病室のベッドに身を埋めて眠る私の姿があった。口元には呼吸を助けるためなのか、規則正しい音を出す機械が伸びている。呆然とする私の前で、母はせっせと世話をし始めた。花瓶の水を変えている母を眺めていたら、ふと我に返る。即座に病室の前の名札を見に行けば、桜井千恵と書かれていた。

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#638 [○○&◆.x/9qDRof2]
間違いない、私だ。もう一度目を向けると、ベッドの上の私は眠るように胸を上下させていた。予想は当たっていた?私は死んでなかった?夢を見ているのではないか。喜びと同時に疑問も溢れた。母や父が元気になった理由は頷ける。

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#639 [○○&◆.x/9qDRof2]
 しかし、私の葬式は確かにあった。ならば、いつ私は生き返ったのだろうか。いやそれより、何故私は肉体に戻れないのだろうか。これは意識不明の昏睡状態というものか。それとも植物状態というものか。それより問題は身体に戻れないこと。私が何度試しても、映画のように魂が肉体に戻ることはなかった。

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#640 [○○&◆.x/9qDRof2]
これじゃ…生き返ったなんて言えない。肉体は生き返っても、私の心はこうして死んだままだ。でも、悲しくはない。ようやく希望が見えた。生きているとわかったその時から、私の心の中心はある感情に支配されていた。あの時、奥深くに封印したはずの想いが、いつの間にか溢れ出していた。

.......孝。

⏰:22/10/25 18:05 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#641 [○○&◆.x/9qDRof2]
この数日、孝は悲しんでいただけかも知れないけど、私は変わったと思う。孝には悪いけど、私はもう止まれない。例え希望が断たれても、私は突き進むと決めた。私には、まだやり残したことがある。孝の気持ちを聞いていない。盗み聞きはよくないと思うが、今じゃなきゃ出来ないのも事実だ。私はまた走っていた。

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#642 [○○&◆.x/9qDRof2]
学校に行ってみたが今日は孝はいなかった。ならばと家まで押しかけたが生憎の不在。次に所に向かっていた。脱力感は最高潮に達する。もしあそこにいなかったら、私はしばらく動けなくなるに違いない。一歩進む度に孝に近付いているのだろうか。私は鎖が巻き付いたような重い足を踏み出しながら、歩を進める。

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#643 [○○&◆.x/9qDRof2]
やがて足は動かなくなり、そして完全に停止した。

「も…動けない」

膝に手をつきながら顔を上げる。

「けど…間に合った…!」

正面にはあの公園。そしてベンチには大嫌いだった男。私は微笑みながら足を引きずって隣に座った。

「あんたさぁ…いい加減にしてよね。死んでからも私をいじめる気?」

⏰:22/10/25 18:05 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#644 [○○&◆.x/9qDRof2]
笑ってみせるが、やけに清々しい。孝は静かに正面を見据えつつ、足を組んでいる。馬鹿馬鹿しい。私がこんなに一生懸命なるなんて、生きてた時は思ってもいなかった。だが、悪い気分ではない。

「今日はいつもみたいに退かないからね。答えを聞くまで、粘るよ」

ベンチに身を委ねて空を仰げば、隣から声が響く。

「…不思議な気分だ」
「…え?」
「千恵がいなくなってから、たまに千恵を近くに感じる時がある…」

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#645 [○○&◆.x/9qDRof2]
屋上や公園でのことだろうか。

「…今も」
「…うん」

しばらく沈黙が続く。
小さく息を吐いて次の言葉を待った。

「なぁ…」

私は孝を横目でみる。孝は相変わらず同じ姿勢を保っている。今日はやけに独り言が多いなぁ。いつもより饒舌ではないか。少し黙った孝に私は視線を送り続けた。

⏰:22/10/25 18:06 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


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