よすが
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#260 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「もう、全部、思い出したでしょ?」
――うん。思い出した。
“あたし”は幼いあたしの言葉通り、八年間の全てを取り戻した。
まるでこの繋いだ両手を伝わって、幼いあたしが大切に守っていた記憶が“あたし”に流れ込んでくるようだ。激しい勢いをもって、一気に。
頭の中に、鮮明に蘇る過去の記憶。流れるように八年分の断片が通り過ぎてゆく。
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#261 [蜜月◆oycAM.aIfI]
でも本当は“あたし”はその全てを知っていたんだ。
涙がやんで渇いた目を閉じると、さらにはっきりくっきりと思い出せる。
ひとつひとつ、全て大切な思い出。長い間忘れてしまっていた宝物。
再び涙が溢れる。閉じた瞼の隙間からとめどなく流れてゆく。
“あたし”はそれを拭うこともせず、ひたすら記憶を巡らせる。
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:08/04/27 23:23
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#262 [蜜月◆oycAM.aIfI]
産まれたてのあたしを抱く母の手……父の背中……母の優しい笑顔……父の腕の温もり……
あの町の景色……いつもの散歩道……懐かしいあたしたちの家……家族が集まるリビング……母の手伝いをしたキッチン……あたしたちの子供部屋……
その頃の幸せな気持ちも一緒に蘇る。涙が止まらない。
記憶に浸っている“あたし”の手を握りしめたまま、幼いあたしが語りかける。
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:08/04/27 23:24
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#263 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「サトルとハナが待ってる。もう目を覚まさなきゃ」
その言葉がきっかけだったかのように、さらに記憶と涙が溢れ出てくる。
幼いサトル……大好きな幼馴染み……幼いハナ……あたしのかわいい妹……
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:08/04/27 23:24
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#264 [蜜月◆oycAM.aIfI]
――そうだ。ハナ。ハナ。あたしのかわいい妹。ハナ。まだ歩けないのにいつもはいはいであたしの後をついてきたハナ。
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#265 [蜜月◆oycAM.aIfI]
――それに、サトル。知ってたんだ。引っ越した街で出会ったんじゃない。サトル。大好きな幼馴染み。産まれた時から知ってた。サトル。
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#266 [蜜月◆oycAM.aIfI]
閉じ込めていた記憶の中の二人の姿を頭に映し、“あたし”は夢の世界を終わらせて二人の元へ還ろうとする。
目を閉じたまま、ハナとサトルのことを強く想う。
“あたし”の両手に感じていた幼いあたしの小さな手の平の感触が消えてゆく。
――ありがとう、あたし。
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#267 [蜜月◆oycAM.aIfI]
やっと巡り逢えた過去のあたしとの時間は、今終わりを迎えた。
でも寂しくはない。あたしの体の中で記憶として彼女は生き続けるから。
目を閉じていても眩しかった白い光も、だんだんと薄れてゆく。
小さな点になった光がやがて消え去ると、再びあたしのまぶたの裏は闇に支配された。
――ハナ……サトル……
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:08/04/27 23:27
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#268 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/04/27 23:33
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#269 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/04/27 23:34
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