夢の中の私の影
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#101 [紫陽花]
「大体のことはお分かりでしょうが、大切な話とは最近あなたの周りで起こった連続殺人事件のことです」

“連続殺人事件”

ニュースや新聞で何度も聞いてきた言葉だが被害者が自分の友達で、今まさに自分が警察所内に居ると言うことで、その言葉は重みを増しているように思えた。

⏰:08/04/29 22:05 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#102 [紫陽花]
浅田さんは私の目を見ながら、なおも話を続ける。

「殺された里山孝太君、赤崎ひとみさんはあなたと幼稚園からの旧友であると私どもの捜査で分かっています。それはあなたも気付いていますよね?」

⏰:08/04/29 22:06 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#103 [紫陽花]
やっぱり警察も気付いていたか。

「はい……そうですけど……」
浅田さんは続ける。

「ならば話は早い。私たちの調査ではまだ殺人は続くと踏んでいます。そして次の被害者は……」

⏰:08/04/29 22:07 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#104 [紫陽花]
そこで浅田さんは息を吸い込んだ。浅田さんが息をのむ瞬間に次の被害者まで絞り込んでいるなんて凄いなと私は感心していた。






「次の被害者は……柚紀さん、あなたかもしれないんです」

⏰:08/04/29 22:08 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#105 [紫陽花]
「…………は?」

次の被害者が私?

驚きを隠しきれない私をよそに浅田さんは先ほどより、ゆっくりと言葉を発する。

⏰:08/04/29 22:08 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#106 [紫陽花]
「私たちの捜査では殺された二人の共通点は幼稚園から高校まで一緒ということ以外分かっていません。
しかしその手がかりから考えられることは、被害者と同じ共通点をもつあなたが次に狙われる可能性が十分高いということなのです」

⏰:08/04/29 22:10 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#107 [紫陽花]
「ちょ、ちょっと待ってください!!頭がまだ上手く整理できてなくて……」

これ以上話が進む前に浅田さんの言葉を遮る。浅田さんはこれからまだ話があるのにと言いたそうに渋い顔をしたがお構い無しに、今度は私がしゃべる。

⏰:08/04/29 22:10 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#108 [紫陽花]
「今日私をここによんだ理由は私を連続殺人事件の犯人だと疑っていたからじゃないんですか!?てっきり疑われると思って……」

「柚紀さんは疑われるような何かをしたんですか?」

浅田さんは優しい顔でパニックになっている私に問う。

⏰:08/04/29 22:11 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#109 [紫陽花]
疑われることなんて無い!!そう主張するかのように私は勢いよく首を横に振る。
首を振るたびに髪の毛が私の頬わ叩き少しばかりイタイ。


「ならば落ち着いてください。あなたに容疑はかかっていません」

⏰:08/04/29 22:12 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#110 [紫陽花]
浅田さんに半ばなだめるように言われる。

「は……い。すいません、話を中断してしまって」

⏰:08/04/29 22:13 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#111 [紫陽花]
感想板

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

読んでいる人がいたら是非、感想板の方に意見・感想などよろしくお願いします!!m(__)m

⏰:08/04/29 23:09 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#112 [紫陽花]
「いえ気にしないでください」

これが大人の対応だろうな。一気にパニックになり慌てた自分が恥ずかしくなり、顔が赤くなるのが分かった。

⏰:08/05/01 00:08 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#113 [紫陽花]
「では、本題に戻ります。私がさっき次はあなたが狙われるかもしれないと言いった事は覚えていますよね?」

私はコクンとうなずく。
自分は疑われないと理解した私は1分前までとは違って冷静に浅田さんの話に集中できた。

⏰:08/05/01 00:09 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#114 [紫陽花]
「私たち警察は次の殺人を未然に防ぎたいのです。だから……柚紀さんにはこれからの生活の中で注意していただきたいことがあります」

ここで浅田さんは一つ息を落とし、そして再び口を開く。

⏰:08/05/01 00:09 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#115 [紫陽花]
「これから絶対に一人で行動しないこと。特に深夜は。
あなたが知っているかどうかは分かりませんが被害者の2人は夜遅く、すなわち深夜に殺害されています。
いずれも1人で外出した際です」

⏰:08/05/01 22:07 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#116 [紫陽花]
そう言えばそうだ。

里山君は塾帰りに、確か赤崎さんはコンビニへ行ったときに殺されたと担任が言っていた気がする。

⏰:08/05/01 22:09 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#117 [紫陽花]
「学校以外で一人で出かけなければならなくなったら我々に言ってください。誰か一人護衛としてあなたについて行かせますから……。たぶんそのときの護衛は、あなたを迎えに行った堂本優人だと思います」


優人おじさんが私の護衛……確かにこの事件の担当だと言っていたが護衛までされるなんて考えてもみなかった。

⏰:08/05/04 13:10 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#118 [紫陽花]
「まあ、堂本はいい奴ですし安心していいですよ。それとすいませんが、これから柚紀さん何度かここへ足を運んでもらうと思います。捜査へ協力して頂きたいのですが……よろしいですか?」

殺人犯に狙われるなんて今の私には実感もなく、どうせ帰宅部な私は放課後も休日も暇を持て余しているのだ。ならば断る理由もない。

⏰:08/05/04 13:11 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#119 [紫陽花]
「これから警察の人が護衛してくださるんですよね?なら私は心強いです。もちろん協力させてもらいます」


「ありがとうございます!!絶対に連続殺人犯を捕まえましょう」

この日は浅田さんと固く握手を交わし私を威圧していた建物を後にした。

⏰:08/05/04 13:12 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#120 [紫陽花]
帰りの電車の中、ガタンガタンと揺れる車内とは裏腹に私の心は落ち着いていた。

それもそのはず、私は疑われてなかったのだから。
自分だけで舞い上がっていた被害妄想だったのだ。

⏰:08/05/04 13:13 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#121 [紫陽花]
それに……




私の右ポケットには唯一の家族への連絡先が眠っているのだから。

⏰:08/05/04 13:14 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#122 [紫陽花]
―――――――………

―――――………

「ただいま」

太陽が目が眩むような光を放ちながら地平線へと沈んでいる時、私は自分の家に帰り着いた。

⏰:08/05/04 13:14 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#123 [紫陽花]
今日は疲れたな――…

そんなことを考えながら外に干していた洗濯物を取り込む。白いシャツからは、ほんのり太陽のにおいがした。

⏰:08/05/04 13:15 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#124 [紫陽花]
洗濯物をたとむと次は夕食の用意。エプロンを着ようと上着を脱ぐときにポケットの紙に気づいた。

「さすがに今は仕事中だよね……」

⏰:08/05/04 13:16 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#125 [紫陽花]
とりあえずアドレス、電話番号を登録しよう。携帯のボタンは無機質な音を立てながら私に一瞬でも温もりを与えてくれた人の情報を自身に書き込む。


登録完了しました


いつもなら見慣れたその文字も今回ばかりは何故か優しく感じる。

⏰:08/05/04 13:17 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#126 [紫陽花]
また後で連絡しよう。
じゃあ夕飯の準備でもするかな

私はフライパンへと手を伸ばした。




_

⏰:08/05/04 13:17 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#127 [紫陽花]
――――――――………

―――――………

時刻は
午後10時28分

夕飯もすませ明日も学校のため早めにお風呂に入った。季節は冬に向かっているからかお風呂上がりでも一枚上着を着ないと少し肌寒い。

⏰:08/05/05 16:30 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#128 [紫陽花]
「この時間なら大丈夫かな…」

私は携帯を手に取る。もちろん優人おじさんに連絡をするため。

紙に記された連絡先を見る限り私とおじさんの携帯は同じ機種。嬉しいことに、それは両者の電話代はタダになるということを示している。

⏰:08/05/05 16:31 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#129 [紫陽花]
プルルルルル―――……

「………もしもし?」

5回目のコールだろうか、電話の向こう側から声が聞こえた。

その声はどことなく疲れていあの明るい優人おじさんとは違った変な落ち着きがあった。

⏰:08/05/05 16:32 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#130 [紫陽花]
「あのッ……こんばんは、柚紀です。優人おじさんですよね?」

「あぁ!!柚紀ちゃんか。ごめんね、今ちょっと寝てたから声おかしいんだけど優人だよ」

おじさんの声は急に元気になり私の知っているいつものおじさんへと戻った。

⏰:08/05/05 16:33 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#131 [紫陽花]
「今日はわざわざ警察署まで来てもらって悪かったね。でも先輩はいい人だったでしょ?なんかもう僕的にはこの先輩と同じ職業ってことが誇りなんだよね〜。それに…………」

よほど先輩を信頼、いや、尊敬しているのか優人おじさんは電話越しで浅田さんに絶大な評価をしている。

⏰:08/05/05 16:33 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#132 [紫陽花]
おじさんの話が一区切りついたところで私も

「浅田さんは優しかったよ」

と同意する。
そしてそのまま今日あったことを話した。

⏰:08/05/05 16:34 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#133 [紫陽花]
>>132

訂正
×「浅田さんは優しかったよ」
○「浅田さんは優しい人でしたよ」

⏰:08/05/05 16:36 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#134 [紫陽花]
自分は疑われると思ったこと。

逆に狙われていたこと。

休日・放課後は捜査の協力をすることになったこと。


_

⏰:08/05/05 16:36 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#135 [紫陽花]
そして最後に…

「本当に優人おじさんが私を守ってくれるの?」

浅田さんが嘘をつくとは思えないが、私の耳で確かめたい。
本当におじさんが守ってくれるのかを。

⏰:08/05/05 16:37 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#136 [紫陽花]
「もちろん僕が守る。柚紀に危険な思いは絶対にさせない」



その言葉を聞いた瞬間私は自分の胸の奥の方が高鳴るのを感じた。
普通の女の子なら異性から『守る』なんて言われれば胸がときめくのは当たり前。

⏰:08/05/05 16:38 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#137 [紫陽花]
それは私も例外ではなかったみたい。
自分の顔が火照るのが分かる。
自分の胸が高鳴っているのが分かる。

それと同時に何故か恥ずかしさも、こみ上げてきた。おじさんの口調は決して冗談を言っているような軽いものではなく、真っ直ぐで心に響く真剣な言葉だったから。

⏰:08/05/05 16:39 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#138 [紫陽花]
「あ……りがとうございます」
しどろもどろとはまさにこのこと。
どもりながら感謝の気持ちを表す。だが、こんな時に気の利いた感謝の気持ちも言えない自分に嫌気がさした。

「どういたしまして…ってかなり、しどろもどろだね。柚紀ちゃんって意外と面白いなぁ〜」

⏰:08/05/05 16:40 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#139 [紫陽花]
面白い?初めてそんなこと言われた気がする。これは褒め言葉として受け取っていいのだろうか?一人で悶々としているとおじさんが再び口を開いた。

「じゃあ今日はこの辺で電話切るよ。もう夜遅いし」

⏰:08/05/06 18:26 📱:F905i 🆔:3F5UizrQ


#140 [紫陽花]
ハッとして近くにあった目覚まし時計を見る。

時刻は午後11時26分。

時間の流れは思ったより早く、もう一時間近く話していたみたいだった。

⏰:08/05/06 18:26 📱:F905i 🆔:3F5UizrQ


#141 [紫陽花]
「ごめんなさい!!おじさん明日も仕事なのに…」

「いいって。それより柚紀ちゃんは健全な女子高生なんだから早く寝ないとお肌に悪いよ〜」

先ほどの真剣な声とは違って冗談を言うような軽くふざけた声で私をちゃかす。

⏰:08/05/07 20:18 📱:F905i 🆔:7dKzbr3M


#142 [紫陽花]
「大丈夫ですよ!!電話切ったらすぐ寝ますから………あの、またおじさんに電話していいですか」

なんでこんなことを聞いたのかは分からない。もしかしたら無意識のうちに私はおじさんの温もりを求めていたのかもしれない。

⏰:08/05/07 20:19 📱:F905i 🆔:7dKzbr3M


#143 [紫陽花]
「もちろん、いいよ。仕事中で出れないときがあるかもしれないけどね。それと、柚紀ちゃん《おじさん》って呼ぶの止めない?一応ほら、まだ僕20代だし………やっぱり柚紀ちゃんから見れば僕はもうおじさんの域かな〜?」




「ぷっ」

⏰:08/05/08 22:13 📱:F905i 🆔:0SMVaYzI


#144 [紫陽花]
「なッ……柚紀ちゃん笑った!?僕は真剣にお願いしてるのに!!同僚にバカにされたんだよ〜『お前ももう俺と同じオジサンなんだよ!!オジサン!!』なんて言われたんだよね……」

おじさんには悪いが私はおじさんが可愛く思えてしまって口元がゆるむのを我慢することができなかった。

⏰:08/05/08 22:14 📱:F905i 🆔:0SMVaYzI


#145 [紫陽花]
「あは……ご、ごめんなさい。つい可笑しくって。じゃあこれから《優人おじさん》じゃなくて《優人さん》って呼ばせてもらいます」

「分かった。これで同僚にバカにされなくてすむぞ!!」

⏰:08/05/09 21:49 📱:F905i 🆔:BS5FjglM


#146 [紫陽花]
子供のように無邪気に喜ぶ優人さんを見て本当に警察官なのかと疑問に思うが今は警察官である前に一人の人間として、私の家族である“叔父さん”として接してくれているのだろうと私は思った。

「じゃあ、おやすみなさい」

「うん、おやすみ。またね」

⏰:08/05/09 21:50 📱:F905i 🆔:BS5FjglM


#147 [紫陽花]
感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/40-44

感想・意見お待ちしてます

⏰:08/05/09 21:56 📱:F905i 🆔:BS5FjglM


#148 [紫陽花]
こうして私は電話を切った。しばらく携帯を眺め電話での優人さんの余韻を感じる。

だが、その余韻もつかの間で今度は優人さんと話していたときには感じなかった孤独感、一人で部屋にいるときの寂しさが私の胸にこみ上げてきた。

⏰:08/05/11 19:08 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#149 [紫陽花]
もう寝よ……

寂しい夜は寝るのが一番。
二年間も一人暮らししている私には寂しい夜の乗り越え方をちゃんと理解している。

電気を消して毛布に潜り込もうとすると携帯が自分の存在に気付いてほしいと言わんばかりに光を放っていた。

⏰:08/05/11 19:09 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#150 [紫陽花]
メールかな?誰だろ……

本当に現代の携帯電話という代物には驚かされる。

メールを開けばそこに


_

⏰:08/05/11 19:09 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#151 [紫陽花]
堂本優人です!!
いきなりメールして
びっくりした?
今は携帯の電話番号だけで
メールができるんだって!!
便利だよね〜〜笑

一人で寂しいかも
しれないけど
ちゃんと寝るんだよ。
寂しかったら
いつでもメールしていいから

じゃあ、おやすみ
優人

⏰:08/05/11 19:10 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#152 [紫陽花]
こんなメールが届いていた。


本当に不思議……。私が不安で不安でしかたなくて寂しい時、優人さんはまるで私の闇を拭ってくれる。

⏰:08/05/11 19:12 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#153 [紫陽花]


優人さんの予想通り
いきなりで
びっくりしました

今日は本当に本当に
ありがとうございました

また、メールしますね

おやすみなさい
   柚紀


_

⏰:08/05/11 19:13 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#154 [紫陽花]
素早くメールの返信をして毛布にくるまる。私は一人じゃない、そう思うと先ほどとは違った温かさが私の胸の中に溢れ出した。


そしてまもなく私は優人さんの温もりを胸に眠りについたのだった。

⏰:08/05/11 19:15 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#155 [紫陽花]
――――――――………

――――――………

里山君、赤崎さんが殺されてから二週間。
捜査は全くと言っていいほど進んでおらず行き詰まっていると優人さんは言っていた。

⏰:08/05/12 22:05 📱:F905i 🆔:hR8rX0Hk


#156 [紫陽花]
私の方も捜査に協力……
とまでは言わないが何度か警察署に足を運び犯人の心当たりや、殺された二人に他の共通点がないか、など私の知っていることこの二週間では全て話したつもりだ。

⏰:08/05/12 22:06 📱:F905i 🆔:hR8rX0Hk


#157 [紫陽花]
学校も生徒は最初こそ殺人が起きたという恐怖に震えもしたが、今では依然と変わらない日々を送っていた。

ただ、今でも職員室では警察の人が学校に来る度にその後、会議が行われているが……。

⏰:08/05/13 23:39 📱:F905i 🆔:OQirYp9g


#158 [紫陽花]
ある時陽乃が呟くように言った。

「私たちの友達が二人も殺されたのに世界は何事もなかったかのように進んでるんだね……このまま毎日を過ごせば、全て忘れちゃうのかな?」

本当にそうだ。
里山君、赤崎さんの二人が私たちの目の前からいなくなってしまったのにも関わらず太陽は熱を放ち続けるし雲は変化をし続ける。

⏰:08/05/13 23:41 📱:F905i 🆔:OQirYp9g


#159 [紫陽花]
そう、これが現実。なにが起ころうと日は沈みまた登る。それはたとえどんなに辛い事が起ころうとも変わることのない絶対的な日常。

本当に陽乃が言ったように二人が殺されたという事実を忘れる日が来てしまうかもしれない。

⏰:08/05/16 22:50 📱:F905i 🆔:onveKzNY


#160 [紫陽花]
けれど私は二人を忘れたくない。同じ時間を過ごしてきた仲間とも言える旧友を心の中からも消えさせたくない。

そして里山君、赤崎さんのためにも絶対に犯人を見つけ出し刑務所にぶち込んでやる。

⏰:08/05/16 22:50 📱:F905i 🆔:onveKzNY


#161 [紫陽花]
「……ゆ…きちゃん。柚紀ちゃん!!どうかしたの?名前呼んでるのに全然反応しないんだもん」

陽乃は血色の良い頬を少し膨らませながら不機嫌そうな顔をして私の名を呼んだ。

しまった。
つい考えすぎて陽乃の話を無視していたみたいだ。

⏰:08/05/16 22:51 📱:F905i 🆔:onveKzNY


#162 [紫陽花]
「ごめん。ちょっと考えごとしてて……」

「……そう?」

心の中で謝りながらも視線を陽乃から外し東の空を見上げる。きれいなオレンジ色の太陽が私を包む。



今日もまた一日が始まった。

⏰:08/05/16 22:53 📱:F905i 🆔:onveKzNY


#163 [紫陽花]







その日の夜、突然優人さんから電話があった。

⏰:08/05/18 18:48 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#164 [紫陽花]
「もしもし、優人です。突然だけど明日ひま?ちょっと捜査のことで話したいことがあるから会えるかな?」

今日は週末の金曜日。部活入っていなければ友達との予定も入れていなかった私にとって断る理由もなく、さらに捜査の為ならば進んで協力したい。

⏰:08/05/18 18:48 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#165 [紫陽花]
「大丈夫ですよ。どこに行けばいいですか?」

「じゃあ、とりあえず明日の10時に駅前ね」

駅前?警察署じゃないのか。正直私はあの建物が嫌いだったからその提案は嬉しかった。
あの建物に一歩足を踏み入れると何故かいつも底知れない恐怖感が私の胸を浸食する。

⏰:08/05/18 18:49 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#166 [紫陽花]
その恐怖感は酷いときには内臓に何か異物が埋め込まれているような変な違和感に変わり、また頭を内側から叩くような激しい頭痛に変化することもあった。

「分かりました。駅前ですね」

そう言って今日はそれだけで電話を切った。

⏰:08/05/18 18:49 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#167 [紫陽花]
明日は優人さんに会える。いつもならそれだけでほんのりと私の胸は温もりを作り出すのに今日はどこか違った。まるで警察署に踏み入ったときの恐怖感が私の胸をしめつける。

「………寝よ」

恐怖感を振り払うように毛布にくるまる。少しだけ露出している肌と柔らかい毛布が接触しくすぐったい。

⏰:08/05/18 18:50 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#168 [紫陽花]
「優人さんの話ってなんだろ……」


その疑問の答えが導かれることはなく、私は意識を枕へと委ねた。

⏰:08/05/18 18:50 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#169 [紫陽花]
―――――………

――――……

午前10:08 駅前

いくら日が昇っていようと冬場の午前中はまだ寒い。多くの人々が足早に目の前を通り過ぎる中、私は吹き荒む木枯らしと共に優人さんを待っていた。

⏰:08/05/18 18:51 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#170 [紫陽花]
仕事が忙しいのか約束の時間になったというのに優人さんの影はまだ見当たらない。

時間を間違えたかな?

そう思い昨日のメールを読み返そうと携帯に手を伸ばしたとき見覚えのある人影がこちらに走ってくるのが私の視界に入った。

⏰:08/05/18 18:52 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#171 [紫陽花]
「ごめっ!!待った?」

優人さんが息を切らしてやってきた。優人さんの口から漏れる荒々しい息は白い煙となって外の世界へ消えていく。

「いいえ、私も今来たところです」

⏰:08/05/18 18:53 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#172 [紫陽花]
本当はそんなの嘘。
時間の20分前から待っていた。早く来すぎたと言えばそれだけだが、なんだろう……優人さんに早く会いたいと思えば思うほど私の足は勝手に動き、何度も鏡で髪をチェックをしてしまう自分の手がおかしかった。

「じゃあ行こっか」

少し落ち着いたのか、呼吸は一定のリズムになり優人さんは優しく私に声をかけた。

⏰:08/05/18 18:53 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#173 [紫陽花]
「行くって……どこに?」

「説明は電車の中でするから、とりあえず切符買ってくるね。柚紀ちゃんは確か定期があるから切符はいらないよね?」

「はあ………」

イマイチ状況のつかめない私は気の抜けた返事をしつつも券売機へ向かい切符を購入している優人さんを視界に入れる。土曜というのに電車を利用する人は多いらしく、一枚の切符を買うのに齷齪している姿が見えた。

⏰:08/05/18 18:55 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#174 [紫陽花]
かわいいなぁ……

もう大人で、さらに自分の叔父への形容詞を『かわいい』にするのは普通はおかしいのだろうけど私の場合はもう、なにがなんだか分からなかった。

優人さんの可愛いところ、格好いいところ、無邪気なところ……。もっといろんな角度の優人さんを見たい。

⏰:08/05/18 18:56 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#175 [紫陽花]
人はこれを恋と呼ぶのだろうか。

その人を見ると胸が熱くなる。声を聞くと何故か落ち着く。
早く会いたいと願う。

恋って何だろう?

私は優人さんのことが好きなの?

⏰:08/05/18 18:56 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#176 [紫陽花]
「お待たせ!!人多くってさ〜。それと紅茶買ってきたよ。好きでしょ?紅茶」

私は帰ってきた優人さんの顔を見上げた。サラサラの黒髪が風になびき何とも言えない格好良さが目に入る。それに紅茶まで買ってきてくれて……。その優しさの一つ一つに胸が苦しくなる。

⏰:08/05/18 18:57 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#177 [紫陽花]




私は……優人さんが好き。



_

⏰:08/05/18 18:58 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#178 [紫陽花]
「ん?なんか顔についてる?」
「いやっ……何でもないです!!ありがとうございます」

ダメだ。
このことは気付かれちゃいけない。

⏰:08/05/18 18:59 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#179 [紫陽花]
もし私が『叔父さん』のことを好きだって気付かれたら私はきっと異変な目で見られ、優人さんも困るだけ。

どんなに私の中の恋心という甘い光が外にでたがっても、影のようにひっそりと隠し続けなければならない。

⏰:08/05/18 19:00 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#180 [紫陽花]
「ちょ……柚紀ちゃん!!ぼーっとしてるけど大丈夫?電車来たよ」

「だい…じょうぶです。電車、乗りましょう」

私と優人さんはガタガタと機械音をならしている電車へと足を踏み入れた。

⏰:08/05/18 19:00 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#181 [紫陽花]
感想板

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意見・感想お待ちしてます
*・⌒.))

⏰:08/05/18 19:04 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#182 [紫陽花]
―――――――………

――――………

電車の中は程良く暖房が利いて、骨までしみるような木枯らしで冷え切った体を内側から暖めてくれた。

残念にも席は空いておらずドアの近くに二人で立つ。

⏰:08/05/20 19:47 📱:F905i 🆔:dqNudvso


#183 [紫陽花]
空気が吹き抜けるような乾いた音を立てながらドアはゆっくりと閉まった。そして電車は私の住む町の駅を出発した。

「柚紀ちゃん。今日君にわざわざ時間を作って一緒に来てもらったのには理由がある。もちろん捜査の話なんだけど……」

⏰:08/05/20 19:48 📱:F905i 🆔:dqNudvso


#184 [紫陽花]
「何か分かったことがあったんですか!?」

「分かったことと言うか、まだ確信は持ててないけど……。今から事件の鍵を握っていると思われる人に会いに行く」

鍵を握る人……。誰だろう?私も一緒に行くってことは私の知り合いなのだろうか。

⏰:08/05/22 19:51 📱:F905i 🆔:L05XBPwY


#185 [紫陽花]
「その人って…私の知ってる人ですか?」

「う〜ん。覚えてるかどうかは分からないけど絶対に会ったことのある人だよ。大丈夫!!目的地に着いたら自然と分かるから」

途中何度もこれから会う人を教えてほしいと、粘ってみたが結局どこに向かっているのかも、誰に会いに行くのかも詳しいことは教えてくれなかった。
一応捜査の一巻なので詳しいことは秘密らしい。

⏰:08/05/22 19:52 📱:F905i 🆔:L05XBPwY


#186 [紫陽花]
「次の駅だよ。降りる準備しててね」

目的地の駅まで意外と時間がかからなかった。車内に到着のアナウンスが流れたと思うと、またも乾いた空気音と共にドアが左右に開く。

⏰:08/05/23 22:02 📱:F905i 🆔:nVJy9CXc


#187 [紫陽花]
その駅のプラットホームは電車の中の心地よい温もりとは違い突き刺すような風が通り過ぎていた。

「さぁ、行こうか」

一歩前を歩く優人さんに導かれるまま私はホームを後にした。

⏰:08/05/23 22:03 📱:F905i 🆔:nVJy9CXc


#188 [紫陽花]
――――――………

――――………

「優人さん、私ここ知ってる気がする……」

駅をでて5分ほど歩いたところだろうか私は何故かこの街を知っているような、どこか懐かしい匂いを感じた。

⏰:08/05/25 15:34 📱:F905i 🆔:ePvaQ3Ds


#189 [紫陽花]
「もうすぐ分かるよ。あっ!!ほら。見えてきた」

優人さんの視線の先には小さいグラウンドと茶色と白を基調とした可愛らしい建物があった。

「ここは……!!」

⏰:08/05/31 07:12 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#190 [紫陽花]
「思い出したみたいだね。そう、ここは柚紀ちゃんが小さいときに通っていた幼稚園だよ」


よくあの緑の茂った小さな草むらのタンポポで冠を作った。
端の方にある砂山で砂利のないサラサラの砂をあつめままごとをした。
小さな滑り台を友達を押し退けながら滑った。

⏰:08/05/31 07:13 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#191 [紫陽花]
小さな頃の虚ろな記憶が、だんだんと鮮明なものへと代わり、そして私の頭で走馬灯のように駆け巡る。


だが、思い出せなかったのも無理はない。小さい頃、私は幼稚園まで母が車で送ってくれていたため駅からの道など全くと言っていいほど知らなかった。


けれど今確かに思い出した。私はここで時間を過ごしていたのだ。

⏰:08/05/31 07:14 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#192 [紫陽花]
「優人さん……。何でここに?」

「今回の事件で殺された二人は柚紀ちゃんと幼稚園から一緒だったよね?事件の鍵はそこにあると思うんだ。だから殺された二人の共通点とも言える彼らの経歴を一から洗ってみようと思ってね。柚紀ちゃんも少なからず彼らと同じ時間を過ごしたんだから何か気付くことがあるかと思って。それが柚紀ちゃんも一緒に来てもらった理由だよ」

⏰:08/05/31 07:14 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#193 [紫陽花]
なるほど……
事件につながるところから話を進めようってことか。

「じゃあ、行こうか」

優人さんは前を見据え足を一歩動かす。もちろん、私も足を踏み出す。

⏰:08/05/31 07:15 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#194 [紫陽花]
その建物は私たちが入るのを受け入れてくれるつもりなのか、門は開き玄関であろう職員、そして生徒の下駄箱まで一直線の道ができている。

その一本道も両側はプランターに入れられた花々が並び、その中の小さな命たちは背筋をピンと伸ばし溢れんばかりの命の花を満開にさせていた。

⏰:08/05/31 07:16 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#195 [紫陽花]
「ごめんください。先日電話した警察の者ですけど……」

職員玄関から中を見渡す。今日が土曜日ということもあり園内には騒がしく走り回る園児の姿もなければ、それを追い回す保育士さんの姿も見あたらずガランとしていた。

⏰:08/06/02 21:25 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#196 [紫陽花]
「こんにちは―……」

2〜3回声をかけても返事はなく優人さんと私は困り果ててしまった。
そのとき


「はい、は〜い」

⏰:08/06/02 21:25 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#197 [紫陽花]
後ろから声が聞こえた。
その声に多少驚いたものの声の発信者を探す。

「こっちです!!すいません、中庭の手入れをしていたもので」
目の前に現れたのは髪に少しだけ白髪の混ざる初老のおばあさんだった。おばあさんの手には軍手がはめられ指先には茶色い泥がびっしりと付いていた。

どうやら本当に作業をしていたらしい。

⏰:08/06/02 21:26 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#198 [紫陽花]
「すいません、こんな格好で。庭に花を植えてまして……。あら?そこの可愛いお嬢さんは……」

おばあさんの視線はまるで何かを思い出しているような、そう、例えるなら記憶の糸をたぐり寄せているかのような遠いところを見ていた。

⏰:08/06/02 21:27 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#199 [紫陽花]
「あっ……」

思い出したのか、小さな声を漏らす。私の方は依然として思い出せないままなのに……。

「柚紀ちゃん?そうよ!!柚紀ちゃんよね」

⏰:08/06/02 21:28 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#200 [紫陽花]
「はい……」

おばあさんの顔は、やっと思い出したと言う喜びと、私を懐かしんでいるようで笑顔をこぼしていた。

「私よ!!あぁ〜覚えてないのも無理ないわ。柚紀ちゃんはこーんなに小さかったんだもの。私よ、久子!!坂枝久子よ!!!」

⏰:08/06/02 21:28 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


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