・・悪魔なキミ・・
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#588 [みい]
「私がとろいから…逃げられなくてっ…、それで蓮が…っ」
そう。元はといえば私が逃げ損ねたせいで、蓮は無抵抗を余儀なくされ、殴り続けられたのだ。
「私のっ、私のせいでっ…」
「自分を責めちゃ駄目っす。蓮さんだってそんなこと思ってないすよ」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を両手で覆うと、背中に温かい手の平の感触が生まれた。
:08/08/10 00:53
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#589 [みい]
それはきっと、金色の髪の毛を立たせ、頬に古傷をこさえた銀次さんのものだろう。
「柚さん、疲れてるんすよ。自分起きてるんで、柚さんは寝てて下さい」
何かあったらすぐ起こしますから、と背中を摩られる。
蓮の大事な時だ、寝るものか、と意地になって目に力を入れたが、夕方からの出来事で思った以上に体力を消耗していた私は、いつの間にか眠りに落ちてしまった。
:08/08/10 00:55
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#590 [みい]
……………………………
「…ずさん、ゆずさん」
…誰…?誰かに呼ばれている。私を呼んでいるのは…誰?
「柚さん」
うっすらと目を開けると、見慣れない金色の頭が映る。
「…ぎ、んじさん…?」
ああ、そうだ。昨日、私…。
:08/08/10 00:55
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#591 [みい]
そこまで思い出した途端、はっと頭が冴え渡る。
「蓮!蓮はっ…!?」
「手術自体は夜中に終わったんす。で、さっき麻酔が覚めて…」
縋り付く私に、銀次さんは落ち着いた口調で説明してくれた。
「蓮さん、無事っすよ」
その一言を聞いた瞬間、足の力が一気に抜け、その場にへたりこんでしまう。
:08/08/10 00:57
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#592 [みい]
蓮…無事だった…。
そう心の中で繰り返すだけで、自然と涙がこぼれる。
「柚さん、早く病室行ってあげましょう?」
にこっと笑う銀次さんに涙を拭いて頷くと、私達は蓮の病室へ向かった。
………………………………
「柚稀ちゃん!?」
:08/08/10 00:58
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#593 [みい]
病室までの廊下を急いでいると、向こうから歩いてきた夫婦に声を掛けられる。
「おばさん…、おじ、さん……」
それは蓮の両親だった。
「柚稀ちゃん…恐かったわね、もう大丈夫よ」
おばさんが涙ぐみながら私の頭を撫でる。
「私の…私のせいで、すみません…っ」
:08/08/10 00:59
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#594 [みい]
「いやだ、柚稀ちゃんのせいなんかじゃないわよ!」
「近頃は変な連中が多いからな」
おばさんに続いておじさんが発した言葉に、私は胸が痛んだ。
おじさん…、あなたの、息子なんだよ…?蓮を襲ったのは…。
「もうぴんぴんしちゃって、すっかり元気なのよ」
顔出しに行ってあげて、とおばさんに促され、私達は再び足を動かす速度を速めた。
:08/08/10 01:00
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#595 [みい]
………………………………
「…ここっす」
601号室。看護婦さんの字で「染谷蓮」と書かれたプレートがはめられている。
「じゃあ俺はここで」
「ま、待って…」
踵を返した銀次さんを呼び止めた。なんだか、二人では会いづらい…。
「俺、邪魔じゃないすかね?」
:08/08/10 01:01
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#596 [みい]
困ったように聞く彼に、私は少し罪悪感を覚えた。
「邪魔なんかじゃ…。面倒臭いこと頼んでごめんなさい」
私が謝ると、銀次さんは焦ったようにいやいや、と首を振る。
「…じゃ、入りますよ?」
ドアに手をかける銀次さんの後ろに隠れるようにして、病室に入った。
:08/08/10 01:02
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#597 [みい]
「失礼します」
「…誰?」
個室のベッドの上に…蓮がいる。外を見つめているようで、私達のほうを見ないままだ。
「……れ、ん?」
上擦る声を振り絞って呼びかけると、蓮はゆっくりとこちらを向いた。
「…よお、ばかゆず」
そう言ってニヤつく蓮の姿が、涙でよく見えない。
:08/08/10 01:03
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