よすが
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#402 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「見ればわかるから、ほら、手貸して?」
あたしの額から剥がした手でそのままあたしの腕を掴み、立たせようと体を支えてくれるサトル。
あたしは言われるがままに毛布から這い出してサトルの手に体重をかけた。
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:08/05/26 01:51
:SH903i
:190zu.A6
#403 [蜜月◆oycAM.aIfI]
しかしまだ熱は下がり切っていなかったらしく、立ち上がった瞬間めまいに襲われた。
視界が真っ白になり立っていられなくなったあたしの体を、すんでのところでサトルの腕が支えてくれた。
「ユキ! 無理なら無理って言ってよ! フラフラじゃないか!」
「本当に大丈夫だから、急に立ち上がったからくらくらしただけだよ」
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:08/05/26 01:52
:SH903i
:190zu.A6
#404 [蜜月◆oycAM.aIfI]
それでもサトルは心配なのか少し怒りながらあたしを寝かせようとしたけれど、なんとかなだめすかして外に出ることになった。
あたしは自分がどのくらい寝ていたのか全くわかっていなかったので今の時間がどのくらいなのか見当もついていなかった。
あたしが布団の横に置かれていた自分のバッグを肩にかけると、サトルもレモンキャンディの入ったリュックを背負ってドアに手を伸ばす。
そこであたしは自分の異変に気がついた。
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:08/05/26 01:52
:SH903i
:190zu.A6
#405 [蜜月◆oycAM.aIfI]
服が違う。
家を出た時も、もちろん山を登っている時も、あたしは普段から着慣れたフリースパーカーとジーンズを身につけていた。
パーカーの下にはTシャツとトレーナーを着込んでいたはずだ。
しかし今着ているのは、どう見てもジャージである。いや、良くは見えていないけれど、この感触からすると間違いない。
上半身はジャージの下にTシャツらしきものを着せられているようだ。
――なんで……まさか?
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:08/05/26 01:53
:SH903i
:190zu.A6
#406 [蜜月◆oycAM.aIfI]
サトルがあたしにこれを着せたのだろうか?
恋愛感情を持たないからといってもそうなると別問題で、あたしは一瞬にして顔に血が昇ったように感じた。
「ちょ、ねぇ、サトル、この服……あたしの服、脱がせた?」
目の前にあったサトルの背を軽く叩いてこちらを向かせた。
しかしサトルの顔を見ることが出来なくてあたしは俯く。
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:08/05/26 01:54
:SH903i
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#407 [蜜月◆oycAM.aIfI]
そんな気持ちに気付いているのかいないのか、サトルは気の抜けた声で答えた。
「へ? ……あぁ、ジャージ? 貸してもらったんだよ。着替えまでしてもらっちゃって、ちゃんとお礼言わないとね」
「借りた……って誰に?」
「だから、会えばわかるから!」
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:08/05/26 01:55
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#408 [蜜月◆oycAM.aIfI]
そう言って、さっきまでしてくれていたあたしの体の心配はどこへやら、腕を掴まれて外へと連れ出された。
鉄製の錆びたドアがサトルの手で開かれると、外は一面闇だった。
腕を引かれて外に足を踏み出すと、そこは確かにあの場所だった。
今日の夕方サトルと見ていたコンクリートの箱、そして十年前ユキと共に監禁されていたその場所に違いなかった。
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:08/05/26 01:55
:SH903i
:190zu.A6
#409 [蜜月◆oycAM.aIfI]
あたしは掴まれていない方の手でサトルの服の裾をギュッと掴んだ。
それに気付いたサトルがその手を優しく握ってくれる。
「安心して、僕を信じて?」
サトルが俯き気味のあたしの顔を覗き込みながらそう囁いた。
あたしの瞳に差し込まれたサトルの視線には、不安など一切無く、むしろ喜びとか楽しさとかそういったものが込められていた。
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:08/05/26 01:56
:SH903i
:190zu.A6
#410 [蜜月◆oycAM.aIfI]
もちろんあたしはサトルを信じている。信じない理由がない。
だからあたしはサトルに引かれるまま足を進めた。
サトルはコンクリートの箱を取り囲む木々の間に開いたわずかな隙間に体をねじこんでゆく。
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:08/05/26 01:57
:SH903i
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#411 [蜜月◆oycAM.aIfI]
夕方の薄暗さとは比べ物にならないくらい真っ黒な闇が辺りを満たしていた。弱々しい月の光がかろうじて数歩先までの景色を瞳に映す。
電灯のひとつもなく、あたしは赤い上着を着たサトルの背中を見失わないようにとそれだけに集中して木々の間を縫い歩んでゆく。
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:08/05/26 01:57
:SH903i
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