カスミソウ。
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#18 [みや]
「…来週には戻ってくんだろ」
そう言って畑の草むしりに行ってしまった。
私はお花屋さんから畑の方を見つめた。
正確には巧次君を。
…来週…か…。
やっとおばあさんに会える。
そう思うと嬉しいはずなのに。
巧次君の態度が変で…
なんとなくモヤモヤがとれなかった。
:08/05/05 09:24
:W53T
:☆☆☆
#19 [みや]
――――――――
『じゃあね♪来週おばあさんに会えるの楽しみにしてる』
両手いっぱいにカスミソウを抱えて巧次君を見上げる。
ちゃんと新聞紙もついてる。
「あぁ」
そう言って少し笑う。
あ…最初の頃は全然見せなかった顔だ。
すごい…嬉しい。
『巧次君も…来てね?』
「あ?…ばあさん来るなら必要ねぇだろ」
『そうだけど…』
:08/05/05 09:28
:W53T
:☆☆☆
#20 [みや]
そう言って顔を下に向ける。
ちょっと傷付いた…
逢いたいと思ってたのはやっぱり私だけか…
くしゃっ
突然巧次君が私の頭を撫でた。
上を見上げると苦笑いの巧次君。
でも嫌そうな顔じゃない。
「来るよ。…お前に逢いに」
『…え?何?』
最後の方がうまく聞こえなかった。
「んでもねぇよ。さっさと帰れ。暗くなる」
少しだけ顔が赤くなってるのがわかった。
:08/05/05 09:31
:W53T
:☆☆☆
#21 [みや]
『…うん!』
来てくれるのは確かだし!
そう思ってカスミソウを抱えながら車にはしる。
後ろを一度振り返り
『ばいばい!』
と手を振ると、少し笑って手をふりかえしてくれた。
…―そんなあなたが
やっぱり
大好きです。
:08/05/05 09:34
:W53T
:☆☆☆
#22 [みや]
次の週―
巧次君が言っていた通りおばあさんが畑にいた。
『おばあさん!!』
私は嬉しくて走って畑まで言った。
おばあさんは私に気付くとすごく嬉しそうな顔をしてくれた。
ゆっくり桑を隅に降ろすとこちらに向かって来た。
「おーおー、久し振りだねぇ」
おばあさんの優しい笑顔が一か月ぶりに見れた。
『はい!大丈夫なんですか??』
:08/05/05 13:14
:W53T
:☆☆☆
#23 [みや]
嬉しくて飛び付きそうになったけど…やめたんだ。
笑顔は一か月前のまま。
なのに…おばあさんはすごく痩せた様に思えた。
動作も前より遅く、喋り方も少し遅くなっていた。
「あー…大丈夫だよ。少し心臓に負担がかかっていたみたいだから薬をもらってきたんだよ」
そう言って私の右手を握って
心配かけてごめんね
と、言った。
:08/05/05 13:16
:W53T
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#24 [みや]
『ううん!元気そうでよかった』
そう言っておばあさんの手を握り返してあげた。
………―嘘。
本当は元気そうには見えなかった。
握ってくれた手も弱々しくて。
でもおばあさんの笑顔に私はすごく安心したんだ。
『でも、心臓は一番大切なんだからあんまり無理しちゃだめだよ』
ほらっとお花屋さんの所まで連れて行き、椅子に座らせた。
:08/05/05 13:20
:W53T
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#25 [みや]
おばあさんの横で花達が静かに揺れた。
…カスミソウも。
みんな嬉しそうに揺れている。
やっぱりみんなにはおばあさんが必要なんだね。
自然に笑みがこぼれた。
「なのかちゃん、巧次には会ったのかい?」
あ…。そういえば今日見当たらないな?
『うん!逢ったよ♪おばあさんが言っていた通りの人でした』
そう言ってニコッとしてあげれば、おばあさんはそうだねぇと嬉しそうに頷いた。
:08/05/05 13:23
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#26 [みや]
『あ、カスミソウも頂きました♪お金は直接渡そうかと思って今日持ってきました』
バックの中をあさって、茶色の紙封筒を出す。
「なのかちゃん、あれは私からの御礼だからいいんだよ」
え?
『御礼…?』
「これからも毎週来ておくれ。カスミソウが咲く季節は毎週。そうしたら帰りにカスミソウをあげるからね」
『本当ですか!?』
…でも、嬉しいけど…何で?
:08/05/05 13:27
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#27 [みや]
「花もなのかちゃんにもらってもらえたら、最高だよ」
今までで一番キレイで…悲しい笑顔だった。
しばらくその笑顔を見つめていると誰かに頭を殴られた。
『いった!』
「何ぼけっとしてんだよ、さっさと畑耕せ」
後ろを振り向いたら
いつの間にかいた
巧次君。
『叩かなくても呼んでくれれば分かるよ!』
「るせぇ。お前の頭が叩きやすい所にあったんだよ」
そう言うとふんっと畑の方に行ってしまった。
:08/05/05 16:45
:W53T
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