夢の中の私の影
最新 最初 🆕
#1 [紫陽花]
初めまして紫陽花と言います。

小説を書くのは初挑戦なので誤字脱字などあると思いますが、読んでいただき感想をもらえると嬉しいです!!(∀・。)

⏰:08/04/08 22:15 📱:F905i 🆔:akYivROE


#2 [紫陽花]
アンカー
>>1ー200
>>201ー400
>>401ー600
>>601ー800
>>801ー1000


感想版です
bbs1.ryne.jp/t.php?b=novel

⏰:08/04/08 22:16 📱:F905i 🆔:akYivROE


#3 [紫陽花]
早速ミス……

>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:08/04/08 22:20 📱:F905i 🆔:akYivROE


#4 [紫陽花]
プロローグ


そのとき私は
暗い暗い闇の中にいた。

目は何も見えない、
肌には暖かさも、
寒ささえも感じない。

ただ、ただ
目の前に闇が広がる。

⏰:08/04/08 22:21 📱:F905i 🆔:akYivROE


#5 [紫陽花]
でも頭の芯だけはハッキリしていて、これは夢だとなんとなく考えた。



そんな中、不意に
音が聞こえた……。
いや、聞こえたと言う表現は不適切だろう。

⏰:08/04/08 22:22 📱:F905i 🆔:akYivROE


#6 [紫陽花]
耳からではなく直接脳に音を送られているような妙な感覚だが確かに音がする……。

これは……声?


音を聞き取ろうと
しばらくの間
闇の世界から
瞳の奥の闇へと
目を閉じてみる。

⏰:08/04/08 22:23 📱:F905i 🆔:akYivROE


#7 [紫陽花]
「………たすケ…てッ………
マだ………死……ャだッッッ!!」





これは………なに?
微かだが人の声のような音が脳に送り込まれてくる。

⏰:08/04/08 22:24 📱:F905i 🆔:akYivROE


#8 [紫陽花]
これは本当に夢なのか?





あれ………。
そういえば
私はいつから夢を見てるの?

⏰:08/04/08 22:25 📱:F905i 🆔:akYivROE


#9 [紫陽花]
…………これは現実?



それとも………夢の中?







〜夢の中の私の影〜

⏰:08/04/08 22:26 📱:F905i 🆔:akYivROE


#10 [紫陽花]
.




「またあの夢……」


ここ2〜3日続けて同じ夢を見たな……。何かの予兆だろうか?

⏰:08/04/08 22:41 📱:F905i 🆔:akYivROE


#11 [紫陽花]
しかし夢といっても自分が、ただ暗闇の中に立っていて時折、声らしきものが聞こえるだけのとても奇妙な夢。

そして決まって夢から覚めた私は寝汗と言うにはふさわしくないほどの汗をかいているのだ。

⏰:08/04/08 22:41 📱:F905i 🆔:akYivROE


#12 [紫陽花]
今はまだ太陽も昇っていないし季節的にも夏を待っているくらいなのに、パジャマ代わりの長袖のシャツがほんのり湿っている。



着替えようとタンスに手を伸ばすが、どうしても夢の事が頭から離れない。

⏰:08/04/08 22:42 📱:F905i 🆔:akYivROE


#13 [紫陽花]
ただの夢にしては妙に頭に引っかかる。


誰かに相談などしようにも、私の親は私が小さい時に事故で他界している。
その後面倒を見てくれていたおばあちゃんも私が15の時に亡くなった。



それから約2年間、私はずっと一人暮。

⏰:08/04/08 22:43 📱:F905i 🆔:akYivROE


#14 [紫陽花]
感想版
bbs1.ryne.jp/t.php?b=novel

⏰:08/04/08 22:49 📱:F905i 🆔:akYivROE


#15 [紫陽花]
血縁者としては警察官として多忙な毎日を送っている叔父がいるが、忙しすぎてこんな戯れ言のような話など聞いてくれないだろう。



そんなことを考えている内にもう日が昇り始めた。
日が昇り始めると言うことは
今の季節では家を出る時間を示す。

「やばっ!!!!」
私の脳裏に『遅刻』の二文字が並ぶ。

⏰:08/04/08 23:55 📱:F905i 🆔:akYivROE


#16 [紫陽花]
電車通学の私には1分の遅れも許されない。電車は待ってくれないのだから。


慌ててシャツを着替え学校指定の服を着る。朝ご飯はコンビニでパンでも買うとしよう。

「いってきます!!」

返事をしてくれる人などもちろんいない。だけど毎朝「いってきます」だけは必ず言うようにしている。

⏰:08/04/08 23:56 📱:F905i 🆔:akYivROE


#17 [紫陽花]




そうでもしないと
独りぼっちの寂しさに
押しつぶされそうだから。



_

⏰:08/04/08 23:58 📱:F905i 🆔:akYivROE


#18 [紫陽花]
――――――……

――――……





「柚紀ちゃ〜ん早く!!電車でちゃう!!」

あぁ……分かってるから、ちょっと待って。車掌さんあと10秒でいいから待って!!!

⏰:08/04/09 22:06 📱:F905i 🆔:y9zhZnzw


#19 [紫陽花]
改札まであと10メートル。

走りつつも制服の胸ポケットから定期を取り出す。走っているからか焦っているからなのか思うように定期が出てこず焦りは不安へと変わる。

⏰:08/04/09 22:07 📱:F905i 🆔:y9zhZnzw


#20 [紫陽花]
改札まで5メートル。




しかし、なんとか定期を取り出し馴れた手つきで滑るように定期を改札へ。


カシャン カシャンと軽快な音が響き定期は改札から出てくる。

⏰:08/04/09 22:08 📱:F905i 🆔:y9zhZnzw


#21 [紫陽花]
そしてそのままのスピードで、すぐさま電車へと飛び乗る。



私が電車に乗ったと同時に
プシューと空気音を鳴らして鉄の扉は閉まった。





ギリギリセーフ……。

⏰:08/04/09 22:09 📱:F905i 🆔:y9zhZnzw


#22 [紫陽花]
「ごめん陽乃…。考え事してたら時間過ぎちゃって……」

一息着いたところで陽乃に待たせたことを謝る。


「いいよ、いいよ。私もよく遅刻しちゃうし。それにあのぐらいの遅刻で怒っちゃうほど私短気じゃないから!!」

陽乃は八重歯を少しだけ見せて笑う特有の笑顔で私を許してくれた。

⏰:08/04/09 22:10 📱:F905i 🆔:y9zhZnzw


#23 [紫陽花]




……なんていい子なんだろう。




しみじみと陽乃という友達をもてて私は幸せ者だと感じる。

⏰:08/04/09 22:12 📱:F905i 🆔:y9zhZnzw


#24 [紫陽花]
感想版、全部ミスでした…

感想版
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

⏰:08/04/10 06:41 📱:F905i 🆔:Vqy2kcZ2


#25 [紫陽花]
陽乃は学校でもみんなから好かれていつもクラスの柱のような存在。
所属している吹奏楽部も次期部長とうたわれるぐらい人望は厚い。クラスの中で陽乃を嫌っている人物などいないし、学年の中でも嫌っている人物はいないだろう。

⏰:08/04/10 20:01 📱:F905i 🆔:Vqy2kcZ2


#26 [紫陽花]
それに比べて……

私はクラスではそんなに目立つ方じゃないし、きっと陽乃と友達だからクラスに馴染めているだけ。もし陽乃と友達でなかったら確実に独りぼっちだろう。もちろん部活には入っていない。そんな私の本当の友達と言えるのは陽乃だけ。

⏰:08/04/10 20:03 📱:F905i 🆔:Vqy2kcZ2


#27 [紫陽花]
でもそんな陽乃なら今朝の夢を笑わずに聞いてくれるかもしれない。

そんな神の存在を願うかのような、ささやかで、か細い祈りのような願いが私の中に起こり意を決してゆっくり口を開く。

「ねえ…陽……「あっ!!柚紀ちゃん大丈夫?」

⏰:08/04/10 23:12 📱:F905i 🆔:Vqy2kcZ2


#28 [紫陽花]
何というタイミングの悪さ。
私は仕方なく、名前を呼ぼうとした口を変換させ

「なにが?」

と、だけ短く返事する。

⏰:08/04/10 23:13 📱:F905i 🆔:Vqy2kcZ2


#29 [紫陽花]
「今日から体育は水泳だよ。柚紀ちゃんプール苦手だったよね……。去年は溺れそうになったり貧血起こしたりしたでしょ?今年はプール大丈夫?」

陽乃はおずおずと心配そうに私の顔をのぞき込んできた。

「ん〜なんとかなるんじゃない?いざとなれば保健室に逃げ込むよ」

私はわざとふざけたように返事をした。どうしてか分からないが今、陽乃に余計な心配をさせてはいけない、そんな気がしたから。

⏰:08/04/10 23:14 📱:F905i 🆔:Vqy2kcZ2


#30 [紫陽花]
陽乃は何か言いたそうに見つめてくるが、私は鞄から単語帳を取り出し視線を陽乃から外した。

確かにプールは苦手。でもそれは今に始まった事じゃない。
陽乃は知らないが、私はプールに入ると気分が悪くなると言う症状を小学校の時から抱えている。

⏰:08/04/11 21:36 📱:F905i 🆔:ylE0ZPrI


#31 [紫陽花]
体の硬直・貧血
目眩・息切れ・過呼吸……

プールで気を失い水死しそうになったことだってある。けれど水泳の授業に出席しなければ体育の単位は取れない。
だから陽乃には悪いが私は無理してまで授業に出席しなければいけないのだ。

水泳の授業なんて無ければいいのに。それに何で私はプールが苦手なのだろう……

⏰:08/04/11 21:38 📱:F905i 🆔:ylE0ZPrI


#32 [紫陽花]
――――――――………

―――――………



目を開けるとそこには真っ白な天井と清潔感を漂わせる純白のカーテンがひらりひらりと風に揺れていた。

⏰:08/04/11 21:39 📱:F905i 🆔:ylE0ZPrI


#33 [紫陽花]
「また、やっちゃった…」

体育の授業で陽乃と一緒にプールへ入り、とりあえず体を水に慣らしたところまでは鮮明に記憶があり思い出すことができる。

けれど10分ほどたった頃からだろうか急に体が鉛のように重くなり瞼さえも開けておくのが億劫に感じ、最後に見えたのは陽乃の青ざめた顔。

⏰:08/04/11 21:40 📱:F905i 🆔:ylE0ZPrI


#34 [紫陽花]
また心配かけてしまった……。
保健室のベッドの上で小さく寝返りをうち、自己嫌悪に入る。白く清潔なシーツたちとは裏腹に私の心は暗く自分の不甲斐なさにため息がでる。

なんでこんなにプールが苦手なのだろう。

⏰:08/04/11 21:43 📱:F905i 🆔:ylE0ZPrI


#35 [紫陽花]
それに、私の悩みはプールだけではない。あの奇妙な夢のこともある。
「さっさと陽乃に相談していればよかったなぁ…」


そう思いながらも清潔感漂うこの部屋の静寂が私の瞼を落とさせるのには、そう時間はかからなかった。

⏰:08/04/11 21:43 📱:F905i 🆔:ylE0ZPrI


#36 [紫陽花]
感想版
読んでる方がもしいたら
ぜひ感想ください!!(゚∀゚)

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

⏰:08/04/11 21:48 📱:F905i 🆔:ylE0ZPrI


#37 [紫陽花]
――――――――………

―――――………


「陽乃!!おはよう」
「おはよう柚紀ちゃん。あのね聞いてよ〜」

季節は夏を早々と迎えもう、少し哀愁を帯びた風の吹く秋へと変化していた。

⏰:08/04/13 09:11 📱:F905i 🆔:SVHYHgLM


#38 [紫陽花]
陽乃とは毎朝一緒に学校へ行っているし今までと変わらず、いたって普通の生活を送っていた。

ある一点をのぞいては。

あの奇妙な夢のことだ。
最近、前以上に夢見が悪く寝汗も秋だと言うのに尋常じゃないほどかいている。

⏰:08/04/13 10:30 📱:F905i 🆔:SVHYHgLM


#39 [紫陽花]
そんな憂鬱な秋の日、事件は起こった。いや、螺旋階段のような終わりの見えない事件は始まったのだ…。



_

⏰:08/04/14 21:14 📱:F905i 🆔:ygl5UK7Q


#40 [紫陽花]
「おはよ〜みんな!!」
陽乃は朝から元気で、みんなに声をかける。

「おはよ陽乃、柚紀。ねえ、ちょっとこれ見て…」

クラスの友人である香奈は私たちを見るなり声のトーンを一つ落として、ある一点に視線を当てた。
私と陽乃も視線をおって教室を見回してみる。


「……花瓶?」

⏰:08/04/14 21:15 📱:F905i 🆔:ygl5UK7Q


#41 [紫陽花]
クラスの窓側の席に白く質素な百合の花が飾ってあった。


確かあの席に座っていたのは美化委員の里山君のはず。
里山君は私と幼稚園からの腐れ縁で、幼稚園から高校までずっと同じ学校だった。

⏰:08/04/14 21:16 📱:F905i 🆔:ygl5UK7Q


#42 [紫陽花]
里山君はクラスの中で私以上におとなしい人。
いや、目立たないと言った方が正しいのかもしれない。

彼の風貌からは髪が短くすっきりとしていて制服はきちんと着こし、もとからであろう小麦色の肌がいかにもスポーツマンのようなイメージを連想させる。

⏰:08/04/15 21:18 📱:F905i 🆔:ZHIiLkac


#43 [紫陽花]
ただ、そんな彼はイメージとは似つかわしくなく、いつも隅っこで他人の目を気にするようにおどおどと本を読んでいた。

⏰:08/04/15 21:18 📱:F905i 🆔:ZHIiLkac


#44 [紫陽花]
「里山君がどうかしたの?」

机に花瓶。誰が考えたって理由は一つしかない。けれどその悪い予感を振り払うように祈る気持ちで私は香奈に問う。



だがその祈りは空の向こうにいるであろう神様には届かなかった。

⏰:08/04/15 21:19 📱:F905i 🆔:ZHIiLkac


#45 [紫陽花]
「里山君が…亡くなっ……たんだって………」

言葉をなくした。

いや、頭の中に言葉が渦巻いて私の国語能力では言葉にできなかった。

⏰:08/04/15 21:20 📱:F905i 🆔:ZHIiLkac


#46 [紫陽花]
里山君ガ死ンダ?
幼稚園カラ友達ダッタンダヨ?

ヤッパリ、ソンナ気ガシテタ

デモ、ナンデ?
ナンデ?

ナンデ?

ナンデ?

⏰:08/04/15 21:21 📱:F905i 🆔:ZHIiLkac


#47 [紫陽花]
「なんで里山君亡くなったの?病気?事故?それとも…」

私の疑問を口に出すより早く陽乃が口を開いた。陽乃の冷静さに少し驚いたが私も香奈の答えを待つ。

だが香奈は下を向いたまま首を振るだけ。

「まさか…」

⏰:08/04/15 21:21 📱:F905i 🆔:ZHIiLkac


#48 [紫陽花]
香奈は顔を上げた。
目には涙を浮かべ、


「里山君殺されたの…」


今にも消え入りそうな声で呟いた。香奈の目には大粒の涙。けれど彼女は自分が担任から聞いた里山君の最後の姿を話していく。

⏰:08/04/16 22:55 📱:F905i 🆔:7Jb0hacc


#49 [紫陽花]
香奈の話はこうだった。

その日里山君は塾に行っていたのだが、あまりにも帰りが遅いので彼の母が心配し警察に捜索願を出したということ。

無事里山君は見つかったが、その時点で彼はもう死んでいたらしい。

里山君の殺され方は首を強く絞められたための窒息死。人とは思えないほどの握力で彼の息をするための細い管は締め付けられ頭を支える首の骨も折られていたらしいのだ。

⏰:08/04/16 22:55 📱:F905i 🆔:7Jb0hacc


#50 [紫陽花]
「ひどい…。いったい誰が…」

「今警察が通り魔の犯行ってことで調査してるらしいの。でも…早く犯人捕まえないと里山君成仏できないよ!!!」


香奈は半ば叫ぶように声を荒げた。そう、香奈は里山君のことだ好きだったから。

⏰:08/04/18 00:24 📱:F905i 🆔:WisuNr4Q


#51 [紫陽花]
「香奈……」

私だって大切な人を亡くす悲しみと辛さはよくわかる。

涙は枯れると言うことを知らないかのように制御不能で零れ落ち、体は重力に逆らうことを止め崩れ落ちる。

声をかけてほしい。
ほっといてほしい。

慰めてほしい。
同情しないで。

心の中ではそう叫ぶが、喉のあたりまで来て嗚咽へと変わる。

⏰:08/04/18 00:25 📱:F905i 🆔:WisuNr4Q


#52 [紫陽花]
その日先生がお焼香やお葬式について説明していたが、私は泣きじゃくっていた香奈と殺された里山君の事をぼんやりと考えていた。

⏰:08/04/18 00:26 📱:F905i 🆔:WisuNr4Q


#53 [紫陽花]
感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

⏰:08/04/18 00:29 📱:F905i 🆔:WisuNr4Q


#54 [紫陽花]
――――――………

―――――……



ここはやっぱりいつもの夢の中だろうか?辺りを見回しても闇ばかり。むしろ自分が今、目を開けていて物を見ようとしているのかを疑いたくなるような闇。自分の目が何を映しているのか分からない。

⏰:08/04/19 20:31 📱:F905i 🆔:a5Sf4KpM


#55 [紫陽花]
だが頭は冴えており、やっぱりこれは夢だろうと確信している自分がいる。

とは言え、光という目に見える確かなものが無いせいか、これは夢なのだと分かっていても鳥肌が立つ。





「タスけッ………てッ…!!マ……て……くれッ!!!」

⏰:08/04/20 16:27 📱:F905i 🆔:2A42QSR2


#56 [紫陽花]
そして、またいつもの声がする。否、音という情報だ。

どうせこの後、じめじめするような気持ちの悪い寝汗とともに目が覚めるのだろう。そう思い、自分が夢から覚めるのをしばらく待ってみる。

けれど一向に暗闇は続き音も送られ続ける。ふとあることに気付いた。


『あれ……?この声どっかで聞いたことがあるような……』

⏰:08/04/20 16:28 📱:F905i 🆔:2A42QSR2


#57 [紫陽花]
――――――――………

――――――………

目を開けると朝の白く透き通るような光りが窓から差し込んでいた。


私はベッドから上半身だけを起こし右手を額に当てる。
寝汗もさることながら、今日は頭痛も私の体をベッドから出させるのを億劫にさせていた。

⏰:08/04/20 16:29 📱:F905i 🆔:2A42QSR2


#58 [紫陽花]
歯痒い。


だが、いつまでもこうやって気を沈ませているわけにはいかない。

体を起こし私は学校へ行く準備を始めた。

⏰:08/04/20 16:29 📱:F905i 🆔:2A42QSR2


#59 [紫陽花]
――――――………

―――――……

里山君が死んでから一週間。

最初はみんな里山君の死を悔やみ、うつむいた日々を送っていたが最近では以前と同じように、たわいのない会話で笑顔をこぼせるようになっていた。

それは私も同じ。

⏰:08/04/22 22:01 📱:F905i 🆔:U1RFsk56


#60 [紫陽花]
幼稚園からの中である里山君を忘れたわけではないが、私の住むこの町、いや私の世界は何ら変わらず回っていた。


だが、まだ里山君を殺した犯人は見つかっておらず香奈だけは落胆した日々を送っているようだった。

⏰:08/04/22 22:02 📱:F905i 🆔:U1RFsk56


#61 [紫陽花]
「おはよう柚紀ちゃん」

今日も陽乃と一緒に登校。

最近ぐっと冷え込んだ夜が続き朝の太陽が昇るこの時間でさえ冬の冷たさを思わせるような木枯らしが吹いていた。

⏰:08/04/26 22:37 📱:F905i 🆔:IhfNIffw


#62 [紫陽花]
しかし、そんな冷たい灰色のような木枯らしも陽乃の前では春風のような桃色へと形を変えるようだ。なぜなら陽乃と一緒に歩きともに時間を過ごすだけで心は穏やかになる自分がいるのだから。



けれど、そんな私の穏やかな時間は長くは続かなかった…。

⏰:08/04/26 22:37 📱:F905i 🆔:IhfNIffw


#63 [紫陽花]
また殺人が起きたのだ。



被害者は隣のクラスの赤崎さん。彼女は文芸部に入っていて少し長い髪を三つ編みにし、黒縁めがねをかけた、いかにも文学少女と言った人。

彼女の死因も窒息死でありと里山君同様、首の骨を折られていた。さらに今回の殺人は里山君との共通点がある。

それは……

⏰:08/04/26 22:38 📱:F905i 🆔:IhfNIffw


#64 [紫陽花]
「2人とも柚紀ちゃんと幼稚園から今まで一緒の人だよね…?」

陽乃私に声をかける。


そう。二人とも私と幼稚園から同じ時間を過ごしてきた旧友なのだ。

⏰:08/04/26 22:39 📱:F905i 🆔:IhfNIffw


#65 [紫陽花]
だから

「赤崎が殺された」

その言葉を担任から聞いたときは本当に自分の耳を疑った。

この人は何を言っているの?
先週里山君が殺されたばっかりじゃない。里山君も赤崎さんも幼稚園からの知り合いなのよ!

⏰:08/04/26 22:39 📱:F905i 🆔:IhfNIffw


#66 [紫陽花]
けれど私の叫びは喉のところまできて外の世界に放たれなかった。いや、叫んだところで現実は変わらない。私同様みんなもわかっているのかただ下を向くだけ。


ふと、窓の外を見ると今年初めての雪が舞い降りていた。まるで里山君と赤崎さんの冥福を祈るかのように。

⏰:08/04/26 22:40 📱:F905i 🆔:IhfNIffw


#67 [紫陽花]
感想版
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

誰か読んでくれてる人いますか?
(´;ω;`)

⏰:08/04/26 23:19 📱:F905i 🆔:IhfNIffw


#68 [紫陽花]







赤崎さんが殺された次の日
私は警察に呼ばれた。

⏰:08/04/27 19:39 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#69 [紫陽花]
やっぱりというか殺された二人が私の旧友であることは捜査が進めば分かること。私の通う高校で彼らと幼稚園から一緒なのは私だけ。

ならばいくら私が未成年でも事件の鍵を握っているかもしれない重要参考人として…いや、もしかしたら容疑者かもしれないと疑われるのは自然なことだろう。

⏰:08/04/27 19:40 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#70 [紫陽花]
時計としての機能もある携帯のデジタルな数字が示す時刻は
午後1時20分。

何時頃に帰れるのだろう。今日は高校生らしく宿題でもしようと計画していたのに。

⏰:08/04/27 19:41 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#71 [紫陽花]
「本当に私何も知らないのになぁ…」

しゃべり声や電車の走る機械的な音がする車内の中で私の主張は誰の耳にはいることもなくかき消された。

⏰:08/04/27 19:41 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#72 [紫陽花]
午後1時32分
――警察署――

この建物はこんなに威圧感のあるものだったのだろうか?いつもならこの建物の前を笑って歩けるし、気にもとめないのだが何故か今日は私の中の恐怖心を逆なでしている。

⏰:08/04/27 19:42 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#73 [紫陽花]
そう思い苦笑いをする。

正直、この建物に入るのが怖い。
しかし刑事さんと待ち合わせている時間は1時30分。昨夜あった電話で

「中に入って待っていてくれ。迎えに行くから。」

と、言われていた。

息を大きく吸い込み仕方なく建物へと足を動かす。

⏰:08/04/27 19:43 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#74 [紫陽花]
「君、柚紀ちゃ……ん?」

建物の中に入り5分ぐらいした頃だろうか、いきなり後ろから名前を呼ばれた。

⏰:08/04/27 19:44 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#75 [紫陽花]
突然名前を呼ばれ多少驚いたが、私を呼んだ声はどこかで聞いたものだった。



「……優人おじさん!!」

私を迎えに来てくれたのは優人おじさんだった。

⏰:08/04/27 19:44 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#76 [紫陽花]
優人おじさんは私の唯一の家族とも呼べる人。母の弟に当たる人だ。だが弟と言っても母とはまったく血がつながっていない。要するに養子の子だったらしい。


そんなおじさんは男の人とは思えないほどの直毛でいつもサラサラの前髪を風になびかせている。

⏰:08/04/27 19:45 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#77 [紫陽花]
仕事が忙しいらしく、もう二度と会えないと思っていた。それに私のことなんて記憶に残ってないと思っていた。

だから私は独りぼっちなんだ……そう思っていたのに。


最後にあったのは祖母のお葬式のとき。刑事になった、とはそのとき聞いていたがまさかここで勤務していたなんて…。

⏰:08/04/27 19:46 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#78 [紫陽花]
「びっくりした―!!先輩に女の子を迎えに行けって言われてたけど、まさか柚紀ちゃんだなんて……って大丈夫!?」

私は知らず知らずのうちになかり緊張していたみたいだった。この威圧感の中で知っている人を見つけた安心からか思わず涙ぐんでいた。

⏰:08/04/27 19:46 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#79 [紫陽花]
「なんでもない…あくびだから……」

強がってみたけどおじさんには分かっていたみたいだ。

そっと私の頭に手を乗せ

「大丈夫だから。怖くないよ」

まるで泣きじゃくる子をあやすように優しく包み込むように声をかけてくれた。

⏰:08/04/27 19:47 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#80 [紫陽花]
おじさんには超能力でもあるのか、頭を撫でられただけで心の中のもやもやはなくなり欠伸だと言い張った涙もなくなり落ち着きを取り戻せた。

「私もう子供じゃないんだからね」

⏰:08/04/27 19:48 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#81 [紫陽花]
おじさんは少しキョトンとしたがすぐに笑顔になり私に言葉をかけた。

「そんな強がりが言えるならもう平気だね。じゃあ付いてきて」

⏰:08/04/27 19:48 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#82 [紫陽花]
私はハッとした。
一瞬忘れていたが私はこれからいろいろと質問されるのだ。そのことを考えると体が少しこわばるのが分かった。


話をするところは4階にあるらしくエレベーターへと二人で乗り込む。その間優人おじさんは自分の話をしてくれた。

⏰:08/04/27 19:49 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#83 [紫陽花]
無事警官になったこと。
その後、殺人事件を主に取り扱う部署に入ったということ。

そして今、担当している事件は里山君と赤崎さんの殺人事件ということ。

⏰:08/04/27 19:50 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#84 [紫陽花]
そんな話をしていると部屋に着いたらしく私もおじさんの隣に慌てて立ち止まった。

ここがその部屋?

そう尋ねたくて右にいた優人おじさんに目を向ける。

⏰:08/04/27 19:51 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#85 [紫陽花]
けれど、おじさんの顔はさっきまでとは違った神妙な面もちへと変わっていて、そして悲しそうな目で私を見つめていた。


「詳しい話はまた後で先輩が話すから。今日の僕の仕事はここまで……。」

優人おじさんは呟くように言った。

⏰:08/04/27 19:52 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#86 [紫陽花]
「そっか……」

ここで我が儘を言っておじさんを困らせてはいけないと思い、聞き分けのよい子を演じる。
本当はまだ心の中に不安という闇が渦巻いているが仕方ない。

⏰:08/04/27 19:52 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#87 [紫陽花]
ならばと思い扉の向こうで私を待っている人のためにドアノブへと手を伸ばす。

「柚紀ちゃん!!」

また優人おじさんに大きい声で名前を呼ばれた。近くにいるんだから、そんなに大声出さなくたって聞こえてるのに。

⏰:08/04/27 19:53 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#88 [紫陽花]
「柚紀ちゃん…これ……」


そう言うとおじさんは同時に胸ポケットから手帳を取り出しビリビリと後ろの方を破りだした。そしてなにやら書き込んでいるようだ。

⏰:08/04/27 19:54 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#89 [紫陽花]
感想板

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

⏰:08/04/27 19:58 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#90 [紫陽花]
「これ俺の電話番号と携帯のアドレス。寂しくなったら電話でもメールでもしてきてよ!!僕は血のつながりが無くても柚紀ちゃんのおじさんなんだから!!」

そうやって一枚のギザギザに破られた紙を渡してきた。

⏰:08/04/28 22:31 📱:F905i 🆔:fbLOZbSQ


#91 [紫陽花]
本当におじさんにはかなわないな。
さりげない行動が今まで孤独だと思って、暗く闇の奥のほうに沈んでいた心を温めてくれる。心に渦巻く不安を取り去ってくれる。

⏰:08/04/28 22:32 📱:F905i 🆔:fbLOZbSQ


#92 [紫陽花]
「ありがとう…」

紙を受け取るときの私の手は震えていたのかもしれない。

祖母を亡くしてから初めて家族と言ってもいいような温もりにふれたのだ。



ただ、ただ嬉しかった。

⏰:08/04/28 22:33 📱:F905i 🆔:fbLOZbSQ


#93 [紫陽花]
「じゃあ僕は行くから……先輩は怖い人じゃないから安心していいよ」

「分かった。じゃあ、せっかくアドレス教えてもらったから連絡する…と……思う」


それを聞くとおじさんは優しく微笑み私に背を向けて歩き出した。

⏰:08/04/29 15:30 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#94 [紫陽花]
私も前に進まなきゃ―――

そしてドアノブに手をかけゆっくりと扉を開けた。

⏰:08/04/29 15:31 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#95 [紫陽花]
――――――――………

―――――――……

「秋野 柚紀さんだね?」

扉の向こうにはYシャツを肘まで捲り上げ黒のネクタイを締めた一人の男性が椅子に座っていた。

⏰:08/04/29 15:32 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#96 [紫陽花]
部屋の中には椅子、机、時計など必要なものだけが置いてあり壁は白く、いたって簡素な造りだ。
だが、窓がない……。
それを除けば普通の部屋なのだが窓という光を取り込むものがなければ、ここはとても重い空間となっている。

⏰:08/04/29 15:32 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#97 [紫陽花]
私が挙動不審とも見られるように部屋を見回していたからか男性は苦笑し、口を開いた。

「どうぞ、座ってください」

そう言って椅子を示され私は言われるまま無言で椅子へと腰掛ける。ちょうど机を挟んで向かい合うような形だ。

⏰:08/04/29 15:33 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#98 [紫陽花]
「私が堂本優人の同僚である浅田賢です。今日はあなたに大切な話があるのでわざわざ来ていただきました」


おじさんの先輩は浅田と言うらしい。髪型は坊主に近い短髪で優人おじさんに比べれば体格はがっちりとしている。捲り上げたYシャツから体育の先生のようなイメージを連想させた。

そして左手にはキラリと光る指輪が。

⏰:08/04/29 15:34 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#99 [紫陽花]
「私に何かついてますかね?」
あまりにも観察しすぎたのか浅田さんは不思議そうな顔で尋ねてきた。

「い…いえ。何でもないです。それより大切な話とは何ですか?」

⏰:08/04/29 15:34 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#100 [紫陽花]
私はいきなり核心を突いた質問を投げかける。回りくどいのは嫌い。それに疑っているのならハッキリと言ってもらった方が反論しやすいから。

浅田さんは机の上に両手をのせ指をくんだ。先ほどまでとは違った雰囲気が小さなこの部屋に立ち込める。

⏰:08/04/29 15:35 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#101 [紫陽花]
「大体のことはお分かりでしょうが、大切な話とは最近あなたの周りで起こった連続殺人事件のことです」

“連続殺人事件”

ニュースや新聞で何度も聞いてきた言葉だが被害者が自分の友達で、今まさに自分が警察所内に居ると言うことで、その言葉は重みを増しているように思えた。

⏰:08/04/29 22:05 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#102 [紫陽花]
浅田さんは私の目を見ながら、なおも話を続ける。

「殺された里山孝太君、赤崎ひとみさんはあなたと幼稚園からの旧友であると私どもの捜査で分かっています。それはあなたも気付いていますよね?」

⏰:08/04/29 22:06 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#103 [紫陽花]
やっぱり警察も気付いていたか。

「はい……そうですけど……」
浅田さんは続ける。

「ならば話は早い。私たちの調査ではまだ殺人は続くと踏んでいます。そして次の被害者は……」

⏰:08/04/29 22:07 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#104 [紫陽花]
そこで浅田さんは息を吸い込んだ。浅田さんが息をのむ瞬間に次の被害者まで絞り込んでいるなんて凄いなと私は感心していた。






「次の被害者は……柚紀さん、あなたかもしれないんです」

⏰:08/04/29 22:08 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#105 [紫陽花]
「…………は?」

次の被害者が私?

驚きを隠しきれない私をよそに浅田さんは先ほどより、ゆっくりと言葉を発する。

⏰:08/04/29 22:08 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#106 [紫陽花]
「私たちの捜査では殺された二人の共通点は幼稚園から高校まで一緒ということ以外分かっていません。
しかしその手がかりから考えられることは、被害者と同じ共通点をもつあなたが次に狙われる可能性が十分高いということなのです」

⏰:08/04/29 22:10 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#107 [紫陽花]
「ちょ、ちょっと待ってください!!頭がまだ上手く整理できてなくて……」

これ以上話が進む前に浅田さんの言葉を遮る。浅田さんはこれからまだ話があるのにと言いたそうに渋い顔をしたがお構い無しに、今度は私がしゃべる。

⏰:08/04/29 22:10 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#108 [紫陽花]
「今日私をここによんだ理由は私を連続殺人事件の犯人だと疑っていたからじゃないんですか!?てっきり疑われると思って……」

「柚紀さんは疑われるような何かをしたんですか?」

浅田さんは優しい顔でパニックになっている私に問う。

⏰:08/04/29 22:11 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#109 [紫陽花]
疑われることなんて無い!!そう主張するかのように私は勢いよく首を横に振る。
首を振るたびに髪の毛が私の頬わ叩き少しばかりイタイ。


「ならば落ち着いてください。あなたに容疑はかかっていません」

⏰:08/04/29 22:12 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#110 [紫陽花]
浅田さんに半ばなだめるように言われる。

「は……い。すいません、話を中断してしまって」

⏰:08/04/29 22:13 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#111 [紫陽花]
感想板

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

読んでいる人がいたら是非、感想板の方に意見・感想などよろしくお願いします!!m(__)m

⏰:08/04/29 23:09 📱:F905i 🆔:beHrmtzs


#112 [紫陽花]
「いえ気にしないでください」

これが大人の対応だろうな。一気にパニックになり慌てた自分が恥ずかしくなり、顔が赤くなるのが分かった。

⏰:08/05/01 00:08 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#113 [紫陽花]
「では、本題に戻ります。私がさっき次はあなたが狙われるかもしれないと言いった事は覚えていますよね?」

私はコクンとうなずく。
自分は疑われないと理解した私は1分前までとは違って冷静に浅田さんの話に集中できた。

⏰:08/05/01 00:09 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#114 [紫陽花]
「私たち警察は次の殺人を未然に防ぎたいのです。だから……柚紀さんにはこれからの生活の中で注意していただきたいことがあります」

ここで浅田さんは一つ息を落とし、そして再び口を開く。

⏰:08/05/01 00:09 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#115 [紫陽花]
「これから絶対に一人で行動しないこと。特に深夜は。
あなたが知っているかどうかは分かりませんが被害者の2人は夜遅く、すなわち深夜に殺害されています。
いずれも1人で外出した際です」

⏰:08/05/01 22:07 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#116 [紫陽花]
そう言えばそうだ。

里山君は塾帰りに、確か赤崎さんはコンビニへ行ったときに殺されたと担任が言っていた気がする。

⏰:08/05/01 22:09 📱:F905i 🆔:KfeREKHI


#117 [紫陽花]
「学校以外で一人で出かけなければならなくなったら我々に言ってください。誰か一人護衛としてあなたについて行かせますから……。たぶんそのときの護衛は、あなたを迎えに行った堂本優人だと思います」


優人おじさんが私の護衛……確かにこの事件の担当だと言っていたが護衛までされるなんて考えてもみなかった。

⏰:08/05/04 13:10 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#118 [紫陽花]
「まあ、堂本はいい奴ですし安心していいですよ。それとすいませんが、これから柚紀さん何度かここへ足を運んでもらうと思います。捜査へ協力して頂きたいのですが……よろしいですか?」

殺人犯に狙われるなんて今の私には実感もなく、どうせ帰宅部な私は放課後も休日も暇を持て余しているのだ。ならば断る理由もない。

⏰:08/05/04 13:11 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#119 [紫陽花]
「これから警察の人が護衛してくださるんですよね?なら私は心強いです。もちろん協力させてもらいます」


「ありがとうございます!!絶対に連続殺人犯を捕まえましょう」

この日は浅田さんと固く握手を交わし私を威圧していた建物を後にした。

⏰:08/05/04 13:12 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#120 [紫陽花]
帰りの電車の中、ガタンガタンと揺れる車内とは裏腹に私の心は落ち着いていた。

それもそのはず、私は疑われてなかったのだから。
自分だけで舞い上がっていた被害妄想だったのだ。

⏰:08/05/04 13:13 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#121 [紫陽花]
それに……




私の右ポケットには唯一の家族への連絡先が眠っているのだから。

⏰:08/05/04 13:14 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#122 [紫陽花]
―――――――………

―――――………

「ただいま」

太陽が目が眩むような光を放ちながら地平線へと沈んでいる時、私は自分の家に帰り着いた。

⏰:08/05/04 13:14 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#123 [紫陽花]
今日は疲れたな――…

そんなことを考えながら外に干していた洗濯物を取り込む。白いシャツからは、ほんのり太陽のにおいがした。

⏰:08/05/04 13:15 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#124 [紫陽花]
洗濯物をたとむと次は夕食の用意。エプロンを着ようと上着を脱ぐときにポケットの紙に気づいた。

「さすがに今は仕事中だよね……」

⏰:08/05/04 13:16 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#125 [紫陽花]
とりあえずアドレス、電話番号を登録しよう。携帯のボタンは無機質な音を立てながら私に一瞬でも温もりを与えてくれた人の情報を自身に書き込む。


登録完了しました


いつもなら見慣れたその文字も今回ばかりは何故か優しく感じる。

⏰:08/05/04 13:17 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#126 [紫陽花]
また後で連絡しよう。
じゃあ夕飯の準備でもするかな

私はフライパンへと手を伸ばした。




_

⏰:08/05/04 13:17 📱:F905i 🆔:jZxzX9dU


#127 [紫陽花]
――――――――………

―――――………

時刻は
午後10時28分

夕飯もすませ明日も学校のため早めにお風呂に入った。季節は冬に向かっているからかお風呂上がりでも一枚上着を着ないと少し肌寒い。

⏰:08/05/05 16:30 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#128 [紫陽花]
「この時間なら大丈夫かな…」

私は携帯を手に取る。もちろん優人おじさんに連絡をするため。

紙に記された連絡先を見る限り私とおじさんの携帯は同じ機種。嬉しいことに、それは両者の電話代はタダになるということを示している。

⏰:08/05/05 16:31 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#129 [紫陽花]
プルルルルル―――……

「………もしもし?」

5回目のコールだろうか、電話の向こう側から声が聞こえた。

その声はどことなく疲れていあの明るい優人おじさんとは違った変な落ち着きがあった。

⏰:08/05/05 16:32 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#130 [紫陽花]
「あのッ……こんばんは、柚紀です。優人おじさんですよね?」

「あぁ!!柚紀ちゃんか。ごめんね、今ちょっと寝てたから声おかしいんだけど優人だよ」

おじさんの声は急に元気になり私の知っているいつものおじさんへと戻った。

⏰:08/05/05 16:33 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#131 [紫陽花]
「今日はわざわざ警察署まで来てもらって悪かったね。でも先輩はいい人だったでしょ?なんかもう僕的にはこの先輩と同じ職業ってことが誇りなんだよね〜。それに…………」

よほど先輩を信頼、いや、尊敬しているのか優人おじさんは電話越しで浅田さんに絶大な評価をしている。

⏰:08/05/05 16:33 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#132 [紫陽花]
おじさんの話が一区切りついたところで私も

「浅田さんは優しかったよ」

と同意する。
そしてそのまま今日あったことを話した。

⏰:08/05/05 16:34 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#133 [紫陽花]
>>132

訂正
×「浅田さんは優しかったよ」
○「浅田さんは優しい人でしたよ」

⏰:08/05/05 16:36 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#134 [紫陽花]
自分は疑われると思ったこと。

逆に狙われていたこと。

休日・放課後は捜査の協力をすることになったこと。


_

⏰:08/05/05 16:36 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#135 [紫陽花]
そして最後に…

「本当に優人おじさんが私を守ってくれるの?」

浅田さんが嘘をつくとは思えないが、私の耳で確かめたい。
本当におじさんが守ってくれるのかを。

⏰:08/05/05 16:37 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#136 [紫陽花]
「もちろん僕が守る。柚紀に危険な思いは絶対にさせない」



その言葉を聞いた瞬間私は自分の胸の奥の方が高鳴るのを感じた。
普通の女の子なら異性から『守る』なんて言われれば胸がときめくのは当たり前。

⏰:08/05/05 16:38 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#137 [紫陽花]
それは私も例外ではなかったみたい。
自分の顔が火照るのが分かる。
自分の胸が高鳴っているのが分かる。

それと同時に何故か恥ずかしさも、こみ上げてきた。おじさんの口調は決して冗談を言っているような軽いものではなく、真っ直ぐで心に響く真剣な言葉だったから。

⏰:08/05/05 16:39 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#138 [紫陽花]
「あ……りがとうございます」
しどろもどろとはまさにこのこと。
どもりながら感謝の気持ちを表す。だが、こんな時に気の利いた感謝の気持ちも言えない自分に嫌気がさした。

「どういたしまして…ってかなり、しどろもどろだね。柚紀ちゃんって意外と面白いなぁ〜」

⏰:08/05/05 16:40 📱:F905i 🆔:RndF6hqo


#139 [紫陽花]
面白い?初めてそんなこと言われた気がする。これは褒め言葉として受け取っていいのだろうか?一人で悶々としているとおじさんが再び口を開いた。

「じゃあ今日はこの辺で電話切るよ。もう夜遅いし」

⏰:08/05/06 18:26 📱:F905i 🆔:3F5UizrQ


#140 [紫陽花]
ハッとして近くにあった目覚まし時計を見る。

時刻は午後11時26分。

時間の流れは思ったより早く、もう一時間近く話していたみたいだった。

⏰:08/05/06 18:26 📱:F905i 🆔:3F5UizrQ


#141 [紫陽花]
「ごめんなさい!!おじさん明日も仕事なのに…」

「いいって。それより柚紀ちゃんは健全な女子高生なんだから早く寝ないとお肌に悪いよ〜」

先ほどの真剣な声とは違って冗談を言うような軽くふざけた声で私をちゃかす。

⏰:08/05/07 20:18 📱:F905i 🆔:7dKzbr3M


#142 [紫陽花]
「大丈夫ですよ!!電話切ったらすぐ寝ますから………あの、またおじさんに電話していいですか」

なんでこんなことを聞いたのかは分からない。もしかしたら無意識のうちに私はおじさんの温もりを求めていたのかもしれない。

⏰:08/05/07 20:19 📱:F905i 🆔:7dKzbr3M


#143 [紫陽花]
「もちろん、いいよ。仕事中で出れないときがあるかもしれないけどね。それと、柚紀ちゃん《おじさん》って呼ぶの止めない?一応ほら、まだ僕20代だし………やっぱり柚紀ちゃんから見れば僕はもうおじさんの域かな〜?」




「ぷっ」

⏰:08/05/08 22:13 📱:F905i 🆔:0SMVaYzI


#144 [紫陽花]
「なッ……柚紀ちゃん笑った!?僕は真剣にお願いしてるのに!!同僚にバカにされたんだよ〜『お前ももう俺と同じオジサンなんだよ!!オジサン!!』なんて言われたんだよね……」

おじさんには悪いが私はおじさんが可愛く思えてしまって口元がゆるむのを我慢することができなかった。

⏰:08/05/08 22:14 📱:F905i 🆔:0SMVaYzI


#145 [紫陽花]
「あは……ご、ごめんなさい。つい可笑しくって。じゃあこれから《優人おじさん》じゃなくて《優人さん》って呼ばせてもらいます」

「分かった。これで同僚にバカにされなくてすむぞ!!」

⏰:08/05/09 21:49 📱:F905i 🆔:BS5FjglM


#146 [紫陽花]
子供のように無邪気に喜ぶ優人さんを見て本当に警察官なのかと疑問に思うが今は警察官である前に一人の人間として、私の家族である“叔父さん”として接してくれているのだろうと私は思った。

「じゃあ、おやすみなさい」

「うん、おやすみ。またね」

⏰:08/05/09 21:50 📱:F905i 🆔:BS5FjglM


#147 [紫陽花]
感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/40-44

感想・意見お待ちしてます

⏰:08/05/09 21:56 📱:F905i 🆔:BS5FjglM


#148 [紫陽花]
こうして私は電話を切った。しばらく携帯を眺め電話での優人さんの余韻を感じる。

だが、その余韻もつかの間で今度は優人さんと話していたときには感じなかった孤独感、一人で部屋にいるときの寂しさが私の胸にこみ上げてきた。

⏰:08/05/11 19:08 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#149 [紫陽花]
もう寝よ……

寂しい夜は寝るのが一番。
二年間も一人暮らししている私には寂しい夜の乗り越え方をちゃんと理解している。

電気を消して毛布に潜り込もうとすると携帯が自分の存在に気付いてほしいと言わんばかりに光を放っていた。

⏰:08/05/11 19:09 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#150 [紫陽花]
メールかな?誰だろ……

本当に現代の携帯電話という代物には驚かされる。

メールを開けばそこに


_

⏰:08/05/11 19:09 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#151 [紫陽花]
堂本優人です!!
いきなりメールして
びっくりした?
今は携帯の電話番号だけで
メールができるんだって!!
便利だよね〜〜笑

一人で寂しいかも
しれないけど
ちゃんと寝るんだよ。
寂しかったら
いつでもメールしていいから

じゃあ、おやすみ
優人

⏰:08/05/11 19:10 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#152 [紫陽花]
こんなメールが届いていた。


本当に不思議……。私が不安で不安でしかたなくて寂しい時、優人さんはまるで私の闇を拭ってくれる。

⏰:08/05/11 19:12 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#153 [紫陽花]


優人さんの予想通り
いきなりで
びっくりしました

今日は本当に本当に
ありがとうございました

また、メールしますね

おやすみなさい
   柚紀


_

⏰:08/05/11 19:13 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#154 [紫陽花]
素早くメールの返信をして毛布にくるまる。私は一人じゃない、そう思うと先ほどとは違った温かさが私の胸の中に溢れ出した。


そしてまもなく私は優人さんの温もりを胸に眠りについたのだった。

⏰:08/05/11 19:15 📱:F905i 🆔:b6dlp6JA


#155 [紫陽花]
――――――――………

――――――………

里山君、赤崎さんが殺されてから二週間。
捜査は全くと言っていいほど進んでおらず行き詰まっていると優人さんは言っていた。

⏰:08/05/12 22:05 📱:F905i 🆔:hR8rX0Hk


#156 [紫陽花]
私の方も捜査に協力……
とまでは言わないが何度か警察署に足を運び犯人の心当たりや、殺された二人に他の共通点がないか、など私の知っていることこの二週間では全て話したつもりだ。

⏰:08/05/12 22:06 📱:F905i 🆔:hR8rX0Hk


#157 [紫陽花]
学校も生徒は最初こそ殺人が起きたという恐怖に震えもしたが、今では依然と変わらない日々を送っていた。

ただ、今でも職員室では警察の人が学校に来る度にその後、会議が行われているが……。

⏰:08/05/13 23:39 📱:F905i 🆔:OQirYp9g


#158 [紫陽花]
ある時陽乃が呟くように言った。

「私たちの友達が二人も殺されたのに世界は何事もなかったかのように進んでるんだね……このまま毎日を過ごせば、全て忘れちゃうのかな?」

本当にそうだ。
里山君、赤崎さんの二人が私たちの目の前からいなくなってしまったのにも関わらず太陽は熱を放ち続けるし雲は変化をし続ける。

⏰:08/05/13 23:41 📱:F905i 🆔:OQirYp9g


#159 [紫陽花]
そう、これが現実。なにが起ころうと日は沈みまた登る。それはたとえどんなに辛い事が起ころうとも変わることのない絶対的な日常。

本当に陽乃が言ったように二人が殺されたという事実を忘れる日が来てしまうかもしれない。

⏰:08/05/16 22:50 📱:F905i 🆔:onveKzNY


#160 [紫陽花]
けれど私は二人を忘れたくない。同じ時間を過ごしてきた仲間とも言える旧友を心の中からも消えさせたくない。

そして里山君、赤崎さんのためにも絶対に犯人を見つけ出し刑務所にぶち込んでやる。

⏰:08/05/16 22:50 📱:F905i 🆔:onveKzNY


#161 [紫陽花]
「……ゆ…きちゃん。柚紀ちゃん!!どうかしたの?名前呼んでるのに全然反応しないんだもん」

陽乃は血色の良い頬を少し膨らませながら不機嫌そうな顔をして私の名を呼んだ。

しまった。
つい考えすぎて陽乃の話を無視していたみたいだ。

⏰:08/05/16 22:51 📱:F905i 🆔:onveKzNY


#162 [紫陽花]
「ごめん。ちょっと考えごとしてて……」

「……そう?」

心の中で謝りながらも視線を陽乃から外し東の空を見上げる。きれいなオレンジ色の太陽が私を包む。



今日もまた一日が始まった。

⏰:08/05/16 22:53 📱:F905i 🆔:onveKzNY


#163 [紫陽花]







その日の夜、突然優人さんから電話があった。

⏰:08/05/18 18:48 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#164 [紫陽花]
「もしもし、優人です。突然だけど明日ひま?ちょっと捜査のことで話したいことがあるから会えるかな?」

今日は週末の金曜日。部活入っていなければ友達との予定も入れていなかった私にとって断る理由もなく、さらに捜査の為ならば進んで協力したい。

⏰:08/05/18 18:48 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#165 [紫陽花]
「大丈夫ですよ。どこに行けばいいですか?」

「じゃあ、とりあえず明日の10時に駅前ね」

駅前?警察署じゃないのか。正直私はあの建物が嫌いだったからその提案は嬉しかった。
あの建物に一歩足を踏み入れると何故かいつも底知れない恐怖感が私の胸を浸食する。

⏰:08/05/18 18:49 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#166 [紫陽花]
その恐怖感は酷いときには内臓に何か異物が埋め込まれているような変な違和感に変わり、また頭を内側から叩くような激しい頭痛に変化することもあった。

「分かりました。駅前ですね」

そう言って今日はそれだけで電話を切った。

⏰:08/05/18 18:49 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#167 [紫陽花]
明日は優人さんに会える。いつもならそれだけでほんのりと私の胸は温もりを作り出すのに今日はどこか違った。まるで警察署に踏み入ったときの恐怖感が私の胸をしめつける。

「………寝よ」

恐怖感を振り払うように毛布にくるまる。少しだけ露出している肌と柔らかい毛布が接触しくすぐったい。

⏰:08/05/18 18:50 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#168 [紫陽花]
「優人さんの話ってなんだろ……」


その疑問の答えが導かれることはなく、私は意識を枕へと委ねた。

⏰:08/05/18 18:50 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#169 [紫陽花]
―――――………

――――……

午前10:08 駅前

いくら日が昇っていようと冬場の午前中はまだ寒い。多くの人々が足早に目の前を通り過ぎる中、私は吹き荒む木枯らしと共に優人さんを待っていた。

⏰:08/05/18 18:51 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#170 [紫陽花]
仕事が忙しいのか約束の時間になったというのに優人さんの影はまだ見当たらない。

時間を間違えたかな?

そう思い昨日のメールを読み返そうと携帯に手を伸ばしたとき見覚えのある人影がこちらに走ってくるのが私の視界に入った。

⏰:08/05/18 18:52 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#171 [紫陽花]
「ごめっ!!待った?」

優人さんが息を切らしてやってきた。優人さんの口から漏れる荒々しい息は白い煙となって外の世界へ消えていく。

「いいえ、私も今来たところです」

⏰:08/05/18 18:53 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#172 [紫陽花]
本当はそんなの嘘。
時間の20分前から待っていた。早く来すぎたと言えばそれだけだが、なんだろう……優人さんに早く会いたいと思えば思うほど私の足は勝手に動き、何度も鏡で髪をチェックをしてしまう自分の手がおかしかった。

「じゃあ行こっか」

少し落ち着いたのか、呼吸は一定のリズムになり優人さんは優しく私に声をかけた。

⏰:08/05/18 18:53 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#173 [紫陽花]
「行くって……どこに?」

「説明は電車の中でするから、とりあえず切符買ってくるね。柚紀ちゃんは確か定期があるから切符はいらないよね?」

「はあ………」

イマイチ状況のつかめない私は気の抜けた返事をしつつも券売機へ向かい切符を購入している優人さんを視界に入れる。土曜というのに電車を利用する人は多いらしく、一枚の切符を買うのに齷齪している姿が見えた。

⏰:08/05/18 18:55 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#174 [紫陽花]
かわいいなぁ……

もう大人で、さらに自分の叔父への形容詞を『かわいい』にするのは普通はおかしいのだろうけど私の場合はもう、なにがなんだか分からなかった。

優人さんの可愛いところ、格好いいところ、無邪気なところ……。もっといろんな角度の優人さんを見たい。

⏰:08/05/18 18:56 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#175 [紫陽花]
人はこれを恋と呼ぶのだろうか。

その人を見ると胸が熱くなる。声を聞くと何故か落ち着く。
早く会いたいと願う。

恋って何だろう?

私は優人さんのことが好きなの?

⏰:08/05/18 18:56 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#176 [紫陽花]
「お待たせ!!人多くってさ〜。それと紅茶買ってきたよ。好きでしょ?紅茶」

私は帰ってきた優人さんの顔を見上げた。サラサラの黒髪が風になびき何とも言えない格好良さが目に入る。それに紅茶まで買ってきてくれて……。その優しさの一つ一つに胸が苦しくなる。

⏰:08/05/18 18:57 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#177 [紫陽花]




私は……優人さんが好き。



_

⏰:08/05/18 18:58 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#178 [紫陽花]
「ん?なんか顔についてる?」
「いやっ……何でもないです!!ありがとうございます」

ダメだ。
このことは気付かれちゃいけない。

⏰:08/05/18 18:59 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#179 [紫陽花]
もし私が『叔父さん』のことを好きだって気付かれたら私はきっと異変な目で見られ、優人さんも困るだけ。

どんなに私の中の恋心という甘い光が外にでたがっても、影のようにひっそりと隠し続けなければならない。

⏰:08/05/18 19:00 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#180 [紫陽花]
「ちょ……柚紀ちゃん!!ぼーっとしてるけど大丈夫?電車来たよ」

「だい…じょうぶです。電車、乗りましょう」

私と優人さんはガタガタと機械音をならしている電車へと足を踏み入れた。

⏰:08/05/18 19:00 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#181 [紫陽花]
感想板

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

意見・感想お待ちしてます
*・⌒.))

⏰:08/05/18 19:04 📱:F905i 🆔:d4TsLrzs


#182 [紫陽花]
―――――――………

――――………

電車の中は程良く暖房が利いて、骨までしみるような木枯らしで冷え切った体を内側から暖めてくれた。

残念にも席は空いておらずドアの近くに二人で立つ。

⏰:08/05/20 19:47 📱:F905i 🆔:dqNudvso


#183 [紫陽花]
空気が吹き抜けるような乾いた音を立てながらドアはゆっくりと閉まった。そして電車は私の住む町の駅を出発した。

「柚紀ちゃん。今日君にわざわざ時間を作って一緒に来てもらったのには理由がある。もちろん捜査の話なんだけど……」

⏰:08/05/20 19:48 📱:F905i 🆔:dqNudvso


#184 [紫陽花]
「何か分かったことがあったんですか!?」

「分かったことと言うか、まだ確信は持ててないけど……。今から事件の鍵を握っていると思われる人に会いに行く」

鍵を握る人……。誰だろう?私も一緒に行くってことは私の知り合いなのだろうか。

⏰:08/05/22 19:51 📱:F905i 🆔:L05XBPwY


#185 [紫陽花]
「その人って…私の知ってる人ですか?」

「う〜ん。覚えてるかどうかは分からないけど絶対に会ったことのある人だよ。大丈夫!!目的地に着いたら自然と分かるから」

途中何度もこれから会う人を教えてほしいと、粘ってみたが結局どこに向かっているのかも、誰に会いに行くのかも詳しいことは教えてくれなかった。
一応捜査の一巻なので詳しいことは秘密らしい。

⏰:08/05/22 19:52 📱:F905i 🆔:L05XBPwY


#186 [紫陽花]
「次の駅だよ。降りる準備しててね」

目的地の駅まで意外と時間がかからなかった。車内に到着のアナウンスが流れたと思うと、またも乾いた空気音と共にドアが左右に開く。

⏰:08/05/23 22:02 📱:F905i 🆔:nVJy9CXc


#187 [紫陽花]
その駅のプラットホームは電車の中の心地よい温もりとは違い突き刺すような風が通り過ぎていた。

「さぁ、行こうか」

一歩前を歩く優人さんに導かれるまま私はホームを後にした。

⏰:08/05/23 22:03 📱:F905i 🆔:nVJy9CXc


#188 [紫陽花]
――――――………

――――………

「優人さん、私ここ知ってる気がする……」

駅をでて5分ほど歩いたところだろうか私は何故かこの街を知っているような、どこか懐かしい匂いを感じた。

⏰:08/05/25 15:34 📱:F905i 🆔:ePvaQ3Ds


#189 [紫陽花]
「もうすぐ分かるよ。あっ!!ほら。見えてきた」

優人さんの視線の先には小さいグラウンドと茶色と白を基調とした可愛らしい建物があった。

「ここは……!!」

⏰:08/05/31 07:12 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#190 [紫陽花]
「思い出したみたいだね。そう、ここは柚紀ちゃんが小さいときに通っていた幼稚園だよ」


よくあの緑の茂った小さな草むらのタンポポで冠を作った。
端の方にある砂山で砂利のないサラサラの砂をあつめままごとをした。
小さな滑り台を友達を押し退けながら滑った。

⏰:08/05/31 07:13 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#191 [紫陽花]
小さな頃の虚ろな記憶が、だんだんと鮮明なものへと代わり、そして私の頭で走馬灯のように駆け巡る。


だが、思い出せなかったのも無理はない。小さい頃、私は幼稚園まで母が車で送ってくれていたため駅からの道など全くと言っていいほど知らなかった。


けれど今確かに思い出した。私はここで時間を過ごしていたのだ。

⏰:08/05/31 07:14 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#192 [紫陽花]
「優人さん……。何でここに?」

「今回の事件で殺された二人は柚紀ちゃんと幼稚園から一緒だったよね?事件の鍵はそこにあると思うんだ。だから殺された二人の共通点とも言える彼らの経歴を一から洗ってみようと思ってね。柚紀ちゃんも少なからず彼らと同じ時間を過ごしたんだから何か気付くことがあるかと思って。それが柚紀ちゃんも一緒に来てもらった理由だよ」

⏰:08/05/31 07:14 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#193 [紫陽花]
なるほど……
事件につながるところから話を進めようってことか。

「じゃあ、行こうか」

優人さんは前を見据え足を一歩動かす。もちろん、私も足を踏み出す。

⏰:08/05/31 07:15 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#194 [紫陽花]
その建物は私たちが入るのを受け入れてくれるつもりなのか、門は開き玄関であろう職員、そして生徒の下駄箱まで一直線の道ができている。

その一本道も両側はプランターに入れられた花々が並び、その中の小さな命たちは背筋をピンと伸ばし溢れんばかりの命の花を満開にさせていた。

⏰:08/05/31 07:16 📱:F905i 🆔:NY7A..BY


#195 [紫陽花]
「ごめんください。先日電話した警察の者ですけど……」

職員玄関から中を見渡す。今日が土曜日ということもあり園内には騒がしく走り回る園児の姿もなければ、それを追い回す保育士さんの姿も見あたらずガランとしていた。

⏰:08/06/02 21:25 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#196 [紫陽花]
「こんにちは―……」

2〜3回声をかけても返事はなく優人さんと私は困り果ててしまった。
そのとき


「はい、は〜い」

⏰:08/06/02 21:25 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#197 [紫陽花]
後ろから声が聞こえた。
その声に多少驚いたものの声の発信者を探す。

「こっちです!!すいません、中庭の手入れをしていたもので」
目の前に現れたのは髪に少しだけ白髪の混ざる初老のおばあさんだった。おばあさんの手には軍手がはめられ指先には茶色い泥がびっしりと付いていた。

どうやら本当に作業をしていたらしい。

⏰:08/06/02 21:26 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#198 [紫陽花]
「すいません、こんな格好で。庭に花を植えてまして……。あら?そこの可愛いお嬢さんは……」

おばあさんの視線はまるで何かを思い出しているような、そう、例えるなら記憶の糸をたぐり寄せているかのような遠いところを見ていた。

⏰:08/06/02 21:27 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#199 [紫陽花]
「あっ……」

思い出したのか、小さな声を漏らす。私の方は依然として思い出せないままなのに……。

「柚紀ちゃん?そうよ!!柚紀ちゃんよね」

⏰:08/06/02 21:28 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#200 [紫陽花]
「はい……」

おばあさんの顔は、やっと思い出したと言う喜びと、私を懐かしんでいるようで笑顔をこぼしていた。

「私よ!!あぁ〜覚えてないのも無理ないわ。柚紀ちゃんはこーんなに小さかったんだもの。私よ、久子!!坂枝久子よ!!!」

⏰:08/06/02 21:28 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#201 [紫陽花]
「あっ………」

突然稲妻か走ったように私の記憶が頭を駆け抜けた。思い出した……。



私を育ててくれた人だ……。

⏰:08/06/02 21:29 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#202 [紫陽花]
「久子先生!!お久しぶりです!!」

懐かしさに全身が震える。
あぁ、先生!!
お世話になった先生!!
私は先生へと一歩また一歩と歩み寄る。

⏰:08/06/02 21:30 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#203 [紫陽花]
久子先生は毎日のようにお母さんがいない、と泣きじゃくる私をいつも優しい言葉で慰めてくれた。

記憶こそ曖昧だが泣きじゃくっていた私の体の中の何かがこの人は私に安心をくれる人だと伝えてくれていた。

⏰:08/06/02 21:31 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#204 [紫陽花]





「感動の再会の途中に水を差すようで悪いんですけど、捜査に入ってもよろしいですか?」

ひょいと後ろから優人さんが私の肩をたたく。

⏰:08/06/02 21:32 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#205 [紫陽花]
「す、すいません!!」

懐かしさのあまり優人さんには悪いが優人さんの存在を忘れていた。久子先生と私、二人の世界、二人だけの過去の懐かしさに浸っていた。

「じゃあ、中に入りましょうか。園内の応接室に案内しますよ」

⏰:08/06/02 21:32 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#206 [紫陽花]
―――――――………

―――――………

焦げ茶色で統一された椅子に机。
壁には小さな枠に囲まれた絵画がいくつも掛けてあり自然と目がそれらを眺めてしまう。

机の上には白い細かな刺繍の施されたレースのテーブルクロス。
至る所に細かな趣向が凝らされており待つことに対して退屈を感じさせない作りだった。

⏰:08/06/02 21:33 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#207 [紫陽花]
「綺麗な応接室だね」

優人さんもこの部屋の居心地の良さに感嘆の言葉を漏らした。



「お待たせしました。紅茶でよろしいですね?」

⏰:08/06/02 21:34 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#208 [紫陽花]
目の前におかれた紅茶の湯気と共に独特の匂いが鼻孔をくすぐる。
すごく気分が良い。

「紅茶まで頂いてすいません。……それでは、本題に入らせていただきます」

優人さんの顔が少し引き締まる。これが仕事の顔だろうか。

⏰:08/06/02 21:35 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#209 [紫陽花]
「最近、高校生が連続して殺された事件を知っていますか」

久子先生は小さくうなずく。

「その被害者が柚紀ちゃんと同級生で、ここの幼稚園の卒園者なんです。できれば被害者の二人、里山孝太君と赤崎ひとみさんの話を少々伺いたいたく柚紀ちゃんとここへ来ました」

⏰:08/06/02 21:35 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#210 [紫陽花]
久子先生は俯いて黙り込んでいる。それもそうだろう。先生が覚えているかは別として自分の教え子が殺されたのだ。それも二人も。

「里山孝太君……赤崎ひとみちゃん……」

不意に先生は立ち上がり部屋の隅の本棚から一冊のアルバムを取り出した。
私はその本を見たことがある。
いや、持っている。

⏰:08/06/02 21:36 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#211 [紫陽花]
里山君、赤崎さん、そして私の写る卒業アルバムだ。

「これを見てください」

久子先生はあるページを開いて私と優人さんに見せた。

そのページは一人一人が写る個人写真の所ではなく、運動会、遠足、休み時間といったみんなと写っている写真のページだった。

⏰:08/06/02 21:37 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#212 [紫陽花]
感想板

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

意見・感想・アドバイス等々お待ちしてます!!

⏰:08/06/02 21:40 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#213 [紫陽花]
「二人とも元気で友達の多い明るい子でした。クラスのリーダー的存在でみんなを引っ張ってくれてましたよ。とてもいい子達でした」

あれ……?
ちょっと待って……
里山君と赤崎さんが元気な子?学校では二人ともおとなしいタイプで隅っこにいたのに。

⏰:08/06/04 22:32 📱:F905i 🆔:wf6EQlCc


#214 [紫陽花]
「そうですか……。これといった特徴はないですね」

優人さんはがっくりと肩を落とす。
結局は無駄足だったみたいだ。

⏰:08/06/04 22:34 📱:F905i 🆔:wf6EQlCc


#215 [紫陽花]
「すいません、お役に立てなくて……」

久子先生もどこか悲しげな表情だった。

沈黙に耐えられず私は紅茶を口に運んだ。

………少しぬるい。

⏰:08/06/06 19:47 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#216 [紫陽花]
それから私達が幼稚園に通っていた3年間のアルバムを代わる代わる開き先生の話を聞いた。

私の記憶に無いことも先生は話してくれ時折笑いがでるほどに楽しく、なぜか心が安まる時間を過ごせた。

⏰:08/06/06 19:49 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#217 [紫陽花]


「ごめんなさい!!ちょっとトイレお借りします」

話を始めて1時間ほどたった頃だろうか私は席を立った。久子先生は優しく微笑み
「奥の職員トイレを使いなさい」と説明してくれた。

⏰:08/06/06 19:50 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#218 [紫陽花]
応接室を出て幼少時代の少ない記憶の糸をたぐり職員トイレを探す。園内の作りはほとんど変わっておらず30秒もたたないうちに職員トイレを見つけ出した。

ただトイレを見つけただけなのだが、ちょっとした優越感が私を満たす。

⏰:08/06/06 19:52 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#219 [紫陽花]
訂正
>>218

×優越感が私を満たす

○優越感が私を満たした

⏰:08/06/06 20:00 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#220 [紫陽花]
――――……

――……

手を洗いトイレを後にする。トイレはその建物の内側の姿を現す、とよく言われるが、ここは非の打ち所がないほど綺麗なトイレだった。

この清潔さは職員トイレだからかもしれないが、少なからずここを利用する客人には好印象だろう。

⏰:08/06/08 14:07 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#221 [紫陽花]
そんな清潔感あふれるトイレを後にして応接室へと向かう。
園内はやはり静まりかえっていて私の足音すら静寂を破る雑音にしか聞こえない。私は自ずと足音をできるだけ出さないようにして静寂を守っていた。

少し歩けばすぐに応接室へと帰り着いた。中に入ろうとドアに手をかける。開けようとしてドアノブを少し回すと優人さんの声が漏れてきた。

⏰:08/06/08 14:09 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#222 [紫陽花]
「今日はもう一つ聞きたいことがあるんです……あの、柚紀ちゃんの事なんですが……」

私のこと?
ドアノブを回す手を止める。
盗み聞きしちゃ悪いと思いつつも声のトーンを低くした優人さんの声に耳を傾けてしまう。

⏰:08/06/08 14:10 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#223 [紫陽花]
「殺害された二人とはまた別に柚紀ちゃんの幼稚園時代も知りたいんです……」

「………」

優人さんの声は小さいながらも聞き取れる範囲内だ。だが一緒にいるはずの久子先生の声がしないということは口を開いていないのだろうか?

⏰:08/06/08 14:11 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#224 [紫陽花]
「………分かりました。お話しましょう」

久子先生の声が聞こえた。先生の声は優人さんよりもか細く、扉の隙間に耳を押し当てないとよく聞こえない。

しかし、こんな風に言うのも変なのだが先生の声は小さいけれど聞き取りやすく耳障りの良い、柔らかい声だった。

⏰:08/06/08 14:12 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#225 [紫陽花]
「秋野柚紀ちゃん……あの子は……怖い子でした。この写真を見てください」


「……………かわいい笑顔で普通の女の子みたいですけど」

私には写真は見えないが今二人は私の写真を見ているのだろう。優人さんが私の写真の感想を言うまで少しだけ間が空いていた。

⏰:08/06/08 14:13 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#226 [紫陽花]
それにしても、私が怖い?話が全然見えない。私が悩んでいる間にも久子先生は話を進めた。

「この写真砂場で写ってるでしょ?この時、柚紀ちゃんなにをしていたと思いますか?」

「えっと………普通に砂遊びじゃないんですか?こんなに笑顔ですし」

⏰:08/06/08 14:15 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#227 [紫陽花]
「他の子供達はトンネルを作ったり、泥団子作ったりしていました。でも柚紀ちゃんは違ったんです……柚紀ちゃんはとっても楽しそうに蟻を潰していたんです……」


は?私が蟻を?
自慢じゃないが私は虫が大の苦手だ。それはもう虫を目にするだけで鳥肌がゾクゾクと立ってその場から逃げ出したくなるほどなのだ。

⏰:08/06/10 16:29 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#228 [紫陽花]
「確か柚紀ちゃんはすごく虫が嫌いなはずじゃ……」

優人さんもそのことを疑問に思ったらしく久子先生に確認した。
以前私は優人さんの前で虫と遭遇し大声を上げたことがあったから、私が極度の虫嫌いだとは強烈に優人さんの記憶に残っているのだろう。

⏰:08/06/10 16:30 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#229 [紫陽花]
「分かりません。何年も前のことですから、その時から柚紀ちゃんが虫を嫌っていたかどうかは分からないのです。けれど本当に彼女は触ることなんて絶対に嫌なはずの蟻、いや、虫を指で潰していたんです」

「……なぜ、そんなことを?」

⏰:08/06/10 16:31 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#230 [紫陽花]
「柚紀ちゃんに言ったんです。『何でそんなことするの?蟻さんも生きてるんだから命を無駄にさせちゃ駄目よ』と少し注意の意味も込めて言いました。すると彼女……」

「柚紀ちゃん何て言ったんですか!?」

⏰:08/06/10 16:32 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#231 [紫陽花]
「楽しんでるんだから邪魔しないで、と……」

楽しいから?
幼稚園時代と言えば人間に対してでも動物に対してでも少なからず生き物に興味を持つ年齢だろう。だが私の行為は興味があるとか、そう言う可愛らしいものが理由じゃない。

命を踏みにじることに楽しさを見いだしているただの狂気じみた幼稚園児……。

⏰:08/06/10 16:33 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#232 [紫陽花]
「でも、柚紀ちゃんはそれだけじゃ止まらなかった……」

久子先生はなおも話を続ける。
「最近こそ蟻を潰すだけでした。でも、だんだんその酷さはエスカレートしていって……卒園間近になると他の園児を殴る、蹴る、当たり前。虫を潰すのも蟻から天道虫へ、紋白蝶へ、蛹の中の青虫を引きずり出したりも……。

⏰:08/06/10 16:33 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#233 [紫陽花]
一番酷かったのは……。他の子を階段から突き落として膝から滴る血を見ていました。突き落とされた子は泣いているんですよ!?
それなのに……私達を呼びにも来ない。謝ることもしない。慰めもしない。その時泣いている子に気付いて柚紀ちゃんを発見したのは私でした。
やっぱり彼女は笑っていたんです。唇の端を吊り上げて目は狂気に満ちていました」

⏰:08/06/10 16:34 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#234 [紫陽花]
「柚紀ちゃんにそんな過去があったなんて。なんて残酷な……。今の柚紀ちゃんからは想像できませんよ……」

「えぇ、その時期は一日に一度は子供たちから柚紀ちゃんが怖い、と話を聞いていました。ですが……」

⏰:08/06/10 16:34 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#235 [紫陽花]
「どうかしたんですか?」

「急にその残酷な性格は治ったんですよ。本当に急に。砂場に行っても蟻を潰さなくなりました。思いやりのある、人のことを一番に考えられるよい子になったんです」

「なぜ……ですか…?」



「……柚紀ちゃん事故にあったんですよ」

⏰:08/06/10 16:35 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#236 [紫陽花]
「事故……あっ!!以前僕の姉、柚紀ちゃんからの母親から聞いたことがあります。柚紀ちゃんは川に落ちたんですよね?」

「そう、ですが正しくは突き落とされたんです……」

⏰:08/06/10 16:36 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#237 [紫陽花]
「では、事故じゃなくて事件……!?」

「事件が起きたのはちょうど柚紀ちゃんの最後の秋の遠足の日です。湖のある大きな公園にハイキングに行ったんです。紅葉が綺麗でした……その日も柚紀ちゃんの目は妖しげに光り何かおかしなことを考えているようでした」

⏰:08/06/10 16:36 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#238 [紫陽花]
「ここからは警察の方に聞いた話なんですが、柚紀ちゃんは湖で二人のお友達と遊んでいたらしいんです。そして、その二人が湖に柚紀ちゃんを……突き落としました」


「あの、その二人とは……?」

⏰:08/06/10 16:37 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#239 [紫陽花]
「突き落とした二人は……里山孝太君と赤崎ひとみちゃんなんです!!」


「なっ……!!今回の事件の被害者たちが柚紀ちゃんを殺そうとしたなんて……」

⏰:08/06/13 22:48 📱:F905i 🆔:Bv0BVHsM


#240 [紫陽花]
「それから柚紀ちゃんは大人しくなり、虫も潰さなくなりました。でも、その代わりに水が怖くなったみたいなんです」


「……なるほど。柚紀ちゃんを突き落とした二人が、今回の事件の被害者か。偶然にしては出来すぎてる……」

⏰:08/06/13 22:49 📱:F905i 🆔:Bv0BVHsM


#241 [紫陽花]








久子先生は何を言っているの?

⏰:08/06/13 22:50 📱:F905i 🆔:Bv0BVHsM


#242 [紫陽花]
優人さんも何を考えてるの?


背中に冷たい汗が流れる。
たった10分そこら話を立ち聞きしていただけなのに、どうしようもない疲労感とけだるさが私を襲う。

⏰:08/06/15 18:25 📱:F905i 🆔:xzllUqIY


#243 [紫陽花]
私が水がに苦手なのは確かだ。

めまい、頭痛……
それらの原因は私が水に突き落とされた時の苦しい過去がフラッシュバックされて陥っていたものだったのか。

⏰:08/06/15 18:26 📱:F905i 🆔:xzllUqIY


#244 [紫陽花]
膨大な量の記憶を甦らせたせいで頭がクラクラする。
頭だけではない。
心の奥底の、そう、開けてはならない扉がこじ開けられるような胸にざわつく異物感がさざ波のようにこみ上げてくる。

キモチワルイ……

⏰:08/06/16 20:55 📱:F905i 🆔:CV.Lh/XM


#245 [紫陽花]
「それにしても柚紀ちゃん、ちょっと遅いですね。僕ちょっと見てきましょうか?」


「そうですね。私も行きましょうか」

⏰:08/06/16 20:55 📱:F905i 🆔:CV.Lh/XM


#246 [紫陽花]
まずい。
私は本能的にここで話を聞いていたことがバレてはいけないと察知した。
二人が椅子から立ち上がる音が聞こえる。
私の手は反射的にドアノブを回し扉を押す。

⏰:08/06/16 20:56 📱:F905i 🆔:CV.Lh/XM


#247 [紫陽花]
「わあっ!!」

扉を開けた瞬間優人さんの顔が目の前にあった。
優人さんはさっきまで捜査として話をしていた人物の顔が目の前にありビックリしていたようだけど私の方は立ち聞きしていた事がバレてはいけないと、どこか冷静だった。

⏰:08/06/16 20:57 📱:F905i 🆔:CV.Lh/XM


#248 [紫陽花]
「優人さん!!どうしたんですか?あっ、トイレですか?」

少しふざけた語調で優人さんに問いかける。
不自然ではないだろうか

⏰:08/06/18 19:42 📱:F905i 🆔:BpbR/gyg


#249 [紫陽花]
「えっと、あんまり遅いから柚紀ちゃんを探しに行こうとしたんだ……」


「ごめんなさい!!あんまり懐かしかったからちょっと歩き回っちゃって……」

⏰:08/06/18 19:43 📱:F905i 🆔:BpbR/gyg


#250 [紫陽花]
もちろん嘘。
ねぇ、優人さん。
何で目を合わせてくれないの?私自身も驚いた『秋野柚紀』と言う人間の過去の残虐さに脅えているの?

「優人さん…帰りましょうか?」

⏰:08/06/18 19:43 📱:F905i 🆔:BpbR/gyg


#251 [紫陽花]
今私が優人さんに言える言葉はこれだけ。お願いだからそんな目で私を見ないで……

「うん、そだね……じゃあ今日は失礼します。捜査にご協力ありがとうございました」

優人さんは久子先生の方を向いて一礼する。

⏰:08/06/18 19:44 📱:F905i 🆔:BpbR/gyg


#252 [aa]
uaffffffhghhfghfhfg

⏰:08/06/19 02:01 📱:PC 🆔:S6BBE5EI


#253 [紫陽花]
「いえいえ、何も手掛かりになるようなことをお話出来なくて申し訳ないです」


これが大人の会話だろうか。手掛かりがなかった?嘘つき。私の過去を優人さんに話したくせに。

⏰:08/06/22 23:51 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#254 [紫陽花]
よくよく考えてみれば、さっきの久子先生の証言でまた私は疑われることになるかもしれない……。

そう考えただけで体にゾワゾワと悪寒が走る。もう、あんなプレッシャーを感じたくない。

⏰:08/06/22 23:52 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#255 [紫陽花]
「じゃあ失礼します!!」


悪寒を振り払うように私は優人さんの右袖を強く引っ張って歩き出した。

気分が悪い。

⏰:08/06/22 23:52 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#256 [紫陽花]
「あわわ!!ちょ……柚紀ちゃん!!」

いきなりのことだったので優人さんも驚き後ろで何か言っている。

久子先生も何か言っているがよく聞こえない。いや、意識的に先生の言葉を耳に入れないようにしていたのかもしれない。

⏰:08/06/22 23:53 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#257 [紫陽花]
これ以上私の中を引っかき回してほしくない。

こうして、私達は幼稚園を後にした。

⏰:08/06/22 23:53 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#258 [紫陽花]
―――――……

―――……

帰りの電車の中、優人さんは必要以上に私に話しかけてきた。

⏰:08/06/22 23:54 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#259 [紫陽花]
優人さんと少しでも長くしゃべれるのは嬉しいけれど、何か内側を探られているような私の中の何かを探しているような、変な違和感を感じる会話だった。

誕生日、血液型、好きな色……見え見えの上辺だけの会話。

⏰:08/06/22 23:54 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#260 [紫陽花]
優人さんはやっぱり私を疑ってるのだろうか。
そう考えた途端に胸が締め付けられるように痛んだ。

……いやだ!!
私を捜査の対象としてみないで!!
いつもみたいに、たわいのない話で『叔父さん』と『姪っ子』と言うささやかで、でも確かな繋がりを作って!!

私は優人さんと一緒にいられるなら『彼女』じゃなくて『姪っ子』でもいいの……。

⏰:08/06/22 23:55 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#261 [紫陽花]
地元の駅に着き、車内からホームへと降り立つ。しびれるような木枯らしが私の皮膚に寒さを伝え、その寒さが私の体内を一瞬で冷やしていく。

「さむっ……」

思わず口にするとより一層、身体に寒気が駆け巡る。

⏰:08/06/22 23:56 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#262 [紫陽花]
「じゃあ今日はこれで帰りますね」

本当は近くのファミレスや喫茶店に入って体を暖めながら、たくさん話したかったし、もっと一緒にいたかった。

⏰:08/06/22 23:57 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#263 [紫陽花]
けれど優人さんは今、仕事で私と一緒に居るわけでプライベートなことは勤務中に出来ない。

それに私自身、優人さんの近くにいたいと思う自分と今日は早く家に帰って一人になりたいと思う自分もいた。
つい30分ほど前に久子先生が話していた私の過去をちょっと整理しないと頭がおかしくなりそうだったから。

⏰:08/06/22 23:58 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#264 [紫陽花]
「それでは、また今度……」

今度なんてあるのかな?
優人さんは私を疑ってるかもしれないのに?
極度のネガティブ思考に自分でも笑いがでる。

⏰:08/06/22 23:58 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#265 [紫陽花]
「………柚紀ちゃん!!」

私が優人さんに背を向け立ち去ろうとするとそれに逆らうかのように私は呼び止められた。

⏰:08/06/22 23:59 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#266 [紫陽花]
「家まで送るよ……それにこのご時世、女子高校生が夜道を独りじゃ危ないでしょ?」

少し含みのある笑みをこぼしながら優人さんは私の隣へと足を進め、横に並んでくれた。

⏰:08/06/23 00:00 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#267 [紫陽花]
もちろん優人さんが車道側。私を車から守るように隣にきてくれた。




だめですよ、そんなことしちゃ……。

⏰:08/06/23 00:00 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#268 [紫陽花]
私はまた優人さんの事を好きになってしまう。

あなたの行動、言葉、気遣い、全てが私を一人の女にさせる。

かわいい家族としての姪っ子でもいいと考えていたわたしの決意をあっさりと壊し、かわりに期待という名の甘い誘惑を残していく。

⏰:08/06/23 00:01 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#269 [紫陽花]
だけど私の体は思ったより素直で

「お願いします」

と声をかけた後、少し、ほんの少しだけ、肩が触れ合うまで優人さんの近くへ行ってしまうのだった。

⏰:08/06/23 00:02 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#270 [紫陽花]
感想板

今後の予定について少し書いています(・∀・)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

⏰:08/06/23 00:07 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#271 [紫陽花]
――――――………

―――――……

喉がイタい。
嘔吐した後の胃酸がこみ上げてきたようなヒリヒリとした焼け付く痛みが私を襲う。

それに声も出ない。
だが喉が痛くとも、声がでなくとも、やっぱりこれは夢だな、なんて不思議と納得している自分が面白い。

⏰:08/06/24 23:13 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#272 [紫陽花]
もう夢には馴れてしまった。

いつものように影も光りもない無の世界の中に私は存在していた。

そして、いつものように叫び声が聞こえ始めた。

⏰:08/06/24 23:14 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#273 [紫陽花]
いやだぁぁああ!!

お願いだから助けて!!!!


ゴキ


やめ……やめて……

許してぇぇええ!!!

ゴキ

⏰:08/06/24 23:15 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#274 [紫陽花]
断末魔
その言葉がよく似合っている。
叫び声よりも奇声に近い声は、いつか夢のように知っている声だった。

いつもならこの声を発している人物を思い出せない。
それに、もうすぐ私は目覚めるだろう。

⏰:08/06/24 23:15 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#275 [紫陽花]
けれど今日はなかなか現実に引き戻される気配がない。

………なに、この臭い

私はあたりを包むこの異臭に顔をしかめた。いや、暗闇で何も見えないのだがきっと私は顔をくしゃくしゃにして、この異臭を感じているだろう。

それほどに臭い。

⏰:08/06/24 23:16 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#276 [紫陽花]
肉が腐ったような腐乱臭。
その臭いのせいか周りの空気もぬるぬると私の表面に纏わりつく。腐った臭いが、まるで蜘蛛の糸にとらえられた獲物のように私の体中をぐるぐると包んでいるようだ。


そんな事を考えていると次の瞬間、一際大きな叫び声が辺りを揺らした。

⏰:08/06/24 23:17 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#277 [紫陽花]
やめて!
やめて!
やめて!
やめて!
やめて!

柚紀ちゃんやめてぇぇえええ!!!


ゴキ

⏰:08/06/24 23:17 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#278 [紫陽花]
……今、私の名前を呼んだ?






「ギャアァァア!!!!」

⏰:08/06/24 23:18 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#279 [紫陽花]
頭が痛い!!
頭の中の記憶という扉が乱暴にこじ開けられていく感触に私自身も声を荒げる。

目の前がちかちかする。
吐き気のするめまい、頭を殴られたような頭痛。まるでプールに入ったときのような感覚が私を襲う。


これは夢だと頭は分かっていても痛みは段々強くなるばかりで、さらに悪いことにあの腐った臭いも格段に強くなってきた。

⏰:08/06/24 23:19 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#280 [紫陽花]
黒しかない闇の世界なのに私の瞼の裏は赤、黄色、青の原色が瞬きをするたびに交互点灯を繰り返す。

それから間もなくして、その3色は重なり合い一枚の風景となってスライドショーのように瞼の裏に次々と現れだした。

⏰:08/06/24 23:19 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#281 [紫陽花]
何これ……!?


そのスライド全てには私と思われる人物が写っていた。

背格好、髪型すべてをとっても間違いなく《秋野柚紀》なのだが、何か、毎朝鏡の前で見る《秋野柚紀》の顔とは何か違う。

⏰:08/06/24 23:20 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#282 [紫陽花]
私の目ってこんなにつり上がっていただろうか?

私の瞳はこんなに狂気に満ちて炯々と光っていただろうか?

私の口はこんなに異常なほど裂けていただろうか?

⏰:08/06/24 23:20 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#283 [紫陽花]
そしてなにより……

この秋野柚紀と思われる人物が一心に両手で締め上げているのは、人の……首でしょ?

⏰:08/06/24 23:21 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#284 [紫陽花]
『死因は首を絞められての窒息死。そして首の骨は折られていた』


優人さんの言葉がぐるぐる頭の中を駆け巡る。

目の前のスライドは全て赤一色に染まり、私は赤い世界に引きずり込まれた。

⏰:08/06/24 23:22 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#285 [紫陽花]
目の前が少し黒ずんだ赤に染まったとき私は唐突に理解した。

あの異常な臭いは血の臭いだったんだ。

そして、里山君、赤崎さんを殺したのは……




ワタシ?

⏰:08/06/24 23:23 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#286 [紫陽花]
――――――………

――――………

「夢…か……」

時計を見れば時刻は6時半。今から急いで準備をすれば陽乃と待ち合わせしている電車に乗れるだろう。

⏰:08/06/24 23:23 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#287 [紫陽花]
……けれど、
体を起こすこともままならないほど身体がだるい。私からは冬場にしては異常なほどの汗がパジャマ代わりのジャージを湿らせていた。

私は枕元においてあった携帯を開き陽乃宛てにメールを作る。

⏰:08/06/24 23:24 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#288 [紫陽花]
今日は学校を休むという事と返事はしないでいいから、と本文に書き送信ボタンを軽く押す。

送信完了

その文字を見てからゆっくりと携帯を閉じた。

⏰:08/06/24 23:25 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#289 [紫陽花]
それにしても……
なんてリアルな夢だったんだろう。今も自分からあの腐った血の臭いがしているようで胸くそ悪い。

鼻には血の臭い、
瞼には赤い世界、
両手には首を絞めている感触、
何もかもが身体に染み着いているようで身震いがする。

⏰:08/06/24 23:25 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#290 [紫陽花]
「私が2人を殺したの……?」

夢の中の私は確かに誰かの首をぎりぎりと締め付けていた。そして、時折聞こえたゴキ、ゴキと言う音は骨の砕ける音だったのか?

もう何がなんだか分からない。

⏰:08/06/24 23:26 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#291 [紫陽花]
久子先生は私が蟻を潰していたときの顔は狂気に満ちていたと言っていたが夢の中の私は『狂っている』という言葉がピッタリの恐ろしい、狂気に満ちた形相だった。

⏰:08/06/24 23:27 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#292 [紫陽花]
……ちょっと待って。

あのスライドのように写し出された私の行為は本当に夢の中の世界なのか?

私が夢の中だと思っているだけで、あれは現実に、リアルな私が存在しているこの世界で起こった事じゃないのか!?

⏰:08/06/24 23:28 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#293 [紫陽花]
もう分からない……
考えたくない……

「優人さん助けてよ……。本当に私が殺したの?」


部屋には時間を刻む時計の音だけが響いていた。

⏰:08/06/24 23:28 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#294 [紫陽花]
―――――………

――――……

あのリアルな夢を見てから夢見が悪くなった気がする。

幼稚園へ捜査をしにいってから3日がたつ。相変わらず学校へ行き、意味の分からない公式を覚えたりしたが日に日に私は睡眠時間が減っていた。

⏰:08/06/24 23:29 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#295 [紫陽花]
夜に寝ていても、授業中にうつらうつらと軽く眠っただけでもあの赤い夢が私を襲う。

夢の中の血の臭いに耐えられず目を覚ます。

毎日がそれの繰り返しだった。

⏰:08/06/24 23:30 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#296 [紫陽花]
「ちょっと柚紀ちゃん大丈夫!?」

放課後、あれほど心配をかけたくなかった陽乃にも体調のことを聞かれてしまった。

「ん…大丈夫。最近寝不足なんだよね」

⏰:08/06/24 23:31 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#297 [紫陽花]
陽乃とそんなやりとりをしているとポケットの中に入れていた携帯が震え始めたことに気付いた。

メール受信中

「メールだ……」

誰からだろう?
心の片隅には優人さんからのメールだったらいいな、などと砂糖菓子のように甘い期待を抱いていることで、やはり私は優人さんが好きだといつも気付かされる。

⏰:08/06/24 23:31 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#298 [紫陽花]
本当は学校に携帯の持ち込みは禁止なので、ポケットから鞄の影に移動させ受信完了の文字と同時にメールボックスを開く。

「メール?誰から?」

陽乃が顔をこちらに向けて画面をのぞき込むような形で聞いて来るが、正直私はそれどころじゃい。

⏰:08/06/24 23:33 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#299 [紫陽花]
なぜなら……
私の妄想という名の甘い期待は見事に現実のものとなって私に近づいた。


そう、優人さんからメールが来たのだ。

⏰:08/06/24 23:33 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#300 [紫陽花]
いつも仕事に追われ深夜しか空き時間のない優人さんから平日の昼間にメールが来るなんてすごく珍しい事。
ということは、緊急の連絡か何かだろうか。

頭では私的なメールではなく公的な、捜査に関わるメールだと分かっていても優人さんからのメールだと言うだけで私の脈拍は2倍近く増えてしまう。

⏰:08/06/24 23:34 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#301 [紫陽花]
はやる気持ちで内容を読み上げる。もちろん内容は捜査のことで今から警察署に来てほしいというものだった。

「ごめん、陽乃!!急用入ったから先に帰るね。ホントごめん!!」

教科書を手に取り、無造作に鞄につっこむ。陽乃には悪いが、今は一秒でも惜しい。早く優人さんに会いに行かなきゃ。

⏰:08/06/24 23:34 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#302 [紫陽花]
「そっかぁ〜って本当は悪いと思ってないでしょ!?メールが来てから柚紀ちゃんのほっぺた緩みすぎ!!」

「……うそ」

「ホント!!よっぽど嬉しい急用みたいだね〜」

陽乃は少し疑り深い目、いや、冷やかしの目でこちらを見てくる。

⏰:08/06/24 23:35 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#303 [紫陽花]
そんなにニヤニヤしていたのだろうか。右手でほっぺたをさすってみる。

「ほら、自分の顔で遊んでないでとっとと急用とやらをすませておいで!!」

陽乃に背中を押され教室から一歩、また一歩と押し出される。

⏰:08/06/24 23:36 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#304 [紫陽花]
「バイバイ!!」

陽乃もこちらに向かって手をひらりひらりと振る。


そして私は夕焼けの光が差し込む廊下を優人さんに会うために一人駅へと駆け出した。

⏰:08/06/24 23:37 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#305 [紫陽花]
――――――………

――――………



「やっぱり……逮捕するんですか?」

「今、彼女は限りなく黒に近いグレーだ。今日話を聞いてみて怪しい部分があれば逮捕とまでは行かないが上に逮捕状を申請していいか審議にかけるよ」

⏰:08/06/24 23:37 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#306 [紫陽花]
「そうっすか……」

「そう気を落とすな。まぁ、お前はかわいい姪っ子が逮捕されるかもしれないって事で落ち着かないだろうが、あくまでも今は仕事中なんだ。よけいな私情は持ち込まない方がいい。……余計、辛くなるからな」


「先輩……、分かりました」

⏰:08/06/24 23:38 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#307 [紫陽花]
――――――………

―――――……

優人さんからメールをもらって30分後私はやっと警察署に着いた。私の口から洩れる息は少し荒くそして真っ白で、どれだけ急いだかをあからさまに表していた。

⏰:08/06/24 23:39 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#308 [紫陽花]
「柚紀ちゃん!!」

建物の中から優人さんがこちらへ駆けてくる。夕暮れ時の鮮やかな太陽の光で優人さんの着ている黒のスーツが少し橙に染まり何とも言えない綺麗な影を出している。

⏰:08/06/24 23:40 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#309 [紫陽花]
「ごめんね、急に呼び出したりして」

「い、いえ……」


どうしてだろう。

優人さんの顔を直視できない。

⏰:08/06/24 23:41 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#310 [紫陽花]
いつもニコニコと笑っていて緩んでいる口元もきつく引き締まっていて、見るたんびに曲がっていたネクタイも今日は真っ直ぐに締まっている。

だけど優人さんの瞳はいつも以上に優しく、全てを包み込んでくれるような暖かさを感じさせる以前までの優人さんと同じ目だった。

⏰:08/06/24 23:41 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#311 [紫陽花]
「じゃあ行こうか」

優人さんは踵を返し建物内へと歩んでいく。
私はおいてかれまいと小走りで後を追った。

⏰:08/06/24 23:42 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#312 [紫陽花]
「今日はちょっと話したいことがあったんだ……。でも、会議室が空いてなくてね。少し狭い部屋で話をすることになるけどいい?」

「あっ、全然大丈夫です」

その部屋は2階にあるらしく今回はエレベーターを使わず階段を歩くことになった。

⏰:08/06/24 23:43 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#313 [紫陽花]
階段を登りきり、左右に分かれた道の左へと優人さんは私を案内した。

「ここだよ」

小会議室、そう書かれた扉の前で足を止め優人さんはドアを開ける。

⏰:08/06/24 23:43 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#314 [紫陽花]
中には長方形の長机が向かい合っておかれ、パイプ椅子が6つ置かれていた。

やっぱり殺風景な部屋。

だがこの前話をした部屋とは違い大きな窓が向かい側の壁に配置され、その窓の反対側には鏡が壁に作られていた。


「久しぶりです。秋野柚紀さん」

⏰:08/06/24 23:44 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#315 [紫陽花]
私が部屋を見回していると不意に後ろから声がした。

「あなたは確か優人さんの先輩の刑事さん……」

「浅田です。今日はわざわざ署まで来ていただいて感謝します」

「いや、あのっ、すいません……」

⏰:08/06/24 23:44 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#316 [紫陽花]
「あは……げほ、げほ」

浅田さんにいかにも警察っぽい言い方をされ、どうやって返事をしていいか分からず謝ってしまった。

隣で優人さんは口を押さえて堰をするふりをしながら笑っている。

⏰:08/06/24 23:45 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#317 [紫陽花]
優人さんに笑われるなんて……。

私は自分で顔がどんどん赤くなっているのが分かった。

⏰:08/06/24 23:46 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#318 [紫陽花]
「では、本題に入りましょうか。この真ん中の席へおかけください」

浅田さんが椅子へ座るよう促す。真ん中の席とは左手に大きな窓、右手には鏡が置かれていて言葉の通り部屋の中心で長机の真ん中の席だった。

椅子を引き浅田さんを目の前に座る。優人さんは私の左手、つまり窓側に手を前に組んで立っている。

⏰:08/06/24 23:46 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#319 [紫陽花]
それにしても……なんだかこの部屋に違和感を感じる。誰かに見られているような、それも複数の人の視線を感じる。

この部屋には私と浅田さん、優人さんしかいないのに……。


そんな私をよそに浅田さんは淡々と今分かっていること、これから調べることなどを話している。

⏰:08/06/24 23:47 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#320 [紫陽花]
そして最後にこう言った。

「我々警察は今あなたを一番に疑ってます。今日ここに来てもらったのは被害者の友達としての柚紀さんではなく、お友達を殺したかもしれないあなたの話が聞きたかったのです」

優人さんは歯を食いしばりながら床を見ている。浅田さんは真っ直ぐに私を見つめている。

⏰:08/06/24 23:48 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#321 [紫陽花]
何か言わなきゃ……。このまま黙っていたら私が疑われたまま犯人扱いされてしまう。

「いつ……から私を疑ってたんですか?」

自分の心臓の音がドクドク聞こえる。冷や汗をかいているのも分かる。そう、まるであの血の臭いの夢から覚めた朝のように……。

⏰:08/06/24 23:49 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#322 [紫陽花]
「疑い始めたのは最初からですよ。被害者とあなたは接点が多すぎる。それに、殺された2人は過去にあなたを殺意を持って突き落としたんだとか……」



「………え」

⏰:08/06/24 23:49 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#323 [紫陽花]
なんでそこまで知ってるの?
優人さんが捜査報告として浅田さんに教えたの?

優人さんに確認をとりたくて左を向くが依然として歯を食いしばり、今は下を向いているだけだった。

⏰:08/06/24 23:50 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#324 [紫陽花]
「堂本があなたと幼稚園に話を聞きに行く1時間ほど前に私達はあの幼稚園に行っていたんですよ。
それで監視カメラを設置し、あなたがあの話を聞いてどんな反応をするか見ていました。
あなたがトイレから帰ってきたときにちょうど堂本が話し出したでしょう?
タイミングが良すぎだと思いませんでしたか?
坂枝久子も捜査のためならと言って協力してくださいました。

あなたがトイレに行くように紅茶を勧めたりとね」

⏰:08/06/24 23:51 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#325 [紫陽花]
じゃあ、なに?
全部仕組まれていたってこと?
最初から優人さんは私を疑って騙していたの?

「優人さん、本当に?本当に私を疑って騙していたの?」

優人さんは黙っている。

「答えて!!!」

⏰:08/06/24 23:52 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#326 [紫陽花]
答えてよ……。
いつもみたいに私をおちょくって楽しんでるんでしょ?笑って、嘘だよって言って……。

「本当なんだ。僕が柚紀ちゃんを疑っていたのは事実。幼稚園に行ったときもカメラで見てた先輩の合図で柚紀ちゃんの事を坂枝さんに聞き始めた事も事実。……でも!!」

⏰:08/06/24 23:53 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#327 [紫陽花]
優人さんはいきなり頭を上げた。そして泣きそうな瞳は私を見つめている。

やっと目を合わせてくれた。

優人さん好きだったよ。

でもね、もうダメ。

優人さん私のことを疑ってたんでしょ?

私のこと騙していたんでしょ?

⏰:08/06/24 23:54 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#328 [紫陽花]





私の中で何かが切れる音がした。

血の臭いが充満し、辺りは真っ赤な血の色に染まる……。

⏰:08/06/24 23:54 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#329 [紫陽花]
――――……

―――……

俺は、悪い夢でも見てるのか?

さっきまで目の前で驚愕の表情をしていた少女が、俺の後輩である堂本の首を絞めている。

⏰:08/06/24 23:57 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#330 [紫陽花]
「がっ……!!ゆ、ずきちゃ…」

堂本は苦しそうに首を絞めている少女へ声を漏らす。

「どうもとぉぉお!!」

俺の叫びを聞いてか、今の堂本の状況を見てなのか、多くの同僚が部屋に駆けつけてきた。

⏰:08/06/24 23:58 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#331 [紫陽花]
そう、あの鏡はマジックミラーであり、こちらからはただの鏡にしか見えないが反対側からはこちらの様子が丸見えなのだ。
それを使って多くの仲間がこちらの様子を見ていた。秋野柚紀も多くの視線には気付いていたようだった。


同僚達は胸から拳銃を取り出し秋野柚紀へと銃口を向ける。

⏰:08/06/24 23:58 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#332 [紫陽花]
秋野の表情はよく見えないが、誰が見てもこの状況は芳しくない。

「やめろ!!銃を降ろせ。やつを刺激するな!!……堂本が危ない」

「しかし……」

「いいから!!」

半ば叫ぶように同僚に言い聞かせる。

⏰:08/06/24 23:59 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#333 [紫陽花]
「がはッッッ……。な、んで……ゆず、きちゃん!!」

堂本は悲痛な声を上げながら秋野に問う。

「……答えろ秋野柚紀。こんな事をしても意味ないだろう」

早く、早く堂本の首からあいつの手を離さなければ窒息死してしまう。

⏰:08/06/25 00:01 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#334 [紫陽花]
「あなた達は知らないでしょ?私がどれだけ優人さんの事を好きだったか」

秋野は泣いていた。

大きな瞳からこぼれ落ちる涙は止まる気配もなく頬をつたい床に落ちる。

「好きな人から疑われる気持ち分かる!?ねぇ!!姪っ子でもいいと思ってた……。優人さんの側にいられるなら、それで言いと思った」

⏰:08/06/25 00:02 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#335 [紫陽花]
「秋野……」

彼女の悲しみがこの部屋を満たしている。首を締められている堂本も悲しそうな目で秋野を見つめる。

「でも……もう駄目ね」

また秋野は下を向いてしゃべり出した。
だが今度は先ほどの声とは違って少し笑っているような、幼い声がした。

⏰:08/06/25 00:03 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#336 [紫陽花]
「もうダメよぉぉおお!!私のものにならないなら、私を疑うのなら殺してあげる!!!!キャハハハハハ!!!!!!!!」

秋野柚紀は下を向いたかと思うと、次の瞬間目つきは鋭くつり上がり、口元はさっきの2倍ほど裂け、瞳は狂気に満ちた殺人鬼の顔へと変貌した。

⏰:08/06/25 00:04 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#337 [紫陽花]
「ぐわッッッ!!」

一気に秋野の手が堂本の首を締め上げる。
堂本の唇が青い。
酸素が足りていないんだ!!


このままじゃ……


このままじゃ……

⏰:08/06/25 00:04 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#338 [紫陽花]
「やめろぉぉお!!!!!!!!」

「バイバイ、優人さん。すごく、すごく好きでした……」





ゴキ

「ぐぁ……………」


俺の叫びは虚しくも秋野には届かなかった。そして、堂本は二度と息をしなくなってしまった。

⏰:08/06/25 00:06 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#339 [紫陽花]
芯の抜けた堂本の体は秋野柚紀の体からスルリと落ち無気力にその場に倒れ込んだ。

すかさず俺は堂本に駆け寄り首に手を当てる。首は生きている人間ではあり得ないほどぷらぷらと左右に揺れる。

完全に首がおれていた。

「堂本!!堂本!!……お前なんて、ことを……」

秋野柚紀を睨みつける。

⏰:08/06/25 00:06 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#340 [紫陽花]
その時彼女は、

瞳から赤い涙を流しながら

笑っていた……。

⏰:08/06/25 00:07 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#341 [紫陽花]
―――――――………

―――――………




3日後、俺はある精神病院にいた。あの後、多くの同僚が秋野柚紀を取り押さえその場は収まり彼女は現行犯逮捕された。

⏰:08/06/25 00:07 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#342 [紫陽花]
だが、取り調べを行なおうにも

「優人さんは?この部屋キライ。優人さんじゃないとヤだ!!お腹すいたよ」

など堂本の事や、幼い子供のような口振りばかり口に出すので一度病院で精神異常がないか検査をすることになったのだ。

そして今日は検査の結果聞きに来た。

⏰:08/06/25 00:08 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#343 [紫陽花]
「俺は病院ってやつが嫌いなんだよな……」

何度も足を運んだことはあるが、どうしてもこの異常なほどの清潔感と、あたりを包む薬品の臭いが嫌いだった。

俺は病院側から指定された部屋へと若いナースに案内された。

「どうぞお入りください」

⏰:08/06/25 00:09 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#344 [紫陽花]
言われるまま部屋へ入る。
どうやらここは院長室のようだ。

言われるままに部屋に入り、言われるままに院長から秋野柚紀の症状を聞く。

専門的な用語が並んでよく分からなかったってのが本音。
でも、口が裂けてもそんなこと言えないわけで……。

⏰:08/06/25 00:10 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#345 [紫陽花]
要するに記憶が消えてしまったらしい。

自分が高校生だったことも、2人を殺めてしまったことも、堂本まで殺しちまったことも、心の奥深くにしまい込んで蓋をして、鍵をかけて、現実から逃げたって事だ。

「あの子にとって全てを忘れるって事が唯一の自分の身を守る手段だって事か……」

⏰:08/06/25 00:11 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#346 [紫陽花]
だが堂本のことだけ忘れなかったのは、それほどにあいつのことが好きだったからであろう。

それでも……、人間は前に進まなくてはいけない。

都合のいいことだけを見て、自分の嫌なことから逃げてばかりじゃ一歩も前に進めないんだ。

⏰:08/06/25 00:11 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#347 [紫陽花]
病院を後にして新鮮な空気を思いっきり肺に取り入れる。
柔らかい風が俺の隣を駆け巡る。

もう、春が近いな。

「堂本見てみろよ……。空がこんなに綺麗だぜ。神様がお前の分も仕事しろって言ってるのかもな」

そうして俺は車に乗り込み、秋野柚紀のいる精神病院をあとにした。

⏰:08/06/25 00:12 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#348 [紫陽花]
―――――………

――――……

「柚紀ちゃん。あら、また携帯ばかり見つめて。今日はこんなに天気がいいんだから私と一緒に散歩でも行きましょ」


「いやよ。散歩に行ってる間に優人さんから電話がかかってきたらどうするの?」

⏰:08/06/25 00:13 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#349 [紫陽花]
「柚紀ちゃん……。よく聞いて。堂本優人さんはもうこの世にいないの。信じたくないでしょうけど現実を受け止めてちょうだい」


「うそよ……。そんな嘘信じないから」

⏰:08/06/25 00:13 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#350 [紫陽花]
「嘘じゃないのよ。もうメールも電話も待っていても来ないのよ」

「うそよ、うそよ。お仕事が忙しいだけだもの。ねぇ、優人さん?柚紀いい子にしてるから絶対に迎えに来てね……」







〜夢の中の私の影〜

---end---

⏰:08/06/25 00:14 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#351 [紫陽花]
夢の中の私の影を無事完結することができました。応援してくださったみなさん、誤字脱字のたくさんあるこの小説を最後まで読んでくださり本当に感謝の気持ちでいっぱいですm(__)m


いつになるかは分かりませんが次は短編集を書きたいと思っています。もしよかったらそちらの方も暇つぶし程度に読んでみてください(・∀・)

⏰:08/06/25 00:15 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#352 [紫陽花]
アンカー
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400

感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

感想お待ちしています

―――紫陽花―――

⏰:08/06/25 00:17 📱:F905i 🆔:V7Fgm8D2


#353 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/04 19:18 📱:Android 🆔:nH.OoPsQ


#354 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/04 21:22 📱:Android 🆔:nH.OoPsQ


#355 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/07 12:16 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#356 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/07 17:15 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#357 [○○&◆.x/9qDRof2]
↑(*゚∀゚*)↑

⏰:22/10/17 14:54 📱:Android 🆔:We5gljpk


#358 [○○&◆.x/9qDRof2]
↑(*゚∀゚*)

⏰:22/10/19 21:25 📱:Android 🆔:A4ZzuHng


#359 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/23 20:07 📱:Android 🆔:Oa43ZxSI


#360 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30
>>30-60

⏰:22/10/24 19:47 📱:Android 🆔:JMKv58vc


#361 [○○&◆.x/9qDRof2]
ミステリー

⏰:22/10/24 19:48 📱:Android 🆔:JMKv58vc


#362 [わをん◇◇]
↑(*゚∀゚*)↑

⏰:22/11/23 19:35 📱:Android 🆔:yR7K92nk


#363 [approach]
(´∀`∩)↑age↑(∩゚∀゚)∩age

⏰:25/11/12 23:04 📱:Android 🆔:84s6S4Do


#364 [approach]
>>1-360

⏰:25/11/13 00:01 📱:Android 🆔:b8Rd/wD6


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194