・・悪魔なキミ・・
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#657 [みい]
「兄さんを見てると、俺は駄目なんだ。双子のうち、出来の悪いほうなんだ、っていつも思い知らされて…」
そこまで言うと、淕は嗚咽して言葉を詰まらせる。
「…淕、それは違う。俺だってお前を羨んでいた」
俺の言葉に、淕がえ、と掠れた声を漏らす。
:08/08/26 00:39
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#658 [みい]
「俺は感情を表に出すのが下手だ。淕みたいに泣いたり笑ったりするの、苦手なんだよ」
俺は、かわいくない子供だった。どこか冷めてるというか、子供らしくない、大人ぶった子供。
比べて淕は、それこそかわいらしい奴だった。無邪気で、悪戯とかが大好きで、俺とは正反対で。
親父の愛情は、間違いなく淕のほうへより多く注がれていた。
:08/08/26 00:40
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#659 [みい]
淕がいなくなって落ち込む親父のために、淕みたいに悪戯っ子になろうとして、柚をいじめたこともあった。
でも、何か違う。どこか無理してる自分がいた。
「どんなに頑張っても、俺はお前の代わりにはなれなかった」
どんなに子供ぶっても、どんなにガキくさく柚をいじめても。
俺は、『淕』にはなれなかった。
:08/08/26 00:41
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#660 [みい]
「…ばっっかみてえ!」
「は?」
いきなりの淕の大声に、俺は驚き目を丸くし、瞬きを繰り返した。
「お互いを羨む双子とか、気持ちわりーっつーの!」
「…ああ」
どちらも大して優れた人間なわけでもないし、な。
淕は顔を背けているから、表情はわからない。
:08/08/26 00:42
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#661 [みい]
「…父さん、元気?」
「ああ。大阪に単身赴任してるけど、今はこっちに戻ってきてる。…会うか?」
淕はちょっと考えたあと、
「…いいや。今更会っても、照れ臭いだけだし」
と苦笑を含めた声で親父との再会を断った。
「母親は、どうしてる?」
:08/08/26 00:43
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#662 [みい]
こんな言い方をしたが、俺が気になっているのは淕のことだ。淕は、今でもあの狂った実母と一緒に暮らしているのだろうか。
「そんなの、とっくにどっかの施設にぶち込んでやったよ」
「…そうか」
ほっとしたのもつかの間、今度は淕は一人で大丈夫だろうかという不安に襲われる。
俺が口を開きかけた瞬間だった。
:08/08/26 00:43
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#663 [みい]
「言っとくけど、別に寂しくなんかないから」
淕の言葉が俺の口をつぐませる。
「一人も、なかなか気軽でいいもんだよ。働いてるから金だってどうにかなるし」
いつの間にこいつはこんなに大人になっていたんだろう。
俺達双子は、昔とは立場が逆転してしまったたらしい。
「…そうか」
:08/08/26 00:44
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#664 [みい]
「…うん。じゃ、俺そろそろ行くわ」
「…淕!」
俺を見ないまま病室を出て行こうとする淕を引き止める。
本能のままにそうしたのだが、次の言葉が出てこない。なぜだか、口が勝手に動いたのだ。
淕は、言葉を選びながら沈黙してしまった俺を振り返る。
:08/08/26 00:45
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#665 [みい]
「…兄さん」
口下手な俺より先に、淕が口を開いた。
俺が呼び止めたのに。気まずいながらも淕に顔を向ける。
「…また、来てもいいかな?」
何を言われるか予想していたわけでもないが、それでもやはりその言葉は想定外で、思わず目を見開く。
「……ああ」
:08/08/26 00:46
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#666 [みい]
なんとかそれだけ言うと、淕はにかっと笑い、病室を出ていった。
…眩しい笑顔。
「…馬鹿が」
淕はまたここへ来てくれるのだろうか。
そう思うとやけに嬉しくて、柄にもなく一人でにやけてしまった表情を隠すように、片手で顔を覆った。
:08/08/26 00:47
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