・・悪魔なキミ・・
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#630 [みい]
「ちょっと待ってて」
そう言って一度病室を出て、再び入って来た矢野君が連れてきたのは…
「……淕…」
雨宮淕、だった。
「どうしてやろうか悩んだんだけどさ、俺じゃ決めかねたから蓮に引き渡そうと思って」
矢野君はそう言い、淕を蓮のほうへ少し荒っぽく押し出す。
:08/08/12 23:23
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#631 [みい]
淕はポケットに手を突っ込んだまま、ばつが悪そうに俯いている。頬には、大きな傷が出来ていた。
「…あんだろ?二人で話すことの一つや二つ」
矢野君は諭すようにそう言ったあと、私の手をとり病室を出ようとした。
「…矢野」
後ろで蓮の声が聞こえ、私達は立ち止まり、振り返る。
:08/08/12 23:24
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#632 [みい]
「…さんきゅ」
矢野君は大きく目を見開いた後、照れ臭そうに笑ってまたドアに向かう。
「…おい、矢野」
そこでなぜか二回目の待ったがかかった。
私と矢野君が二人して今度は何か、と不思議に思いながら先程と同じように振り向くと、
:08/08/12 23:26
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#633 [みい]
「柚に触んな」
蓮が指差すは、さっき矢野君に手をとられ、そのまま自然に繋がれた私達の手。
矢野君ははいはい、と苦笑すると私の手を放し、おどけるように両手を頭上に置いて病室を出た。
「蓮達…ふたりきりにしちゃって大丈夫かな?」
病室を出たあと、私は矢野君に小声で聞く。
:08/08/12 23:28
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#634 [みい]
「大丈夫だよ。あんなんでも血の繋がった兄弟なんだから」
矢野君が笑ったその時、私は矢野君の頬に出来た、淕のものと同じくらい大きな傷に初めて気が付いた。
「矢野君っ…ほっぺた、怪我してる…!」
「え?…ああ、ほんとだ」
矢野君は自分の頬に手をやり、指先についた血をぺろっと舐めながら苦笑する。
:08/08/12 23:29
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#635 [みい]
「早く手当してもらわなきゃ!ここ、病院だし…」
「だいじょーーぶ!こんくらい平気平気!俺の自然治癒力、まじ半端ないから!」
オロオロする私を茶化すようにウインクをする矢野君。でも、結構派手な傷だ。そんなわけにはいかない。
「駄目だよ、もしばい菌でも入ったりしたら…」
尚も診察を勧める私を、矢野君は目を細めるようにして見つめる。
:08/08/12 23:30
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#636 [みい]
「…柚ちゃんは、優しいね」
てんで期待していなかった褒め言葉に、思わずきょとんとしてしまう。
「久々だな、こんなに人に心配してもらえるの」
どこか悲しみをたたえた笑みと独り言のような小さい呟きに、私の胸は締め付けられる思いがした。
「…俺のこと、恐くないの?」
:08/08/12 23:31
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#637 [みい]
遠慮がちにそんな質問をするのはきっと、矢野君が持つもう一つの"顔"を私が知ってしまったからだろう。
「恐くなんかないよ。だって、矢野君は矢野君だもん」
最初はびっくりした。それは否めないが、本当の姿は、今私の目の前にいる彼なんだとわかるから。恐怖なんて感じない。
私の返事を聞いて矢野君は少し驚いたようだった。
:08/08/12 23:32
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#638 [みい]
でも、またすぐに微笑み、
「そっか」
と私の顔を見る。
矢野君の過去や、どんな心の傷を負っているのかなんてこと、私は知らない。
でも、この優しい笑みの持ち主に、どうか誰かが幸せをもたらしてくれますように。
「柚ちゃんが手当してくれない?俺、医者って嫌いなんだ」
:08/08/12 23:37
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#639 [みい]
長椅子に座り、私を上目に見て笑いながら問う矢野君に、私はこくんと頷いた。
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「いっ…たあー!痛い痛い!」
病院内のコンビニで買ってきたマキロンをティッシュに含ませ頬の傷口に押し当てると、廊下に響くぐらいの大声で矢野君が叫ぶ。
ちょっと…みんな見てるじゃん!恥ずかしいったらありゃしない…。
:08/08/12 23:38
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