・・悪魔なキミ・・
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#658 [みい]

「俺は感情を表に出すのが下手だ。淕みたいに泣いたり笑ったりするの、苦手なんだよ」


俺は、かわいくない子供だった。どこか冷めてるというか、子供らしくない、大人ぶった子供。


比べて淕は、それこそかわいらしい奴だった。無邪気で、悪戯とかが大好きで、俺とは正反対で。


親父の愛情は、間違いなく淕のほうへより多く注がれていた。

⏰:08/08/26 00:40 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


#659 [みい]

淕がいなくなって落ち込む親父のために、淕みたいに悪戯っ子になろうとして、柚をいじめたこともあった。


でも、何か違う。どこか無理してる自分がいた。


「どんなに頑張っても、俺はお前の代わりにはなれなかった」


どんなに子供ぶっても、どんなにガキくさく柚をいじめても。


俺は、『淕』にはなれなかった。

⏰:08/08/26 00:41 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


#660 [みい]

「…ばっっかみてえ!」
「は?」


いきなりの淕の大声に、俺は驚き目を丸くし、瞬きを繰り返した。


「お互いを羨む双子とか、気持ちわりーっつーの!」
「…ああ」


どちらも大して優れた人間なわけでもないし、な。


淕は顔を背けているから、表情はわからない。

⏰:08/08/26 00:42 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


#661 [みい]

「…父さん、元気?」
「ああ。大阪に単身赴任してるけど、今はこっちに戻ってきてる。…会うか?」


淕はちょっと考えたあと、


「…いいや。今更会っても、照れ臭いだけだし」


と苦笑を含めた声で親父との再会を断った。


「母親は、どうしてる?」

⏰:08/08/26 00:43 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


#662 [みい]

こんな言い方をしたが、俺が気になっているのは淕のことだ。淕は、今でもあの狂った実母と一緒に暮らしているのだろうか。


「そんなの、とっくにどっかの施設にぶち込んでやったよ」
「…そうか」


ほっとしたのもつかの間、今度は淕は一人で大丈夫だろうかという不安に襲われる。


俺が口を開きかけた瞬間だった。

⏰:08/08/26 00:43 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


#663 [みい]

「言っとくけど、別に寂しくなんかないから」


淕の言葉が俺の口をつぐませる。


「一人も、なかなか気軽でいいもんだよ。働いてるから金だってどうにかなるし」


いつの間にこいつはこんなに大人になっていたんだろう。
俺達双子は、昔とは立場が逆転してしまったたらしい。


「…そうか」

⏰:08/08/26 00:44 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


#664 [みい]

「…うん。じゃ、俺そろそろ行くわ」
「…淕!」



俺を見ないまま病室を出て行こうとする淕を引き止める。


本能のままにそうしたのだが、次の言葉が出てこない。なぜだか、口が勝手に動いたのだ。


淕は、言葉を選びながら沈黙してしまった俺を振り返る。

⏰:08/08/26 00:45 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


#665 [みい]

「…兄さん」


口下手な俺より先に、淕が口を開いた。
俺が呼び止めたのに。気まずいながらも淕に顔を向ける。


「…また、来てもいいかな?」


何を言われるか予想していたわけでもないが、それでもやはりその言葉は想定外で、思わず目を見開く。


「……ああ」

⏰:08/08/26 00:46 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


#666 [みい]

なんとかそれだけ言うと、淕はにかっと笑い、病室を出ていった。


…眩しい笑顔。



「…馬鹿が」


淕はまたここへ来てくれるのだろうか。


そう思うとやけに嬉しくて、柄にもなく一人でにやけてしまった表情を隠すように、片手で顔を覆った。

⏰:08/08/26 00:47 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


#667 [みい]







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Story10〜弱気。
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⏰:08/08/26 00:50 📱:SH905i 🆔:fijO4rPk


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