・・万華鏡・・
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#271 [果樹]
「い、嫌・・・」

振り払いたいのに力じゃ適わない自分が悔しい。

「あのー俺抜きで話進めないで貰えますか?」

そんなピリピリした雰囲気の中で一つの声と共に、にゅっと手が挙がった。

「貴方は?」

萩野が私から総に視線を移す。

「時田総一郎。つかさの家庭教師」

⏰:08/06/09 22:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#272 [果樹]
「ああ、貴方でしたか。お嬢様を誑かして連れ出したのは」

「萩野!!失礼なこと言わないで!あれは私の意志で出て行ったのです」

私が萩野の言葉に反抗するように大きな声で怒鳴ると、萩野は冷ややかな目で私を見てからふっと嫌な笑みを溢す。

「まぁどちらでもよろしいですが。さぁ、参りますよ」

⏰:08/06/09 22:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#273 [果樹]
萩野が私の手を力づくで引っ張る。
しかしその萩野の手は、総によって振り払われた。

「おいおい、嫌がる女を無理やり連れて行こうとするのは、ちょっと男としてないんじゃねぇのか?」

いつものにやけ顔と違う怖い顔を総は萩野に向ける。
萩野の眼光が鋭く光る。

⏰:08/06/09 22:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#274 [果樹]
「貴方には関係の無い事だ。第一貴方、少々お嬢様と一緒に時を過ごしたからといってお嬢様のすべてを知ったつもりか?お嬢様の幸せを考えてものを言うんだな」

「っ・・・」

総は言葉に詰まって口を閉ざしてしまった。
そんな総に萩野は勝ち誇ったような顔をしてから、少し緩めた顔で私に向き直る。

⏰:08/06/09 22:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#275 [果樹]
「さぁお嬢様。参りますよ。旦那様もご心配なさっています」

「嘘よ・・・」

顔がまた俯く。

お父様が私を心配してるなんて、そんなの嘘・・・。
お父様は一度だって私に優しい顔も悲しい顔も見せたことがない。

涙だって・・・。

「嘘ではございません。旦那様のお気持ちも少しはお考え下さい」

⏰:08/06/09 22:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#276 [果樹]
「っ!」

「さぁお車にお乗り下さい」

私たちの側につけた車に萩野は私を無理やり押し込もうとする。

「いや・・・。総!総っ!」

私は周りの目を気にすることなく叫んだ。
力の限り総の名前を叫んだ。
でも総は俯いて、私の方を見ようとはしない。

⏰:08/06/09 22:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#277 [果樹]
総・・・?

「つかさ」

名前を呼ばれ顔を上げると、総が虚ろな目で私を見ていた。

「お前は家に帰れ」

「え・・・?」

総の口から信じられない言葉が発せられて、私は身体から力が抜けるのを感じた。

「家に帰って今までの生活に戻るんだ。それが普通だ」

⏰:08/06/09 22:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#278 [果樹]
総が何を言ってるのかわからない。

何を言ってるの総・・・?
なんで家に戻れなんて。

「そんな・・・。だって言ったじゃないですか」

だらんと身体の力が抜けた私を萩野の腕が支えている。

でもそんなことはどうでもいい。
私は振り絞るようにして精一杯の声を出す。

⏰:08/06/09 22:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#279 [果樹]
「総言ってくれたじゃないですかっ。私に自由をくれるって・・・!」

私の目からは、いつの間にか大粒の涙が流れて、頬をめいっぱい濡らしていた。

「総っ!!」

叫んでも叫んでも総に声は届かない。

総はまるで私の声を遮断するように顔を背けている。

⏰:08/06/09 22:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#280 [果樹]
「行きますよ」

萩野に押し込まれるように私は車に乗り込み、それを確認して車は発車した。

家に着くまでの時間、私の頬はずっと濡れていて、それが乾くことはなかった。




「つかさ・・・ごめんな」

⏰:08/06/09 22:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


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