よすが
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#13 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そしてあたしは、落としてしまった自分の八年間を、あたしの頭の中に閉じ込められた記憶を、探し出す。そう決心した。



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⏰:08/04/03 00:24 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#14 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

屋上で冷たい風に吹かれながら、十年前のことを考えてみる。

病院で目を覚ました時、あたしの頭や腕には包帯がぐるぐるに巻かれていた。
父と母はその体を抱きしめながら、あたしの名前を呼んでいた。

「ユキ、ユキ! ああ、良かった……ユキ」

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⏰:08/04/03 00:25 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#15 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
それが一番古い記憶。
何度頭を痛めても、やはりそれ以前のことは思い出せない。

しかし八歳のあたしは、意識が戻ってもすぐには退院出来なかった。
体の傷がかなりひどかったらしく、目を覚ますまでにかなり回復していたけれど、それでもその後三ヶ月は治療が続いた。

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⏰:08/04/03 00:26 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#16 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
病院では、いつも父か母が一緒にいてくれた。
一度、偶然二人とも傍にいない時に、他の入院患者に聞いてみたことがある。

「あたし、いつからここにいるの?」

「半年くらい前からかしらね。あなたのお父さんとお母さんは、その間毎日来てらっしゃったのよ。感謝しなくちゃね」

同じ病室のおばさんは、穏やかな笑顔でそう教えてくれた。


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⏰:08/04/03 00:31 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#17 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

傷が治って退院した後、あたしは新しい学校に転入した。
そもそも、前の学校のことも友達のことも何も覚えていないのだから、あたしにとっては同じことだった。

後になって父から聞いたのだが、あたしたちはもともと田舎の方に住んでいたらしい。
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⏰:08/04/03 00:34 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#18 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
父も母も、あたしの記憶が無い頃の話を未だにしようとしないが、その話をした時の父はひどく酔っていた。
田舎から、同じ県内の中心部であるこの街に引っ越して来たのだと言ったきり、父は黙ってしまった。

その時あたしは、父が普段なら絶対に口にしない過去の話をしたことと、いつもとは違う父の雰囲気に驚き、何も言えなかった。

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⏰:08/04/03 00:34 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#19 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
それからは元通り、父も母も過去の話には触れなかった。


転校してからは特に不自由なこともなく、中学に上がり、受験戦争を乗り越え高校に入学、と普通の毎日を過ごしてきた。

両親が望んだ通り、普通の生活。

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⏰:08/04/03 00:36 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#20 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

あたしは今、その普通から飛び出そうとしているのかもしれない。
自分の記憶を取り戻すことによって、今の普通で幸せな生活が壊れてしまうかもしれない。
そうなった時、あたしはどうすればいいのだろうか。

――怖い。

傷だらけになり記憶をなくした幼い自分が蘇る。またあんな風になってしまうのか……。

恐怖、その感情があたしを支配しそうになる。
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⏰:08/04/03 00:38 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#21 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
けれど、あたしは過去を受け入れる。そう決めたのだ。
ぎゅっと目をつむり、恐怖を向こう側へ押しやる。

しかし、父と母にはもう心配をかけたくなかった。悲しませたくなかった。
何があったのか、二人には聞けない。

でも、他に手掛かりは無い。

――あたしの過去に続く道は何処……?


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⏰:08/04/03 00:39 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


#22 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

騒がしい声が聞こえてきて、思考を中断させられた。
屋上を囲っている柵越しに校庭を見下ろすと、家に帰ろうとする者や部活の準備をしている生徒が大勢歩いている。

とりあえず家に帰ろうと教室に戻ると、一人の男子生徒があたしを待っていた。

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⏰:08/04/03 00:42 📱:SH903i 🆔:RM1EQ/SI


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