よすが
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#119 [蜜月◆oycAM.aIfI]
―V―
次の日、あたしたちは約束通り街にある図書館に来た。
さすが大都市の市立図書館だけあって、建物は古いけれど大きくて立派だ。入り口を抜けてすぐの大階段などは、古い映画に出てきそうな雰囲気を持っている。
もちろん、書物の量もかなりのものである。
ここなら、昔の新聞なんかも閲覧出来るはずだ。
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:08/04/09 01:05
:SH903i
:APNEtQ/Q
#120 [蜜月◆oycAM.aIfI]
十年前の新聞に、八歳の女の子が大怪我を負って意識不明になった、という記事があれば、きっとあたしのことだ。
「サトル、ここからここまで探して。あたしこっち探すから」
「はーい」
ちゃんと解ってるのかな、と不安になりつつ、新聞を一枚一枚めくって文字を眼で追う。
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:08/04/09 01:06
:SH903i
:APNEtQ/Q
#121 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしと妹の事件が新聞に載っているという確信は無いけれど、確率は高いと思っていた。
――何か……些細なことでもいいから手がかりが見つかりますように……。
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:08/04/09 01:10
:SH903i
:APNEtQ/Q
#122 [蜜月◆oycAM.aIfI]
何十枚、何百枚と新聞をめくったけれど、あたしが探している記事はどこにも見当たらなかった。
ふと腕につけている時計を見ると、針は三時過ぎを指していた。
昼過ぎに食事を取りに出た以外は、休憩もせずに探し続けていた。
――見逃してしまったかな、それともそんな記事無いのかも……。
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:08/04/09 01:12
:SH903i
:APNEtQ/Q
#123 [蜜月◆oycAM.aIfI]
そんな考えが頭をよぎり、一定のペースで新聞をめくっていたあたしの手が止まる。
サトルはと言えば、文句ひとつ言わず、あたしと同じくらい真剣な目で探してくれている。
あたしが感謝の眼差しで見ていると、そのサトルの目が新聞の一点に止まった。
「……あったよ」
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:08/04/09 01:13
:SH903i
:APNEtQ/Q
#124 [蜜月◆oycAM.aIfI]
サトルは新聞から目を離すこと無く、小声でそう呟いた。
あたしは慌ててサトルの見ていた新聞を覗き込んだ。
〈K市T町で姉妹である女児二人が行方不明になっていた事件で、姉の女児(8)が自宅近くのT山の山道で発見、保護された。発見時女児は意識不明の重体で県内の病院に搬送された。怪我の状態から、警察は誘拐事件として捜査、妹の捜索を進めている。……〉
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:08/04/09 17:01
:SH903i
:APNEtQ/Q
#125 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「誘拐……」
体の力が抜けていくのを感じ、あたしは崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んでしまった。
――ゆう……かい?
あたしが? あたしと妹が?
――妹は……どうなったの?
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:08/04/09 17:03
:SH903i
:APNEtQ/Q
#126 [蜜月◆oycAM.aIfI]
――どうしてあたしだけ、ここにいるの?
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:08/04/09 17:04
:SH903i
:APNEtQ/Q
#127 [蜜月◆oycAM.aIfI]
サトルが、立ち上がれないあたしを抱えて近くの椅子に座らせてくれる。
頭の中が真っ白になっていた。
あたしと妹が一緒に誘拐されて、あたしだけが瀕死の状態で保護された。
つまり妹は……もう、生きていないだろう。
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:08/04/09 17:05
:SH903i
:APNEtQ/Q
#128 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしの記憶の中に妹の存在は一切無いけれど、それでもあたしに妹がいたのは間違いないのだ。
その妹が、家族の元に戻ることもなく、あたしには存在さえ忘れ去られて……。
あたしの頭の中に両親の顔が浮かんだ。
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:08/04/09 17:06
:SH903i
:APNEtQ/Q
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