よすが
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#80 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「ユキちゃんが転校してくることが決まった時、お父様とお母様から説明を受けたの。九ヶ月ほど入院していて、それまでの記憶が一切無い、って」
言われてみて納得した。
記憶喪失の生徒を、何も聞かずに受け入れる学校などないだろう。
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:08/04/06 00:37
:SH903i
:Q83A9i1s
#81 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「お医者様からは、後々記憶が戻ることがあるかもしれないと言われたそうなの。
ご両親は、ユキちゃんの記憶が戻ることを望んではいなかったようだけど……。思い出してしまうと、ユキちゃんはきっと自分を責めてしまうから。そうおっしゃったの」
――あたしが自分を責める?
あたし……あたしは、何をしてしまったの?
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:08/04/06 00:38
:SH903i
:Q83A9i1s
#82 [蜜月◆oycAM.aIfI]
椅子に座っているはずなのに、あたしの視界がグラグラと揺れ出した。
あたしは被害者だと、今の今までそう思っていたけれど……。
それは間違いだったのだろうか。
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:08/04/06 00:38
:SH903i
:Q83A9i1s
#83 [蜜月◆oycAM.aIfI]
気が付くと、あたしは両手で顔を覆ったままテーブルに伏せていた。
手の平を映しているはずのあたしの目は、しかし、何も見えていなかった。
手の甲に触れている机の表面が、なぜかとても冷たく感じる。
混乱と不安と疑問が押し寄せ、溺れてしまいそうだ。
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:08/04/06 03:15
:SH903i
:Q83A9i1s
#84 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしが溺れまいと感情の波の中であがいていると、何か温かいものがあたしの手に触れた。
「大丈夫? しっかりしてよ。ユキは何にも悪いことしてないよ、絶対」
サトルの手だった。
:08/04/06 03:16
:SH903i
:Q83A9i1s
#85 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしの両手を掴んで、顔を上げさせる。
真っ直ぐで澱みのない彼の瞳があたしの目を射る。それに堪えられず、あたしは視線を逸らしてしまった。
「でも……」
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:08/04/06 03:17
:SH903i
:Q83A9i1s
#86 [蜜月◆oycAM.aIfI]
自分で自分が解らないということは、こういうことなのだ。
今初めて気付いた。
もしかしたら、あたしが記憶を無くした八年間の中で、誰かを傷つけていたかもしれないのだ。
急に自分が怖くなった。
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:08/04/06 23:27
:SH903i
:Q83A9i1s
#87 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「大丈夫だよ! ユキは間違ったことなんか絶対しないもん!」
「サトル……」
視界が歪み、ぼやける。
あたしの目に、じわじわと涙が溜まっていた。
自分で自分を信じることさえ出来ないあたしを、サトルはまるごと信じてくれているのだ。
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:08/04/06 23:27
:SH903i
:Q83A9i1s
#88 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「ユキちゃん。あなたのお母様とお父様は、ユキちゃんは優し過ぎるから自分を責めてしまう、っておっしゃったのよ」
先生は、サトルが掴んでいるあたしの手の上に、自分の手を置いた。
――温かい……。
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:08/04/06 23:28
:SH903i
:Q83A9i1s
#89 [蜜月◆oycAM.aIfI]
先生の優しさが形になって、あたしの手を包み込んでいるようだった。
「ユキちゃん、よく聞いてね。いい?」
いつの間にか、あたしの腕を掴んでいたサトルの手は離れ、あたしは両手を握られながら先生と向かい合う形になっていた。
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:08/04/06 23:29
:SH903i
:Q83A9i1s
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