よすが
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#696 [○○&◆.x/9qDRof2]
渋々階段を上がり、父の部屋のドアをドンドン、と叩いた。

「お父さん、ご飯だよ!」

返事はない。今度はドアを開けて呼んだ。なにやら机に向かって読書でもしていたらしい。父は読書家で、部屋には専用に大きな本棚があるのだが、中に入りらない沢山の本が床に積みあげられていた。

⏰:22/10/25 18:29 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#697 [○○&◆.x/9qDRof2]
父が読んでいた本は見覚えのあるコバルトブルーの表紙だった。父もわたしと同じように、読書に夢中になるとまわりが聞こえなくなるのだろう。その時、改めてわたしはこの人の子供なのだと思った。

「お父さん、ご飯出来たってば!」

父はびっくりしたように振り返り、立ち上がった。

⏰:22/10/25 18:29 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#698 [○○&◆.x/9qDRof2]
「.......いま、いくよ」

読みかけのページにボロボロのしおりを挟み本を閉じた。そのしおりはアサガオの押し花で作られていて、わたしがちいさい頃から父はいつもそのしおりを大事そうに使っていた。



「手紙を出してみようと思うんだけど」

⏰:22/10/25 18:30 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#699 [○○&◆.x/9qDRof2]
 あの日の放課後以来、わたしと奥村くんは急激に仲良くなっていた。奥村くんと向かい合って座り、 彼はなにやらわたしの机に落書きをしている。

「永原愛に?」

うん、と頷いた。

「俺も何回か出したことあるよ」
「返事は?」
「くるわけないだろ」

⏰:22/10/25 18:30 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#700 [○○&◆.x/9qDRof2]
チャイムがなり、先生が教室に入ってくると奥村くんは気だるそうに自分の席に戻っていった。机には先程の落書きが残されていた。


“ころされる”


特に気にもとめず、消しゴムで文字を消した。



 永原愛から返事がきたのはその一ヶ月後のことだった。

⏰:22/10/25 18:30 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#701 [○○&◆.x/9qDRof2]
 梨菜さんへ

 心のこもったお手紙ありがとうございます。永原愛です。私は昔樫ノ宮町に住んでいたことがあります。父の日になにか手作りのものをプレゼントをしたいだなんて、仲が良いのですね。私は小学生の頃、庭で育てていた朝顔を押し花にしてしおりを作り父にプレゼントしました。

⏰:22/10/25 18:30 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#702 [○○&◆.x/9qDRof2]
とても喜んでくれたのを覚えています。梨菜さんの気持ちがこもっていれば、お父さんは何を貰っても喜んでくれると思いますよ。

永原愛


 その後、何通かやりとりは続き、奥村くんにはそのことを話さないまま樫ノ宮中学校では夏休みに突入した。

⏰:22/10/25 18:31 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#703 [○○&◆.x/9qDRof2]
その日は夜遅くまで漫画を読んでいたせいか、目が覚めたころには十三時を回っていた。階段を下ると父がリビングのソファーに腰掛け読書をしている。わたしに気がつくと、父は読書を中断し、立ち上がった。

「今日は随分遅いな。お腹空いたろ。ご飯どうする?」
「適当に食べるよ、それよりお父さん今日は仕事休みなの?」

⏰:22/10/25 18:31 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#704 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あぁ、急に休みになったんだ」

きれいに掃除されたテーブルの上には、コバルトブルーの本とボロボロのしおりだけが置かれている。

「ねぇお父さん、私がまだ小学校にあがるまえ勝手にお父さんの部屋にはいった事があったよね。本を積み上げて遊んでいたらその朝顔のしおりを折っちゃって酷く叱られた。普段怒らないお父さんが、あの時はすごく怖かったんだ」

⏰:22/10/25 18:31 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#705 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そんなこともあったかな。覚えていないよ」

窓から生ぬるい風が入ってきて、風鈴が、チリンと涼しげな音をたてた。

「ねえお父さん.......その朝顔のしおり、どうしたの?」

蝉のなきこえがやけに煩く感じた。.......永原愛から手紙が届いた。

⏰:22/10/25 18:31 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


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