よすが
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#270 [骸]
これとってもおもしろいです
ホントに
とっても気に入りましだ゙
応援してるんで頑張ってくださいx

⏰:08/04/28 00:10 📱:auST34 🆔:BWSWOahM


#271 [蜜月◆oycAM.aIfI]

>>270 骸さん

読んで下さってありがとうございます(´∀`)
気に入っていただけたようで…光栄ですっ!

感想板もありますので、もしよければそっちにもコメント下さると励みになります(^ω^)

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3515/

⏰:08/04/28 02:10 📱:SH903i 🆔:FeLxLigk


#272 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
―Y―


目を覚ますとあたしは、真っ暗な闇の中で温かい毛布のようなものに包(くる)まれていた。
今度は何も見えない。自分の体も身を包む毛布も見当たらないこと、そして顔に感じる空気が冷たいことで、あたしは現実に戻ってきたんだと実感した。

まず、ハナの遺体を見つけてあげなきゃと思った。夢の中の幼いあたしが言っていたように、ハナはあたしが迎えに行くのを待っているに違いない。
警察がどこまで捜したのか解らないけれど、あたしが探さなければハナは見つからないような気がする。
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⏰:08/04/28 23:57 📱:SH903i 🆔:FeLxLigk


#273 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
体を動かそうとすると、頭と両目に鈍い痛みを感じた。目から耳の上までの皮膚が突っ張る。
泣いていたからだろう。
どうにか起き上がろうと毛布をめくってみたけれど、頭の痛みが酷かったし体が芯まで冷えていてうまく動かせなかったので諦めた。
落ちた毛布をもう一度しっかりと体に巻き付けて体を休める。

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⏰:08/04/28 23:57 📱:SH903i 🆔:FeLxLigk


#274 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
懐かしい夢を見た。長い長い夢を。
あたしは忘れていた全てを思い出した。

幼いあたしが教えてくれたこと。
全部思い出せる。
ハナとサトル。そして幼いあたし。
あたしは全てをあたしの元に取り戻した。

それを思うと体が震えた。喜び。そして、恐怖。

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⏰:08/04/28 23:58 📱:SH903i 🆔:FeLxLigk


#275 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
幼いあたしは、一番古い記憶から新しい記憶へとあたしを導いてくれた。
父。母。ハナ。サトル。
そして最後に蘇った記憶……あの事件。
恐ろしく、悲しいものだった。

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⏰:08/04/29 23:06 📱:SH903i 🆔:KV.55ENY


#276 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
しかし、あたしはそれ以上に幸せな記憶を手に入れた。
家族と大事な友達と過ごした幸せな日々。
それがあるからか、当時は恐ろしいだけでしかなかったあの事件に記憶を巡らせてもあたしの心に現れるのは恐怖だけではなかった。

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⏰:08/04/29 23:07 📱:SH903i 🆔:KV.55ENY


#277 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしたち一家を苦しめた事件の始まりは、ある男の身に起きた悲しい事故だった。
夢の中であたしの手を引いて歩いていたあの大柄な男。

男は十年前の冬のある日、あたしとハナが近所の公園で遊んでいるところにやって来て、言葉巧みにあたしたちを誘拐した。
見たこともなかったその男はとても優しくて、まさかその人があたしたちを誘拐しようとしているとは思わなかった。
けれどその時ハナは、あたしの袖を引っ張ってしかめた顔をこちらに向けていたような気がする。
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⏰:08/04/29 23:08 📱:SH903i 🆔:KV.55ENY


#278 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
――あの時ハナの言うことを聞いていれば……。
ハナが死ぬことも無かったのに。

しかしあたしはハナの無言の制止を無視して、男の車に乗ってしまった。ハナを連れて。

男が運転する白い乗用車は、山の中腹にある人気(ひとけ)のない駐車場で停まった。
そこであたしは初めて恐怖を覚えた。
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⏰:08/04/29 23:09 📱:SH903i 🆔:KV.55ENY


#279 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男がいきなりあたしを殴ったのだ。
男は運転席から体をひねり、後部座席にいたあたしの頬を平手で打った。次に拳で頭の右側を殴られた。あたしはその二発ですでに意識を失いかけていた。
しかし、ハナが心配だった。それだけがあたしの意識を繋ぎとめていたように思う。
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⏰:08/04/29 23:09 📱:SH903i 🆔:KV.55ENY


#280 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
しかし驚きと恐怖であたしの体は固まってしまった。それを見て男は満足したのか、その時の暴力は二発で終わった。
そして男はあたしの隣にいたハナの頭に手を伸ばした。

殴られる!
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⏰:08/04/30 20:17 📱:SH903i 🆔:xkpfSZAU


#281 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そう思ったのもつかの間、シートの間から伸びた男の手はハナの髪を優しく撫でた。
男の顔にはあたしを殴っていた時の凶暴さなど微塵もなく、ただ愛しそうにハナを撫でていた。
そして車を降り、ハナは男に抱かれあたしは無理矢理手を引っぱられ、山の中へ連れて行かれた。
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⏰:08/04/30 20:18 📱:SH903i 🆔:xkpfSZAU


#282 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その時は訳がわからなかった。それがまだ誘拐だと思っていなかったあたしは、何か男の気に障るようなことをしてしまったんだと思った。

しかしそうではない。今ならわかる。
男はハナに自分の娘を重ねて見ていたのだ。

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⏰:08/04/30 20:18 📱:SH903i 🆔:xkpfSZAU


#283 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男はあたしとハナを掠う少し前に、妻と娘を事故で亡くしていた。
十数年前に結婚し、あたしたちが住んでいた町から少し離れた別の街で暮らし、娘を授かった。
男は幸せだったという。愛する妻と可愛い娘と三人で、何の不満もない生活を送っていた。
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⏰:08/04/30 20:19 📱:SH903i 🆔:xkpfSZAU


#284 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
しかし絶望は突然訪れる。
酔っ払いが運転する車が買い物帰りの妻と娘を轢き、逃げた。
人通りの少ない道だったのが災いし、発見された時には二人とも息絶えていた。
男は自分よりも大切な家族を一度に失ったのだ。

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⏰:08/04/30 20:20 📱:SH903i 🆔:xkpfSZAU


#285 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男とあたしとハナは山道を登っていたが、その途中であたしは転んでしまう。
あの山道で取り戻したわずかな記憶。あれはこの時のものだった。

しかしその日通ったのは、あたしとサトルが歩いた道とは別のルートだった。もっと緩やかで歩きやすい道だったはずだ。
しかし同じ山だからだろうか、道を挟む森が発する雰囲気はほとんど変わらない。
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⏰:08/04/30 20:20 📱:SH903i 🆔:xkpfSZAU


#286 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナを抱きかかえた男に後ろからせっつかれながら、あたしは山道を登っているところだった。
あたしはつまずき、地面に身を屈めてうずくまった。地面を撫でながら。
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⏰:08/04/30 23:58 📱:SH903i 🆔:xkpfSZAU


#287 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは男が怖かった。
山道ではハナを抱えていたので、あたしに手を出せないと思ったのだ。そのための時間稼ぎと言うべきか。
この道の先にたどり着いた時何をされるのか不安でたまらなかった。
だからあたしは後ろに近づく男の様子を伺いながら、男からの暴行を少しでも先延ばしにしようとした。
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⏰:08/04/30 23:58 📱:SH903i 🆔:xkpfSZAU


#288 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
しかしあたしの目論みはあっけなく幕を閉じる。
男はハナを両手で抱きかかえたまま、うずくまったあたしの側頭部を蹴り付けたのだ。
あたしの体は痛みに耐え切れず土の上に崩れ落ちた。

頭の中で痛みと恐怖と後悔が渦巻き、あたしの目からはポロポロと涙がこぼれ落ちていた。
男はそれに構わず、抱えていたハナを下ろして動けなくなったあたしを乱暴に抱き上げた。
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⏰:08/04/30 23:59 📱:SH903i 🆔:xkpfSZAU


#289 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その時、一瞬ハナと目が合った。
あたしのせいでこんな目に合わされたハナが、あたしをどんな気持ちで見ているのか気になった。
けれどあたしはすぐに目を逸らしてしまった。とてつもない罪悪感がそうさせたのだ。

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⏰:08/05/01 19:31 📱:SH903i 🆔:gckU4PYk


#290 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
今度はあたしが抱えられハナが男に手を引かれて、再び山道を登り出した。
その先で、あたしとサトルが発見したのと同じようにコンクリートの建物を発見する。
そしてあたしとハナはコンクリートの箱に監禁されることになる。
もしかすると男はそれがあることを知っていて連れてきたのかもしれないが、それは解らない。
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⏰:08/05/01 19:33 📱:SH903i 🆔:gckU4PYk


#291 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
コンクリートの建物の中には、何も無かった。ただコンクリートの壁が床と天井と四方を囲っているのみ。
照明器具もなく、あたしとサトルが確認したように窓もない為真っ暗だった。
ただでさえ怯えていたあたしとハナは、そのせいで余計に心細さを感じた。
その上、あたしが予想した通り内部はかなり寒かった。暖房などあるわけもなく、真冬の空気はコンクリートをしっとりと、しかし確実に冷やしていた。
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⏰:08/05/01 19:33 📱:SH903i 🆔:gckU4PYk


#292 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
次の日、男は厚手の毛布と電池式の懐中電灯を三つほど用意してきてそれをあたしとハナに与えた。

あたしたちは閉じ込められている間、真っ暗な闇の中で毛布を体に巻き付け懐中電灯を点し、恐怖と寒さをやり過ごした。
それでも抑え切れず、二人で抱き合って泣いたこともあった。

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⏰:08/05/01 19:34 📱:SH903i 🆔:gckU4PYk


#293 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしが男から解放されたのは、確か二週間ほど過ぎた頃だった。
その時まで、ほとんどの時間をあたしとハナはコンクリートの箱の中で過ごした。
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⏰:08/05/03 21:44 📱:SH903i 🆔:wLA6FCfI


#294 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男がそこに来た時だけ、あたしたちは外に出ることを許された。
男は大概昼前に来て、外側にくくりつけた南京錠を外しドアを開ける。
そして昼食を与え、外に出てあたしたちが食べ終えるのを待つ。
しばらくすると再びドアが開き、あたしかハナのどちらかを選んで連れてゆく。

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⏰:08/05/03 21:45 📱:SH903i 🆔:wLA6FCfI


#295 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男は正気を失っていた。
あたしとハナのことを“ユウコ”と呼ぶのだ。死んだ娘の名前だった。

外に連れ出したあたしやハナをそう呼び、まるで本当の娘であるかのように接する。
そして自分の妻のことや家族三人の思い出を、いつもあたしたちに語りかけた。そうしている間はとても優しかった。
あたしもハナもそれに相槌を打ち話を合わせ、彼の娘のように振る舞った。そうしなければ、後に待ち受ける仕打ちが恐ろしかったのだ。
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⏰:08/05/03 21:47 📱:SH903i 🆔:wLA6FCfI


#296 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
しかし長くは続かない。
必死に頭を巡らせ男の望む返答をしようとするが、どうしてもわからないこともある。
男が問いかけてくることに、娘でないあたしたちは答えられないのだから。
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⏰:08/05/03 21:49 📱:SH903i 🆔:wLA6FCfI


#297 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしたちが返事に困って黙り込んだり男の記憶と食い違ったりすると、男は豹変する。優しかった微笑みは恐ろしい顔に変わり、目を剥いて怒鳴り始める。

「お前……オレを騙したのか! ユウコをどこにやった! オレのユウコを返せ!」
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⏰:08/05/03 21:50 📱:SH903i 🆔:wLA6FCfI


#298 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そんなことを叫びながら、あたしやハナを痛めつけるのだ。
頬をはたかれ、首を締められ、頭を殴られ、地面に倒される。
腹を蹴られ、足を掴んで引きずられ、背中を踏み付けられる。

あたしは怖くてどうしたらいいのかわからなくて、謝り続けていたように思う。

「ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
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⏰:08/05/05 00:11 📱:SH903i 🆔:Nqg5T9kk


#299 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
すると男はある瞬間、パタリと動きを止める。
そしてまた豹変するのだ。

「あ、あ、ああ……すまない、大丈夫か? 本当にすまない、悪かった……」

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⏰:08/05/05 00:11 📱:SH903i 🆔:Nqg5T9kk


#300 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男は正気を取り戻す。我に返ってあたしを抱きしめた。
その時にはもう、男にとってあたしやハナは娘ではなく、衝動的に掠ってしまった見知らぬ女の子なのだ。

自分がした恐ろしい行いを詫び、コンクリートの箱に連れ帰って傷を手当てされた。
包帯を巻いたり消毒液を塗ったりしながら、男は自分に起きた不幸や誘拐の理由を語る。


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⏰:08/05/05 00:12 📱:SH903i 🆔:Nqg5T9kk


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