夢の中の私の影
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#201 [紫陽花]
「あっ………」

突然稲妻か走ったように私の記憶が頭を駆け抜けた。思い出した……。



私を育ててくれた人だ……。

⏰:08/06/02 21:29 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#202 [紫陽花]
「久子先生!!お久しぶりです!!」

懐かしさに全身が震える。
あぁ、先生!!
お世話になった先生!!
私は先生へと一歩また一歩と歩み寄る。

⏰:08/06/02 21:30 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#203 [紫陽花]
久子先生は毎日のようにお母さんがいない、と泣きじゃくる私をいつも優しい言葉で慰めてくれた。

記憶こそ曖昧だが泣きじゃくっていた私の体の中の何かがこの人は私に安心をくれる人だと伝えてくれていた。

⏰:08/06/02 21:31 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#204 [紫陽花]





「感動の再会の途中に水を差すようで悪いんですけど、捜査に入ってもよろしいですか?」

ひょいと後ろから優人さんが私の肩をたたく。

⏰:08/06/02 21:32 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#205 [紫陽花]
「す、すいません!!」

懐かしさのあまり優人さんには悪いが優人さんの存在を忘れていた。久子先生と私、二人の世界、二人だけの過去の懐かしさに浸っていた。

「じゃあ、中に入りましょうか。園内の応接室に案内しますよ」

⏰:08/06/02 21:32 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#206 [紫陽花]
―――――――………

―――――………

焦げ茶色で統一された椅子に机。
壁には小さな枠に囲まれた絵画がいくつも掛けてあり自然と目がそれらを眺めてしまう。

机の上には白い細かな刺繍の施されたレースのテーブルクロス。
至る所に細かな趣向が凝らされており待つことに対して退屈を感じさせない作りだった。

⏰:08/06/02 21:33 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#207 [紫陽花]
「綺麗な応接室だね」

優人さんもこの部屋の居心地の良さに感嘆の言葉を漏らした。



「お待たせしました。紅茶でよろしいですね?」

⏰:08/06/02 21:34 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#208 [紫陽花]
目の前におかれた紅茶の湯気と共に独特の匂いが鼻孔をくすぐる。
すごく気分が良い。

「紅茶まで頂いてすいません。……それでは、本題に入らせていただきます」

優人さんの顔が少し引き締まる。これが仕事の顔だろうか。

⏰:08/06/02 21:35 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#209 [紫陽花]
「最近、高校生が連続して殺された事件を知っていますか」

久子先生は小さくうなずく。

「その被害者が柚紀ちゃんと同級生で、ここの幼稚園の卒園者なんです。できれば被害者の二人、里山孝太君と赤崎ひとみさんの話を少々伺いたいたく柚紀ちゃんとここへ来ました」

⏰:08/06/02 21:35 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#210 [紫陽花]
久子先生は俯いて黙り込んでいる。それもそうだろう。先生が覚えているかは別として自分の教え子が殺されたのだ。それも二人も。

「里山孝太君……赤崎ひとみちゃん……」

不意に先生は立ち上がり部屋の隅の本棚から一冊のアルバムを取り出した。
私はその本を見たことがある。
いや、持っている。

⏰:08/06/02 21:36 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#211 [紫陽花]
里山君、赤崎さん、そして私の写る卒業アルバムだ。

「これを見てください」

久子先生はあるページを開いて私と優人さんに見せた。

そのページは一人一人が写る個人写真の所ではなく、運動会、遠足、休み時間といったみんなと写っている写真のページだった。

⏰:08/06/02 21:37 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#212 [紫陽花]
感想板

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

意見・感想・アドバイス等々お待ちしてます!!

⏰:08/06/02 21:40 📱:F905i 🆔:ZdVpvI4I


#213 [紫陽花]
「二人とも元気で友達の多い明るい子でした。クラスのリーダー的存在でみんなを引っ張ってくれてましたよ。とてもいい子達でした」

あれ……?
ちょっと待って……
里山君と赤崎さんが元気な子?学校では二人ともおとなしいタイプで隅っこにいたのに。

⏰:08/06/04 22:32 📱:F905i 🆔:wf6EQlCc


#214 [紫陽花]
「そうですか……。これといった特徴はないですね」

優人さんはがっくりと肩を落とす。
結局は無駄足だったみたいだ。

⏰:08/06/04 22:34 📱:F905i 🆔:wf6EQlCc


#215 [紫陽花]
「すいません、お役に立てなくて……」

久子先生もどこか悲しげな表情だった。

沈黙に耐えられず私は紅茶を口に運んだ。

………少しぬるい。

⏰:08/06/06 19:47 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#216 [紫陽花]
それから私達が幼稚園に通っていた3年間のアルバムを代わる代わる開き先生の話を聞いた。

私の記憶に無いことも先生は話してくれ時折笑いがでるほどに楽しく、なぜか心が安まる時間を過ごせた。

⏰:08/06/06 19:49 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#217 [紫陽花]


「ごめんなさい!!ちょっとトイレお借りします」

話を始めて1時間ほどたった頃だろうか私は席を立った。久子先生は優しく微笑み
「奥の職員トイレを使いなさい」と説明してくれた。

⏰:08/06/06 19:50 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#218 [紫陽花]
応接室を出て幼少時代の少ない記憶の糸をたぐり職員トイレを探す。園内の作りはほとんど変わっておらず30秒もたたないうちに職員トイレを見つけ出した。

ただトイレを見つけただけなのだが、ちょっとした優越感が私を満たす。

⏰:08/06/06 19:52 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#219 [紫陽花]
訂正
>>218

×優越感が私を満たす

○優越感が私を満たした

⏰:08/06/06 20:00 📱:F905i 🆔:bKrJX796


#220 [紫陽花]
――――……

――……

手を洗いトイレを後にする。トイレはその建物の内側の姿を現す、とよく言われるが、ここは非の打ち所がないほど綺麗なトイレだった。

この清潔さは職員トイレだからかもしれないが、少なからずここを利用する客人には好印象だろう。

⏰:08/06/08 14:07 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#221 [紫陽花]
そんな清潔感あふれるトイレを後にして応接室へと向かう。
園内はやはり静まりかえっていて私の足音すら静寂を破る雑音にしか聞こえない。私は自ずと足音をできるだけ出さないようにして静寂を守っていた。

少し歩けばすぐに応接室へと帰り着いた。中に入ろうとドアに手をかける。開けようとしてドアノブを少し回すと優人さんの声が漏れてきた。

⏰:08/06/08 14:09 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#222 [紫陽花]
「今日はもう一つ聞きたいことがあるんです……あの、柚紀ちゃんの事なんですが……」

私のこと?
ドアノブを回す手を止める。
盗み聞きしちゃ悪いと思いつつも声のトーンを低くした優人さんの声に耳を傾けてしまう。

⏰:08/06/08 14:10 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#223 [紫陽花]
「殺害された二人とはまた別に柚紀ちゃんの幼稚園時代も知りたいんです……」

「………」

優人さんの声は小さいながらも聞き取れる範囲内だ。だが一緒にいるはずの久子先生の声がしないということは口を開いていないのだろうか?

⏰:08/06/08 14:11 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#224 [紫陽花]
「………分かりました。お話しましょう」

久子先生の声が聞こえた。先生の声は優人さんよりもか細く、扉の隙間に耳を押し当てないとよく聞こえない。

しかし、こんな風に言うのも変なのだが先生の声は小さいけれど聞き取りやすく耳障りの良い、柔らかい声だった。

⏰:08/06/08 14:12 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#225 [紫陽花]
「秋野柚紀ちゃん……あの子は……怖い子でした。この写真を見てください」


「……………かわいい笑顔で普通の女の子みたいですけど」

私には写真は見えないが今二人は私の写真を見ているのだろう。優人さんが私の写真の感想を言うまで少しだけ間が空いていた。

⏰:08/06/08 14:13 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#226 [紫陽花]
それにしても、私が怖い?話が全然見えない。私が悩んでいる間にも久子先生は話を進めた。

「この写真砂場で写ってるでしょ?この時、柚紀ちゃんなにをしていたと思いますか?」

「えっと………普通に砂遊びじゃないんですか?こんなに笑顔ですし」

⏰:08/06/08 14:15 📱:F905i 🆔:MW..VydM


#227 [紫陽花]
「他の子供達はトンネルを作ったり、泥団子作ったりしていました。でも柚紀ちゃんは違ったんです……柚紀ちゃんはとっても楽しそうに蟻を潰していたんです……」


は?私が蟻を?
自慢じゃないが私は虫が大の苦手だ。それはもう虫を目にするだけで鳥肌がゾクゾクと立ってその場から逃げ出したくなるほどなのだ。

⏰:08/06/10 16:29 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#228 [紫陽花]
「確か柚紀ちゃんはすごく虫が嫌いなはずじゃ……」

優人さんもそのことを疑問に思ったらしく久子先生に確認した。
以前私は優人さんの前で虫と遭遇し大声を上げたことがあったから、私が極度の虫嫌いだとは強烈に優人さんの記憶に残っているのだろう。

⏰:08/06/10 16:30 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#229 [紫陽花]
「分かりません。何年も前のことですから、その時から柚紀ちゃんが虫を嫌っていたかどうかは分からないのです。けれど本当に彼女は触ることなんて絶対に嫌なはずの蟻、いや、虫を指で潰していたんです」

「……なぜ、そんなことを?」

⏰:08/06/10 16:31 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#230 [紫陽花]
「柚紀ちゃんに言ったんです。『何でそんなことするの?蟻さんも生きてるんだから命を無駄にさせちゃ駄目よ』と少し注意の意味も込めて言いました。すると彼女……」

「柚紀ちゃん何て言ったんですか!?」

⏰:08/06/10 16:32 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#231 [紫陽花]
「楽しんでるんだから邪魔しないで、と……」

楽しいから?
幼稚園時代と言えば人間に対してでも動物に対してでも少なからず生き物に興味を持つ年齢だろう。だが私の行為は興味があるとか、そう言う可愛らしいものが理由じゃない。

命を踏みにじることに楽しさを見いだしているただの狂気じみた幼稚園児……。

⏰:08/06/10 16:33 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#232 [紫陽花]
「でも、柚紀ちゃんはそれだけじゃ止まらなかった……」

久子先生はなおも話を続ける。
「最近こそ蟻を潰すだけでした。でも、だんだんその酷さはエスカレートしていって……卒園間近になると他の園児を殴る、蹴る、当たり前。虫を潰すのも蟻から天道虫へ、紋白蝶へ、蛹の中の青虫を引きずり出したりも……。

⏰:08/06/10 16:33 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#233 [紫陽花]
一番酷かったのは……。他の子を階段から突き落として膝から滴る血を見ていました。突き落とされた子は泣いているんですよ!?
それなのに……私達を呼びにも来ない。謝ることもしない。慰めもしない。その時泣いている子に気付いて柚紀ちゃんを発見したのは私でした。
やっぱり彼女は笑っていたんです。唇の端を吊り上げて目は狂気に満ちていました」

⏰:08/06/10 16:34 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#234 [紫陽花]
「柚紀ちゃんにそんな過去があったなんて。なんて残酷な……。今の柚紀ちゃんからは想像できませんよ……」

「えぇ、その時期は一日に一度は子供たちから柚紀ちゃんが怖い、と話を聞いていました。ですが……」

⏰:08/06/10 16:34 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#235 [紫陽花]
「どうかしたんですか?」

「急にその残酷な性格は治ったんですよ。本当に急に。砂場に行っても蟻を潰さなくなりました。思いやりのある、人のことを一番に考えられるよい子になったんです」

「なぜ……ですか…?」



「……柚紀ちゃん事故にあったんですよ」

⏰:08/06/10 16:35 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#236 [紫陽花]
「事故……あっ!!以前僕の姉、柚紀ちゃんからの母親から聞いたことがあります。柚紀ちゃんは川に落ちたんですよね?」

「そう、ですが正しくは突き落とされたんです……」

⏰:08/06/10 16:36 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#237 [紫陽花]
「では、事故じゃなくて事件……!?」

「事件が起きたのはちょうど柚紀ちゃんの最後の秋の遠足の日です。湖のある大きな公園にハイキングに行ったんです。紅葉が綺麗でした……その日も柚紀ちゃんの目は妖しげに光り何かおかしなことを考えているようでした」

⏰:08/06/10 16:36 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#238 [紫陽花]
「ここからは警察の方に聞いた話なんですが、柚紀ちゃんは湖で二人のお友達と遊んでいたらしいんです。そして、その二人が湖に柚紀ちゃんを……突き落としました」


「あの、その二人とは……?」

⏰:08/06/10 16:37 📱:F905i 🆔:U7phR9sk


#239 [紫陽花]
「突き落とした二人は……里山孝太君と赤崎ひとみちゃんなんです!!」


「なっ……!!今回の事件の被害者たちが柚紀ちゃんを殺そうとしたなんて……」

⏰:08/06/13 22:48 📱:F905i 🆔:Bv0BVHsM


#240 [紫陽花]
「それから柚紀ちゃんは大人しくなり、虫も潰さなくなりました。でも、その代わりに水が怖くなったみたいなんです」


「……なるほど。柚紀ちゃんを突き落とした二人が、今回の事件の被害者か。偶然にしては出来すぎてる……」

⏰:08/06/13 22:49 📱:F905i 🆔:Bv0BVHsM


#241 [紫陽花]








久子先生は何を言っているの?

⏰:08/06/13 22:50 📱:F905i 🆔:Bv0BVHsM


#242 [紫陽花]
優人さんも何を考えてるの?


背中に冷たい汗が流れる。
たった10分そこら話を立ち聞きしていただけなのに、どうしようもない疲労感とけだるさが私を襲う。

⏰:08/06/15 18:25 📱:F905i 🆔:xzllUqIY


#243 [紫陽花]
私が水がに苦手なのは確かだ。

めまい、頭痛……
それらの原因は私が水に突き落とされた時の苦しい過去がフラッシュバックされて陥っていたものだったのか。

⏰:08/06/15 18:26 📱:F905i 🆔:xzllUqIY


#244 [紫陽花]
膨大な量の記憶を甦らせたせいで頭がクラクラする。
頭だけではない。
心の奥底の、そう、開けてはならない扉がこじ開けられるような胸にざわつく異物感がさざ波のようにこみ上げてくる。

キモチワルイ……

⏰:08/06/16 20:55 📱:F905i 🆔:CV.Lh/XM


#245 [紫陽花]
「それにしても柚紀ちゃん、ちょっと遅いですね。僕ちょっと見てきましょうか?」


「そうですね。私も行きましょうか」

⏰:08/06/16 20:55 📱:F905i 🆔:CV.Lh/XM


#246 [紫陽花]
まずい。
私は本能的にここで話を聞いていたことがバレてはいけないと察知した。
二人が椅子から立ち上がる音が聞こえる。
私の手は反射的にドアノブを回し扉を押す。

⏰:08/06/16 20:56 📱:F905i 🆔:CV.Lh/XM


#247 [紫陽花]
「わあっ!!」

扉を開けた瞬間優人さんの顔が目の前にあった。
優人さんはさっきまで捜査として話をしていた人物の顔が目の前にありビックリしていたようだけど私の方は立ち聞きしていた事がバレてはいけないと、どこか冷静だった。

⏰:08/06/16 20:57 📱:F905i 🆔:CV.Lh/XM


#248 [紫陽花]
「優人さん!!どうしたんですか?あっ、トイレですか?」

少しふざけた語調で優人さんに問いかける。
不自然ではないだろうか

⏰:08/06/18 19:42 📱:F905i 🆔:BpbR/gyg


#249 [紫陽花]
「えっと、あんまり遅いから柚紀ちゃんを探しに行こうとしたんだ……」


「ごめんなさい!!あんまり懐かしかったからちょっと歩き回っちゃって……」

⏰:08/06/18 19:43 📱:F905i 🆔:BpbR/gyg


#250 [紫陽花]
もちろん嘘。
ねぇ、優人さん。
何で目を合わせてくれないの?私自身も驚いた『秋野柚紀』と言う人間の過去の残虐さに脅えているの?

「優人さん…帰りましょうか?」

⏰:08/06/18 19:43 📱:F905i 🆔:BpbR/gyg


#251 [紫陽花]
今私が優人さんに言える言葉はこれだけ。お願いだからそんな目で私を見ないで……

「うん、そだね……じゃあ今日は失礼します。捜査にご協力ありがとうございました」

優人さんは久子先生の方を向いて一礼する。

⏰:08/06/18 19:44 📱:F905i 🆔:BpbR/gyg


#252 [aa]
uaffffffhghhfghfhfg

⏰:08/06/19 02:01 📱:PC 🆔:S6BBE5EI


#253 [紫陽花]
「いえいえ、何も手掛かりになるようなことをお話出来なくて申し訳ないです」


これが大人の会話だろうか。手掛かりがなかった?嘘つき。私の過去を優人さんに話したくせに。

⏰:08/06/22 23:51 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#254 [紫陽花]
よくよく考えてみれば、さっきの久子先生の証言でまた私は疑われることになるかもしれない……。

そう考えただけで体にゾワゾワと悪寒が走る。もう、あんなプレッシャーを感じたくない。

⏰:08/06/22 23:52 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#255 [紫陽花]
「じゃあ失礼します!!」


悪寒を振り払うように私は優人さんの右袖を強く引っ張って歩き出した。

気分が悪い。

⏰:08/06/22 23:52 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#256 [紫陽花]
「あわわ!!ちょ……柚紀ちゃん!!」

いきなりのことだったので優人さんも驚き後ろで何か言っている。

久子先生も何か言っているがよく聞こえない。いや、意識的に先生の言葉を耳に入れないようにしていたのかもしれない。

⏰:08/06/22 23:53 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#257 [紫陽花]
これ以上私の中を引っかき回してほしくない。

こうして、私達は幼稚園を後にした。

⏰:08/06/22 23:53 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#258 [紫陽花]
―――――……

―――……

帰りの電車の中、優人さんは必要以上に私に話しかけてきた。

⏰:08/06/22 23:54 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#259 [紫陽花]
優人さんと少しでも長くしゃべれるのは嬉しいけれど、何か内側を探られているような私の中の何かを探しているような、変な違和感を感じる会話だった。

誕生日、血液型、好きな色……見え見えの上辺だけの会話。

⏰:08/06/22 23:54 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#260 [紫陽花]
優人さんはやっぱり私を疑ってるのだろうか。
そう考えた途端に胸が締め付けられるように痛んだ。

……いやだ!!
私を捜査の対象としてみないで!!
いつもみたいに、たわいのない話で『叔父さん』と『姪っ子』と言うささやかで、でも確かな繋がりを作って!!

私は優人さんと一緒にいられるなら『彼女』じゃなくて『姪っ子』でもいいの……。

⏰:08/06/22 23:55 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#261 [紫陽花]
地元の駅に着き、車内からホームへと降り立つ。しびれるような木枯らしが私の皮膚に寒さを伝え、その寒さが私の体内を一瞬で冷やしていく。

「さむっ……」

思わず口にするとより一層、身体に寒気が駆け巡る。

⏰:08/06/22 23:56 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#262 [紫陽花]
「じゃあ今日はこれで帰りますね」

本当は近くのファミレスや喫茶店に入って体を暖めながら、たくさん話したかったし、もっと一緒にいたかった。

⏰:08/06/22 23:57 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#263 [紫陽花]
けれど優人さんは今、仕事で私と一緒に居るわけでプライベートなことは勤務中に出来ない。

それに私自身、優人さんの近くにいたいと思う自分と今日は早く家に帰って一人になりたいと思う自分もいた。
つい30分ほど前に久子先生が話していた私の過去をちょっと整理しないと頭がおかしくなりそうだったから。

⏰:08/06/22 23:58 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#264 [紫陽花]
「それでは、また今度……」

今度なんてあるのかな?
優人さんは私を疑ってるかもしれないのに?
極度のネガティブ思考に自分でも笑いがでる。

⏰:08/06/22 23:58 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#265 [紫陽花]
「………柚紀ちゃん!!」

私が優人さんに背を向け立ち去ろうとするとそれに逆らうかのように私は呼び止められた。

⏰:08/06/22 23:59 📱:F905i 🆔:N5pkM4HY


#266 [紫陽花]
「家まで送るよ……それにこのご時世、女子高校生が夜道を独りじゃ危ないでしょ?」

少し含みのある笑みをこぼしながら優人さんは私の隣へと足を進め、横に並んでくれた。

⏰:08/06/23 00:00 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#267 [紫陽花]
もちろん優人さんが車道側。私を車から守るように隣にきてくれた。




だめですよ、そんなことしちゃ……。

⏰:08/06/23 00:00 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#268 [紫陽花]
私はまた優人さんの事を好きになってしまう。

あなたの行動、言葉、気遣い、全てが私を一人の女にさせる。

かわいい家族としての姪っ子でもいいと考えていたわたしの決意をあっさりと壊し、かわりに期待という名の甘い誘惑を残していく。

⏰:08/06/23 00:01 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#269 [紫陽花]
だけど私の体は思ったより素直で

「お願いします」

と声をかけた後、少し、ほんの少しだけ、肩が触れ合うまで優人さんの近くへ行ってしまうのだった。

⏰:08/06/23 00:02 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#270 [紫陽花]
感想板

今後の予定について少し書いています(・∀・)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3531/

⏰:08/06/23 00:07 📱:F905i 🆔:EaJBTFrg


#271 [紫陽花]
――――――………

―――――……

喉がイタい。
嘔吐した後の胃酸がこみ上げてきたようなヒリヒリとした焼け付く痛みが私を襲う。

それに声も出ない。
だが喉が痛くとも、声がでなくとも、やっぱりこれは夢だな、なんて不思議と納得している自分が面白い。

⏰:08/06/24 23:13 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#272 [紫陽花]
もう夢には馴れてしまった。

いつものように影も光りもない無の世界の中に私は存在していた。

そして、いつものように叫び声が聞こえ始めた。

⏰:08/06/24 23:14 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#273 [紫陽花]
いやだぁぁああ!!

お願いだから助けて!!!!


ゴキ


やめ……やめて……

許してぇぇええ!!!

ゴキ

⏰:08/06/24 23:15 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#274 [紫陽花]
断末魔
その言葉がよく似合っている。
叫び声よりも奇声に近い声は、いつか夢のように知っている声だった。

いつもならこの声を発している人物を思い出せない。
それに、もうすぐ私は目覚めるだろう。

⏰:08/06/24 23:15 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#275 [紫陽花]
けれど今日はなかなか現実に引き戻される気配がない。

………なに、この臭い

私はあたりを包むこの異臭に顔をしかめた。いや、暗闇で何も見えないのだがきっと私は顔をくしゃくしゃにして、この異臭を感じているだろう。

それほどに臭い。

⏰:08/06/24 23:16 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#276 [紫陽花]
肉が腐ったような腐乱臭。
その臭いのせいか周りの空気もぬるぬると私の表面に纏わりつく。腐った臭いが、まるで蜘蛛の糸にとらえられた獲物のように私の体中をぐるぐると包んでいるようだ。


そんな事を考えていると次の瞬間、一際大きな叫び声が辺りを揺らした。

⏰:08/06/24 23:17 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#277 [紫陽花]
やめて!
やめて!
やめて!
やめて!
やめて!

柚紀ちゃんやめてぇぇえええ!!!


ゴキ

⏰:08/06/24 23:17 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#278 [紫陽花]
……今、私の名前を呼んだ?






「ギャアァァア!!!!」

⏰:08/06/24 23:18 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#279 [紫陽花]
頭が痛い!!
頭の中の記憶という扉が乱暴にこじ開けられていく感触に私自身も声を荒げる。

目の前がちかちかする。
吐き気のするめまい、頭を殴られたような頭痛。まるでプールに入ったときのような感覚が私を襲う。


これは夢だと頭は分かっていても痛みは段々強くなるばかりで、さらに悪いことにあの腐った臭いも格段に強くなってきた。

⏰:08/06/24 23:19 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#280 [紫陽花]
黒しかない闇の世界なのに私の瞼の裏は赤、黄色、青の原色が瞬きをするたびに交互点灯を繰り返す。

それから間もなくして、その3色は重なり合い一枚の風景となってスライドショーのように瞼の裏に次々と現れだした。

⏰:08/06/24 23:19 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#281 [紫陽花]
何これ……!?


そのスライド全てには私と思われる人物が写っていた。

背格好、髪型すべてをとっても間違いなく《秋野柚紀》なのだが、何か、毎朝鏡の前で見る《秋野柚紀》の顔とは何か違う。

⏰:08/06/24 23:20 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#282 [紫陽花]
私の目ってこんなにつり上がっていただろうか?

私の瞳はこんなに狂気に満ちて炯々と光っていただろうか?

私の口はこんなに異常なほど裂けていただろうか?

⏰:08/06/24 23:20 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#283 [紫陽花]
そしてなにより……

この秋野柚紀と思われる人物が一心に両手で締め上げているのは、人の……首でしょ?

⏰:08/06/24 23:21 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#284 [紫陽花]
『死因は首を絞められての窒息死。そして首の骨は折られていた』


優人さんの言葉がぐるぐる頭の中を駆け巡る。

目の前のスライドは全て赤一色に染まり、私は赤い世界に引きずり込まれた。

⏰:08/06/24 23:22 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#285 [紫陽花]
目の前が少し黒ずんだ赤に染まったとき私は唐突に理解した。

あの異常な臭いは血の臭いだったんだ。

そして、里山君、赤崎さんを殺したのは……




ワタシ?

⏰:08/06/24 23:23 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#286 [紫陽花]
――――――………

――――………

「夢…か……」

時計を見れば時刻は6時半。今から急いで準備をすれば陽乃と待ち合わせしている電車に乗れるだろう。

⏰:08/06/24 23:23 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#287 [紫陽花]
……けれど、
体を起こすこともままならないほど身体がだるい。私からは冬場にしては異常なほどの汗がパジャマ代わりのジャージを湿らせていた。

私は枕元においてあった携帯を開き陽乃宛てにメールを作る。

⏰:08/06/24 23:24 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#288 [紫陽花]
今日は学校を休むという事と返事はしないでいいから、と本文に書き送信ボタンを軽く押す。

送信完了

その文字を見てからゆっくりと携帯を閉じた。

⏰:08/06/24 23:25 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#289 [紫陽花]
それにしても……
なんてリアルな夢だったんだろう。今も自分からあの腐った血の臭いがしているようで胸くそ悪い。

鼻には血の臭い、
瞼には赤い世界、
両手には首を絞めている感触、
何もかもが身体に染み着いているようで身震いがする。

⏰:08/06/24 23:25 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#290 [紫陽花]
「私が2人を殺したの……?」

夢の中の私は確かに誰かの首をぎりぎりと締め付けていた。そして、時折聞こえたゴキ、ゴキと言う音は骨の砕ける音だったのか?

もう何がなんだか分からない。

⏰:08/06/24 23:26 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#291 [紫陽花]
久子先生は私が蟻を潰していたときの顔は狂気に満ちていたと言っていたが夢の中の私は『狂っている』という言葉がピッタリの恐ろしい、狂気に満ちた形相だった。

⏰:08/06/24 23:27 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#292 [紫陽花]
……ちょっと待って。

あのスライドのように写し出された私の行為は本当に夢の中の世界なのか?

私が夢の中だと思っているだけで、あれは現実に、リアルな私が存在しているこの世界で起こった事じゃないのか!?

⏰:08/06/24 23:28 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#293 [紫陽花]
もう分からない……
考えたくない……

「優人さん助けてよ……。本当に私が殺したの?」


部屋には時間を刻む時計の音だけが響いていた。

⏰:08/06/24 23:28 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#294 [紫陽花]
―――――………

――――……

あのリアルな夢を見てから夢見が悪くなった気がする。

幼稚園へ捜査をしにいってから3日がたつ。相変わらず学校へ行き、意味の分からない公式を覚えたりしたが日に日に私は睡眠時間が減っていた。

⏰:08/06/24 23:29 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#295 [紫陽花]
夜に寝ていても、授業中にうつらうつらと軽く眠っただけでもあの赤い夢が私を襲う。

夢の中の血の臭いに耐えられず目を覚ます。

毎日がそれの繰り返しだった。

⏰:08/06/24 23:30 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#296 [紫陽花]
「ちょっと柚紀ちゃん大丈夫!?」

放課後、あれほど心配をかけたくなかった陽乃にも体調のことを聞かれてしまった。

「ん…大丈夫。最近寝不足なんだよね」

⏰:08/06/24 23:31 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#297 [紫陽花]
陽乃とそんなやりとりをしているとポケットの中に入れていた携帯が震え始めたことに気付いた。

メール受信中

「メールだ……」

誰からだろう?
心の片隅には優人さんからのメールだったらいいな、などと砂糖菓子のように甘い期待を抱いていることで、やはり私は優人さんが好きだといつも気付かされる。

⏰:08/06/24 23:31 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#298 [紫陽花]
本当は学校に携帯の持ち込みは禁止なので、ポケットから鞄の影に移動させ受信完了の文字と同時にメールボックスを開く。

「メール?誰から?」

陽乃が顔をこちらに向けて画面をのぞき込むような形で聞いて来るが、正直私はそれどころじゃい。

⏰:08/06/24 23:33 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#299 [紫陽花]
なぜなら……
私の妄想という名の甘い期待は見事に現実のものとなって私に近づいた。


そう、優人さんからメールが来たのだ。

⏰:08/06/24 23:33 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#300 [紫陽花]
いつも仕事に追われ深夜しか空き時間のない優人さんから平日の昼間にメールが来るなんてすごく珍しい事。
ということは、緊急の連絡か何かだろうか。

頭では私的なメールではなく公的な、捜査に関わるメールだと分かっていても優人さんからのメールだと言うだけで私の脈拍は2倍近く増えてしまう。

⏰:08/06/24 23:34 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


#301 [紫陽花]
はやる気持ちで内容を読み上げる。もちろん内容は捜査のことで今から警察署に来てほしいというものだった。

「ごめん、陽乃!!急用入ったから先に帰るね。ホントごめん!!」

教科書を手に取り、無造作に鞄につっこむ。陽乃には悪いが、今は一秒でも惜しい。早く優人さんに会いに行かなきゃ。

⏰:08/06/24 23:34 📱:F905i 🆔:kVepP.ak


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