馬鹿だらけ(BL)
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#130 [生茶]
「相田、1週間後に部活の合宿があるんだ」
「うん」
俺は俯き加減に返事をした。さっきから、「うん」しか言っていない。それでも吉田は、喋りつづけていた。
横ですすり泣く音が聞こえた。横目で見てみると、吉田の母がハンカチを口に押し当てて涙を流していた。俺の母もそれにつられるようにしてすすり泣く。
「相田、体弱いくせにバスケ部なんて入るからだ」
「…うん」
式が始まってから、相田の遺影が目に入った。とても楽しそうに笑っている。急に、卒業式の日のことを思い出した。俺が写真を撮ろうと相田を呼んだ時の笑顔。
じわじわと悲しみが込み上げてきた。

⏰:08/04/27 14:43 📱:PC 🆔:.LrsNQDo


#131 [生茶]
焼香の時、俺は吉田の隣に並んだ。2人で相田の前に立ち、相田の両親にお辞儀して。相田の遺影を見るたびに、俺は泣きそうになった。
焼香を済ませて、食べ物の並んだ部屋に案内された。しかし、食べ物には手をつけず、俺は吉田と相田の話をしていた。
「ほら」
と、吉田はケータイの画面を俺につきつける。受信メールが開かれていて、そこには、「相田敏」という名前があった。
『俺バスケ部入ったんだ〜!今度合宿あるんだよ。楽しみ〜』
『そういや仲村元気?あいつのことだから、元気なのかな〜馬鹿は風邪引かないって言うし(笑)』
『えっ引っ越したの!?何だよ、教えてくれれば良かったのに!』
俺は受信メールを次々に読んだ。どれも相田らしいメールばかりだった。俺が最後に相田とメールしたのは、多分高校入ってすぐのことだ。話したいことは、山ほどあったのに。

⏰:08/04/27 14:52 📱:PC 🆔:.LrsNQDo


#132 [生茶]
「翔、食べなさいよ」
母さんが俺に言った。けれど俺はケータイの画面にくぎ付けで、後に言われた事はほとんど覚えていない。
「相田、バスケなんて興味あったっけ」
「あいつ体育の授業はバスケとサッカーは張り切ってた」
「そう…」
俺も、自分のケータイを開いて受信箱を開いたけれど、そんなに昔のメールはもう残っていなかった。
「俺、相田ともっとメールしたかった」
ケータイを閉じて震える声で言った。吉田も俯いていた。

⏰:08/04/27 14:58 📱:PC 🆔:.LrsNQDo


#133 [圭]
これリアルで好きあげます

⏰:08/04/27 17:45 📱:913SH 🆔:9e3d8.3Q


#134 [生茶]
○圭さん

ありがとうございます><*
皆さんに気に入られるような小説を書きたいと思っています!

⏰:08/05/01 20:25 📱:PC 🆔:8kkbzJOM


#135 [生茶]
不意に、相田に突然告白されたことを思い出した。
あの時の俺は、色々と勘違いをしていて、相田を傷つけてしまった。俺が冷静でいたなら、もう少し他に方法があったはずだ。
「…謝りたい」
「?」
「俺、相田にもう少し優しくすれば良かった」
「…」
ごめん、ごめん、と何度も心の中で相田に謝った。しかし、心の中にいる相田は、こちらに背を向けていた。

⏰:08/05/01 20:29 📱:PC 🆔:8kkbzJOM


#136 [生茶]
心の中でいくら呼びかけても、相田はこちらを向かない。
小学生の頃、相田と何か大喧嘩をした覚えがある。あの時は相田の方から謝ってきたけど、それまでは俺が呼んでも無視をして他の所に走り去った。今も、相田は俺に背を向けたままどこかへ行こうとしている。いや、もう俺たちの手の届かない場所へ行ってしまった。相田は帰って来ない。
「幽霊になってでもいいから、帰って来てほしいね」
吉田はそう言って、テーブルの上に並んでいる食べ物に手を伸ばした。

⏰:08/05/01 20:33 📱:PC 🆔:8kkbzJOM


#137 [生茶]
「相田が会わせてくれたのかもな」
外へ出て、街灯に集る蛾たちを目で追いながら、吉田が呟いた。
「何で?」
「や、別に何となく言ってみただけ」
「そう…」
幽霊になってでもいいから。せめてもう一度。
「いなくなるってこういうことなんだね」
「?」
俺は今まで、物心ついたあたりからは身内が亡くなったことは無いし、ペットだって飼っていなかった。友達が亡くなるようなことも無かったから、身近な生き物が死ぬということを、あまり体験した事が無かった。

⏰:08/05/04 17:59 📱:PC 🆔:84FyVaTM


#138 [生茶]
俺の目の前を、1匹の蚊がジグザグと飛びながら近寄ってくる。俺の腕にとまった蚊は、躊躇いも無く俺の血を吸い始める。それを俺はただじっと見ていた。
そういえば、俺は今まで何匹の蚊を叩き潰してきただろう。何匹の蟻を踏み潰してきただろう。
血を吸って満腹になった蚊は、よろよろと飛び去って行く。蚊に刺された腕は、徐々に痒みを訴えた。
「幽霊になってでも、いいから…」
「…」
言葉が続けられず、そのまま俺は泣いた。

⏰:08/05/04 18:13 📱:PC 🆔:84FyVaTM


#139 [生茶]
「今夜、吉田さんたち泊めてもいいかな?」
「えっ?」
屋内に入るなり、母さんが俺にそう言った。
「こんなに時間がかかるとは思わなくてね、これじゃ帰るの大変だから、って」
「あぁ、まぁいいけど…」
「祐太くんには吉田さんが今言いに行ったから」
「うん」
吉田と、夜を過ごすことになるとは思わなかった。

⏰:08/05/04 18:20 📱:PC 🆔:84FyVaTM


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