よすが
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#47 [蜜月◆oycAM.aIfI]
―U―
次の日、全ての授業が終わると、あたしは走って屋上に向かった。
昨日の夜は、あの女の子の夢を見なかった。
もしかしたら、夢が何か過去につながるヒントを示してくれるかもしれないと期待していたけれど、現実はそう上手くいかないものだ。
屋上に来たのは、自分を戒めるため。
最初に過去と向き合うと決めた場所に来れば、心を強く持てると思ったから。
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:08/04/03 16:48
:SH903i
:RM1EQ/SI
#48 [蜜月◆oycAM.aIfI]
マフラーもコートも教室に置いてきてしまったから、屋上に出た途端体が震えた。
それでもあたしは足を進め、柵の手前に立った。
あたしが過去を置いてきてしまった、あの町の方を眺めてみる。
――あの女の子は誰? あたしはどうして記憶を閉じ込めたの?
「……絶対に思い出してやる」
一人そう呟いて、あたしは屋上を後にした。
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:08/04/03 16:49
:SH903i
:RM1EQ/SI
#49 [蜜月◆oycAM.aIfI]
教室に戻ると、昨日と同じようにサトルが待っていた。
「ユキ、行こう」
サトルはあたしの心が読めるのだろうか?
なんて、非現実的なことを考えてしまうほど、サトルはいつでもあたしの求めている言葉をくれる。
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:08/04/03 19:51
:SH903i
:RM1EQ/SI
#50 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「ありがとう、サトル。行こう」
サトルは、何故感謝されたのか解らない、という様子で首を傾げている。
そんなサトルの手を引いて、あたしは探している何かがあるはずの場所に向かった。
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:08/04/03 19:52
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:RM1EQ/SI
#51 [蜜月◆oycAM.aIfI]
T小学校に一番近い駅まで、あたしたちは電車で約一時間かけてやってきた。
サトルは終始ニコニコしっぱなしで、中山先生との思い出話をたくさんしてくれた。
駅から小学校まで歩いている今も、早く会いたいのだろう、今にも走り出しそうなくらいだ。
「サトルは中山先生がほんとに好きなんだね」
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:08/04/03 19:53
:SH903i
:RM1EQ/SI
#52 [蜜月◆oycAM.aIfI]
サトルは、あたしがほとんど呆れ気味に発した言葉への返事の代わりに、いきなり走り出した。
「ちょっと、どうしたの?」
慌てて追いかけると、サトルは『T町立T小学校』と書かれた門の前で手を振っている。
――ここが、あたしの通った小学校……?
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:08/04/03 19:53
:SH903i
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#53 [蜜月◆oycAM.aIfI]
見たことがあるはずの建物を前にしても、やはりあたしの頭は何の反応も起こさなかった。
「あれ? あそこにいるの、中山先生だよ! ねえ、ユキ!」
あたしがサトルの立っている場所に近づくと、彼はまた走り出した。
「せんせえーーっ! 中山先生! 久しぶりー!」
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:08/04/03 19:54
:SH903i
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#54 [蜜月◆oycAM.aIfI]
サトルの走っていく先には、花壇の花に水をやる手を止めてこちらを振り返った人物がいた。
白髪混じりの長い髪を頭の後ろでひっつめて、ベージュのロングスカートをはいたふくよかな女性……中山先生だ。
先生はこちらから走ってくるのがサトルだと気付いたのか、手にしていたホースを地面に置いてあたしたちの方に近づいて来た。
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:08/04/03 23:57
:SH903i
:RM1EQ/SI
#55 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「サトルくん……?」
「サトルだよおー! 先生久しぶり! 元気!? ユキも一緒なんだよ、ほら!」
サトルのテンションは最高潮に達してしまったようだった。
身振り手振り全開で、普段から高い声のトーンも一層高くなり、うるさいくらいだ。
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:08/04/03 23:58
:SH903i
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#56 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「中山先生、お久しぶりです」
とあたしがお辞儀すると先生は、驚いた、と言わんばかりにあたしとサトルへ交互に目を向けた。
「サトルくんに、ユキちゃんも……、久しぶりねえ。二人は相変わらず仲良しなのね」
そう言って笑う先生は、昔と変わらず優しい雰囲気をまとっている。
あたしは先生を前にしてなぜか焦ってしまい、普通なら昔の思い出話をしたりするはずなのに、唐突に用件を切り出してしまった。
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:08/04/04 00:06
:SH903i
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