・・万華鏡・・
最新 最初 🆕
#1 [果樹]
ここでは様々な恋のお話を書こうと思います((∀・!

ご意見ご感想はこちらまで
↓↓↓

果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/05/28 20:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#2 [果樹]
.

知ってる・・・?


万華鏡ってね一度見た模様はもう二度と見れないの。

不思議だよね。



恋愛もきっと同じ。

その時楽しかったことや悲しかったことはきっとその時一度きりのその時だけの感情。

.

⏰:08/05/28 20:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#3 [果樹]
.

例え何度楽しいことや悲しいことを繰り返したって、同じ高揚感や焦燥感にはならない。

だからきっと恋愛は一瞬の刻が大事で一分一秒だってもったいないんだね・・・。


ほら・・・
万華鏡覗いてみよう。

きっと何か素敵なものが見れるよ。

.

⏰:08/05/28 20:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#4 [果樹]
.



Story 1

【桜咲クミライ恋ユメ】



.

⏰:08/05/28 20:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#5 [果樹]
「もう桜も散ったのか・・・」


彼女と出会ったのは、この桜が満開に咲いていた頃だったな・・・。



・・・・・・・・・・・・



桜が咲き出して、あー春だなぁなんて思う4月。

高校の入学式で、俺は彼女に出会った。

⏰:08/05/28 21:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#6 [果樹]
入学式。


正直かったるい。

聞きたくもねぇジジババの話を延々と一時間も聞かされるなんて、苦痛以外のなにものでもない。

きっと全校生徒がそう思ってるはずだ。


俺は、サボる場所を見つけるために歩いていたら、学校の隅に追いやられるように咲いていた桜を見つけた。

⏰:08/05/28 21:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#7 [果樹]
ちょーどいいや!

桜の下で一寝することに決めた俺は、そこに近付く。


しかし先客がいたようだ。

桜の木に寄りかかる様にして座る少女。

黒く長い髪が風が吹く度に揺れる少女は、制服の感じからいって新入生だろう。

まだ着慣れない感じと制服の新品具合いがそれを物語っていた。


ちぇ、ここは駄目か。

俺は別の場所を探そうと回れ右をしようとした時、桜の方から声が聞こえた。

⏰:08/05/28 21:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#8 [果樹]
「あなたもサボリ?」

一瞬桜が喋ったのかと思ったが、それは紛れもなく少女の声。

澄んだ綺麗な声は、まだ世の中の醜さも何も知らないようだった。


俺は回れ右をしようとした足を止めて、少女の方に向き直る。

「まぁな。昼寝の場所取られちまったけど」

⏰:08/05/28 21:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#9 [果樹]
俺はちょっと意地悪く言う。

しかし少女はそれに気を悪くした感じもなく笑っている。


「あ、ごめんなさい。よかったら隣どうぞ。別にお昼寝の邪魔するつもりはないから」


寝れるならなんでもいーやと思った俺は、少女の誘いを受ける事にした。

⏰:08/05/28 21:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#10 [果樹]
ごろんと桜の下の芝生に寝転ぶと空よりも鮮やかな色の桜が目に飛込んできた。

暖かい陽気にはうってつけのそよ風と桜の花の隙間からたまに溢れる日射しが気持ちよかった。


ふと少女に目線を移すと少女はさっきと変わらず木に寄りかかったまま本を読んでいた。

「なぁ、あんたさっきから何読んでんだ?」

俺の声に気付いたようで少女もこっちを見たが、その顔は何だか笑っている。

⏰:08/05/28 21:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#11 [果樹]
「寝ないの?」

「う、うるせぇな!聞いてんだから答えろよ!」

少女につっこまれた俺は、軽く動揺してしまった。

「詩よ」

「詩?なにそれ」

「うーん。分かりやすくいうと自分の思った事を文章にしたもの・・・かな?」

少女は説明してくれたが、詩を読んだことのない俺にはいまいちよく分からなかった。

⏰:08/05/28 21:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#12 [果樹]
「ふーん。面白いの?」

「読んでみる?」

「いい」

笑顔で勧める彼女に俺は寝返りをうち、背中を向けて答えた。

「そう?以外とハマるかもよ?」

後ろでクスクスと笑う彼女。

そんなのに俺がハマるわけがない。

俺が今度こそ眠りにつこうと目を閉じて数分。

⏰:08/05/28 21:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#13 [果樹]
体育館の方から生徒のざわつきが聞こえた。

「あ、始業式終わったみたい。それじゃあさようなら」

パタンと本を閉じた声に俺は反応し、上体を起こすと少女は校舎に歩いていってしまった。

「あっ・・・。」

はぁ。名前くらい聞いとけってんだ俺のバカ!

しょうがねぇ俺も教室に行くとするか。

俺は軽く伸びをして、自分の教室へと向かった。

⏰:08/05/28 21:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#14 [果樹]
教室に行くと、中は入学式独特のざわつき感があった。

まぁ廊下も大概煩かったけど・・・。

俺は黒板に貼ってあった座席表で自分の席を確認し、椅子に座ると机に突っ伏した。

女どもの甲高い笑い声や男たちのくだらない話声を聞かないように目を閉じて、さっきの桜の木の下で会った少女のことを思い出した。

⏰:08/05/29 05:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#15 [果樹]
綺麗な子だった。
純粋そうで儚げで、でもどこか影のある子。

やっぱり名前聞いときゃよかった。

また会えるかな・・・。



「千晃ー!お前入学式サボったろー!」

名前を呼ばれて顔を上げると目の前の席に馴染みの顔があった。

「あれ猛。お前いたの?」

⏰:08/05/29 05:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#16 [果樹]
目の前のこいつは、木田猛。

中学からつるんでる奴で、明るくていい奴なんだ。

高校が一緒なのは知ってたけどまさかクラスまで一緒だとは・・・。

「“いたの?”じゃねー!俺はなぁ聞きたくもねぇジジババの話を延々と1時間も聞かされたんだぞ?」

「あー悪かったって」

煩い猛を俺は適当にあしらう。

⏰:08/05/29 05:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#17 [果樹]
「つかさーお前始業式の間どこにいたんだ?」

切り替えの早さが猛のいいところだ。

「どーせどっかでサボってたんだろ?」

「あー・・・まぁな」

俺の頭の中に少女の顔が浮かぶ。


「なんだなんだ?なんか楽しいことでもあったのか?」

「あったところでお前には教えてやらねーよ」

⏰:08/05/29 05:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#18 [果樹]
「なんだよー。千晃のいけずぅ」

ベッと舌を出すと猛は気色悪い声をだした。

「やめろ。気持ち悪い」

俺は猛から遠退くように椅子の背持たれに身体を預ける。


「あ、つーか聞いて聞いて。耳より情報♪」

「耳より情報?」

「おぅ!聞きたい?」

⏰:08/05/29 05:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#19 [果樹]
猛は目を爛々と輝かせて聞いてきた。

「つーか話したいんだろ?」

にひひと笑う猛。
これは話したくてうずうずしている顔だ。


「それがさー今年の新入生にすんげー美少女がいるらしーんだ!」

「美少女?くだらねぇ」

女ってゆーのはどうも煩くて敵わない。

⏰:08/05/29 05:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#20 [果樹]
「まぁそう言うなって。俺もチラッとしか見てねぇんだけど確かにあれは美少女だった!」

「ふーん」

「黒髪サラサラの可愛い子だったぜ」

「黒髪ねぇ」


一瞬だけ桜の下で出会った少女が脳裏よぎった。

まさかな・・・。

⏰:08/05/29 05:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#21 [果樹]
「ん?どした」

「いや・・・なんでもねぇ。」

「ふーん。あ担任きた。そんじゃまた後でな!」


猛は自分の席に戻っていった。

⏰:08/05/29 05:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#22 [もも]
次の日

猛と昼飯を食った俺は、昼寝のために桜の木のところまでやってきた。


「あ」「あ」


昨日と同じ場所にこれまた昨日と同じ少女がいた。


「昨日はドーモ」

「こちらこそ」

俺は軽く挨拶をして、また昨日と同じところに寝転んだ。

⏰:08/05/29 13:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#23 [もも]
「随分この桜が気に入ってるみたいね」

少女が桜を見上げながら言う。

「あ?あーまぁな」

少女の問掛けに俺は曖昧な返事を返す。


ちらりと少女を見るとまた本を読んでいた。

「また詩読んでんのか?」

「うん!」

満面の笑みで答える少女。

⏰:08/05/29 13:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#24 [もも]
「本当に好きなんだな。その本」

「え?」

「昨日も同じの読んでただろ?」

俺の言葉に少女はにっこりと微笑んだ。

「覚えててくれたんだ」

「べ、別に・・・」

俺は何だか顔が赤くなっている気がして寝返りをうって少女に背中を向けた。

⏰:08/05/29 13:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#25 [もも]
「そんなに好きなのか?」

俺は背中を向けたまま聞く。

「うーん・・・どうだろ?共感出来るの。だからつい読んじゃって」

「ふーん」

少女の顔は見えなかったが声は何だか寂しそうだった。



キーンコーンカーンコーン

⏰:08/05/29 13:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#26 [もも]
授業開始5分前を告げるチャイムが鳴った。

「あ、授業始まっちゃう。それじゃあさようなら」

「あ・・・」

俺が振り返った時には、少女はもう校舎に向かって歩いてしまっていた。


また名前聞けなかった。
全く・・・俺は何してんだ。

⏰:08/05/29 13:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#27 [果樹]
自分の不甲斐無さに嫌気が差しながら俺は教室へと戻った。


――――――――・・・・・


「千晃ー。どこ行ってたんだよー」

「ヤボ用」

俺はガタンと椅子を引いて座ると、机に突っ伏した。

俺は授業なんか耳にも入らず、ずっと少女のことを考えて一時間過ごした。

⏰:08/05/29 18:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#28 [果樹]
「なぁ猛」

俺は休み時間に目の前で漫画を読んでいる猛に声をかけた。

猛は「んー?」と生返事を返す。

「この間お前が言ってた美少女って・・・」

“美少女”のフレーズを出すと猛は読んでいた漫画を閉じ、身を乗り出してきた。

「お?ついに興味持ったかぁ?」

⏰:08/05/29 18:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#29 [果樹]
「あー・・・まぁな」

適当に返した答えにも関わらず猛はうんうんと頷いている。

「それでこそ男だ!あ、そういやー美少女について新情報だぞ」

「ん?」

表面上は関心の無さそうに聞くが内心では、聞きたくて仕方がなかった。


「美少女の名前は水嶋咲良チャン♪かんわいー名前だろぉ」

⏰:08/05/29 18:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#30 [果樹]
「咲良・・・ねぇ」

俺が名前を口にすると、猛はにんまりと怪しい笑みを浮かべる。

「なんだなんだぁ?恋の予感か?」

「さーあ。どうだろうな?」

恋か・・・。
そんなんじゃないだろ。



俺はこの時は、そう思っていた。

⏰:08/05/29 18:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#31 [果樹]
すいません(。_、)
上の名前で“もも”ってなってますがこちらも果樹です!!
ほんとややこしくてすみません

⏰:08/05/29 18:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#32 [果樹]
次の日の昼休み

また桜の木のところにいくと例の少女は、また木に寄りかかるようにして本を読んでいた。

俺は何も言わずに側へ行き、また例の如く寝転ぶ。


「あんたの名前、咲良っていうんだろ?」

俺が唐突に聞くと少女は本から俺に視点をずらし驚いたようにこっちを見ていた。

「そうだけど。何で知ってるの?」

⏰:08/05/30 15:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#33 [果樹]
あ、やべぇ。
いきなり名前知ってたら変だよな。

でも口にしてしまったものは仕方がない。
俺は正直に答える。

「だちに聞いた」

すると少女、いや咲良はあの時と同じように気を悪くした様子もなくにこっと笑った。

「ふふッ・・・随分情報通のお友達なのね」

「ただのおせっかい野郎だ」

⏰:08/05/30 15:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#34 [果樹]
俺が悪態をつくと咲良はクスクス笑ってまた本に目を戻した。



何分くらいたった時だろう。
咲良が突然口を開いた。

「あなたは?」

「え?」

俺は桜を見ながらぼーっとしていたのでその言葉を聞き流してしまった。

⏰:08/05/30 15:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#35 [果樹]
ばっと上体を起こし咲良の方を見るとふわっと柔らかい笑顔で笑っていた。


「あなたの名前はなんていうの?」

「中村・・・千晃」


何故か俺の顔に身体中の熱が集まってくる気がした。

「ふふッもう何度も会ってるのに自己紹介するのが今日だなんてね」

咲良はそういいながらまたクスクスと笑っていた。

⏰:08/05/30 15:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#36 [果樹]
それから俺は昼休みになると必ず桜の木の下へ行った。

咲良は俺が行くより先に必ずいて、いつのまにか咲良に会うのは俺の日課になっていた。


――――――――・・・・・


「ちっあっきくーん♪」

猛がなんだか楽しそうに俺の元へスキップでやってきた。

⏰:08/05/30 15:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#37 [果樹]
「あ?ていうか猛きしょい!」

おれは眉間に皺を寄せ、猛を見るがそんな俺はお構い無しに猛はにまにま笑っている。
気味が悪い。

「そんなこと言っていーのかなー?俺ばっちりこの目で見ちゃったもんねー♪」

「何を?」

にまにま笑いを止めない猛に呆れた顔で聞き返す。

⏰:08/05/30 15:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#38 [果樹]
「桜の木の下での噂の美少女との密会♪」

「なっ・・・!」

猛のいきなりの言葉に俺はつい椅子から立ち上がって猛を見るが、猛は相変わらずだ。

「まぁまぁ落ち着けって」

とりあえず俺は椅子に座り直して頬杖をつくと猛と目を合わせないようにした。

⏰:08/05/30 15:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#39 [果樹]
「なるほどなー。美少女に会うために千晃は昼食うと必ず消えてたんだなー」

「うるせーな。別にいーだろ」

猛の言葉につい俺は、喧嘩腰っぽい口調になってしまった。


「やだなー千晃。俺は応援してんの♪千晃モテんのに今まで女作んなかっただろ?だから美少女が千晃の彼女になればいーなぁって♪」

⏰:08/05/30 15:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#40 [果樹]
あー確かに今まで複数なら女はいたけど一人の女と付き合うってのはなかったなー。

猛の言葉につい納得してしまう。


いや待てよ。

「つか咲良は別にそんなんじゃねぇし」

「咲良とか呼んじゃってるくせに何言ってんだか・・・。まっ頑張れよ♪」

猛は俺の肩をぽんぽんと叩いて席に戻って行った。

⏰:08/05/30 15:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#41 [果樹]
昼休み

弁当を食い終わってガタンと席をたった俺に、猛は顔を上げた。


「あれ?千晃どこに・・・ああ!愛しの咲良チャンのとこ?」

分かっているくせに聞いてくるところがわざとらしい・・・。

「うるせー」

「いってらっしゃーい♪」

⏰:08/05/30 23:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#42 [果樹]
ぶんぶんと手を振って見送る猛を無視して俺は桜の木へと向かった。


――――――――・・・・・


「あれ・・・?」

桜の下まで来た俺は、いつもと違うことに気付いた。


咲良がいない。

珍しいな咲良が俺より早く来てないなんて。

⏰:08/05/30 23:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#43 [果樹]
いつもは必ず俺より早く来ているのに、と少し不安になったが、とりあえずいつも通り桜の木の下に寝転び咲良を待つことにした。

もう葉桜になってきたか・・・。

俺の上では桜の花が散り始め、段々と葉が茂ってきていた。


俺は、目を瞑って瞼の裏に咲良を思い浮かべる。


黒髪の綺麗な髪。
ぱっちりとした二重の目。

⏰:08/05/30 23:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#44 [果樹]
少し茶色みがかった瞳と薄いピンク色の唇。。

全てが綺麗で俺を惹き付ける存在。


「千晃!」

名前を呼ばれて俺は現実に引き戻された。
校舎の方から走ってくるのは猛だ。

「なんだよ猛こんなところまで・・・」

「ばか!んなこと言ってる場合かよっ!!」

「は?」

⏰:08/05/30 23:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#45 [果樹]
猛は息を切らせて俺のところまでくるといきなり怒鳴りつけてきた。

意味が分からない俺はただただ目を丸くする。

「咲良ちゃんが教室で倒れて保健室に担ぎ込まれたらしいんだ!」

「――――っ!」

猛の言葉を聞いた俺はすぐさま立ち上がって猛には目もくれず保健室へ走った。

⏰:08/05/30 23:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#46 [果樹]
咲良っ!

咲良――――!!


――――――――・・・・


「宮ちゃん!!」

勢い良く保健室のドアを開け、俺は保険医である宮ちゃんの名前を呼ぶ。

「なんだ中村ー。またサボリ?」

宮ちゃんは回転式の椅子に座って笑っていう。

⏰:08/05/30 23:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#47 [果樹]
「違くて!咲良が・・・運び込まれたって・・・」

気持ちが焦って言葉がうまく出てこない。

宮ちゃんは「ああ」と目線を動かし部屋の奥にある窓際のベッドを指差した。

「そこのベッドに寝てるよ。あたしちょっと職員室いってくるからくれぐれも変なことしないよーに!」

カタンと椅子から立った宮ちゃんは、部屋から出ていく際に俺の方を向いて忠告してきた。

⏰:08/05/30 23:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#48 [果樹]
「しねーよ!」

俺はカァっと顔が赤くなる。

宮ちゃんはケラケラと笑って部屋を出ていった。



窓際のベッドに行くと咲良が気持ち良さそうに寝息を立てて眠っていた。

俺はなんだかほっとして、近くに立掛けてあったパイプ椅子に座って、咲良の寝顔を見る。

⏰:08/05/30 23:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#49 [果樹]
「咲良・・・」

名前を呼ぶと咲良は身じろいでから目を開けた。

「ん・・・千晃・・・くん?」

まだ少し朧気な咲良は、上体を起こそうとするので、俺は椅子から立ち上がり、咲良の背中に手を回してそれを手伝う。

「お前大丈夫なのか?」

「あ、ごめんね?心配かけちゃった?軽い脳震盪みたいなものだから心配ないよ」

⏰:08/05/30 23:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#50 [果樹]
優しく笑う咲良はどこか儚げで今にも消えてしまいそうだった。

「本当に?」

「心配しすぎ。大丈夫だから」

不安を拭い切れない俺が聞き返すと、咲良は笑って返事をした。

「今日桜の木の下、行けなかった」

窓の外を見ながら言う咲良に一瞬俺は目を奪われた。

⏰:08/05/30 23:37 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#51 [果樹]
「また明日があるだろ?」

「・・・そうだね!」

咲良は一瞬哀しそうな目をして、にこっと屈託のない笑顔を見せた。



でも咲良。
お前はこの時にはもう分かってたんだな。
自分の体のこと・・・。

⏰:08/05/30 23:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#52 [果樹]
次の日の昼休み

いつものように桜の木に向かおうとしていた途中俺は、女に話しかけられた。

名前までは知らないが、顔に見覚えがあった。
たぶん同じ1年だろう。


彼女は、顔を真っ赤にして体をもじもじとさせ、さっきから俺をチラチラと見ている。

あーこの感じ。
なんか身に覚えがある。
たぶんこれは・・・

⏰:08/05/30 23:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#53 [果樹]
「中村くん!」

「へ・・・?」

あ、俺か。

いきなり名前を呼ばれた俺は一瞬思考が止まる。

「中村くんのことずっと好きだったの・・・!良かったらあたしと付き合ってくれませんかっ?」

顔を真っ赤にさせた彼女はぎゅっと目を瞑り、少し震えていた。

⏰:08/05/30 23:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#54 [果樹]
やっぱり・・・。
これは属に言う愛の告白。

「あー・・・悪いけど、俺あんたに興味ないんだわ」

俺が頭をかきながら言うと彼女は目にいっぱい涙を溜めて、走って行ってしまった。

俺はその後ろ姿を見ながらはーぁと盛大に溜め息をつく。

「見ーちゃった♪」

⏰:08/05/30 23:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#55 [果樹]
「なっ・・・咲良!!」

ひょこんと木の後ろから顔をだした咲良に俺は、驚いて少し後退る。

「見てたのかよ・・・」

「見えるところにいたのは千晃くんの方でしょー?」

咲良はぷくっと頬を膨らませた。

⏰:08/05/30 23:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#56 [果樹]
まあ確かに此処は桜の木から目と鼻の先で、咲良がいつも通りあの場所にいたなら見られて当然だった。

なんかいろんなことに後悔だ・・・はぁ。


「それより」

俺が片手で頭を抑えながらうなだれていると、ズイッと視界の真ん中に咲良が現れた。

なんだか顔が怒っている感じだ。

⏰:08/05/30 23:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#57 [果樹]
「駄目じゃん千晃くん!!女の子は繊細なんだからあんな言い方したら傷付いちゃうよ!」

ああ、断る時の台詞まで聞いてたのか。

俺は、はぁーとまた溜め息をつき、咲良の額にデコピンをくらわせた。

「バーカ。どーせ諦めるならこっぴどく振られた方が諦めるもつくだろ!?」

⏰:08/05/30 23:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#58 [果樹]
咲良は面食らった顔をしたが、すぐにいつもの笑顔になった。

「ふふッ」

「なんだよ・・・」

「千晃くんは優しいなーと思っただけ♪」

「ばーか」

そんなことを笑顔で言う咲良に俺はなんだか恥ずかしくなった。

⏰:08/05/30 23:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#59 [果樹]
「ふふッ・・・っ!」

「咲良!?」

笑っていた咲良の顔が歪み、いきなり足元から崩れるようによろけたので、俺は急いでその身体を受け止めた。

「ごめ・・・ちょっとよろめいちゃった」

弱々しく笑顔を見せる咲良が俺はなんだか愛しくて堪らなくなった。

⏰:08/05/30 23:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#60 [果樹]
「ばか無理すんな。保健室行くぞ」

「え・・・?」

俺は咲良の背中と膝の裏に手を回し、抱え上げた。

属に言うお姫様抱っこだ。

腕の中では咲良が目を丸くしていた。

「掴まってろな?」

「へ・・・?あ・・・うん」

⏰:08/05/30 23:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#61 [果樹]
俺の言葉に咲良はおずおずと胸元のカーディガンに手を伸ばしそれをぎゅっと握り締めた。

それを確認した俺は、なるべく咲良に負担がかからないように、歩いて保健室に向かった。


――――――――・・・・


保健室のベッドに咲良を下ろすと安心したのか、咲良はいつの間にか眠りについていた。

⏰:08/05/31 00:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#62 [果樹]
俺は5限目をサボって咲良についている。

今は宮ちゃんが入れてくれた茶を一緒に飲んでいるところだ。


「なぁ、宮ちゃん・・・。咲良どっか悪いのか?」


俺はこの間からずっと思っていたことを宮ちゃんに聞いた。

⏰:08/05/31 00:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#63 [果樹]
本当は、咲良本人から聞きたいが、きっと咲良に聞いたって、なんでもない大丈夫と返されるのが落ちだから咲良には聞けなかった。


宮ちゃんは「んー・・・」と俺の顔を見ながらしばらく考えて、はぁと短い溜め息をついた。

そしてゆっくりと口を開く。

⏰:08/05/31 00:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#64 [果樹]
「水嶋はね・・・心臓の病気なんだ」

「え!?」

俺の頭に衝撃が走る。

一瞬理解が出来なかった。

どうしてだろう身体が震える。

「本当なら病院にいないといけないのに本人の希望で学校に通ってるらしいんだけど・・・もう限界かもな」

宮ちゃんが少し寂しそうに言った。

⏰:08/06/01 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#65 [果樹]
「そんな・・・」

咲良が病気・・・?

俺はうまく自分の中で今聞いた事が処理できなかった。

うつ向く俺の肩を宮ちゃんはぽんぽんと叩いて、「ついててやんな」と一言残して保健室を出ていった。


俺は立ち上がって咲良が眠っているベッドに行き、パイプ椅子に腰を下ろすと布団の上に出ていた咲良の白く細い指を握り締めた。

⏰:08/06/01 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#66 [果樹]
なぁ咲良・・・。
俺はどうすればいいんだ・・・っ!?



「千晃くん・・・?」

名前を呼ばれ、顔を上げると咲良がこっちを見て笑っていた。

「咲良・・・!」

「私の病気のこと聞いちゃった・・・?」

起き上がって俺の方を見て、どこか悲しげに聞いてくる咲良。

⏰:08/06/01 02:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#67 [果樹]
なんでわかったのだろうかと疑問に思っていたら、咲良の指が延びてきて、俺の目元に触れる。

「泣いてる・・・」

見ると、咲良の指には水滴がついていた。

俺の涙・・・?

いつのまにか俺の目からは涙が溢れていた。

俺は急いでそれをカーディガンの袖口で拭った。

⏰:08/06/01 02:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#68 [果樹]
「もうっ宮島先生のお喋り!」

と咲良は冗談めかしげに怒っていた。

そして咲良はうつ向き哀しそうな表情でぽつりぽつりと話し始めた。

「私ね・・・学校ってまともに行ったことなかったの。小さい頃からずっと病院にいて、病院の中だけしか知らなかった。だからこの学校に通えた時すごく嬉しかったんだ。友達もできて、毎日楽しかった。でも、もう限界かなぁ・・・」

⏰:08/06/01 02:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#69 [果樹]
「咲良・・・」

咲良の目から一筋の涙が流れ落ちた。

「自分と同じ名前の・・・桜の花の下で千晃くんにも会えたのに・・・。なんであたしの心臓はちゃんと動いてくれないのかなぁ・・・っ」

ポタポタと咲良の目から流れ落ちた涙が布団に染みをつくった。

咲良は声を出すまいと下唇を噛んで必死に声を押し殺していた。

⏰:08/06/01 02:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#70 [果樹]
俺はそんな咲良が無償に愛しく感じて心臓がぎゅうっと痛くなった。


気が付けば俺は、自分の腕の中にその小さな身体を収めていた。


「俺が毎日見舞いに行くから!桜の花持って見舞いに行くからっ・・・だから早く治せよ!そんで元気になったらいっぱい遊びに行こう!なっ?」

⏰:08/06/02 13:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#71 [果樹]
俺の目からは拭ったはずの涙がまた溢れていたが、そんなことも気にせず俺は力いっぱい咲良を抱き締めた。


今俺にできることはこれくらいしかなかった。


すると咲良も俺の服をぎゅっと掴んで、「・・・・うん!」と涙を流しながらも笑顔で答えた。

⏰:08/06/02 13:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#72 [果樹]
それから咲良は、ちゃんと病院に戻った。

もちろん俺は桜の花を持って見舞いに行ったが、最初、枝を折って持っていったら咲良にこっぴどく叱られた。

咲良いわく、桜の枝は生えてきたりしないから折っちゃ駄目だったらしい。

それからは花びらを持って見舞いに行くと、咲良は笑って「ありがとう」と大事そうにその花びらを栞にしていた。

⏰:08/06/02 13:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#73 [果樹]
でも桜は咲いている時期が決まっているため散ってしまうと中々手に入れるのが難しかった。

でも俺はどうしても咲良に桜を見せてやりたくて、ネットや雑誌を使ってたくさん調べて毎日毎日なんとか咲良の元に桜の花を届けた。

その度に咲良は嬉しそうに笑うから俺はそれだけで、心が温かくなった。


そして季節は過ぎていった。

⏰:08/06/02 13:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#74 [果樹]
いつだったか嬉しそうに咲良が話してくれたことがあった。

「あたしの読んでいる本の詩の中にね、一番好きな詩があるの。それはね」



それは・・・――――

.

⏰:08/06/02 13:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#75 [果樹]
“僕はいつも窓から外を見ている

楽しそうな笑い声に耳を傾けるだけの僕

そんな僕をいつも励ますのは窓から見える桜の花

そこから動けない君はまるで僕そのもの

でもいつかこの足で陽の光のあるところに出られたなら僕はまず君の側で本を読もう

そしてこう言うんだ

『ああ、幸せだな』”

⏰:08/06/02 13:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#76 [果樹]
話し終えた後、「素敵でしょ?」と咲良は笑っていた。


なぁ、咲良。

お前は桜の木の下で本を読んでいるだけで、それだけで幸せだったんだな・・・。
お前が共感できるって言った意味が、今なら分かるよ。

⏰:08/06/02 13:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#77 [果樹]
.
――――――――・・・・


あれから二年・・・。

時が過ぎ、今日俺は卒業式を迎える。

去年より少し早く咲いた桜の木が俺の門出を祝ってくれているようだ。

いや、俺たちか・・・。

⏰:08/06/02 13:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#78 [果樹]
.



「千晃くーん!もーまたここにいたー。卒業式始まっちゃうよー?」



.

⏰:08/06/02 13:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#79 [果樹]
桜の木の下で寝転がっていた俺に、咲良が駆けよって来た。

「ああ」

返事をするだけで一向に起き上がろうとしない俺に諦めたのか、咲良は隣に腰を下ろした。


咲良をみる度、咲良がここにいるのが不思議な感じがする。

⏰:08/06/02 14:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#80 [果樹]
出席日数やら何やらいろいろ大変だったらしいが、咲良も無事、一緒に卒業できることになった。


「この桜ともお別れだね。」

上に咲く桜を見ながら寂しそうに言う咲良。

綺麗だ・・・。
とただそう思えた。


「咲良」

「ん?」

⏰:08/06/02 14:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#81 [果樹]
上体を起こした俺に咲良は小首を傾げる。

「ずっと言えなかったんだけどさ・・・。俺、お前が好きだよ」

「―――――っ!」

咲良の顔は驚いていてみるみる真っ赤になっていった。

「さっ卒業式に行くか!」

⏰:08/06/02 14:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#82 [果樹]
立ち上がって制服についた葉を手でぱんぱんと払いとり校舎に歩き出そうとした俺は、強い力に引き留められ進むことが出来ない。

後ろを振り返ると、咲良が俺のブレザーの裾をぎゅうっと両手で掴んでいた。

「あっあのね!」

「うん?」

俺は肩越しに咲良を見る。

⏰:08/06/02 14:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#83 [果樹]
咲良はうつ向いているが耳まで真っ赤になっていた。

「あたしも!あたしも千晃くんのこと・・・好きだよ」

「うん♪知ってる」

「なっ・・・!」

咲良は真っ赤な顔で俺をみて口をぱくぱくしている。

俺は咲良の方に振り向き、咲良と向き合う。

⏰:08/06/02 14:37 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#84 [果樹]
「クス・・・大好きだ咲良」

ちゅっと不意打ちで咲良の唇にキスをすれば咲良は顔を更に真っ赤にして「もうっ」と俺の胸を叩いてきた。


そしてすぐにいつもの優しい笑顔でふわっと笑ったんだ。

⏰:08/06/02 14:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#85 [果樹]
なぁ咲良。


俺たちの出会いはこの桜からだったな。

じゃあ今度はここから恋愛を始めようか・・・。



【桜咲クミライ恋ユメ】

―End―
.

⏰:08/06/02 14:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#86 [果樹]
.

あなたを見ている時間だけは幸せに包まれる。



story 2

【レンズ越しの恋】

.

⏰:08/06/03 02:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#87 [果樹]
あーやっぱり冴木先輩かっこいいなぁ。

あの取り巻きさえいなければ私が今頃!

・・・って何自惚れているんだろう私は。

はぁ・・・。


私は神田涼子。

私は毎朝、この渡り廊下から登校してくる冴木先輩を見ている。

⏰:08/06/03 05:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#88 [果樹]
冴木先輩とはあたしの想い人。

学校の中でもかっこいいと有名で、いつも周りには取り巻きの綺麗なお姉さま方。

三年生の冴木先輩に二年生の私が寄り付けるわけもなく、ここから見てることしか出来ない私。

はぁあー。

「また明日来よう」

私は渡り廊下を降りて教室に向かった。

⏰:08/06/03 05:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#89 [果樹]
だけど冴木先輩にみとれていた私は、渡り廊下にもう一人居たことに気が付かなかった。


「んーええ写真や。タイトルはさしずめ『切ない心』やろか?」


――――――――・・・・


あー今日も冴木先輩かっこいい。

また今日も私は、渡り廊下で冴木先輩を見ている。

⏰:08/06/03 05:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#90 [果樹]
軽くストーカーだ・・・。


今日は青空で気持ちがいいし、天井の無いこの渡り廊下はあたしの大好きな場所だ。

なんていったって冴木先輩も見れるし!


カシャッ

え?

「タイトルは『熱視線』。んー我ながらええタイトルや!」

⏰:08/06/03 05:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#91 [果樹]
声のした方を振り向けば、渡り廊下の端っこから人が歩いて来た。

髪は金髪、耳にはたくさんのピアスに手にはカメラ。

「はぁ。またですか?上條先輩」

「はろー涼ちゃん♪」

私が上條先輩の方を向いて嫌そうな顔をしているのに上條先輩はへらへらと笑って片手を振っている。

⏰:08/06/03 05:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#92 [果樹]
この人、上條先輩とはついこの間ここで出会った。

私がいつものごとく冴木先輩を見ていたら、いきなり写真を撮られ「ええ写真が撮れたわ!」とへらっと笑った上條先輩。

それからというもの毎朝上條先輩はここに来て、写真を撮っては、私の至福の一時を邪魔してくれる。


「涼ちゃんてさーいっつもここから滉太のこと見とるよな」

⏰:08/06/03 05:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#93 [果樹]
上條先輩は私の隣にきて、柵に寄りかかるようにしてこちらを見る。

滉太か・・・。
いいなぁ冴木先輩のこと呼び捨てに出来て。


「そして先輩はそんな私をいつも撮ってますよね」

「はははー。ばれたか」

少し睨むが上條先輩は気にしてないようにまたへらっと笑う。

⏰:08/06/03 05:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#94 [果樹]
「いつか盗撮の容疑で訴えますから」

「それはあかーん!堪忍してやぁ」

顔の前で両手を合わせてお願いする上條先輩。

私はなんだかおかしくて笑ってしまった。

「ふふっ」

すると先輩は片目だけ開けてそろりと私を見ると手を下ろしてまた柵に寄りかかった。

⏰:08/06/03 05:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#95 [果樹]
「そないに好きやんなら声かけれたらええのに」

先輩の言葉につい表情が曇る。

「無理ですよ。取り巻きの方々がすごい怖いって噂ですし。私は冴木先輩を見れるだけでいいんです」

私は校門に目を向けて答える。

「せやけどー。俺らもうすぐ卒業やで?」

「・・・・・・」

⏰:08/06/03 05:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#96 [果樹]
そんなの分かってる。

3月になれば先輩は卒業して、この学校を去ってしまう。

そしたらもう先輩を見ることは出来ない。

でも・・・・。


キーンコーンカーンコーン

チャイムの音で私は現実に引き戻された。

⏰:08/06/03 05:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#97 [果樹]
「あ、私もう行かなきゃ!先輩さようならっ」

私は上條先輩から逃げるように渡り廊下を下りて教室に向かった。


――――――――・・・・


はーぁ。授業が耳に入ってこない。

上條先輩があんなこと言うからいけないんだ!

⏰:08/06/03 05:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#98 [果樹]
人が幸せに浸ってたって言うのに。


私は授業を聞く気になれず、窓の外に目を向けて先生の言葉を右から左へ流すことにした。

窓の外には校庭が見えてグラウンドではサッカーをしている人たち。

ん・・・?

んん・・・!?

⏰:08/06/03 07:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#99 [果樹]
窓にかじりつくように校庭を見るとそこには冴木先輩の姿が。

先輩のクラス、この時間体育だったんだぁ!

授業中にも見れるなんてすっごい幸せ!


冴木先輩を目で追っていると金髪の髪が視界に入ってきた。

ん?あれは上條先輩!?

あ、ずるい!

⏰:08/06/03 07:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#100 [果樹]
私の視線の先には冴木先輩と肩組んで笑いあってる上條先輩の姿。

ううう、いいなぁ。

私が触れられない冴木先輩にああも簡単に触るなんて罰あたりなっ!


私は眉間に皺を寄せて、上條先輩が呪われるように念を送った。

⏰:08/06/03 07:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#101 [果樹]
そんなことをしている間に授業は終わっていた。


――――――――・・・・


私が冴木先輩を好きになったのは一年生の時。

まだ入学したての私は、校内で迷ってしまった。


・・・・・・・・・・・・・・・


ここはどこなのよー!

⏰:08/06/03 07:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#102 [果樹]
理科室はどこ?
っていうかここはA棟なの?B棟なの?

もーどっちよー!?


どこに行ったらいいかもわからない私は廊下のど真ん中で立ち往生。

さっきから同じ場所を行ったり来たりしている。

うちの学校はA棟もB棟も同じ造りをしていて、渡り廊下で繋がっている。

⏰:08/06/03 07:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#103 [果樹]
A棟に一、二年生の教室があって、B棟に三年生の教室と特別教室があるらしいが、外見が同じすぎてわけがわからない。

途方に暮れた私は、とりあえずまた歩くことに。

一時間さ迷い続けたらどうしよう・・・。

そんなことを思いながら歩いているといきなり後ろから声が聞こえた。


「あれ?迷子がいる」

⏰:08/06/03 07:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#104 [果樹]
天の助けだ!と思いばっと後ろを振り向くと、そこにいたのは、緑のネクタイを締めた綺麗な男の人。

男の人に綺麗って言葉は変かもしれないけど、でも本当に綺麗で、纏っているオーラが違う。

私がみとれていると男の人はクスッと笑った。

「どうしたの?迷子じゃないの?」

「へ?あっはい!迷子です!」

⏰:08/06/03 07:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#105 [果樹]
私がシャキンと背筋を伸ばし直立で答えると、男の人はまたクスクスと笑い出す。

「そんなに大きな声でカミングアウトしなくても」

あ・・・。

私は何だか急に恥ずかしくなった。

「どこに行きたいの?」

目にうっすら涙を溜めて聞いてきた男の人に、「理科室です!」と言うと「ん、じゃあおいで」と手招きをされたので、私は素直についていった。

⏰:08/06/03 07:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#106 [果樹]
「着いたー!!」

教室の上には“理科室”の文字。
間違いなくここは理科室。

私が一人でばんざいをしていると、男の人がまたクスクス笑った。

「ん、良かったね」

笑った顔はあまりにも綺麗で、ついまたみとれてしまう。

⏰:08/06/03 07:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#107 [果樹]
「じゃあ俺はこれで。勉強頑張って」

そう言って男の人は、私に手をひらひらと振ってから歩き出した。

「あ、あのお名前は?」

私がその後ろ姿に声をかけると男の人は少し振り向いてにこっと笑うと、「冴木滉太。またね神田涼子ちゃん♪」と言って歩いて行ってしまった。

⏰:08/06/03 07:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#108 [果樹]
私は、その後ろ姿を見送ってから理科室に入り、先生に謝って席についた。

前では先生が何か実験の説明をしていたが、私はさっき会った冴木先輩のことで頭がいっぱいだった。


冴木滉太先輩・・・。

緑のネクタイって事は二年生かぁ。

かっこよかったなぁ。

⏰:08/06/03 11:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#109 [果樹]
あ!そういえば私お礼言ってない!
うわー非常識な奴って思われたかも。

しかもまたねって・・・。

あれ?そういえば何で私の名前知ってたんだろう・・・?


結局、私が冴木先輩のことで頭がいっぱいな内に授業は終わった。

⏰:08/06/03 11:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#110 [果樹]
後で、その話を友達の由香にしたら「ノートに名前書いてあるからそれ見たんじゃない?」と言われた。

よくよく見てみると私のノートには“神田涼子”とご丁寧にふりがなまで振ってあった。


・・・・・・・・・・・・・・


その時の事を思い出して私はついふっと笑ってしまう。

⏰:08/06/03 11:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#111 [果樹]
瞼を閉じればあの時の様子が、鮮明に思い出せるから不思議だ。

一年の片想いか・・・。
ううん、もうすぐ二年だ。
長い長い片想い。


私はもう一度目を閉じる。


今は昼休み。

⏰:08/06/03 11:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#112 [果樹]
天気がいいため、私はこの渡り廊下で昼食をとり、今は寝そべって太陽の光を浴びている。


カシャッ

ん・・・?

「タイトルは『眠れる森の女子高生』でどやろ?」

カメラを手に、にひっと笑うのは上條先輩。

私は上体を起こし、隣に立っている上條先輩を見上げる。

⏰:08/06/03 20:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#113 [果樹]
「上條先輩。ネーミングセンス悪すぎです」

「えぇ!?そないな言い方酷いわ涼ちゃーん」

私がはっきり言うと上條先輩は顔を歪ませてしゃがみこんでしまった。

この人のこういうところは可愛いなー。

「なんですか?昼休みまで」

⏰:08/06/03 20:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#114 [果樹]
私が顔を伺うように覗き込むと、上條先輩は顔を上げ、また笑った。

「教室から涼ちゃんが見えてんやんかー。せやから飛んで来た♪」

「――――っ!!」

いきなりの言葉に私は戸惑い、顔が赤くなって行くのがわかる。

上條先輩って一見軽そうだけど、面白いしかっこいいから何気に憧れている人は多い。

⏰:08/06/03 20:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#115 [果樹]
そんな人にいきなり笑顔で、あんな事を言われたら誰だって顔が赤くなる。

「あれ?涼ちゃん顔赤いで?熱でもあるんちゃう?」

「へ?あ・・・いや大丈夫です」

あなたのせいです・・・。

そしてお願いだからそれ以上近付かないでー!!

⏰:08/06/03 20:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#116 [果樹]
顔が赤くなる私をお構い無しに上條先輩は顔を近付けてくる。

「ほんまかいな?無理したらあかんで?」

「は・・・はい」

私はこれ以上顔が見られないようにうつ向いて返事をした。

「あ、ほんなら俺行くさかいに。またなっ」

そういって上條先輩はぱたぱたと走っていった。

⏰:08/06/03 20:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#117 [果樹]
一人になった渡り廊下に私は寝転び心臓のある左側の胸を上から触る。

「はー。心臓の音が止まないよ・・・」


――――――――・・・・


「失礼しまーす。上條先輩?」

私は今、写真部の部室に来ている。

なぜかって?

⏰:08/06/03 20:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#118 [果樹]
それは遡ること今日の朝。


いつものように冴木先輩のストーキングをしていたら上條先輩が来て、「涼ちゃんに見せたいもんあんねん。せやから放課後写真部にきてやぁ」とだけ言って、上條先輩は私の返事を聞かぬ内に行ってしまった。


そして冒頭に戻るわけで。

⏰:08/06/03 20:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#119 [果樹]
写真部のドアを開けて上條先輩を呼んでるが、上條先輩の姿はない。

「上條せんぱーい」

私は中に入り、もう一度上條先輩を呼ぶ。

すると部屋の奥のドアがガチャッと開き、上條先輩が顔を出した。

「あ、涼ちゃん!はよはよぉ。今出来たとこやねん」

「へ?あ・・・はぁ」

⏰:08/06/03 20:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#120 [果樹]
手招きをする上條先輩に誘われるように、私は今上條先輩が顔を出した部屋に入る。



中に入るとそこは赤い照明の為か、部屋全体が赤く色付いていた。

上條先輩はピンセットで写真らしきものを水に浸している。

「それで現像してるんですか?」

⏰:08/06/03 20:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#121 [果樹]
「せやでー。もっと簡単な方法もあんねんけど俺はこれが好きやねん」

そう言っている上條先輩の顔は楽しそうだった。


「あ、これな♪」

ぽんと掌に置かれたのはいくつかの写真。

でも部屋の照明のせいで、何が写っているのかはっきりわからない。

⏰:08/06/03 20:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#122 [果樹]
「ここじゃアレやから。あっちで見ようや」

そういって私たちは赤い部屋を出て、さっきの部室に戻った。



「うっわぁ・・・」

部室に戻って掌に置かれた数枚の写真を見て、私は思わず声を上げる。

「でやっ?」

⏰:08/06/03 20:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#123 [果樹]
隣では上條先輩が私の顔を覗き込んでいるが、私の目は写真に釘付けにされている。

「綺麗ー・・・」

写真には、青空が夕暮れの赤い空に変わる時の写真やピンク、紫、紺の色が同じ空の中に写し出されたものがあった。

どれも幻想的で思わず見惚れる。

「ほんま?」

⏰:08/06/03 20:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#124 [果樹]
「うんうん!すごい!」

私はついはしゃいでしまう。

「何や嬉しいなぁ。きばって撮った甲斐があったわ」

「え?!これって先輩が?」

先輩の方を見ると、先輩は少し照れたように頭をかいた。

「せやでー。まぁ素人の遊びに毛ぇ生えたようなもんやけど」

⏰:08/06/03 20:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#125 [果樹]
「でもすごい・・・」

私はまた写真に目を戻す。

見ていると、まるで吸い込まれるような写真に惹き付けられるような不思議な感覚になる。

「先輩って写真が本当に好きなんですね♪」

そう笑いかけると上條先輩は顔を反対方向に向けて「ん・・・まぁな」と何だか歯切れ悪く言った。

⏰:08/06/03 20:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#126 [果樹]
先輩の様子が気になったが、とりあえずその日は写真を貰って私は帰った。


――――――――・・・・


「おっはー涼ちゃん♪」

「おはようございます上條先輩」

渡り廊下の向こうから歩いてくるのは上條先輩。

上條先輩とは出会ってから何故か毎日顔を会わせている。

⏰:08/06/03 20:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#127 [果樹]
でも最近私はこの時間が、とても楽しい。

「毎日毎日ご苦労やなぁ」

「日課ですから♪」

そう!今日もやっぱり私は冴木先輩のストーキング中。

「日課・・・なぁ」

「上條先輩?」

「ん?なん?」

⏰:08/06/03 20:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#128 [果樹]
上條先輩の顔が少し曇った気がしたので、名前を呼ぶとすぐにいつもの笑顔になっていた。

私はそれを見て安心して、ほっと胸を撫で下ろした。


「今日も写真部行ってもいいですか?」

「ええでー」

「ありがとうございます!じゃあまた後で!」

⏰:08/06/03 20:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#129 [果樹]
私は笑顔で上條先輩に手を振って渡り廊下を後にした。


「負けへん・・・」

一人残った渡り廊下で、上條先輩が呟いた言葉は、私の耳には届かず、青い空に溶けた。


――――――――・・・・


「失礼しまーす」

⏰:08/06/03 20:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#130 [果樹]
「はーい。あれ?」

写真部のドアを開けると、緑のリボンをした女の人が小首を傾げてこちらを見てきた。

「あ、すみません私・・・」

「あなた涼ちゃんね!」

へ・・・?

自分で名前を言う前に女の人に言われてしまった。

⏰:08/06/04 00:25 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#131 [果樹]
「はい。そうですけど・・・」

私が眉間に皺を寄せながら言うと女の人は可愛い顔で笑った。

「やっぱりー♪実物見れて嬉しーい!私はリカ。あっ座って座って」


緑のリボン・・・。
上條先輩と同じ三年生。

勧められるままに椅子に座る私に背中を向けて、リカ先輩は何か作業をしている。

⏰:08/06/04 00:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#132 [果樹]
「今お茶入れるからねー」

あ、お茶かーってなごみそうになる自分を叱咤して、頭に疑問府を浮かべる。

なんで私の名前を知っているの?

しかも実物って何?

私の頭では理解できないことばかり。


「あのー・・・何で私の事知ってるんですか?」

⏰:08/06/04 00:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#133 [果樹]
「え?あ、それはねー・・・きゃっ!!」

お茶を入れたらしいコップを手に、振り向こうとしたリカさんは机につまづき、バサッと本が落ちるような音がした。

「あっ大丈夫ですか!?」

幸いにもお茶は溢れなかったが、床にはたくさんの写真が散らばった。

「うん・・・ごめんねぇ」

⏰:08/06/04 00:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#134 [果樹]
私はリカさんと一緒に写真を拾おうとしゃがむ。

そこで“ある事”に気付いてしまった。


「これ・・・」

私が手に撮った写真を見て、リカさんは苦い笑いを溢す。

「あ・・・。あーこれね、全部上條が撮ったものなの」

「上條先輩が・・・?」

⏰:08/06/04 01:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#135 [果樹]
私は写真から目を離さず聞く。

「あいつってさぁ好きなものをひたすら撮るクセがあって、涼ちゃんの写真も気付いたらこんなにいっぱい。すごいでしょ?」

リカさんはそう言ったが、これはすごいなんてものじゃない。

床に散らばるのは、数えきれないほどの私が写っている写真。

⏰:08/06/04 01:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#136 [果樹]
どれも朝、冴木先輩が登校してくるのを待っている横顔や後ろ姿のものばかり。

「ほーんと馬鹿なんだから」

ぼそっとリカさんがそんなことを言ったが、私の頭は今それどころじゃなかった。


なんで・・・?

だって上條先輩とはこの間会ったばかりなのに。

⏰:08/06/04 01:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#137 [果樹]
こんなたくさんの写真撮れるはずがない。

それにまだ今よりも顔が少し幼い私もいる。

いつから・・・?

上條先輩はいつから私を知っていたの?


頭の中にそんな疑問ばかりが浮かんでいた時、部室のドアがカチャと開いた。

「ちーぃす。お?涼ちゃん来てたんやぁ」

⏰:08/06/04 01:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#138 [果樹]
上條先輩っ!!

部室に入ってきたのは上條先輩だった。


「あ、あのっ私帰ります!すみません!!」

私はすくっと立って、鞄とブレザーを持つと上條先輩と一度も目を合わせないで先輩の前を通りすぎ、部室を出る。

「え?涼ちゃん?!」

⏰:08/06/04 02:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#139 [果樹]
後ろでは戸惑った感じで上條先輩の声が聞こえたが、それを振り切るように私は走った。


――――――――・・・・


あのまま走って家に帰ってきた私は、着替えもしないままベッドにうつ伏せに倒れこんだ。

「どうしよう・・・」

ベッドに伏せても考えるのは、上條先輩のことと写真のことばかり。

⏰:08/06/04 02:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#140 [果樹]
なんで?

どうして私の写真があんなにたくさんあったの?

ねぇ、あなたはいつから私を見ていたの?

何で私は今まで気付かなかったんだろう・・・?


「私はどうしたらいいの・・・?」

⏰:08/06/04 02:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#141 [果樹]
結局一睡も出来ぬまま、枕を抱き締めながら私は朝を迎えた。


――――――――・・・・


「あ、涼子おはよ」

クラスに入ると一番に由香が手を上げて挨拶をしてくれた。

「おはよー・・・」

眠れなかったせいで目がショボショボする。

⏰:08/06/04 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#142 [果樹]
私は由香に挨拶してから席につく。

「あれ?今日は渡り廊下行かないの?」

由香が私の近くに来て、机に手をつき顔を覗き込んできた。

「うん。ちょっとね・・・」
うつ向く私に由香は不思議そうだったが、それ以上は聞いてこなかったので、由香に感謝した。

⏰:08/06/04 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#143 [果樹]
私はその日、一日中ぼーっとして過ごした。

もちろん授業なんか頭に入るわけもなく、頭は上條先輩のことで支配されていた。


――――――――・・・・


放課後

・・・帰ろう。

私は早々に帰る支度をして、鞄を持つ。

⏰:08/06/04 02:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#144 [果樹]
はぁと一つ溜め息をついて席を離れようとしたところで、「涼ちゃんおったー!!」とクラス中に響いた声に肩をビクッと震わせる。

「上條先輩!!」

教室の前のドアの見ると上條先輩が立っていた。

私は、考える余裕もなく鞄を持ち教室を飛び出した。

――――――――・・・・


「なんで追ってくるんですか―?!」

⏰:08/06/04 02:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#145 [果樹]
「涼ちゃんが逃げるからやろ?!」

うう・・・そんなこと言われたって。

教室を飛び出してから約10分。

私は校内をぐるぐる駆け回っている。

後ろからは上條先輩がついてくる。

やば、疲れてきちゃった・・・。

⏰:08/06/04 02:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#146 [果樹]
さすがに全力で駆け回っただけあって私はもう体力の限界だった。


「あ・・・れ?」

ダダダダダッという上條先輩の足音がいつの間にか止んだことに気付き、私は足を止めて後ろを振り返るが上條先輩の姿はない。

諦め・・・た?

荒くなっていた息を整えながらそんことを考えると胸がチクンと痛んだ。

⏰:08/06/04 02:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#147 [果樹]
なんか・・・痛い。


「涼ちゃん」

「へ?」

胸の辺りを擦っていたら、いきなり後ろから名前を呼ばれ振り向く前に脇の間から手が延びてきて、後ろからガッチリと掴まれてしまった。

「つかまえた」

声の主は上條先輩。

⏰:08/06/04 02:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#148 [果樹]
「きゃあ!上條先輩離してくださいー!」

上條先輩は先回りしていたらしい。

ジタバタと暴れるが、上條先輩の腕はなかなか剥がれない。

「嫌や。話し聞いてくれるまで離したらへん」

密接しているためか、耳に直接声が流れ込んで、体が熱くなる。

「聞きます聞きますからー!!」

⏰:08/06/04 02:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#149 [果樹]
そういうと手はパッと離れた。

私はなるべく上條先輩から距離を取ろうと、少し後ろに下がる。

すると、上條先輩に手首をパシッと掴まれてしまった。

「逃げたい気持もわかんねんけどな。とりあえず話聞いてや・・・」

そういう上條先輩の声はどこか震えていて、金色の髪の間から見える目が悲しそうに私を見ていた。

⏰:08/06/04 02:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#150 [果樹]
私は胸が締め付けられているような気がして、こくりと小さく頷くことしかできなかった。

「ありがとう」

そういうと上條先輩はふわっと笑って、私を人気の少ないB棟の特別教室へと誘導した。


――――――――・・・・


教室に入り、私は椅子に、上條先輩は机に腰を下ろし、私達は向き合う形に座った。

⏰:08/06/04 02:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#151 [果樹]
そして開口一番に上條先輩は昨日のことを口にした。


「ごめんな写真のこと・・・。リカから全部聞いてん。きもいやんなぁ。あんなん見せられたら」

うつ向いているため、上條先輩の表情までは分からなかった。

でも声は、私の胸を締め付けるくらい切ないものだった。

⏰:08/06/04 02:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#152 [果樹]
「俺な、実は涼ちゃんのことずっと前から知っとってん」

顔を上げた上條先輩が軽く笑顔を作る。

「ずっと前から・・・?」

「せや。そやなぁ・・・もう一年くらい前やったかな?毎朝毎朝渡り廊下にいて、なんや幸せそーな顔して目ぇキラキラさせてる涼ちゃんが印象的やってん。せやからついシャッター押してもうた」

⏰:08/06/04 02:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#153 [果樹]
上條先輩はその時のことを思い出すように遠くを見つめて話す。


「俺な、自分が綺麗と思うたもんはカメラに納めな気が済まん質やねん。せやから涼ちゃんを見たとき迷わずシャッターを押してん」

上條先輩の目が私を捕える。

胸が早鐘を打つように高鳴っているのがわかる。

⏰:08/06/04 02:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#154 [果樹]
なんで?

なんでこんなにドキドキするの?


「それからやったかな?俺は毎朝渡り廊下に行ってん。そこには必ず涼ちゃんが居って、相変わらずキラキラした目ぇで滉太のこと見とった」

少し悲しそうに上條先輩が笑う。

⏰:08/06/04 02:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#155 [果樹]
「涼ちゃんは気付かんかったと思うけど俺、涼ちゃんに話かける前からずっと俺、渡り廊下で昼寝しててんで?」

白い歯を見せて笑う上條先輩はどこかやっぱり悲しみを纏っていた。

なんでこの人はこんな悲しそうに笑うの・・・?

「まぁ、涼ちゃんの目ぇはいつも滉太に向いててんから気付かんでもしゃーないんやけど・・・」

先輩はまたうつ向いてしまった。

⏰:08/06/04 02:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#156 [果樹]
「・・・正直羨ましかってん」

「え・・・?」

ぼそりと言った上條先輩の言葉の意味が分からず、私は聞き返す。

すると先輩は顔を上げ、ふっと笑って、ゆっくり口を開いた。

「あんなキラキラした目ぇで涼ちゃんに見られてた滉太が俺は羨ましかってん。いつのまにか、その目で俺を見て欲しゅうなった」

⏰:08/06/04 02:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#157 [果樹]
「せんぱ・・・」

語尾まで言葉が続かない。
体が震える。


「せやからあの日涼ちゃんに声かけてん。赤の他人で終りたなかったから」

先輩は相変わらず笑っている。

悲しそうに、辛そうに笑っている。

⏰:08/06/04 02:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#158 [果樹]
「毎日毎日涼ちゃん撮ってる間にいつのまにかあんなに溜ってしもてんなぁ」

上を軽く見上げて上條先輩は、ははっと自潮ぎみに笑いを溢した。

「ごめんな。嫌な思いさせて。写真は気味悪いやろから全部捨てる」

私に向かって真剣な顔で言う先輩。

先輩の手が私の方に延びてきたが、先輩は途中でその手をピタッと止めて、握り拳を作ると、だらんと下に垂らした。

⏰:08/06/04 14:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#159 [果樹]
先輩の顔を見るとなんだか眉間に皺を寄せて眉毛を垂らし、顔を歪めていた。

「せんぱ・・・」

「ほんまごめん!」

机から下りた先輩が私の言葉を遮って頭を下げて私に謝る。

「顔・・・あげてください」

私は、震える声でそれだけ言う。

⏰:08/06/04 15:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#160 [果樹]
「最後に一つだけ聞いてくれるか?」


顔を上げた先輩は私をじっとみて真剣な顔で言った。

私は首を縦に振るだけで精一杯だった。

でも先輩はそんな私をみて優しく、ふっと笑うと椅子に腰を下ろした。

⏰:08/06/04 15:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#161 [果樹]
「あんな、俺は涼ちゃんが好きやねん。ずっとずっと好きやった。もしかしたらあの日、シャッターを切った時から好きやってんかもなぁ」

真っ直ぐ私を見つめていう先輩。

私の頬を目から溢れた涙が伝う。

「せんぱ・・・っ」

言葉にならない。

私は今あなたになんて返せるの?

⏰:08/06/04 15:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#162 [果樹]
「あぁ泣かんといてや?ごめんな?いきなし言うてもうて。返事はいらんから」

優しい声で言ってくれる先輩に私はさらに涙が溢れた。

「ほんまごめんな?」

そう最後に言って先輩は教室から出て行った。

最後にまた私に手を伸ばしたが、結局先輩が私に触れることはなかった。

⏰:08/06/04 15:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#163 [果樹]
「ふっ・・・うぅ・・・」

先輩が出ていってしまった教室の中では私の声だけ響いている。


私はなんで泣いているの・・・?

なんでこんなに胸が苦しいの?


「痛・・・っ痛いよぅ・・・グスッ・・・先輩・・・っ」

⏰:08/06/04 15:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#164 [果樹]
それすらもわからないまま私は泣き続けた。


――――――――・・・・


あれからずいぶん時が経った。

私は日課のごとく行っていっていた渡り廊下にも行かなくなった。


上條先輩と会うのが怖いんじゃない。

⏰:08/06/04 15:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#165 [果樹]
ううん、違う。

あたしは怖がってる。

でもそれ以上に、渡り廊下に行かない理由がある。


それは・・・必要を感じなくなってしまったから。

今まで、私が渡り廊下に行っていたのは冴木先輩を見たいがためだった。

でも今は、別に見たいと思わない。

⏰:08/06/04 15:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#166 [果樹]
なんで・・・?

それ以上に考えなきゃいけないことがあるから?

いくら考えても結局その答えは出なかった。


あの日、告白された日。

上條先輩は返事はいらないといった。

でもそんなわけにはいかない。

ちゃんと答えを出さなくちゃ。

⏰:08/06/04 15:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#167 [果樹]
でも考えれば考えるほど、足から黒い沼に埋まっていってしまうように、考えがまとまらなくなる。


私が答えを出せないまま明日、三年生は卒業式を迎える。

「涼子?うんうん唸ってどうしたの?」

上から声が聞こえたので、顔を上げると由香が心配そうな顔で立っていた。

「あ・・・別に」

⏰:08/06/04 15:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#168 [果樹]
「じゃないんでしょ?」

私は心配をかけまいと、平静を装った。

でも由香は私の言葉を遮り、顔をズイッと近付けてきて私の額を指で小突いた。

「最近渡り廊下にも行ってないし。なんか悩んでるっぽいし。心配してんだよ?これでも。話してよ」

優しく笑う由香になんだか私は癒された。

⏰:08/06/04 15:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#169 [果樹]
そして少しずつ上條先輩のことや自分の気持ちを話した。

由香は私の前の席に座って、私が話し終わるまで黙って聞いてくれた。



「つまり涼子は上條先輩に返事をしなければいけないんだけど、考えがまとまらなくて返事ができないのよね?」

私は由香の言葉にこくりと頷く。

⏰:08/06/05 00:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#170 [果樹]
「でも、冴木先輩を見ても今は前みたいにときめかないと?」

また一回頷く。

「んで、なんでこんな気持ちになってるのかわからないってことよね?」

核心をつく由香の言葉に私は何回も頷いて、教えてほしいという目で由香を見る。

すると由香は、はぁーと少し長い溜め息をついて、私と向き合って真剣な顔で私を見る。

⏰:08/06/05 00:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#171 [果樹]
「あのね涼子。心っていうのは頭にあるんじゃなくて、ここにあるのよ?」

“ここ”と言って由香が指したのは心臓がある左側の胸。


「頭にない自分の心をいくら頭で考えたってわからないの。素直に感じとった気持ち。それが自分の心なの」

優しい声色で言う由香。

⏰:08/06/05 00:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#172 [果樹]
素直に感じとったのが自分の心・・・。

私は由香の言葉を心の中で復唱する。


「目を閉じて一番に浮かぶ顔は誰?笑顔をみたいと思うのは誰?」

浮かぶ顔・・・?

「涼子はどうして上條先輩に告白された時、泣いたの?」

どうして・・・?

⏰:08/06/05 00:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#173 [果樹]
「心で感じて、一番強く想うのは誰?」

それだけ言うと由香はにっこり笑って席を離れた。


私は一人になった席で目を閉じる。


笑顔が見たいと思うのは・・・。

私があの時泣いたのは・・・。

一番強く想うのは・・・。

⏰:08/06/05 00:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#174 [果樹]
心で感じる人は・・・。



―――――っ!!!



ねぇ・・・。

私分かったよ。


――――――――・・・・


卒業式当日

「由香!私行ってくる!」

⏰:08/06/05 00:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#175 [果樹]
「うん!行っておいで」


卒業式が終わってから、私は急いで由香の元に向かいそう告げると、由香はにっこり笑って送り出してくれた。

ありがとう由香!



私は学校中を走り回った。

たった一人の・・・大切な人に会いたいから。

⏰:08/06/05 00:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#176 [果樹]
教室、渡り廊下、屋上、中庭、体育館。

ありとあらゆるところを回ったのにあの人はいない。

帰っちゃったとか・・・?

校門の方では三年生が学校との別れを惜しむ姿が見える。

私の頭に不安がよぎるが、私は頭をぶんぶんと横に振ってその考えを頭の片隅に追いやった。

⏰:08/06/05 00:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#177 [果樹]
そして必死に探してない場所を考える。

あと行ってないのは・・・。

そこである場所が頭に浮かんだ。

もしかしたら・・・!

藁にもすがるような思いで私はそこに走った。


――――――――・・・・


「先輩っ!?」

⏰:08/06/05 00:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#178 [果樹]
カチャっとドアを開け、中に勢いよく入るが、室内はガランとしていた。

ここにもいなかったらもうどこにいるかわからない・・・。

弱まりそうになる涙腺をしっかり引き締めて、私はもう一度校内を探そうとドアに手をかける。

その時、奥の部屋からカシャンと金属が落ちるような音が聞こえた。


「え・・・?」

⏰:08/06/05 00:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#179 [果樹]
まさか・・・!


私は恐る恐るそこに近付き、ドアノブに触れてそれをゆっくりと回す。

部屋から赤い光が漏れた。


「先輩・・・?」

「涼・・・ちゃん・・?」

中を覗くと、先輩が驚いた表情でこっちを見ていた。

⏰:08/06/05 00:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#180 [果樹]
「やっと見つけた」

私は中に入り、ドアを閉める。

狭い暗室に二人だけになった。

「見つけたって・・・え?」

先輩は固まったまま今の状況が上手く飲み込めていないようだ。
「告白の返事をしに来ました」

「え?あっ・・・ちょ・・ちょっお待って」

⏰:08/06/05 00:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#181 [果樹]
私が言うと先輩は物凄く慌てた感じで、動きも挙動不審になっている。

私はスゥっと息を吸い込む。


「私は・・・」


「ストップ!!」

いいかけた言葉を先輩の大きな声に遮られた。

私は一先ず黙ることにした。

⏰:08/06/05 00:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#182 [果樹]
「とりあえずここから出よか。お茶・・・入れたるさかいに」

「はい・・・」

先輩に促されるまま私たちは暗室を出て、隣の部屋で話をすることにした。


――――――――・・・・


「はい」

「ありがとうございます」

⏰:08/06/05 00:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#183 [果樹]
私の目の前に湯気のたったたお茶が出された。

私は喉の乾きを抑えるために一口、口にする。

暖かくておいしい。


「俺、返事はいらへんて言うたよね?」


私がなごんでいると先輩が真面目な顔をしながら聞いてきた。

先輩は私の方を見ずに、じっと机を見ていた。

⏰:08/06/05 00:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#184 [果樹]
「でも言いにきました」

コトッと机にお茶を置き、先輩の方に向き直る。

「あんま聞きたない・・・」

何かいじけるような感じで言う先輩がなんだか可愛く思えてしまう。



「先輩・・・私ね。たくさん考えました。でも考えても考えても答えが出なかった」

⏰:08/06/05 00:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#185 [果樹]
「なんであの時泣いたのかもわからなかったんです。




でもね・・・。やっと答えが出ました。





私は、あなたが・・・。」

⏰:08/06/05 01:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#186 [果樹]
.






「上條先輩が好きです」






.

⏰:08/06/05 01:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#187 [果樹]
あの時私が泣いたのは、あなたが泣きそうな顔をしていたか。

あなたが辛いと私も辛かった。

胸が苦しくて仕方がなかった。

だから涙が出たの。

先輩・・・私はね。


「あなたが好きです。上條先輩」

⏰:08/06/05 01:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#188 [果樹]
「ほ・・・んま?」

口を開いて間抜けな顔で私を見る上條先輩がなんだかおかしくて、私は笑いながらコクンと頷く。


「うっそんぷーとかなしやねんで?!ほんまにほんま?」

立ち上がって、先輩はみぶり手振りで何かを表現したい様だが、慌てているのか全然わからない。

⏰:08/06/05 01:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#189 [果樹]
「大好きですよ」

私が笑っていうと先輩はへたりと床に座り込んでしまった。


「上條先輩!?」

「あかん・・・。手ぇ震えて力入らへん・・・」

先輩の元に駆け寄ると先輩はへらっと笑っていた。

見ると先輩の手は本当に震えていた。

⏰:08/06/05 01:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#190 [果樹]
そんな先輩が私は何だか無償に可愛くてしかたがなくなった。


「ほんまに俺でええの?」

首を傾げて聞く先輩。

「何回言わせるんですか?私は上條先輩が―――・・・キャッ」

「わかった!もうそれ以上はええ!頭おかしなってしまう・・・」

⏰:08/06/05 01:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#191 [果樹]
“好きです”の言葉を言う前に私は上條先輩の体にすっぽりと包まれてしまった”

先輩・・心臓の音が速い・・・。


「俺も大好きや」

ダイレクトに耳に囁かれた言葉に、私の心臓は跳ね上がり、上條先輩と同じ速さで刻み始めた。

「上條先輩・・・」

⏰:08/06/05 01:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#192 [果樹]
「あ・・・!」

しばらくそのままの体勢でいたら、上條先輩がいきなり大きな声を出した。

「どうしたんですか?上條先輩」

何事かと先輩を見上げて聞くと先輩が私の方を見る。


「それ!」

「え?」

⏰:08/06/05 01:24 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#193 [果樹]
何・・・?

「その上條先輩っていうのやめようや」

上條先輩をやめる・・・?

「え?でも・・・」

“何て呼べば?”と言おうとしたら上條先輩がにっこり笑う。


「隼人」


「え・・・?」

⏰:08/06/05 01:25 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#194 [果樹]
「俺の名前は上條隼人。言うて?」

言うてって・・・。

先輩が無邪気に言うものだから断れなくなってしまった。


「隼・・・人」


小さく先輩の名前をつむぐ。

⏰:08/06/05 01:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#195 [果樹]
「もっかい」

私をじってみて言う先輩の顔が近い。

「隼人」

私はさっきより少し大きな声で言う。



「え・・・ちょ隼・・・っ」

「大好きや涼子」

再び引き寄せられ、耳に流れ込んできた優しくて愛しい声。

⏰:08/06/05 01:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#196 [果樹]
「あたしも・・・隼人が好き」




目を閉じた時、笑顔が見たいと思うのも、一番強く想うのも、私の心が求めているのも。

全部全部あなただけだよ?


隼人。

⏰:08/06/05 01:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#197 [果樹]
あ!そういえばこの間、隼人の部屋で大量の写真を見つけたの。

その写真ていうのがどれも私の横顔や後ろ姿ばっか。

しかもその中には、あの時写真部の部室で床に散らばったやつもあって・・・。


隼人を問いただしたら、「やってー涼ちゃんが写ってる写真やってんからなんや捨てるに捨てれんくて・・・」としゅんと小さくなってた。

⏰:08/06/05 01:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#198 [果樹]
「でもこれ、冴木先輩を好きな時のやつだよ?」と私がいうと隼人は、「それは確かに嫌やねんけどー。今は俺にその目ぇが向いてるさかいにええねん」と笑っていた。




ねぇ隼人・・・?


私の目があなたに向いてるのは今だけじゃないよ?

⏰:08/06/05 01:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#199 [果樹]
10年先も20年先もずっとずっと私の目はあなたに向いているよ。

これからもたくさんの思い出をそのカメラに刻もうね。

カシャッ




【レンズ越しの恋】

―End―

⏰:08/06/05 01:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#200 [果樹]
父に呼ばれて居間に行くと、知らない男の人がソファに座り父と話をしていた。


「つかさ。今日からお前に勉強を教えてくれる時田先生だ。挨拶しなさい。」

ああ新しい人・・・。

私はぺこっとお辞儀をして簡単な挨拶を済ます。

すると男の人は、にこっと綺麗な顔に笑みを作った。

⏰:08/06/05 14:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#201 [果樹]
「こんばんは、つかさちゃん。僕は時田総一郎。よろしくね。」


これがこれから私の家庭教師となる時田総一郎との最初の出会いだった。




Story 3

【自由に憧れた鳥】

⏰:08/06/05 15:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#202 [果樹]
「おい。・・・・おい!」

煩い・・・。

「呼んでんだから返事くらいしろよ」

私は、はぁと溜め息をつき、シャーペンを机に置いて後ろを振り替える。

「お言葉ですが時田先生。私の名前は“おい”じゃありません」

さっきから煩く話しかけてくるこの男は、一週間前私の家庭教師になった時田総一郎。

⏰:08/06/05 15:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#203 [果樹]
椅子に座って足と腕を組んで、とても偉そうにしている。

これが家庭教師の姿なのだろうかと神経を疑う。

「じゃあつかさ」

しかも馴れ馴れしい。

「呼び捨てにしないでください」

私はばっさりと時田先生の言葉を切り捨て、また机に向かって勉強を始める。

⏰:08/06/05 15:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#204 [果樹]
「ったく可愛くねー女だな」

「あなたに可愛いとか思われたくありません」

ていうか教える気がないなら出ていって欲しい。

「お前さぁ顔は綺麗なんだから笑えばいいのに」

時田先生は私の横まで椅子を持ってきて、顔を覗き込んできた。

「先生、それは勉強に関係ないと思いますが」

⏰:08/06/05 15:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#205 [果樹]
相手をしても仕方がないので、私は時田先生と目を合わせないでひたすら目の前の問題を解いた。

「つーかお前さ。頭良いんだから家庭教師なんかいらなくね?」

今のは家庭教師としてあるまじき言葉だろう。

私は、また溜め息をつくと時田先生をちらりと見る。

「先生何も知らないんですね」

⏰:08/06/05 15:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#206 [果樹]
私が言葉を掃き捨てるように言うと先生は「何を?」と言って全く分からないという顔をした。

だから私は、問題を解きながら淡々と言葉にする。

「家庭教師っていうのは建前です。父の目的は私の監視ですから」

「監視・・?」

先生は眉間に皺を寄せ、怪訝な顔をする。

⏰:08/06/06 00:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#207 [果樹]
私は、手を休めることなく問題を解きながら先生の疑問に答える。

「私は父が決めた道を歩んで将来は父の跡を継ぐ。全て決められた事柄を私は実行するだけ。あなたは私が変な行動をしないように監視するんです」

淡々と述べる私に、先生は更に眉間に皺を寄せて、私を見てくる。

「お前はそれで満足なのか?」

⏰:08/06/06 00:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#208 [果樹]
満足・・・?

私はついふふっと笑ってしまった。

「私に自由はありませんから・・・」

満足だなんて一度も思ったことない。

いくら高いお洋服やブランド品を買って貰っても心までは満たされない。

一人で買い物も行けず、遊びに行くことも出来ない。

⏰:08/06/06 03:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#209 [果樹]
ただ籠の中でじっとして、父に飼われている鳥そのもの。

いくら籠の中で羽ばたいたって飛べるわけもなく、ただただ必死にもがくだけの滑稽な姿。


自由になりたいって何度も思った。

でもそれは叶わない夢。
籠の中で飼われている鳥は、籠の中から出ることを許されない。

⏰:08/06/06 03:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#210 [果樹]
「自由が欲しいなら俺がくれてやるよ」

そう言ってにっと笑った先生は、いきなり椅子から立ち上がると、テラスに通じる窓を開ける。

8月とはいえ、少し涼しい風が部屋の中に入ってくる。

一瞬風の冷たさに驚いて目を瞑る。

目を開けると、先生はテラスの手摺に片足をかけていた。

⏰:08/06/06 03:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#211 [果樹]
「え?ちょ・・先生何してるんですか?!危ないですよ!」

私はありえない光景に驚き、止めるために近付こうとした時、先生が振り返った。

「あれ?心配してくれんの?」

「ばっばかだって言ってるんです!」

にっと笑って言う先生に対して、私は何故か顔が熱くなった。

⏰:08/06/06 03:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#212 [果樹]
先生は、そんな私を見てふっと笑うとテラスから飛び下りた。

「きゃっ・・せ、先生?!」

私は急いでテラスに出て下を覗くと先生が背中を向けて立っていた。

私は先生が生きていたことに胸をほっと撫で下ろす。

「おいで。」

⏰:08/06/06 03:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#213 [果樹]
先生はさっきと同じ顔で笑って両手を広げる。

「だ、だめ・・・いけません。」

私はここから出られない・・・。

ぎゅっと目を瞑り視界から先生を消す。

それでも耳から先生の声が入ってくる。

「お前の知らない世界を俺が見せてやるよ。」

⏰:08/06/06 03:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#214 [果樹]
「―――――っ!!」

どうしてこの人はこんなことをいうのだろう・・・。

私はいつの間にか瞑っていた目を開けて先生の方を見ていた。

ふらっと先生に導かれるまま行ってしまいそうになった時、部屋のドアを叩く音が聞こえた。

「お嬢様?どうかなさいましたか?お嬢様?!」

⏰:08/06/06 03:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#215 [果樹]
ドンドンと鳴り止まない音が私の足枷を重くする。

「つかさ、おいで。」

下では先生がまだ両手を広げたまま笑顔でこっちを見ている。

あなたは私を解放してくれる・・・?

優しく笑う先生に全てを引き寄せられるように、私はテラスから先生の腕の中へ飛び下りた。

⏰:08/06/06 03:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#216 [果樹]
先生は私をしっかりと受け止めると、「じゃあ行くか!」と言って肩に担いで走り出した。


――――――――・・・・


家の門の前に出るとバイクが置いてあった。

⏰:08/06/06 03:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#217 [果樹]
「これは・・・?」

「俺の愛車♪よいせっ・・と」

バイクにすとんと下ろされ、かぽっとヘルメットを被せられた。

「へ?あの・・・」

先生もバイクに跨りエンジンをかける。

「よし。ちゃんとつかまってろよ?」

⏰:08/06/06 03:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#218 [果樹]
ちらっとこっちを見てそう言うと、先生は私の手を引いて腰周りにしがみつかせた。

「え?ちょっキャー!!」

私がしがみついたのを確認して、先生はバイクを走らせた。


――――――――・・・・


コンコン

⏰:08/06/06 03:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#219 [果樹]
「入れ」

低く唸るような声で革張りの黒い椅子に座った人物が喋る。

カチャと重々しい木の扉を開け、スーツ姿の男が入ってきた。

男は扉の前で一礼をして、革張りの椅子に座り背を向けている人物に向かって、目をキッと少し細める。

「申し訳ありません旦那様。お嬢様を見失いました。」

男はそのまま深く頭を下げる。

⏰:08/06/06 03:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#220 [果樹]
革張りの椅子に座り、背を向けている人物はふぅーと長い溜め息を吐く。

「探し出せ」

低く厳しい声で言った革張りの椅子に座る人物に、「直ちに」と言ってまた一礼するとスーツ姿の男は部屋を出ていった。

「逃げても無駄だ。つかさ」

部屋の中には革張りの椅子に座った人物の低く唸る声だけが響いた。

⏰:08/06/06 03:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#221 [果樹]
.
――――――――・・・・


「先生!どこに向かってるんですか!?」

「たのしいところ♪」

バイクで風を受けながら大声で叫ぶと、先生も叫んでいたが、声はギリギリで私の耳に届くくらいだった。

楽しいところ?
ってどこ?

⏰:08/06/07 01:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#222 [果樹]
私は走ってる最中、先生が楽しいと言った場所をずっと想像して過ごした。


――――――――・・・・


「着いたよ」

大きなビルの駐車場に入り、エンジンが止まり先生がヘルメットを取って、振り返る。

「何ですかここ?」

私はヘルメットを取って先生に聞く。

⏰:08/06/07 01:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#223 [果樹]
「んー・・・。アミューズメントパーク?」

「アミューズメントパーク・・・」

私は首を傾げ、周りを見る。

ビルの入口の方にボーリング、カラオケ、ビリヤードなどと赤い光が点灯している。

「まぁ入ろうぜ」

先生はバイクを降りて私に笑いかけて先生はビルの入口に向かって歩いていく。

⏰:08/06/07 01:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#224 [果樹]
「は、はぁ」

私もバイクを降り、先生の後についていく。


――――――――・・・・


「うっわぁ・・・」

中に入ると思わず口から感嘆の声が出る。

「こういう所は初めて?」

口が開きっぱなしで周りを見る私に、先生がにやっと笑いながら顔を覗き込む。

⏰:08/06/07 19:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#225 [果樹]
先生は嫌味で聞いてきたのかもしれないが、私はその言葉に腹立たしさを感じることもなく、こくこくと首を縦に振るだけしか出来なかった。

「そっかそっか♪じゃあまずは・・・行っとく?」

うんうんと嬉しそうに先生は頷くと、ある方向を指差して歯を見せて笑った。

先生が指差す方を見ると、“ボーリング”と書いてあった。

⏰:08/06/07 19:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#226 [果樹]
.
――――――――・・・・


「きゃー!!」

全て倒れたピンに感激した私は、つい大きな声で叫んでしまった。

「おお!うまいうまい」

先生は椅子に座って私の方を見ながら拍手をした。

「もう一回投げていい?」

私は先生の方に振り返って、興奮が冷めやらぬうちに言葉に出す。

⏰:08/06/07 19:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#227 [果樹]
「お好きにどうぞ」

「やったぁ」

先生は私を見てクスクス笑っていたが、私は万歳をして喜んだ。


ゴロゴロゴロ・・・ガコーン

「あーおしいっ」

8本しか倒れなかったピンを見て、私は眉尻を下げる。

しかも奥の両端が残ってしまったからどちらかに絞らないと倒せない。

⏰:08/06/07 19:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#228 [果樹]
「じゃあ俺がスペアとってやるよ」

「え?」

先生が椅子から立ち上がり、私の方に来て肩をポンっと叩いた。

「まぁ見てなって♪」

そう言って先生は自分のボウルをタオルで研くと位置について構えた。


ゴロゴロゴロ・・・ガコーン

「先生すごーい!」

⏰:08/06/07 19:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#229 [果樹]
私は感嘆の声と拍手を先生に向ける。

ピンは見事に二つ倒れた。
もちろんスペアだ。

「まぁな。てゆうかその先生っていうのやめない?」

椅子に座っていた私の方に向かって来ながら先生がいきなり口にする。

「え・・・じゃあ何て呼べば?」

「んー・・・」

⏰:08/06/07 19:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#230 [果樹]
椅子に座った先生に首を傾げて聞くと、先生は腕と足を組み、しばらく目を瞑ってから「総でいいよ」と言った。

「総?」

私は首を更に傾げて先生に言葉を返す。

「俺の名前が総一郎だから総。俺もつかさって呼ぶからさっ」

「はい」

にっこりと笑う先生、いや総に私も笑いかけ、お互い名前で呼ぶことを承諾した。

⏰:08/06/08 01:21 📱:PC 🆔:☆☆☆


#231 [果樹]
「そんじゃ投げるか」

そう言って立ち上がる総に私も心の中で“よし!”と言って立ち上がる。

「先生、じゃない総には負けませんよ?」

総を見上げて言う私に総はにやりと笑った。


――――――――・・・・


「総やっぱり強いですね!」

「ん?そうか?お前も初心者の癖にすごかったけどな」

⏰:08/06/08 15:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#232 [果樹]
充分ボーリングを遊んだ私たちは、ボーリング場を出ながら話す。

私が総の強さを話すと総はにやりと笑って顔を覗きこんできた。

「お世辞なら結構です」

「いやいやマジで♪」

プンっと顔を背けると総は白い歯を見せて笑った。

総のこの顔を見ると、なんだか本当に思えてくるから不思議だ。

⏰:08/06/08 15:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#233 [果樹]
「次はアレにするか」

「ビリヤード・・・ですか?」

「ああ」

総が指差す方向にはビリヤードの文字と台が並べてあった。

「私ビリヤードも初めてですよ?」

ここにあるものはきっと私にとって全部はじめてのものばかりだろう。

そう言うと総はにっと笑ってピースのサインを送ってきた。

⏰:08/06/08 16:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#234 [果樹]
「大丈夫だって♪俺が教えてやるから」

「はい!」

そういった総に私も笑って返事をして、ビリヤードの方に向かった。


――――――――・・・・


「くはーっ!遊んだなぁ」

「そうですね」

ビルを出てバイクに向かう途中、ニカッと笑う総に、私はクスクス笑う。

⏰:08/06/08 17:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#235 [果樹]
「楽しかったか?」

「はい!こんなに楽しかったの初めてです!」

「そうかそうか♪」

覗き込んできた総に、満面の笑みで言うと総も満面の笑みで笑った。

「じゃあ帰るか」

「え・・・?」

帰るってどこに・・?と心の中で総に問いかけると総は、ポンポンと私の頭を撫でた。

「心配すんな!とりあえず俺の家でも行くか」

⏰:08/06/08 17:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#236 [果樹]
「総の家?」

「ああ。ほら乗れよ」

バイクに跨ると総にまたカポッとヘルメットを被せられた。

そして総もバイクに跨りヘルメットを被ると、私たちはそうの家に向かって走り出した。


――――――――・・・・


「到着」

⏰:08/06/08 17:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#237 [果樹]
バイクが止まり、総がヘルメットを取り、バイクから降りる。

「ここが総の家?」

私もヘルメットをとってバイクから降りる。

周りはもう暗くてわからなかったが、大きなマンションの前にいることはわかる。

「ああ。ほら行くぞ」

「あっはい!」

⏰:08/06/08 17:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#238 [果樹]
総はバイクの鍵をクルクルと指で回しながらマンションに向かって歩いていく。

私もその後を追ってマンションに入った。


エレベータを降りて、角のドアの前まできたところで総の足が止まる。

総はジーパンのポケットから鍵を取り出して、そのドアの鍵穴に鍵を差し込む。

⏰:08/06/08 17:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#239 [果樹]
ガチャガチャ・・・キィ


「入らないの?」

ドアを開けて中に入った総がドアの前で立ち尽くす私に、にやっと笑う。

「お・・・おじゃまします・・・」

私は、軽くお辞儀をして、部屋に入る。

「その辺適当に座っとけ」

そういってリビングを差してから、総はキッチンに引っ込んだ。

⏰:08/06/08 17:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#240 [果樹]
「はい・・・」

私は総に言われた通りリビングに向かった。

総の部屋の中はとてもすっきりしていた。

一人暮らしにしてはずいぶんと広い部屋だ。

黒を基調に無駄なものは一切なく、家具も少くなかった。

生活に困らないのかしら?
それに、少し寂しい感じがする・・・。

⏰:08/06/08 18:41 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#241 [果樹]
テーブルの前に座り、部屋の中を見回しているとコトッと目も前にマグカップが置かれた。

「ほい、どうぞ?」

見上げると総が笑ってマグカップを口に運んでいた。

「ありがとうございます・・・」

私もそれに口つけて、一口飲む。

「総は一人暮らしなんですか?」

⏰:08/06/08 18:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#242 [果樹]
「まぁな」

私の隣に胡坐をかいて座った総に聞くと、総は少し寂しそうに言った。

何だろう、この感じ。

見に覚えがある気がする。


「てゆうかお前さ。男の部屋にいるのに危機感とかないの?」

「へ?」

⏰:08/06/08 18:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#243 [果樹]
思考の世界に行っていた私は、総の言葉の意味がいまいち理解できなかった。

「俺だって一応男なんだぜ?危ないんじゃないの?」

「――――っ!」

にやりと笑った総の顔で、私はやっと意味がわかった。

顔が赤くなるのを感じてずざざざざーっと後ろに下がり、総との間に距離をとる。

⏰:08/06/08 18:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#244 [果樹]
そうだった!

総は男の人で、男の人は狼で、それでそれで、私はバイクやらなんやらで総にたくさん抱きついちゃっててっ!!

ど、どうしよう・・・っ。

いまさらになって恥ずかしくなってきたっ!


「プッ・・アハハハハハ」

「そ・・・総!?」

いきなり笑い出した総に、私は意味がわからず目を大きく開いて総を見つめる。

⏰:08/06/08 19:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#245 [果樹]
すると総は、涙を溜めた目で私を見て、「冗談だよ冗談。何もしねぇから安心しろよ」といってポンポンと私の頭を撫でる。

「・・・・・・・」

遊ばれた・・・。
完全に遊ばれた。

なんだか私は総に無償に腹が立ち、顔を背ける。

「ククッ・・・とりあえず疲れたから風呂入って寝るか」

そんな私を喉の奥で笑って、総は立ち上がる。

⏰:08/06/08 19:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#246 [果樹]
「お、お風呂!?」


総の言葉に私はまた目を見開いて、総を見る。

しかし総は、そんなこと気にもせず部屋の奥のドアの前に行き、中に入った。

そしてしばらくして総は手に何かを持って戻ってきた。

「寝る服貸してやっから先に入ってこいよ」

「あ、はい・・・」

差し出されたのは洋服。

⏰:08/06/08 19:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#247 [果樹]
総が部屋に行ったのはこれをとりに行くためだったんだ。

私は総の手からそれを受け取り、総に案内されるままお風呂場に行った。



カチャ・・・パタン

私は風呂場のドアを閉めると、ドアにもたれかかってズルズルと腰を下ろした。

総が変なこと言うから焦っちゃったじゃないの。

⏰:08/06/08 19:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#248 [果樹]
心配する必要なかったのかも・・・。

なのになんだろう。

がっかりする気持ちとほっとする気持ちが一緒にあるのは・・・。

私は少し考えたがわからなかったので、お風呂に入ることにした。


――――――――・・・・


「お風呂お借りしました」

⏰:08/06/08 19:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#249 [果樹]
「おう!じゃあ疲れてるだろうからベッド使って先に寝とけ」

私が出ると総はすぐにお風呂場に向かった。

私は総に言われたとおり、リビングの部屋に置かれているベッドに横になる。


総はなんでこんなに広い家に一人で住んでいるんだろう?

確か総は大学4年生で22歳のはず。

22歳ってそんなにお金を持っているものなの?

⏰:08/06/08 19:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#250 [果樹]
私と4つしか違わないのに。

総ってよくわからない・・・。

そんなことを考えていたらカチャっとドアが開く音がして、総がお風呂場から出てきた。

そのままベッドに入ってくるのかと思ったが、総は床に寝転んでしまった。


「・・・・・・・」

まさか床で眠るつもり?

⏰:08/06/09 05:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#251 [果樹]
総、寒くないのかな・・・?

あのままじゃ風引いちゃうかも・・・。

・・・よしっ!


「総?」

「ん?まだ起きてたのか?つかさ」

私が総に声をかけると背中を向けていた総がこっちを向いた。

⏰:08/06/09 05:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#252 [果樹]
「あ、あの・・・床じゃ痛いでしょ?よかったらこっちこない?」

「は?」

総はまぬけな声を出す。

私の顔はきっと恥ずかしさで真っ赤なはずだ。

現に今だって心臓が激しく脈を刻んでいる。

「つかさ、それ意味わかっていってるのか?」

むくりと起き上がって聞く総。

⏰:08/06/09 05:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#253 [果樹]
総の表情は暗くてよくわからなかった。

「はい・・・」

「ふぅん。そんじゃご相伴に預かりますか」

そういうと総は立ち上がって私の眠るベッドに近付く。

ギシッとスプリングが鳴り、総はベッドに身体を預ける。

私は総と向き合って眠るのはさすがに恥ずかしかったので、総に背中を向けて眠ることにした。

⏰:08/06/09 05:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#254 [果樹]
・・・・・・眠れない。

背中に総を感じる。

シングルベッドだからさすがに二人で寝るには厳しいものがある。

総の体温を背中に感じて恥ずかしくなる。


「つかさ。そんな隅っこにいたら落っこちるよ?もっとこっち来れば?」

「え?」

⏰:08/06/09 05:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#255 [果樹]
総の声が聞こえた瞬間、肩を掴まれて、反転させられた。

総の顔が近い。

「ほら・・・おいで」

そういって総は背中に手を回して引き寄せる。

私は総の胸に身体を密着させて、抱き締められるような形になった。

「おやすみ」

上を少し見上げると目を瞑って総は寝る体勢にはいっていた。

⏰:08/06/09 05:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#256 [果樹]
え?ええ?
これで眠れっていうの?

嘘でしょ!?

恥ずかしくて眠れないわよぉ!


すぐ近くでは総の心臓がトクントクンと脈を打っている。

あ・・・心地いい音。

あったかい。

「おやすみなさい・・・」

⏰:08/06/09 05:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#257 [果樹]
私もぽつりと呟いて目を閉じた。


――――――――・・・・


「んー・・・」

目を覚ますと見知らぬ天井が、目の前にあった。

ここ・・・どこだっけ?

私は何回か瞬きを繰り返して、自分がいる場所を確かめた。

⏰:08/06/09 05:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#258 [果樹]
あ、そっか。
昨日先生が家から連れ出してくれて、それで・・・。

それで・・・。

ん?なんか枕硬い?

少し顔を動かして見てみると総が隣で静かに寝息を立てていた。

そして私の頭の下には総のたくましい腕があった。

「きっ・・・!」

私は大声で叫びそうになった自分の口を急いで手で塞ぐ。

⏰:08/06/09 17:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#259 [果樹]
「んん゙・・・」

隣で眠っていた総が少し声を洩らす。

しかし総はまたすぐ寝息を立て始めた。

私は総が起きなかった事にほっと静かに胸を撫で下ろして、またそーっと総の顔を見る。

今までは総の顔をしっかり見たことなんてなかったが、総はよく見ると端整な顔立ちをしていた。

⏰:08/06/09 17:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#260 [果樹]
長いまつげに薄い唇、スッと通った鼻筋と綺麗に弧を描いた眉そして綺麗な黒髪。

街を歩けば女の人が振り返るような美形だ。

総は彼女なんていないのだろうか?

もしいたら、私なんかにかまっている時間なんてないだろうけど。

じっと総を見ていたらおもむろに総の目が開いた。

⏰:08/06/09 17:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#261 [果樹]
「あ、つかさおはよ」

「お、おはようございます」

目を擦りながら私を見る総に、ずっと見ていたことが気づかれないように、私は急いで天井の方に向きを変えた。

顔が赤くなっていたのに気づかれてしまっただろうか。

「んあー・・・よく寝た」

⏰:08/06/09 17:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#262 [果樹]
総は起き上がって、両手を上に伸ばして軽く伸びをしてからベッドを降りた。

「コーヒーでも飲むか?」

「は、はい」

キッチンに向かいながら肩越しに聞いてきた総に、起き上がって私はこくこくと頷く。



――――――――・・・・


「つかさ。今日どっか行きたいとこあるか?」

⏰:08/06/09 17:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#263 [果樹]
「行きたいところ?」

総が作ってくれた朝食を食べている際に、聞かれたので私は首を傾げる。

少し考えてから、私はパッと頭に電球が点いたように閃く。

「お買い物!お買い物に行きたい!!」

「買い物?別にいいけど」

私の言葉に総は不思議そうな顔をしたが、承諾してくれた。

⏰:08/06/09 17:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#264 [果樹]
「ありがとう総!」

「ん?・・・ああ」

私が笑いかけると、総は軽い返事を返して黙々と朝食を平らげた。

総の顔が一瞬赤らんだのは気のせいだったのかな・・・?


――――――――・・・・


「うっわぁ・・・人がたくさんいる」

⏰:08/06/09 17:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#265 [果樹]
目の前を通り過ぎる大勢の人に思わず感嘆と驚愕の声が洩れる。

「当たり前だろ?つかさってこういうところにもこないのか?」

私の驚きようが不思議だったのだろう。

総は眉根を寄せて私の顔を覗き込んだ。

「お洋服は萩野が買ってくるから自分で行ったことはあまりなくて・・・」

⏰:08/06/09 18:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#266 [果樹]
私はそれに少し俯き加減で答える。

「萩野?」

「私が生まれる前から家に仕えているものです」

萩野・・・。
きっと今頃血眼になって探しているのだろう。
お父様が許すはずないのだから・・・。

「・・・・・。総、買い物に行きましょう!私靴欲しいんです。お洋服も」

⏰:08/06/09 22:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#267 [果樹]
また俯きそうになった顔を必死に上げ、私は総より一歩前に出て振り返る。

そして笑顔を作り、総の腕をグイグイ引っ張って総を急かす。

「俺は荷物持ちか」

私には聞こえなかったが、この時総はため息をついていた。


――――――――・・・・


「つかさ・・・お前買いすぎじゃねぇ?」

⏰:08/06/09 22:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#268 [果樹]
どっさりと腕に下げた紙袋を持ちながら呆れ顔で総が聞いてくる。

「だって楽しいんですもの!」

私は満面の笑みで総に笑いかけた。
総はそんな私に仕方がないなぁというような笑みを返した。

「お嬢様!」

「は・・・萩野っ!!」

⏰:08/06/09 22:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#269 [果樹]
聞き覚えのある声に振り向くと、50m先に厳しい顔をした萩野がいた。
私の身体がビクッと跳ねる。

「探しましたよ。ご自宅の方にお戻り下さい」

ツカツカと私の目の前まで来た萩野は、厳しい目つきをしながらも恭しく頭を下げた。

「い、嫌ですっ!!」

顔が強張る。

⏰:08/06/09 22:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#270 [果樹]
「またそんな我儘をお言いになって。いい加減にして下さいお嬢様」

「っ!!」

顔を上げた萩野の目つきがさらに厳しいものになり、私を捕らえる。
その目に捕らえられた私は、つい身体が動けなくなる。

「さぁ帰りますよ」

グッと腕を掴まれ、そこに力が加えられる。

⏰:08/06/09 22:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#271 [果樹]
「い、嫌・・・」

振り払いたいのに力じゃ適わない自分が悔しい。

「あのー俺抜きで話進めないで貰えますか?」

そんなピリピリした雰囲気の中で一つの声と共に、にゅっと手が挙がった。

「貴方は?」

萩野が私から総に視線を移す。

「時田総一郎。つかさの家庭教師」

⏰:08/06/09 22:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#272 [果樹]
「ああ、貴方でしたか。お嬢様を誑かして連れ出したのは」

「萩野!!失礼なこと言わないで!あれは私の意志で出て行ったのです」

私が萩野の言葉に反抗するように大きな声で怒鳴ると、萩野は冷ややかな目で私を見てからふっと嫌な笑みを溢す。

「まぁどちらでもよろしいですが。さぁ、参りますよ」

⏰:08/06/09 22:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#273 [果樹]
萩野が私の手を力づくで引っ張る。
しかしその萩野の手は、総によって振り払われた。

「おいおい、嫌がる女を無理やり連れて行こうとするのは、ちょっと男としてないんじゃねぇのか?」

いつものにやけ顔と違う怖い顔を総は萩野に向ける。
萩野の眼光が鋭く光る。

⏰:08/06/09 22:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#274 [果樹]
「貴方には関係の無い事だ。第一貴方、少々お嬢様と一緒に時を過ごしたからといってお嬢様のすべてを知ったつもりか?お嬢様の幸せを考えてものを言うんだな」

「っ・・・」

総は言葉に詰まって口を閉ざしてしまった。
そんな総に萩野は勝ち誇ったような顔をしてから、少し緩めた顔で私に向き直る。

⏰:08/06/09 22:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#275 [果樹]
「さぁお嬢様。参りますよ。旦那様もご心配なさっています」

「嘘よ・・・」

顔がまた俯く。

お父様が私を心配してるなんて、そんなの嘘・・・。
お父様は一度だって私に優しい顔も悲しい顔も見せたことがない。

涙だって・・・。

「嘘ではございません。旦那様のお気持ちも少しはお考え下さい」

⏰:08/06/09 22:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#276 [果樹]
「っ!」

「さぁお車にお乗り下さい」

私たちの側につけた車に萩野は私を無理やり押し込もうとする。

「いや・・・。総!総っ!」

私は周りの目を気にすることなく叫んだ。
力の限り総の名前を叫んだ。
でも総は俯いて、私の方を見ようとはしない。

⏰:08/06/09 22:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#277 [果樹]
総・・・?

「つかさ」

名前を呼ばれ顔を上げると、総が虚ろな目で私を見ていた。

「お前は家に帰れ」

「え・・・?」

総の口から信じられない言葉が発せられて、私は身体から力が抜けるのを感じた。

「家に帰って今までの生活に戻るんだ。それが普通だ」

⏰:08/06/09 22:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#278 [果樹]
総が何を言ってるのかわからない。

何を言ってるの総・・・?
なんで家に戻れなんて。

「そんな・・・。だって言ったじゃないですか」

だらんと身体の力が抜けた私を萩野の腕が支えている。

でもそんなことはどうでもいい。
私は振り絞るようにして精一杯の声を出す。

⏰:08/06/09 22:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#279 [果樹]
「総言ってくれたじゃないですかっ。私に自由をくれるって・・・!」

私の目からは、いつの間にか大粒の涙が流れて、頬をめいっぱい濡らしていた。

「総っ!!」

叫んでも叫んでも総に声は届かない。

総はまるで私の声を遮断するように顔を背けている。

⏰:08/06/09 22:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#280 [果樹]
「行きますよ」

萩野に押し込まれるように私は車に乗り込み、それを確認して車は発車した。

家に着くまでの時間、私の頬はずっと濡れていて、それが乾くことはなかった。




「つかさ・・・ごめんな」

⏰:08/06/09 22:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#281 [果樹]
一人その場に取り残された総一郎はもういないつかさの名前を呼び、涙が地面を濡らしていた。


――――――――・・・・


「お嬢様。ご夕食のお時間です」

「いらない。食べたくないの」

「しかし・・・」

「いらないったらいらない!」

⏰:08/06/09 22:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#282 [果樹]
ドアに向かって投げた枕がぼふっと音を立ててあたり、床にずり落ちる。

私はそれを見届けてからベッドにうつ伏せになるように飛び込む。
ギシっとベッドのスプリングがしなる。

「総のばかぁ・・・っ」

あんなに涙は流したはずなのにまだ出るのね。
頬を伝う涙が嫌なものにしか思えない。

⏰:08/06/09 22:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#283 [果樹]
ねぇ、総。
あの時あなたが言った言葉は嘘なの?
あの言葉は信じてもいいものなの・・・?

ねぇ、総・・・!


――――――――・・・・


「お嬢様、旦那様がお呼びです」

萩野の声がドアの外から聞こえる。

⏰:08/06/09 22:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#284 [果樹]
「お父様が?・・・今行きます」

私は支度をしてから、部屋を出て、お父様の部屋へ向かった。


コンコン

「つかさです」

「入りなさい」

相変わらず迫力たっぷりの声だ。
つい背筋がピッと伸びる。

⏰:08/06/10 04:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#285 [果樹]
「失礼します」

私は深呼吸をしてからドアノブを回し、一礼して部屋に入る。
お父様は、革張りの椅子に座って葉巻を吹かしている。
相変わらず怖い顔をして、私を見ている。

「つかさ。明日お前には婚約者を決めてもらう」

「婚約者?私はそのような話聞いていません!」

⏰:08/06/10 05:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#286 [果樹]
淡々と告げられた婚約者の言葉に驚愕する。

「既に決まったことだ。明日パーティを開く。50人程婚約者候補を用意してやるからその中から選びなさい」

「でもお父様・・・っ!」

「口答えはならん」

納得がいかないと反論をしようと思ったが、ピシャリと一喝されてしまった。

「・・・すみません」

⏰:08/06/10 05:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#287 [果樹]
私はそれ以上何も言えなくなり、お父様の部屋を出て自室に戻ってベッドに伏せた。

「婚約者なんていらないのにっ・・・!」

また頬を涙が伝った。


――――――――・・・・


「よろしかったら僕と一曲踊っていただけますか?」

⏰:08/06/10 05:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#288 [果樹]
まただ。
きっと婚約者候補だろう。

さっきからダンスの誘いがひっきりなしにくる。
私は壁の花で充分なのに。

「ごめんなさい。私、気分が優れないので失礼します」

相手に軽く会釈をして、椅子から立ち上がると私はテラスに繋がる扉を開いて外の風にあたる。

⏰:08/06/12 00:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#289 [果樹]
「はぁ・・・」

パーティなんてつまらない。

50人の婚約者候補・・・。
もう少ししたらお父様から紹介されるだろう。

抗うことは出来ない。
お父様のお言いつけは絶対。
私は結局自由にはなれないのね。


「おや?君はもしかしてつかさお嬢さん?」

⏰:08/06/12 00:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#290 [果樹]
名前を呼ばれたので声の主を探すと、タキシード姿の男の人がテラスの柵に寄りかかるようにして立っていた。

顔は月の光を背中に浴びているせいでよく見えない。

「そうですけどあなたは?」

「君の婚約者候補、とでも言うべきかな?つかさお嬢さん」

⏰:08/06/12 00:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#291 [果樹]
含みのある言い方をされて眉間に皺が寄るが、招待客なので無下には出来ない。

私はなるべく角が立たないように笑顔を作る。

「そうですか。本日はわざわざ足を運んで頂いてありがとうございます。それでは私はこれで失礼します」

長居は無用とばかりに踵を返して戻るところで、後ろから声をかけられた。

⏰:08/06/12 01:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#292 [果樹]
「ねぇもうちょっと話さない?」

「遠慮します」

と言いたかったけれど、中に戻ってもまたダンスの誘いが嵐のように来るだけなので、ここの方がまだマシだと思い、私はテラスでこの男の相手をすることにした。


・・・・・・・・・・・・・


「君の家は随分としきたりに煩い家のようだね」

⏰:08/06/12 01:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#293 [果樹]
「古くからある旧家ですので、決まり事は絶対なんです」

男の言葉に貼りつけたような笑みを作る。

「ふぅん。しきたりを重んじる旧家か。自由なんか皆無だろうね」

「あなただって私と変わらないんじゃありません?」

男の言葉に私が問掛けると、男はクスッと笑いを溢す。

⏰:08/06/12 01:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#294 [果樹]
「そうだけど。俺は自由が欲しくて逃げた人間だから」

「え?」

「俺たちの住む世界は窮屈で仕方がない。やれ習い事だ。やれ勉強だと縛られた中の自由しかない。それはまるで籠の鳥だ。だから俺は籠から逃げ出した。空をおもいっきり飛んでみたかったからね」

空をおもいっきり飛んでみたい・・・か。
それは何度私が願った、叶わない望みだろう。

⏰:08/06/12 01:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#295 [果樹]
「君は逃げ出さないの?」

問掛ける男に私もクスッと笑みを一つ浮かべる。

「無理ですよ。連れ戻されてしまいましたから」

「自由が欲しくないの?」

自由?
そんなの欲しいに決まっている。

でも・・・。

⏰:08/06/13 22:24 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#296 [果樹]
.




「自由が欲しいなら俺がくれてやるよ」




.

⏰:08/06/13 22:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#297 [果樹]
「え!?」

思わず顔の見えない男の顔を見てしまう。

この台詞・・・。

これはあの時・・・。


「お前の知らない世界を俺が見せてやるよ」


この台詞はあの時に総が私に向けた言葉・・・。
もしかして・・・。

⏰:08/06/13 22:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#298 [果樹]
私は一筋の望みを託して本当に小さな声でその名前を呼ぶ。

「そ・・・う?」

月明かりを背にしていた男は私の隣まで来て、にやっと笑う。

「やっと気付いた?」

月明かりに照らされたその顔は紛れもなく総だった。

「なん・・・で?」

⏰:08/06/13 22:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#299 [果樹]
「つかさが婚約者を決めるパーティを開くって言うから親父に頼み込んで招待客として紛れ込んだ」

笑いながらいう総。

「親父って・・・それに招待客・・・?え??」

総のいきなりの登場と言葉に考えることのに容量を越えていて、私の頭はついていかない。

「クスッ・・・とりあえず落ち着け」

⏰:08/06/13 22:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#300 [果樹]
笑みを浮かべた総が私の頭をぽんぽんっと叩く。
それだけで私の心には安心感が生まれた。



それから総は自分の素性やここにいる理由を少しずつ話し出した。


「俺の本当の名前は此木(くのぎ)総一郎」

「此木?此木って・・・」

どこかで聞いたことが・・・。

⏰:08/06/16 02:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#301 [果樹]
顎に手を当てて考える私に総がフッと笑み浮かべる。

「此木財閥。俺はそこの長男」

「え?!」

そうだ!
全国に名を轟かせる此木財閥。
社長は随分と厳しい方だって聞いたことがある。

でも、総があの此木財閥の息子でしかも長男だなんて!

⏰:08/06/16 02:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#302 [果樹]
「だって名前・・・。名前は?!時田って!」

そうだよ!
初対面の時、確かに“時田総一郎”って言ってた!

「時田は母親の旧姓。此木じゃいろいろと不便なんだよ」

総は軽く伸びをして、月を見上げる。

確かに・・・。
此木の姓を使っていたらいろいろと面倒かもしれない。

⏰:08/06/16 02:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#303 [果樹]
よろしければ感想ください!!
果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/06/16 02:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#304 [果樹]
「それより・・・ごめんな」

「え?」

総は私の方を見ながら顔を歪める。

「あの時助けてやれなくて・・・」

「あ・・・」

総の言葉で萩野に連れ戻された時の事が頭をよぎる。
総は私から顔を背けてテラスの下の噴水を見る。

⏰:08/06/19 01:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#305 [果樹]
「俺はさ此木の家が嫌いで、高校入学と同時に家を出たんだ」

初めて聞く総の過去。

「だからつかさの気持はよくわかった。逃げ出したいって気持ちも・・・でも」

“でも”を総が強調する。

「つかさには家に戻った方が幸せだと思った。俺は家を出てから大分苦労したから・・・」

⏰:08/06/19 01:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#306 [果樹]
寂しそうな総の横顔に心が痛む。

「今はさ、親父も納得してくれて支援してくれてんだけど。つかさには俺みたいな思いしてほしくなかったから」

総の気持ち。
私を思う、私の事を考えてくれる総の気持ちに心が高鳴る。

「いいんです」

「良くないだろ。好きな女を泣かせるなんて男として最低だよ」

⏰:08/06/19 01:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#307 [果樹]
え・・・?

振り向いて言った総の言葉に思考が停止する。

「あ・・・」

総は気まずそうな顔をして、口元を手で抑える。

顔が赤いのは私の気のせい・・・?

総は咳払いをしてから私の方に向き直って真面目な顔をする。
それにつられて私も背筋が伸びる。

⏰:08/06/19 01:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#308 [果樹]
「つかさが好きだ。苦労してもいいなら俺と来るか?」

伸ばされた手を私は迷うことなく取る。

「はいっ」

いつのまにか流れていた涙が頬を伝って流れ落ちる。

恋愛なんて経験したことない私だけど、この気持ちは恋だと思った。

⏰:08/06/19 01:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#309 [果樹]
「つかさ。こんなところで何をしているんだ」

「お父・・・様」

低く響く声がして見ると、テラスの入り口にお父様の姿があった。

「ん?貴様は・・・っ」

お父様が私の横にいる総に気付く。
総を見ると総は口元に笑みを浮かべて堂々とした様子だ。

⏰:08/06/19 01:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#310 [果樹]
よろしければ感想ください!!
果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/06/19 01:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#311 [果樹]
「お久しぶりです。本日はお招き頂きありがとうございます。此木家の嫡男として参りました」

「此木家?」

お父様の眉間に皺が寄る。

「僕の名前は此木総一郎。此木家の嫡男です」

「素性を隠しておったのか」

睨みをきかせるお父様に怯む様子もなく総は堂々としている。

⏰:08/06/24 05:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#312 [果樹]
「こっちの方が動きやすいものですから」

へらっと笑う総にお父様は更に厳しい顔をしてから私の方をちらりと見る。

お父様の目に見つめられると私は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまう。

「つかさこっちへ来なさい。将来お前の夫となる者の紹介をしよう」

お父様の言葉には逆らえない・・・。

⏰:08/06/24 05:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#313 [果樹]
私が一歩歩みだそうとするとそれを総が止める。

驚いて総を見ると総は笑っている。

「申し訳ありませんがそれは出来ません」

「貴様には関係のないことだ」

ピシャリと総の言葉を払い除けるように言うお父様。

「そうもいかないんです。つかささんは僕の物ですから」

「っ!!」

⏰:08/06/24 05:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#314 [果樹]
私の前にまるでかばうように立つ総に私は何故か涙が出そうになる。

「何をふざけたことを」

お父様がふっと笑う。

このままじゃいけない。
総の後ろにばかり隠れていたら何も進まない・・・!

私はおずおずと総の後ろから出て総の横に並ぶ。

今から言うことに冷汗なのか脂汗なのかわからない汗が額に滲む。
ぎゅっと握った拳は力が入りすぎてもう感覚がない

⏰:08/06/24 05:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#315 [果樹]
「お父様ごめんなさい。私は総と一緒に生きていきます」

強い意思表示の為かお父様への恐怖からか握った拳が震える。

真っ直ぐにお父様を見つめる私にお父様も真っ直ぐ私を見返すが迫力の違いに少し腰が引けるが、足に力を入れて崩れないように踏ん張る。


「クッ・・・ククッ」

「?!」

⏰:08/06/30 05:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#316 [果樹]
ふいに聞こえた笑い声に隣を見ると総が口許を抑えてはっきりとしない笑いを漏らしていた。

私が眉間に皺を寄せると総は笑ったまま私の頭をポンポンと叩き目線を動かしお父様を見据える。

「そういうわけでつかさは貰って行きます」

そういって身を翻して総はいきなりテラスから下に飛び下りた。

それはまるであの時・・・。
私を家から連れだした時のように。

⏰:08/06/30 05:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#317 [果樹]
「総!?」

下を覗き込むと平気そうな顔で総手を広げて笑っていた。

「おいで、つかさ」

あの時と同じ台詞・・・。

行きたい!!

ギュッとテラスの柵を握り締めてテラスから飛び降りようとするが、後ろから低く地を這いずるような声に名前を呼ばれると身体がビクッと跳ねて身動きがとれなくなる。

⏰:08/06/30 05:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#318 [果樹]
「つかさ」

お父様の方を振り向くとお父様は一度だって見せたことのない柔和な優しい顔で笑っていた。

「行きなさい」

お父様の口から出た言葉は信じられないくらい優しく暖かいものだった。

私の目からは自然に涙が溢れ、気が付けば私はお父様に抱きついていた。

「ありがとうございます・・・。お父様」

⏰:08/06/30 05:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#319 [果樹]
わんわんと子供みたいに泣く私の頭を優しく撫でるお父様の手は暖かく“愛情”を感じた。


一頻り泣いた後、私はお父様から離れテラスの柵に手をかける。

「行って参ります!」

お父様に向かって笑顔で言ってから私はテラスから総の胸の中に飛込んだ。


――――――――・・・・


「よろしいんですか?旦那様」

⏰:08/06/30 05:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#320 [果樹]
萩野は数歩下がった所から自分の主人に声をかける。

「あぁ。いいんだ」

本当ならつかさの婚約者を選ぶ為に開かれたパーティだ。

しかしつかさはもう最愛の人を見つけて愛の逃避行をしてしまった。

メインがいなくなってはパーティは成立しない。

つかさの父が大恥じをかくのはわかっているはずなのに当の本人は柔和にそれは優しく笑っていた。

⏰:08/06/30 05:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#321 [果樹]
そんな主人をみて萩野もまた笑みを溢すのであった。

つかさのあんなに真剣な目を見たのは初めてだ。
それにあの笑顔・・・。
何年振りに見たことか。

それもあの男のお陰か。

ふっと笑いを溢して、つかさの父は萩野と共にパーティへと戻って行った。


――――――――・・・・


「つかさの父親ならぜってぇ許してくれると思ったんだ」

⏰:08/06/30 05:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#322 [果樹]
夜道を歩きながらネクタイを緩めた総がカラカラと笑う。

「どうしてですか?」

総が自信たっぷりに言うものだからつい目を見開いてしまう。

すると総は笑ったまま私の方をちらりと見てすぐ前を向く。

「つかさの父親と母親も駈け落ちしたからだよ」

「え?!」

⏰:08/06/30 05:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#323 [果樹]
総の口から出た信じられない言葉に私の足が止まる。

それに合わせるように総も足を止めて私の前に立つ。
「つかさの父親と母親は周りから見ても本当に幸せそうだったらしい。だから俺たちもきっと幸せになれる。いや、なるんだ!」

力強くそう言った総の言葉に私は涙を流しながら何度も頷く。

そんな私を抱き寄せて力強く総は私を抱き締める。

⏰:08/06/30 05:24 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#324 [果樹]
総から伝わるぬくもりが暖かくて心地好くて私はまた涙を流した。


――――――――・・・・


ねぇ総?

籠の鳥は籠の中で生きている方が幸せだって誰かが言っていたけれどそれは間違いだったみたい。

なんで?

だって籠の外だって私はこんなに幸せに満ち溢れているもの。

⏰:08/06/30 05:25 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#325 [果樹]
貴方のお陰で私は再び羽を伸ばす事ができたの。

自由はもう憧れでも夢でもなくなったのよ。
これって私にとっては凄い事だわ!

ありがとう総。


あ、でもね。
飛ぶだけじゃ疲れちゃうからたまには休ませて。

休む・・・?

⏰:08/06/30 05:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#326 [果樹]
うん!
貴方の胸の中が一番私が羽を休めて落ち着けるところだから。

大好きよ・・・。





【自由に憧れた鳥】

―END―

⏰:08/06/30 05:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#327 [果樹]
.

大人の恋?
そんなのが欲しいんじゃない。
あたしはただあたしだけを見てほしかったの。


story 4

【恋患い】

.

⏰:08/07/01 02:37 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#328 [果樹]
ガタガタン!!


ん?何だ?

俺は、柴浦要。
この学校の教師で、今は校内の循環中。

さっき近くの教室から聞こえてきた机が倒れたっぽい音。

「お前なんかこっちから願い下げだよ!!」

「うっさい!もー早く出てって!!」

⏰:08/07/01 02:38 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#329 [果樹]
そして続けて聞こえる男女の怒鳴り声。

なんだー?
痴話喧嘩か?

俺はつい野次馬心で聞耳を立てる。

「言われなくても出てってやるよ!バカ女!」

バンッと大きな音と共に開かれた教室のドアからは、金髪の男子生徒が不機嫌な顔を露にして、出てきた。

⏰:08/07/01 02:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#330 [果樹]
「チッ」

俺を見るなりそいつは舌打ちをして、近くの階段を降りていく。

チッて昭和のヤンキーですか、とそいつの背中を見送りながら俺はついツッコミを入れる。

そしてさっき金髪の男子生徒が出てきた教室の中を見ると、栗色の髪をした女の子が涙を目いっぱいに溜めて泣いていた。


――――――――・・・・
.

⏰:08/07/01 02:41 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#331 [果樹]
「笹原さーん。もう授業は始まっているんですけどー?」

足元の方からから聞こえてきた声。

教師か。
でも動くの面倒いや。

「だから?」

私は近付いてくる教師に冷たく言い返し、寝転がったまま雲一つない青空を見つめる。

⏰:08/07/01 02:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#332 [果樹]
私は、笹原真理奈。高1。

今日は天気が良すぎて机に向かう気にならないので、私は裏庭で昼寝をしている。

そして今、教師に昼寝の邪魔をされたところだ。


近付いてきた教師を見れば担任の柴浦だ。

柴浦は私のすぐ横に来るなり、少し眉間に皺を寄せるが、すぐに眉間の皺は消えた。

⏰:08/07/01 02:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#333 [果樹]
「はー。まぁ、いーか。」

と言って柴浦は隣に腰を下ろした。

なんだこいつ・・・。

普通の教師ならもっとカンカンになって怒鳴ってくるのに、こいつは違った。

てゆーか一緒になってくつろいでるし。


「いい天気だなー」

⏰:08/07/01 02:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#334 [果樹]
柴浦は足を前に投げ出し、手は後ろについて、空を見上げながら言う。

「・・・・・・・」

「話かけてるんだから何か答えなさいよ」

なんで・・・?と言う疑問が湧いたが、面倒くさいので一応言葉を返す。

「そーですね」

感情もなく言う私に、柴浦はクッと笑って着ていたジャケットのポケットから煙草を取り出す。

⏰:08/07/01 02:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#335 [果樹]
「不良教師」

「ハハッそれは君もデショ?笹原真理奈さん」

ぼそっと言ったつもりだったけど聞えていたらしい。

柴浦は煙草を吹かしてこっちを見てきた。

変なやつ・・・。

心の中で静かに悪態をついて、私は暖かい陽気の中、放課後までひたすら眠り続けた。

⏰:08/07/01 20:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#336 [果樹]
.
――――――――・・・・


「斎藤ー」

「はーい」

「笹原ー」

シーン・・・。

「笹原ー。いないのかー?」

俺は教室中を見渡すが、生徒たちはお互いの顔を見合わせている。

⏰:08/07/01 20:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#337 [果樹]
「笹原さんなら2限終わったあたりからいませーん」

一人の女子生徒が手をあげて言う。

「・・・・・・」


――――――――・・・・


私は今屋上で寝転んで空を見ている。

ぼーっとただ雲が自分の上を過ぎていくのを見ていると世界に自分しかいない気がして気持ちがいい。

⏰:08/07/01 20:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#338 [果樹]
よろしければ感想ください!!

果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/07/01 20:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#339 [我輩は匿名である]
>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400

⏰:08/07/01 22:08 📱:P903i 🆔:YQQlX4Z2


#340 [果樹]
「おーい。そこの不良少女」

私の至福の一時を邪魔する存在がきた。

そいつはこっちに向かって歩いてくる。

「無視しなーい」

面倒くさ。

「なんですか?」

私はむくりと起き上がりその邪魔する存在こと柴浦を睨む。

⏰:08/07/02 07:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#341 [果樹]
「化学の時間いなかったろ?」

「・・・・・・・」

なんだそんなことか。

私は、はぁと溜め息をつき立ち上がって屋上の柵に肘をついて校庭を眺めた。

「ここにいたのか?」

うるさいなぁ。
当たり前じゃん。

「・・・・・・」

⏰:08/07/02 07:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#342 [果樹]
心の中では返事をするが決して口には出さない。

「聞いてんだから答えなさいな」

背後から柴浦が頭にチョップをかましてきた。

「いったいなー。暴力教師!」

私は振り返って頭を擦りながら後ろで腕を組んで笑っている柴浦を睨む。

「なんで授業にでない?」

結局説教か。

⏰:08/07/02 07:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#343 [果樹]
「かったるいから」

「でも前は出てたろ?」

「・・・・・・・」

「なんでいきなり出なくなった?」

何こいつ?
尋問でも始める気?

私は柵に寄りかかる。

「別に。意味なんかないよ」

「ふーん」

⏰:08/07/02 07:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#344 [果樹]
それっきり柴浦はそこに胡座をかいて座り込んだ。

「てゆーか。居座らないでくれる?」

「なんで?」

上目使いで見てくる柴浦。

「ここはあたしが見つけた場所だから」

「プハッお前かわいーね」

真顔で言った私に柴浦は吹き出してクックッと喉の奥で笑っている。

⏰:08/07/02 07:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#345 [果樹]
読んでる方いらっしゃいましたら感想ください!

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/07/02 07:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#346 [果樹]
嫌な感じ。

「は?馬鹿にしてんの?」

睨んだ私を、柴浦はまた上目使いで見てきて

「違うよ。褒めてんの」

とか言いやがった。

なんだこいつ。
意味がわからない。

私は眉間に皺が寄る。

「用がないならどっか行ってよね!」

⏰:08/07/02 20:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#347 [果樹]
私は、柴浦から目線を外しまた校庭を見る。

「用ならあるよ。なんであの時泣いてたんだ?」

「あの時?」

柴浦の言っている言葉の意味がわからず思わず聞き返してしまう。

「先週の放課後。男と別れた後の教室」

柴浦の言う短い言葉にピンと来るがこいつの前で戸惑いを見せるのは嫌なのであくまで平常心を保つ。

⏰:08/07/02 20:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#348 [果樹]
「見てたんだ。変態。あんた覗きが趣味なの?」

柴浦の言う“あの時”とは、あいつと最悪な別れ方をした放課後のことだ。

「違います」

「変態教師」

「だから違うって言ってるでしょーが」

柴浦は着ているジャケットから煙草を出して、火をつける。

⏰:08/07/02 20:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#349 [果樹]
「どうでもいいけど、あたしに関わらないでくれる?」

「そうはいかないんだよ。一応お前は俺のクラスの生徒だからな」

煙草を吹かしながら言う柴浦に言われても説得力に欠ける。

「教師の勤めってやつ?くっだらない。」

ハッと悪態をつくが柴浦はへらへらと脳天気に笑っている。

⏰:08/07/02 20:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#350 [果樹]
「まぁそー言わないで仲良くやろうぜ。笹原真理奈さん」

「馬鹿らしい。」

手を出して握手を求める柴浦を無視して私は校庭を見続けた。


――――――――・・・・


あれからというもの柴浦は私を見かければ声をかけてくる。

⏰:08/07/08 00:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#351 [果樹]
トイレから出れば

「おー笹原ー」

屋上に行こうとすれば

「笹原サボんなー」

昼ご飯を食べてれば

「うまそーなの食ってんな笹原」

私にも我慢の限界がある。

こんなのが一週間も続いたら鬱病になってしまう。

⏰:08/07/08 00:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#352 [果樹]
「真理奈さぁ。なんか最近柴くんにストーカーされてない?」

今は廊下で友達の百合と話している。

「そうみたい」

私は窓の桟に肘をつき、手に顎を乗せて溜め息をつく。

「相当参ってるわね」

そんな私を見た百合は苦笑いを溢す。

⏰:08/07/08 00:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#353 [果樹]
「勘弁してほしーよ。毎日毎日、笹原笹原ってほんとうざったい!」

悪態をつく私に百合は紅一点、さっきの顔とは違い、今度はにこにこと嬉しそうに笑っている。

「真理奈にはいい変化なんじゃないの?」

「何それ」

百合の言っている意味が分からず聞き返すと、百合は更ににこっと笑って、「そのまんまの意味よ」といって教室の中に入っていってしまった。

⏰:08/07/08 00:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#354 [果樹]
いい変化・・・?
あいつに追われることのどこがいい変化?

「あ!笹原ー」

百合の言葉に頭を悩ましていると廊下の向こうから呼ばれた。

来た。今一番会いたくない奴ナンバー1が!!


「何ですか?柴浦せんせ」

私は、顔に貼りつけたような笑顔で柴浦に対応する。

⏰:08/07/10 07:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#355 [果樹]
「そんな他人行儀な」

「他人ですから」

相変わらずうざいなこいつ。

「今日は授業出る気になったの?」

「先生には関係ないと思いますが?」

「冷たっ!先生泣いちゃうよ?」

⏰:08/07/10 07:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#356 [果樹]
相手をしてるだけ時間の無駄に思えてきた私は、柴浦を無視して柴浦とは反対方向に歩く。

「あ、ちょっと笹原どこ行くの?笹原ー?」

後ろでは柴浦がしつこく名前を呼んでいたけど、そんなのは無視。

私は屋上へと繋がる階段を上った。


――――――――・・・・


カチャッ・・キィ

⏰:08/07/10 07:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#357 [果樹]
鉄製のちょっと重たい扉を開いて屋上に出ると、空は相変わらずの快晴で、とても気持ちが良かった。

私はいつも通り寝転び目を閉じる。

なんでみんなは授業なんかに出る気になるんだろうとふと思ってしまう。

こんなに風も気持よくて、暖かいのに。

そんなことを思ってると屋上の扉がゆっくりと開き、人が出てきた。

⏰:08/07/10 07:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#358 [果樹]
「やっぱりここにいた」

来たのは柴浦だった。

私は、うっすらと開けた目からその姿を確認してまた目を閉じる。

「なー笹原。授業出れば?」

私は寝たふりを決めこむ。

「笹原笹原笹原ー!」

耳元でいきなり大声で名前を連呼されたせいでキーンと耳の中で音が反響する。

⏰:08/07/13 22:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#359 [果樹]
「煩いんですけど」

上体を起こし柴浦を睨む。

「授業出れば?」

「嫌です」

「何で?」

「・・・・・・・」

最近この繰り返しばかりな気がする。

「この間の男と別れてからだよな。お前が授業に出なくなったの」

⏰:08/07/13 22:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#360 [果樹]
こいつ・・・!

柴浦を今までにないくらい鋭い目付きで睨んでからにっこりと口元で笑みを作る。

「柴浦先生。一つ忠告してあげます。人の心の中にズカズカと土足で踏み込むと痛い目に合いますよ?」

それだけ言って私は柴浦を置いて屋上を後にした。


――――――――・・・・


「よっ!」

⏰:08/07/13 22:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#361 [果樹]
うざいの言葉しか思いつかない私は目を瞑ったまま今、声をかけてきた奴に背中を向ける。

「無視すんなよ。寂しいだろー?」

トサッと音がして声が近くに聞こえる。

柴浦が私の横に腰を下ろしたのだろう。

「なぁ笹原?授業出ない?」

またこの繰り返しか。

⏰:08/07/13 22:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#362 [果樹]
読んでる方いたら感想ください!!

果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/07/13 22:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#363 [果樹]
「出ません」

「じゃあ恋愛すれば?」

いつものように言葉を返すといつもと違う言葉が返ってきた。

“恋愛”

それは今の私には重く痛い言葉だった。

「当分恋はしないって決めたんです」

そう、恋なんてしない。

⏰:08/07/16 21:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#364 [果樹]
恋なんて痛みしかない。
辛さしか知らない。
幸せになれないのなら恋なんてしたくない。

「あの男のために人生棒に振るのか?」

「柴浦先生」

私は体を起こして柴浦の方を見る。

「何かな?不良少女の笹原さん?」

柴浦は意地悪そうな顔を私に向ける。

⏰:08/07/16 21:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#365 [果樹]
「もう私につきまとわないでで下さい」

「いやだ」

きっぱりと言った私に柴浦は子供みたいな言葉を返す。

「なぁ笹原」

柴浦の言葉なんて聞きたくなくて私は柴浦に背中を向けて体育座りをして膝に顔を埋める。

⏰:08/07/16 21:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#366 [果樹]
「お前が一生恋愛をしなくてもきっと相手の男は恋愛をするぞ?それもたくさん」

煩いうるさいウルサイ!

そんなの言われなくてもわかってる。

他に女がいるって知ってた。

でも・・・それでもあいつのことが大好きで、好きって気持ちは止められなかった。

⏰:08/07/16 21:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#367 [果樹]
だから他の女の事も目を瞑ってきた。

でもやっぱり1番になりたかった。
あいつの中の1番になりたかった。

「先生には・・・関係ない。放っといて」

すくっと立ち上がって歯をくいしばりながら溢れそうになる涙を必死に堪えて私は中庭を離れようと歩き出す。

が、柴浦によってそれは阻まれた。

⏰:08/07/16 21:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#368 [果樹]
柴浦は私の手首をつかんで離さない。

「離して!」

「嫌だ」

「離してってばぁ!」

ぶんぶんと振ってもなかなか離してくれない柴浦に苛立ちが募り、思わず大きな声が出る。

「離さないし放っけねー。悪りぃけどそんな泣きそうな顔してる奴を放っておけるほど俺鬼蓄じゃねーんだわ」

⏰:08/07/20 05:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#369 [果樹]
「っ!!」

強く握られた手首から柴浦の熱を感じる。

「笹原」

柴浦の私を呼ぶ声が煩いくらい耳に響く。

「こっち向け笹原」

グイッと肩を掴まれ強制的に柴浦の方を向かされた。

「もう泣いてんじゃん」

⏰:08/07/20 05:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#370 [果樹]
「うるさい・・・」

ふっと笑う柴浦。
私は泣き顔を見られたのが恥ずかしくて柴浦から顔を背けた。

「そんなに歯ぁくいしばらなくても泣けばいいよ。思いきり泣けばいい」

そう言って柴浦は私の頭をぽんぽんと優しく叩いた。

それに応じるように私の涙は積を切ったように流れ出す。

⏰:08/07/26 05:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#371 [果樹]
「うっ・・ひっく・・」

止まらない涙をまるで見ないようにでもするかのように、柴浦は私の頭を抱えるようにして抱き締めた。

「いっぱい泣け」

柴浦の優しい言葉に余計に涙がでそうになって私はそれを誤魔化すように悪態をつく。

「なに・・・それ。偉そうに」

⏰:08/07/26 05:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#372 [唄]
>>280-400

⏰:08/07/26 09:24 📱:D905i 🆔:4hzSTtkc


#373 [果樹]
唄さんへのお返事

果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/07/26 15:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#374 [果樹]
でも柴浦は何も言わずに優しく私が泣き止むまで頭を撫でてくれた。


―――――――――――


「あ゙ぁぁーーー」

私は野太い雄叫びを出してベッドに突っ伏した。

あの後、次第に冷静になった私は柴浦に抱き締められている状況が恥ずかしくなり柴浦を突き飛ばして逃げた。

⏰:08/07/26 15:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#375 [果樹]
しかも廊下で柴浦に会うたびに心臓がどくんと音を立てるのでその気まずさから、私は学校を早退して帰ってきてしまった。

そして今は部屋でベッドに突っ伏している。

「あ゙ぁぁぁーーーー」

さっきよりも長い雄叫びが出る。

それもこれも柴浦のせいだ。

⏰:08/07/26 15:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#376 [果樹]
♪〜・・♪〜・・

ごろごろとベッドで転がっていたら突然携帯が鳴り、それは着信を知らせていた。

サブ画面を見ると知らない番号・・・。

出ようか出ないか迷っている私を急かすかのように着信音が部屋に響く。

うるさい・・。

⏰:08/07/26 15:41 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#377 [果樹]
ピッとボタンを押し携帯を耳に当てる。

「はい」

『俺だ俺ー』

イタ電・・・?

「俺と言う人物に心当たりはありませんけど」

『ハハッ相変わらず冷たいなぁ。担任の声も忘れちまったか?』

は・・・?

⏰:08/07/26 15:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#378 [果樹]
「担任って・・・まさか柴浦?!」

『柴浦先生ですかだろ?まったく・・・』

電話の向こうで柴浦が軽く溜め息をついたのが聞こえた。

「てゆーか何で柴浦があたしの番号知ってるの?」

教えてないし教える気もなかったのに。

『石川に聞いた』

⏰:08/07/26 15:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#379 [果樹]
石川とは百合のことだ。

百合め・・・。
今度会ったらたたじゃおかねぇと心に近い今は取り合えず柴浦とうるさいぐらい鳴っているこの心臓をどうにかしなければということに頭が回る。

「何の用ですか?」

口調をいつも通りに私は平静を装う。

『お前勝手に早退してんなよなー』

⏰:08/07/26 15:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#380 [果樹]
そんなことで電話かよ。

「お腹があまりの激痛を訴えたので帰ったんですが何か問題がありましたか?」

『あのなぁ・・・一言くらい俺に言っていけよなー』

「すみませんでしたー」

さして反省の色も見せず言うと柴浦がまた溜め息をつく。

⏰:08/07/26 15:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#381 [果樹]
『まぁいいけどさ。明日はちゃんと学校来いよ』

「・・・・・」

『クスッ・・じゃあな』

プツッという音と共に電話は切れてツーツーという機械音だけが耳に残った。


もうこれ以上あたしに構わないで欲しい・・・。

今だうるさく鳴る心臓を押さえて私は仰向けに寝転ぶ。

⏰:08/07/28 01:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#382 [果樹]
♪〜・・♪〜・・

今日はよく鳴るな。

再び鳴った携帯に目をやればそれは驚く人物からの着信だった。

サブ画面に写し出された名前は“進藤啓祐(シンドウ ケイスケ)”

啓祐はあたしの彼氏。
いや、彼氏だった人。

あたしたちはあの放課後の教室で終わった。

⏰:08/07/28 01:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#383 [果樹]
鳴り響く着信音。
携帯を掴む手が震える。

ピッとボタンを押して携帯を耳に当てがう。

「はい・・・」

『真理奈ー久しぶりだなぁギャハハ』

「啓祐・・・」

電話の向こうの啓祐はなにやら上機嫌で相変わらず軽いノリだった。

⏰:08/07/28 01:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#384 [果樹]
『俺、女と別れちまってよぉ。また相手してくんね?』

「何・・いってんの?」

『あん時のことまだ怒ってんのかぁ?水に流してまた仲良くしようぜ。なぁ?』

「・・・・・」

『まぁいーや。とりあえず明日の放課後残ってろ。教室行くから。じゃな』

⏰:08/07/28 01:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#385 [果樹]
啓祐との会話はプツッという音と共に切れた。

なんで今更・・・。

私はベッドに倒れこんで顔を腕で覆い隠して明日のことを考えたまま寝てしまった。


―――――――――――


「はぁ・・・」

⏰:08/07/28 01:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#386 [果樹]
結局考えもまとまらぬまま放課後が来てしまった。

帰りたいけど帰ったら帰ったで後が怖いのだ。

私は机に突っ伏してまた盛大に溜め息をついた。

「そんなに溜め息ばっかりしてると幸せ逃げるよ?」
カタンという音がして顔を上げると百合が前の席に座っていた。

⏰:08/07/29 19:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#387 [果樹]
「百合ぃー」

「うわ!何?どうした?」

半泣き状態で百合に泣き付くと百合がビックリしたようなでも心配そうな顔で聞いてきた。

私はとりあえず百合に昨日あったことの一部始終を話し啓祐のことも話した。

「あたしこのまま待ってるべきかなぁ?」

⏰:08/07/29 19:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#388 [果樹]
「うーん・・真理奈はさ啓祐くんとヨリ戻したいの?」

そう聞かれて一瞬戸惑ってしまった。

前の私だったら即「うん」と答えていたのに今はそうではない。

「ううん・・・もういい」

私は首を横に振って否定を表す。

⏰:08/07/29 19:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#389 [果樹]
あんなに好きだった人だけれど今は違う。

何故かはわからないけどあたしの心が好きじゃないっていっている。

「じゃあ啓祐くんにきっぱりと言ったら?このまま逃げてたって同じ学校にいるんだからいつかは捕まるでしょ?だったら今日きっぱりと別れるって言った方がいいよ」

「・・・・・うん。そうだね。そうする」

⏰:08/07/29 19:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#390 [果樹]
「大丈夫!強い見方を呼んであげるから!何かあったら電話して」

そう言って百合は手を振って教室を出ていった。

強い見方・・・?

百合が最後に言っていた言葉が気になったが分からなかったのでとりあえず考えるのを止めた。

⏰:08/07/29 19:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#391 [果樹]
教室に一人になってから10分。

もう帰ろうかなと思っていた時に教室のドアがガラッと開いて制服を身に纏った男子生徒が入ってきた。

入ってきたのは啓祐。

体が一瞬ビクッと震える。

「ちゃんと待ってたんだ。えらいじゃん。ギャハハ」

不愉快になるほどの笑いを浮かべて啓祐は私に近付いてくる。

⏰:08/07/29 19:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#392 [果樹]
あたしはぎこちなく立ち上がり啓祐と向かい合わせになる。

「あ、あたし啓祐とはもう終わってるから・・・ヨリ戻す気もないし」

「は?ヨリ戻す気は俺にもねぇけど。ただやらせろって言ってんの」

・・・・・・え?

何言ってるの?

⏰:08/07/29 19:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#393 [果樹]
「い・・・いや」

私は勇気を振り絞って啓祐に自分の意思を伝えた。

震えて今にも崩れそうな足を床につけて踏ん張る。

啓祐は自分の嫌なことがあるとすぐ物に当たったり私を殴ってくる人だった。

だから怖い。
啓祐の逆鱗に触れたら私は間違いなく殴られるだろう。

⏰:08/07/29 19:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#394 [果樹]
ぎゅっと目を瞑って啓祐の言葉を待つ。


・・・・・・・・・。

長い沈黙の後、それを打ち破るように啓祐が口を開く。

「お前誰に向かってそんな口きいてんだよ!!」

ガンッという音と共に啓祐の側にあった机が大きな音を立てて倒れた。

⏰:08/07/29 19:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#395 [果樹]
ビクッと体が跳ねる。

「ヤらせろよ」

「い・・や・・・・・キャッ!」

二度目の否定をしたところでいきなり腕を掴まれて啓祐に引っ張られた。

「口ごたえしてんじゃねぇよ」

パシンッと乾いた音と頬に走った痛みが啓祐に叩かれたことを私に認識させた。

⏰:08/08/02 17:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#396 [果樹]
「真ー理奈♪まだ俺のこと好きなんだろ?」

ぎゅっと啓祐に抱き締められたが私は頬を押さえたまま呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

恐怖で頭が混乱して今から何をされるかわかっているのに抵抗できなかった。

私はぎゅっと固く目を瞑って今ある恐怖をやりすごすことだけに専念した。

「気持ちよくしてやるからな?」

⏰:08/08/02 17:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#397 [果樹]
ちゅっと首筋に啓祐がキスを落とす。

嫌なのに抵抗できない・・・。

助けて・・・逃げたい・・・。
誰かっ・・・!!

心の中で叫んでも誰も来ないのはわかってる。

だけど望んでしまう。
助けて・・・と。

⏰:08/08/02 17:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#398 [果樹]
ダンッ!!

「痛っ」

啓祐に押し倒されて机に仰向けにされた。

押し倒された時に打ったようで肩が痛い。

啓祐の手が制服の上から胸を触る。

キモチワルイ・・・。

「いや・・・いやー!!」

⏰:08/08/02 17:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#399 [果樹]
―ガラガラッ

私が叫んだ直後に教室のドアが開く音がして啓祐の顔がそちらに向く。

私も少し顔を上げて見ると入り口には不機嫌そうな柴浦が立っていた。

「お取り込み中か?」

「見りゃあわかんだろ」

いつもより低い声の柴浦。

⏰:08/08/02 17:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#400 [果樹]
啓祐はだるそうに柴浦を睨みながら言う。

「そりゃあ悪かったな。でも」

言葉の途中で柴浦は早歩きでこちらに向かってきて私の手首を掴むといきなりグイッと引き寄せ、

「笹原は返してもらう」

とだけ言って、そのまま呆然とする啓祐を残し、私の手を引いたまま教室の外へ連れだした。

⏰:08/08/02 17:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#401 [果樹]
読んでくれている方いらっしゃるのでしょうか?
もしよろしかったら感想ください

⏰:08/08/02 17:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#402 [ako]
こんにちわずっと読んでます
更新は大変だと思いますが頑張ってください


柴浦カッコイイです

⏰:08/08/03 15:37 📱:SH903i 🆔:T9PJiczc


#403 [我輩は匿名である]
>>1-250
>>251-500

⏰:08/08/03 17:56 📱:SH905i 🆔:olveaEGw


#404 [果樹]
akoさん、我輩さんへの
お返事は感想板で

⏰:08/08/05 19:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#405 [果樹]
―――――――――・・・・

「お前は無防備すぎだ!」

「はぁ?!柴浦にそんなこと言われる筋合いないし」

「あるね」

「ない」

「ある」

「ない」

⏰:08/08/05 19:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#406 [果樹]
私たちがこんな言い合いをする20分前―――。


教室を出てから私の手を引いたままずんずんと進んでいた柴浦の足が急に止まった。

見上げるとそこは校舎の一番端にある視聴覚室。

「入れ」

ドアを開けた柴浦は私を視聴覚室の中に促す。

⏰:08/08/05 19:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#407 [果樹]
私が入った後、柴浦も入り、後ろ手でドアを閉めた。

私は何で柴浦が教室に来たのかもわからないし、何でここに連れてきたのかもわからなくてとりあえず頭が混乱していた。

じっと柴浦が見つめるので私も何となく柴浦を見ていた。

気まずいはずの沈黙がこの時はなんとなく心地好く感じた。

⏰:08/08/05 19:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#408 [果樹]
「何にもされてないか?」

先に口を開いたのは柴浦だった。

「あ・・うん。大丈夫・・」

私は柴浦から目をそらし自分の体を見渡す。

「そうか」

柴浦がふぅっと息を吐いた気がして少し顔を上げるとどこか安心したような柴浦の顔があった。

⏰:08/08/05 19:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#409 [果樹]
その顔に少しドキッとしてしまったのはきっと間違いではないと思う・・・。

「お前さぁもっと警戒心持てば?」

近くにあった机に軽く腰をかけた柴浦がいきなりそんなことを口にした。

「は?」

「お前は無防備すぎる!」

こんな感じで話は冒頭に戻る訳で・・・。

⏰:08/08/05 19:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#410 [果樹]
「何いきなり・・・」

つい眉間に皺が寄る。

「お前に隙があるからアイツにだって襲われそうになったんだろ?」

この時、私の中で何かのスイッチが入ってしまった。
「はぁ?!柴浦にそんなこと言われる筋合いないし」

「あるね」

⏰:08/08/05 19:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#411 [果樹]
私の言葉に柴浦がすかさず言葉を返して来た。

「ない」

「ある」

「ない!」

あるかないかっていう下らない言い合いが続く。

どちらも意地になっていて止める気配なんてない。

⏰:08/08/05 19:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#412 [果樹]
バチバチバチと火花が散る中、柴浦が溜め息をついた。

「あるよ。好きな女が無防備すぎたら不安になんだろ?」

「な・・・・・・・は?」

那覇?
いやいや違う違う。

今柴浦はなんていった?

好きな女?

⏰:08/08/08 21:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#413 [果樹]
「誰が誰の好きな女?」

思わず思ったことが口から出てしまった。

「お前が俺の好きな女」

「冗談でしょ・・?」

“冗談”だったらよかった。

でも私を見る柴浦の目は真剣で冗談なんて言葉で誤魔化せないことがわかった。

⏰:08/08/08 21:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#414 [果樹]
「何・・で?いつから?どうして・・・?」

頭が混乱する。

「何でつっても人を好きになるのに理由なんかないだろ。ただ泣いてるお前を守りたいって思った。それだけだ」

顔が熱い。
鼓動が高鳴って心臓が破裂しそう。

「かっ・・・帰る!」

⏰:08/08/08 21:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#415 [果樹]
私は柴浦が持ってきてくれた私の鞄を掴んで逃げるように視聴覚室を出た。


―――――――――・・・・


「はぁはぁ・・・」

走って校舎を出てきたせいで息切れが激しい。

私は息を整えながら柴浦が言った事を頭の中で繰り返していた。

⏰:08/08/08 21:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#416 [果樹]
お前が俺の好きな女――

人を好きになるのに理由なんかない――

ただ泣いてるお前を守りたいって思った――


「なんで・・・」

何で柴浦の事ばっかり考えてるのあたし・・・。

「はぁ・・・・」

⏰:08/08/08 21:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#417 [果樹]
何度目かになる溜め息をついた時パッパーと車のクラクションらしき音が聞こえた。

まだ校門を出ていなかった私は、学校の中なのに・・・と不思議に思い後ろを振り向くと車のライトが目に入ってきて眩しさに目を細める。

「乗ってけば?」

いつの間にか私の横に来ていた白い車の窓からは柴浦が顔を出していた。

⏰:08/08/08 21:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#418 [果樹]
「っ!!!」

驚きすぎて声にならなかった。

「何世にも恐ろしいものを見たような顔してんの」

フッと笑う柴浦に不覚にもドキッとしてしまった。

「あ、歩いて帰れるから」

柴浦の顔が見れなくてつい顔が横に向いてしまう。

⏰:08/08/08 21:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#419 [果樹]
そんな私を咎める訳でもなく柴浦は優しく笑っている。

「危ないから乗っていけって」

「そんな柔じゃないし」

「女の一人歩きは危ないぞ?世の中狼だらけだからな」

「じゃあ柴浦も狼だね」

間発いれない会話が飛び交う。

⏰:08/08/08 21:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#420 [果樹]
「茶化すな。ほら乗れって」

柴浦はまるで急かすように助手席を指していう。

「いいよ」

私は柴浦をちらっと見てからまた横を向き直して断る。


「いいから乗れ」

痺を切らしたような少し不機嫌な声・・・。

⏰:08/08/08 21:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#421 [果樹]
「・・・・・・はい」

そう言われてしまえば逆らえるはずもなく私は素直に言うことを聞いて車に乗り込んだ。


―――――――――・・・・


車に乗り込んでから沈黙が続く。

視聴覚室の時とは違うどこか重たい沈黙。

⏰:08/08/08 21:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#422 [果樹]
いや、あたしがそう思っているだけかもしれないけど・・・。

「寒くない?」

いい加減苦しくなってきた頃柴浦が聞いてきた。

冷房が効いている車内で私が寒がっていないか心配してくれているみたいだ。

「大丈夫・・・です」

「何他人行儀に答えてんの?」

⏰:08/08/08 21:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#423 [果樹]
柴浦はハンドルを握ったまま、フッと笑う。

「もしかして緊張してんの?」

その言葉に心臓が跳ねる。

緊張しないわけがない。
さっきの今で心の整理がつくはずもなく私の心臓の音は車に乗ってからずっと煩いくらいに耳に響いている。

⏰:08/08/08 21:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#424 [果樹]
気まずくなって私は下を向くことしかできなかった。
「可愛い奴」

クスッと柴浦が笑ったのが横から聞こえてきて顔が赤くなる。


―キキッ

柴浦がブレーキを踏んで車が停止する。

車はいつの間にか私の家の前に着いていた。

⏰:08/08/08 22:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#425 [果樹]
「着きましたよお嬢様」

「ありがとうございました・・・」

カチャとドアを開けたと同時に腕を掴まれてまた車内に引き込まれた。

「俺は本気だからな」

じっと目を見つめられて言われればまた心臓がドクンと跳ねる。

それだけ言うと柴浦は私の手を放す。

⏰:08/08/08 22:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#426 [我輩は匿名である]
失礼します 

>>1-200 
>>201-400
>>401-600 
>>601-800 

⏰:08/08/10 00:13 📱:N905i 🆔:BbNK714E


#427 [果樹]
止まっていた私の思考が、手を放されたと同時に動き出したので、私は自分の鞄を持ち、車を降りた。


ドアを閉める瞬間、柴浦が
「また明日」

と言ったのが聞こえたが、それに答える余裕なんてなかったのでバタンとドアを閉め、急いで家の中に入った。

⏰:08/08/17 23:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#428 [果樹]
外で柴浦の車が走り去る音を聞いてから私は玄関のドアに持たれるようにして崩れ落ちた。

どうしよう・・・。

止まない心臓を抑えて私は天井を見上げた。


―――――――――・・・・


「柴浦に告白されたーー?!」

「ばかっ声大きい!!」

⏰:08/08/17 23:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#429 [果樹]
百合の声より遥かに私の声が大きかった気がするのはとりあえず無視しておこう・・・。


今、私は百合と屋上に繋がる階段の踊り場で座りながら話をしている。

内容はもちろん昨日あったこと。

淡々と話す私に対し、百合は百面相を繰り返す。

本当に忙しい奴。

⏰:08/08/17 23:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#430 [果樹]
私は横目でそんな百合を見ながら冷静に思った。

「それで?!真理奈は何て答えたの??」

百合の目がキラキラしているのは私の気のせいだろうか。

「答えないで逃げてきた」

「・・・・・・・は?」

私の言葉に百合があんぐりと口を開ける。

⏰:08/08/17 23:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#431 [果樹]
きっと私の答えが余りにも百合の妄想の世界と欠け離れていたのだろう。

とりあえず百合に突っ込みは入れず、その後家まで送ってもらった経緯を話すと、百合の口許が今度はにんまりと笑みを浮かべる。

「何・・・?」

気味が悪くて、恐る恐る聞くとにまにまと笑いながら百合がとんでもないことを口にした。

⏰:08/08/17 23:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#432 [果樹]
「真理奈さぁ、柴ちゃんに惹かれてるでしょ?」

「・・・・・・は?」

「いやー柴ちゃんを呼んだのは正解だったかも」

ふふっと怪しく笑う辺りが恐ろしい。

「自分で気付いてないだけかもしれないからよく考えてみたら?」

そういって百合は私の肩をポンポンと叩いて教室の方に歩いて行ってしまった。

⏰:08/08/17 23:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#433 [果樹]
一人になった私は屋上に出た。

頬をかすめる風に気持ちよさを感じて私はフェンスの側まで行き、校庭を眺める。

校庭では休み時間だというのに小学生のようにはしゃぐ男子生徒が数人いた。

それを見ながら私は、さっき百合が言った言葉を繰り返し考えていた。

惹かれてる・・・?
私が・・・柴浦に・・・?

⏰:08/08/17 23:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#434 [果樹]
“自分では気付いてないだけかもよ”

わからない。
どうやって確かめたらいい・・・?

こんな感情は初めてだ。

今まで付き合ってきた男たちとは違う。

胸がぎゅって締め付けられたり、側にいたいのにいたくない。

自分がどうしたいのかわからない。

⏰:08/08/17 23:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#435 [果樹]
―カチャ・・・キィ

思いに耽っていたら不意に屋上のドアが開いた。

「真理奈ーギャハハ」

啓祐・・・。

近付いてくる啓祐と距離を取るように私はフェンスに体を押し付けた。

「お前さぁあれはまずくね?」

⏰:08/08/27 23:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#436 [果樹]
隣まで来た啓祐がいきなりそんなことを口にした。

私が啓祐の言葉の意図が分からなくて首を傾げると啓祐はにやっと嫌な笑いを浮かべる。

「“笹原は返してもらう”だっけか?教師と生徒の関係には見えないよなー」

横目でちらりと私を見ながら言う啓祐の目は明らかに面白がっている。

⏰:08/08/27 23:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#437 [果樹]
「何が言いたいの?」

私は墓穴を掘らないように啓祐の言葉の続きを促す。

「お前が俺のものになれば許してやるよ」

「え・・・?」

「いいんだぜ?学校側にチクっても。学校側に言ったら柴浦はどうなるんだろうな?謹慎・・・は当たり前か。ギャハハ」

⏰:08/08/27 23:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#438 [果樹]
「・・・・・・っ!」

悔しい!
足元を見られているんだ。

私は唇から血が出そうなくらい下唇をぎゅっと噛んだ。

負けちゃいけない・・・。
負けちゃ・・・。

「い・・・やだ」

⏰:08/08/27 23:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#439 [果樹]
「あ?」

啓祐の眉間に皺が寄る。

「いやだ・・・」

「お前自分が何言ってるかわかってんのか?」

「わかってる・・・。言いたかったらいえばいいよ。」
私は震える手をぎゅっと握り締めて自分を震いたたせる。

「生意気な奴」

⏰:08/08/27 23:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#440 [果樹]
低くドスの効いた声で啓祐が言った後、私の耳元でパチンと破裂音がして頬に痛みが走る。

数秒後、叩かれたという事に気付いた。

「もぉいいわ。お前いらねぇ」

それだけ言って啓祐は屋上から出ていった。

痛い・・・。

⏰:08/08/28 00:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#441 [果樹]
私はふらつく足で屋上を降り保健室に向かった。

―――――――――・・・・

「ちゃんと冷やしておきなさいよー」

保健の先生が出ていった後、私は座っていた長椅子に寝転び目を閉じた。

頬には腫れを抑えるための濡れタオル。

⏰:08/08/30 18:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#442 [果樹]
―ガラガラガラ・・

誰かが保健室のドアを開けた音がしたが、きっと生徒だろうと気にも留めずに寝転んだままいると

「起ーきーろ!」

という声と共にパチンと額を弾かれた。

「〜〜〜っなんなんですか?!」

⏰:08/08/30 18:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#443 [果樹]
ガバリと起き上がり額を弾いた張本人の柴浦を見ると何処か不機嫌そうな顔をしていた。

「柴浦・・・?」

私が呼び掛けるとスッと柴浦の手が延びてきて私のまだ腫れている頬に触れる。

「あんまり無茶するな・・・」

呟くように言ったその顔は悲し気で何故か胸が痛くなった。

⏰:08/08/30 18:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#444 [果樹]
胸が痛い・・・なんで?

「まだ痛むか?」

「大丈夫・・・。私強いし」

そう言うと今度は腫れていない方の頬をむにっとつねられた。

「馬鹿野郎」

「なっ・・!」

「強がってないでいい加減素直になれ」

⏰:08/08/30 18:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#445 [果樹]
柴浦の言葉が胸に大きくのしかかる。

“強がり”

それは自分が一番よく分かっていることだ。

弱音を吐かない。
吐きたくない。

昔からそれが弱い自分を見せないための唯一の方法だった。

「別に強がってなんか・・・っ!」

⏰:08/08/30 18:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#446 [果樹]
「意地っ張り」

言葉とは裏腹に柴浦が私の頭を撫でる。

「全部受け止めてやるから。弱いお前も泣き虫なお前も。だからいい加減素直になれ」

そんなこと今まで誰も言ってはくれなかった。

いつだって“真理奈は強いな”“真理奈のそういう強いところが好きだ”って言われて来たから・・・。

⏰:08/08/31 00:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#447 [果樹]
本当に素直になってもいいの・・?

泣いてもいい・・・?

優しく頭を撫でる手に促されるように私は静かに涙を流した。

―――――――――・・・・

「柴浦と付き合うことになったーーーぁ?!」

「だから声が大きいってば!」

⏰:08/08/31 00:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#448 [果樹]
屋上へと続く階段の踊り場に百合の声と私の声が響く。

でも百合が驚くのも無理はない。

昨日の今日でいきなり“私たち付き合います”なんて報告をされたら誰だって驚くはずだ。

だって柴浦と付き合う決心をしたのは、昨日私が泣いたあの保健室でなのだから・・・。

⏰:08/08/31 00:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#449 [果樹]
―――――――――・・・・

「落ち着いたか?」

「ん・・・」

柴浦は私が泣き止むまでずっと頭を撫でてくれていた。

「ほら」と言って渡されたのは濡れタオル。

泣いて目が腫れた私のために柴浦が用意してくれたのだ。

⏰:08/09/08 02:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#450 [果樹]
「ありがと・・・」

それを受け取り、私は泣いて熱った目元に濡れタオルを当てがう。

♪〜・・・♪〜・・・

そんな時室内に携帯の着信が鳴り響いた。
鳴ったのは柴浦の携帯。

ゴソッとポケットを探り携帯を取り出して着信画面を見る柴浦の顔が少し歪む。

⏰:08/09/08 02:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#451 [果樹]
「出ないの?」

いつまでも鳴り響く着信音。
なかなか出ようとしない柴浦。

「ああ・・・悪い」

私が聞くとまるで覚醒したかのようにハッとして、バツが悪そうに柴浦は私に背中を向けて電話に出る。

「・・・もしもし?」

⏰:08/09/08 02:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#452 [果樹]
私はタオルを少しずらして電話中の柴浦の背中を見る。

「わかってるよ。用件は何だ?」

あ・・・ちょっと不機嫌。

『・・・・・でよ。あの時・・・・謝る・・・・・』

女の人・・・?

「今更だな。別れたいって言ったのはそっちだろ?」

⏰:08/09/08 16:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#453 [果樹]
『・・・もう一回・・・・まだ・・きなの・・・忘れ・・・・』

「無理だ。俺はもう忘れた。用件がそれだけなら切るぞ」

『・・・待って・・・要!』

プツッ・・ツーツー

女の人の叫び声は携帯の無機質な音によって遮られた。

「大丈夫なの・・・?」

「ん?あぁ、悪かったな」

⏰:08/09/08 16:38 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#454 [果樹]
私の声に気付き柴浦がこちらを向く。
その手に携帯はもう握られてなかった。

「昔の・・・彼女さん?」

「え?」

「話声が聞こえたから・・・」

気まずそうな顔をする柴浦。

言ってはいけないと思いつつも、私の口が止まることはなく何故か次から次へと言葉が出てくる。

⏰:08/09/08 16:38 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#455 [果樹]
「よかったじゃん。ヨリ戻したいって話なんでしょ?戻してあげなよ。元カノさん必死だったし。柴浦もいい年なんだからいい加減身を固めたり・・・」

バンッ!

私の止まることのなかった口は柴浦が私の横の壁をおもいっきり叩いた音によってようやく止まる。

「俺はお前が好きなんだよ。俺の気持ちが迷惑だったらそう言え。こんな遠回しにいってんじゃねぇ・・・」

⏰:08/09/08 16:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#456 [果樹]
最後の方は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声が私の耳に届いた。

「ちゃんと冷やせよ」

それだけ言うと柴浦は私の頭をぽんぽんと軽く叩いて保健室を出ていった。

「・・・・・・・」

残された私は暫く放心状態のまま固まっていたがハッとして私はすぐ柴浦の後を追い掛けたがもう姿はなかった。

⏰:08/09/08 16:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#457 [果樹]
傷付けた。

その言葉だけが私の頭の中に響いた。

最後に見せたあの切なそうな今にも泣きそうな顔が頭から離れない。

好きだって言ってくれたのにそれを信じられなかった。

自分の中でブレーキかけて柴浦に惹かれている自分を無視し続けた。

⏰:08/09/08 16:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#458 [果樹]
恋シテハイケナイ相手。

自分の中でそう決めつけて自分の心と向き合おうともしなかった。

本当ハイツノ間ニカ好キニナッテイタ癖ニ。

臆病な私がそこにいた。

もう傷付きたくない。
これ以上苦しい思いはしたくない。

そんな風に思っていたから柴浦をあんな形で傷付けてしまった。

⏰:08/09/08 16:41 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#459 [果樹]
私は再び保健室に入り放課後がくるのを待った。

―――――――――・・・・・

キーンコーンカーンコーン

『校舎内に残っている生徒は速やかに下校して下さい』


「・・・・寝過ぎた」

起きたら空は茜色に染まっていてもう薄暗くなる手前だった。

⏰:08/09/08 16:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#460 [果樹]
私はベッドから降りて鞄を取りに教室に向かう。

渡り廊下を歩けば、校庭から部活動をする生徒の活気ある声と下校し始めた生徒が校門をくぐっていくのが見えた。

私はそれを横目で見ながら教室へと歩みを進めた。


―――――――――・・・・・

「やっと起きたか」

⏰:08/09/08 16:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#461 [果樹]
声がして振り向けば、教室のドアにもたれかかるようにして柴浦が立っていた。

「さっき起きたの」

私は柴浦と話ながら鞄に荷物を詰める。

「気を付けて帰れよ」

その言葉に振り向けば、柴浦はもうそこにはいなかった。

⏰:08/09/08 16:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#462 [果樹]
伝えなきゃ・・・っ!

私は鞄を机に投げ捨てて、走った。

柴浦の足跡を辿るように階段を降りて廊下を走って、やっと柴浦の背中が見えたのは昇降口の前。

「柴浦!!」

私の大声に肩を震わせて柴浦が振り返る。

「ビックリさせんなよ。ったく・・・」

⏰:08/09/08 16:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#463 [果樹]
頭をガシガシとかきながら苦笑いをする柴浦。

私はゆっくりと柴浦に近付く。

「さっきは・・・ごめんなさい」

少し震える声。
柴浦の顔が見れなくて、うつ向いていると頭に少し重みを感じる。

そろりと顔を上げると柴浦が笑って私の頭を撫でていた。

⏰:08/09/08 16:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#464 [果樹]
「しょーがねぇから許してやるよ」

はにかんだような照れたような柴浦のその笑いに、私はなんだか無償に泣きたくなった。

「柴・・・浦・・・」

「ん?」

小さな声で呼んだにも関わらず柴浦は気付いてくれて、小首を傾げる。

⏰:08/09/08 16:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#465 [果樹]
.


「あたし・・・柴浦のことが・・・す・・・き・・・みたい」


.

⏰:08/09/08 16:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#466 [果樹]
うつ向いた顔から火が出そうなほど自分の顔が熱いのがわかる。

「・・・みたいって何だよ」

ハハッと笑った声がして顔を上げれば眩しいくらいに柴浦が笑っていた。

「〜〜っ!」

⏰:08/09/08 16:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#467 [果樹]
いつも直球な言葉。
行動はいい加減且つ、子供。

それなのに生徒思いで優しい。


私が好きになった柴浦要はそういう人。

⏰:08/09/08 16:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#468 [果樹]
「あ!遊園地のチケット貰ったんだけど行くか?」

私たちが付き合って1週間後、柴浦からのいきなりのデートの誘い。

誘ってもらったのは嬉しい。

でも私の返事は・・・。

「行かない」

無表情で言う私に柴浦はクスクスと笑いながら、

「素直じゃねぇなぁ」

と私の頭をぽんぽんと叩いた。

私が素直になるのはもうちょっと先の事になりそうだ。

⏰:08/09/08 16:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#469 [果樹]
.


【恋患い】

―END―


.

⏰:08/09/08 16:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#470 [果樹]
storyアンカー

>>4-85
桜咲クミライ恋ユメ

>>86-199
レンズ越しの恋

>>200-326
自由に憧れた鳥

>>327-469
恋患い

⏰:08/09/08 17:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#471 [果樹]
.

「好きです!俺と付き合ってください!!」

「・・・ごめんなさい」


story 5

【成功率0パーセント】

.

⏰:08/09/08 19:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#472 [果樹]
「あ、小鶴さんだ」

仲間の一人が廊下を見ながら言うと全員が同じ方を向いたので、俺も例に習って向いた。

すると廊下では背の小さい女生徒とあれは確か・・・Ε組の大杉だ!

その大杉と背の小さい女生徒は何やら固い顔で話をしていた。

なんか大杉はすげーテンパってる感じに見える。

⏰:08/09/08 19:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#473 [果樹]
「いつ見ても可愛いよなー。あれって告られてんだよなー絶対!」

「まぁ小鶴さんだし」

「小鶴さん・・?」

さっきから聞こえるその小鶴さんとやらのことが分からず、俺は頭にはてなを浮かべる。

すると全員がばっと俺の方を向いて、まるで幽霊でもみたような顔をしている。

⏰:08/09/08 19:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#474 [果樹]
「倉、お前まさか小鶴さんを知らない・・・とか?」

「うん」

素直に頷く俺に何故かみんなは脱力。

「お前・・・。まぁ倉だしな。それでいいと思う。うん」

仲間の一人、哲が俺の肩をぽんぽんと叩くので俺は何だか除け者にされた気分だ。

⏰:08/09/10 03:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#475 [果樹]
「なんだよそれー!」


それからしつこく聞いたところ、哲は最初は面倒臭そうにしていたが、途中から興奮しだして、最後には吠えるように説明してくれた。

まぁ哲の話を要約するとつまりこうだ。

大杉と話していたあの小さい女生徒は、小鶴めぐみといって入学当初から美少女と騒がれて有名だったらしい。

⏰:08/09/10 03:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#476 [果樹]
3年から1年までの何人もの男が告白をしたが、全員玉砕。

彼女の断り文句は決まって
「ごめんなさい。」

の一言。

一見冷たそうに見える彼女だが、笑うと実は可愛いとか、誰にもこびないところが逆に好かれて、人気はさらに鰻のぼりらしい。

⏰:08/09/10 03:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#477 [果樹]
美少女か・・・
俺には無縁の話かな。

――――――――・・・・

「つる子ー!!」

名前を呼ばれて振り向くと、走りながらこっちに向かってくる人影がいた。

あ、ちなみにつる子は私の愛称。

「麻衣」

⏰:08/09/11 06:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#478 [果樹]
走ってきたのは友達の麻衣。

「まぁた告られてたでしょー」

にやにやと笑いながら麻衣は脇腹をこずく。

「覗き魔」

ぼそりと呟くと麻衣は「酷い!」と言ってよろめき三文芝居を始めた。

⏰:08/09/11 06:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#479 [果樹]
「覗きなんて・・・!あたしは純粋につる子が心配で」

「はいはい」

いい加減このやりとりにも飽きた私は、麻衣を適当にあしらう。

「それで?それで?なんて返事したの?」

さっきの三文芝居はもうやめたらしく、麻衣はまたにやにやと笑いながら私の顔を覗きこんできた。

⏰:08/09/11 06:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#480 [果樹]
「別に?いつも通りだよ。」

「また?もうちょっとは告白してくる人の身になって返事してあげたら?」

またいつものお説教か。

麻衣は私がいつも通りの“ごめんなさい”という言葉で、告白してきた相手を振ると必ずお説教をしてくる。

「わかったって。ほら行こう!授業始まっちゃう」

⏰:08/09/11 06:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#481 [果樹]
始まると長いので、私は麻衣のお説教が始まる前に麻衣を急かし、教室へと急いだ。

――――――――・・・・・

昼休み

飯を食う為に、弁当を持ちみんなのところへ、ルンルン気分で行こうとした時、放送が流れた。

ピンポンパンポーン

『1年С組、倉橋空。至急職員室まで来なさい』

⏰:08/09/11 06:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#482 [果樹]
・・・・は?俺?

「なんだ倉〜?なんかやらかしたのかぁ?」

哲がからかってきた。

「し、してねぇ!」

と思うがわかんねぇ・・・。
「とりあえず俺行ってくるわ!」

⏰:08/09/12 01:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#483 [果樹]
弁当を机の上に置き、俺は職員室へ急いだ。

・・・・・・・・・・・・・・・

「失礼しましったー」

ガラガラガラ・・・パタン

はー何だよ。
焦って損したぁ。

俺が職員室へ呼ばれた理由。

それは、母ちゃんからの土産の礼だった。

⏰:08/09/12 01:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#484 [果樹]
俺の母ちゃんと父ちゃんは、世界中飛び回ってる翻訳家とカメラマンで、結構名前は知れてんだ。

けど何故か、行った先の外国の土産を学校に送りつけてくるっていうちょっと変わった人たち。

いつもは学校側から礼の電話をしてるらしいんだけど、前に母ちゃんが

「たまには空の声も聞きたい!」

⏰:08/09/12 01:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#485 [果樹]
とか愚痴ったお陰で、担任に

「今日はお前から電話してやれ!」

とか頼まれた。

はー母ちゃんと話すと長くなるから極力電話は避けてたのに最悪だ。

案の定休み時間を20分も削られた。

元気そうで何よりだったけど、貴重な休み時間を削られたのは痛い。

⏰:08/09/12 01:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#486 [果樹]
昼飯をゆっくり食う時間がなくなったことに、俺は肩を落とし、一人とぼとぼと廊下を歩いていると、向こうから本を読みながら歩いてくる子が視界に入った。

あのままじゃ壁に激突するんじゃないかなーと思った矢先、彼女は壁に一直線に進む。

「うわっ前!前ー!」

――――――――・・・・

「うわっ前!前ー!」

⏰:08/09/12 01:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#487 [果樹]
え・・・・?
ゴンッ

「―――っっ!」

頭部に鈍い痛みが走り目の前には星が飛ぶ。

ああ・・・またやってしまった。

「あ、あの・・・大丈夫?」
横からスッと手が延びてきて見上げると、オレンジ色に近い髪の色の可愛い男の子が心配そうな顔で手を差し出してくれていた。

⏰:08/09/14 22:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#488 [果樹]
「はい。なんとか・・・。すみません。いつものことなんで大丈夫です。」

あたしはその手を借りて立ち上がると、スカート裾をパッパッと手で払った。

「あの・・・本読みながら歩いたら危ないよ?」

「そうですね。気を付けます」

心配そうに見てくるオレンジ頭の男の子に無表情で返す。

「あ!」

いきなり大声を出したオレンジ頭の男の子にちょっとびっくりしてしまう。

「これあげる!」

「え・・・?」

「ほら手ぇ出して!」

「え?あ、はい」

とっさに出した右の手の平に、ちょんと可愛らしい赤い包みが乗せられた。

⏰:08/09/14 22:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#489 [果樹]
「うーんとどっか外国のお菓子だから美味しいと思うよ。じゃあね」

それだけ言ってオレンジ頭の男の子は走って行ってしまった。

残された私は、ぼんやりとその後ろ姿を見続けた。

――――――――――・・・・
「倉ー遅かったなぁ」

⏰:08/09/14 22:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#490 [果樹]
教室に入るなり哲が声をかけてきた。

「あー・・・母ちゃんの話が長くてさ」

苦笑い気味に言うと哲も苦笑いで「あーね」と返してきた。

哲は家が近いせいか何度か俺ん家に来ていて、母ちゃんのことも何度か見ている。

そのため母ちゃんが俺を溺愛してんのも知ってんだ。

⏰:08/09/20 09:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#491 [果樹]
「相変わらずなのな。お前の母ちゃん」

「ハハッまーな」

哲と話しながら俺は弁当を口の中にかきこんだ。

「あ、ほーだ!ふぁっきはぁひゃんからのみひゃげもはった」

「何言ってっかわかんねーから食ってから話せよ」

哲が呆れながら言うので俺は急いで口の中の物を飲み込む。

⏰:08/09/20 09:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#492 [果樹]
「だからぁさっき母ちゃんからの土産もらってきたつってんの!」

「おっマジで?!」

食い物の話に釣られて哲が前のめりで聞いてきた。

「ほら」

「やりぃ!サンキュー倉!ほれみんな食い物だぞー」

哲はニカッと笑ってから、俺が渡した土産を配りにみんなのとこへ行った。

⏰:08/09/26 03:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#493 [果樹]
あれ、そういえばさっきの子どっかで・・・。

えーっと・・・。

俺はふと、さっき土産をあげた子のことを思い出したが、結局誰かわからなかったので、諦めて弁当の残りをかきこんだ。

――――――――――・・・・

「あ、いたいた。おーいつる子ー」

⏰:08/09/26 03:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#494 [果樹]
後ろから麻衣の声が聞こえたと思い振り向けば、案の定麻衣がこちらへと走ってきていた。

「帰ってくるのが遅いと思って探しに来てみれば。やっぱりこんなところにいた」

ぷくーっと頬に膨らませて麻衣は、冗談めかしく怒る。

「あれ?何それ?」

麻衣が私の掌を指差しながら首を傾げる。

⏰:08/09/26 03:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#495 [果樹]
私の手にはさっきオレンジ頭の男の子からもらった赤い包み。

「どっかの国のお菓子だって」

「は?」

更に首を傾げる麻衣を横目に、私は赤い包み紙を開けて中のお菓子をポイッと口の中に放り込む。

口の中にはほのかな甘さが広がり、クッキーの様な歯応えがあってとてもおいしい。

⏰:08/09/26 03:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#496 [果樹]
「あ゙!ずるい!」

「あーはいはい。ごめんね」

私はすねる麻衣の口に残りのお菓子を放り込む。

「あ!おいしい」

頬に手を当てて、嬉しそうな顔をする麻衣に笑いかけ私は教室に足を進める。

「ねっねっ!あのお菓子誰に貰ったの?」

⏰:08/09/26 03:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#497 [果樹]
廊下を歩きながら麻衣が興味津々といった顔で、聞いてきた。

「えーっと・・・」

私はあの菓子をくれた男の子のことを思い出す。

「アレンジ頭」

「は?」

私の返答に、麻衣の頭にはてながいくつも浮かんだ。

⏰:08/10/05 00:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#498 [果樹]
あ。
お礼言い忘れちゃった・・・。

――――――――――・・・・

「くそーたなっちめぇ。長々と世間話なんかしやがって。おかげでもう真っ暗じゃんかー!」

担任に話があると呼ばれた俺は、結局担任の世間話につき合わされた挙句、下校時間もとっくに過ぎてしまった。

⏰:08/10/05 00:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#499 [果樹]
「あ。くっそーっ負けたぁ!あ・・・?うわーーっ!」

ズダダダダダダダァン!

「いってーーぇ・・・」

凄い音と共に俺は階段から盛大に落っこちてしまった。

はぁ・・・人がいなくてよかった。

こんなださい姿見られたら俺は国外に逃亡するしかない。

⏰:08/10/05 00:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#500 [果樹]
「あれ?」

「あ?あれ?君は・・・」

上から声が聞こえたと思い見れば、階段の踊場に少女が立っていた。

「大丈夫ですか?」

タンタンと軽やかに少女は階段を下りてくる。

「はい。落し物」

俺の側まで来た少女の手には、ゲーム機。

⏰:08/10/05 00:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#501 [果樹]
それもそのはず、俺はこのゲーム機に熱くなりすぎて階段から転げ落ちてしまったのだから。

「ごめんね。ありがと」

俺は苦笑いで少女からゲーム機を受け取る。

「ゲームしながら歩いていたら危ないですよ?」

受け取る瞬間にクスッと笑われて昼休みにあったことを思い出す。

⏰:08/10/05 00:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#502 [果樹]
「ははは・・・だね。気をつける」

乾いた笑いを浮かべる俺に、少女はなんだか面白そうに笑っている。

「昼休みのときにあった子だよね?」

俺の問いに少女は、コクリと首を縦に振る。

「小鶴めぐみ」

「え?」

⏰:08/10/05 00:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#503 [果樹]
「名前。小鶴めぐみ。お菓子ありがとう。美味しかったです」

にこりと笑いながらお礼を言われた俺は、心臓がドキドキした。

何だ・・・?この感覚は?

「あなたは?」

「え?あっ!俺は倉橋空。倉でいいよ」

一瞬キョトンとしたが、小鶴さんはすぐににこりと笑う。

⏰:08/10/05 00:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#504 [果樹]
「それじゃあ私はこれで・・・。ばいばい倉くん」

そういって小鶴さんは手を軽く振って廊下を歩いていってしまった。

俺はしばらく、小鶴さんが歩いていったほうをぼけーっと見ていた。

あ!思い出した。
小鶴さんて哲が騒いでいたあの小鶴さんだ。

哲にこのこと話したらまたうるっせーんだろうなぁ・・・。

⏰:08/10/05 00:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#505 [果樹]
はぁと軽いため息をついて俺は昇降口へと向かった。

――――――――――・・・・

「つーる子ー!!」

ドンッ!

「んぎゃ!」

ドサッ

私は突然背中に感じた重さに耐えられず、そのまま地面に倒れる。

⏰:08/10/05 12:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#506 [果樹]
「麻ぁぁーー衣ぃぃーー・・・」

「あ・・あはははははー・・・」

上体を起こし私は後ろにいる麻衣を睨みつける。
麻衣は乾いた笑いを浮かべ顔を引きつらせている。

「まったくもー」

私は立ち上がり、スカートについたほこりを手で振り払う。

⏰:08/10/05 12:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#507 [果樹]
そのついでに頬を少し膨らませながら麻衣を再度睨みつける。

「ごめんってばー」

麻衣は両手を顔の前に合わせ必死に謝ってくる。

「別にいいけどさー。何いきなり?」

「え?なんでもないよ?」

「は?」

⏰:08/10/05 12:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#508 [果樹]
麻衣の返答に思わず素っ頓狂な声を出してしまう。

「つる子の姿が見えたから飛びついただけー」

麻衣はまるで悪びれも無く笑顔で答える。

「ああ、そう・・・」

私は思わず肩の力が抜ける。

「つる子ー早く教室行こーよー」

「はいはい」

⏰:08/10/05 12:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#509 [果樹]
いつの間にか私の前の方に来ていた麻衣は、おいでおいでをするように私を呼ぶ。
私は仕方なく麻衣の後に続く。


「小鶴さんおはよー」

「え?あ、おはようございます」

突然呼ばれた名前に振り向けば、男の子がこちらに向かって手を振っていた。
反射的に私も挨拶をしてしまう。

⏰:08/10/05 12:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#510 [果樹]
「誰?あれ」

私の肩に顎を乗せながら麻衣が聞いてくる。

「知らない人」

「またぁ?つる子って本当よく知らない人に声かけられるよねー」

「ね。」

そうなのだ。
私は入学当初から知らない先輩や同級生によく声をかけられる。

⏰:08/10/10 13:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#511 [果樹]
最初はとても面倒くさいかったのだが次第にそれにも慣れてきた。

「倉ーはよー」

「はよー」

「おっ倉ー今日は早ぇじゃん」

「うるせー」

あ・・・。

⏰:08/10/10 13:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#512 [果樹]
賑やかな声が聞こえると思いそちらを向けば、昨日のオレンジ頭の倉橋空がたくさんの友達に囲まれていた。

「つる子倉橋くんと知り合いなの?」

「え?」

麻衣の言葉に驚いて私は麻衣を見る。

「倉橋くんって男子からも女子からもすんごい人気あんのよねー。まぁあの顔なら納得はいくけど」

⏰:08/10/10 13:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#513 [果樹]
うんうんと頷きながら言う麻衣の言葉を聞きながら私はまた倉橋くんに目を戻す。

「あ、小鶴さんおはよー」

「お・・・はよう」

突然の倉橋くんからの挨拶に私は一瞬硬直して言葉が上手く出てこなかった。

にひっと笑う倉橋くんになんだか心臓が高鳴る。

⏰:08/10/10 13:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#514 [果樹]
「え?え?」

麻衣は倉橋くんと私を交互に見て、戸惑いを隠せない様子だった。

そして何故か倉橋くんの周りにいる友達も口を開けて、呆然としていた。

そんな周りの状況を知らないのか倉橋くんは、笑顔で手を振っている。

人懐っこいんだなぁ。

⏰:08/10/10 13:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#515 [果樹]
そんな中、私は一人倉橋くんを見ながらぼんやりとそんなことを思った。

――――――――――・・・・

「くぅう〜らぁぁあ〜」

ドカッ

「でっ!」

ベシャッ

⏰:08/10/10 13:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#516 [果樹]
後ろからの恨めしそうな声と共に、いろんな音。
そして突然背中に感じた重さに、俺は頭から机に突っ込んだ。

「抜け駆けしやがってお前はぁ!いつのまに小鶴さんと仲良くなったんだよ!あんだけ興味なさそうにしてたくせにこのやろう!」

「ぐえっギブギブ〜・・・」

⏰:08/10/10 13:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#517 [果樹]
後ろから哲に首を絞められた俺は、蛙が踏み潰されたような声でうめきながら首に巻き付いている哲の腕を叩く。

「まいったか!」

そう言われてコクコクと何度も頷くと哲はやっと、首に巻き付いていた腕を解いてくれた。

俺は解放された瞬間に、足りなかった酸素をめいっぱい吸い込んだ。

「んで?実際どーなわけ?」

⏰:08/10/10 13:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#518 [果樹]
「何が?」

突然の哲の問掛けに俺の頭にはいくつものハテナが飛ぶ。

「だから小鶴さんとだよ!どうやって親しくなったんだ?怒らねぇから言ってみ?ん?」

そう言う哲のこめかみには青筋と怒りが浮かび上がっていた。

⏰:08/10/14 10:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#519 [果樹]
うそだ。

そう思いながらも話さないと更に怖いので俺はぽつりぽつりと話し始めた。

・・・・。

「・・・ってな感じで俺は全然小鶴さんだって気付かなかったの」

話し終えると哲は、はぁぁーと深い溜め息をついた。

「倉・・・お前ってやつはなんてばかなんだ」

⏰:08/10/14 10:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#520 [果樹]
「なっ・・・いきなりなんだよ!」

哲のばか発言はちょっと許せねぇ。

「俺がお前の立場だったら絶対小鶴さんの電話番号ゲットしてるぞ」

「はぁ?!」

なんだそんなことかよ。
あほくさ・・・。

俺はばかなことをいっている哲に軽く呆れる。

⏰:08/10/14 10:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#521 [果樹]
「なぁなぁ!今度小鶴さん紹介してくれよ!な?」

嬉しそうに言う哲に、俺は一言「無理!」ときっぱり言う。

「なんだよ倉のケチ〜」

哲がぶーぶーと口を尖らせて文句を言ってくる。

「俺だってそんなに親しいわけじゃねーの。だから無理」

それだけ言って俺は、机に突っ伏した。

⏰:08/10/14 10:41 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#522 [果樹]
横では哲がまだ何か言っていたが、俺はそれを遮断するように眠りについた。

――――・・

「どーゆうことなの?!隠し事はなしでしょ?!つる子ー!」

はぁうるさい・・・。

私は後ろからキャンキャン聞こえる声に心の中で深い溜め息をつく。

⏰:08/10/14 10:41 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#523 [果樹]
倉橋くんと別れてから麻衣はずっとこの調子で、
「何?どうゆうこと?!」
「教えて!」
と倉橋くんとのことを聞いてくる。

正直面倒臭いから嫌なのだ。

「つる子ってばー!」

「わかったわかった。後で話すから・・・」

嘘だけど。

⏰:08/10/16 10:24 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#524 [果樹]
「とか言ってつる子の後ではいつもないじゃない」

見抜かれてる・・・。

麻衣とは長い付き合いなので誤魔化しは通用しない。

私は観念して長い溜め息を吐く。

「倉橋くんとは・・・あのお菓子を貰った日に知り合ったの」

「えぇ?!あのお菓子くれたのって倉橋くんだったの?」

⏰:08/10/16 10:25 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#525 [果樹]
麻衣が身を乗り出すようにして聞いてくる。

私はこくりと小さく頷く。

「でもちゃんと話したのは昨日の放課後だよ」

「そうだったんだぁ・・・。なんか以外」

「何が?」

麻衣の発言に私の頭の上には無数のハテナマークが飛ぶ。

⏰:08/10/16 10:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#526 [果樹]
「つる子のタイプってあーゆーのなんだぁって思って。まぁ倉橋くんとつる子なら釣り合うからいーけどさぁ」

「・・・は?!」

麻衣の突拍子もない発言に私は、目玉が飛び出すくらい目を開いた。

「え?違うの?」

「違うも何もあたし倉橋くんのことよく知らないし。だいたい会った次の日に好きとかありえないでしょ」

⏰:08/10/16 10:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#527 [果樹]
私は呆れながらも麻衣を見ると麻衣はどこか納得していないようで
「そーかなー?」
なんて言っている。

・・・ありえないよ。

――――・・

「あーもう駄目だ。俺限界・・・」

ヘロヘロになった哲がドサッと地面に腰を下ろす。

「だらしねぇーなぁ。たかがマラソン程度で」

⏰:08/10/16 10:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#528 [果樹]
俺は哲の前に立ち、呆れながら哲を見下ろす。

「うるせー。サッカー馬鹿と比べんな!」

「馬鹿わ余計だ」

ドベシッと哲の頭を叩く。

今は、体育の授業中。
ちなみに学校の外周をマラソンしてきた直後だ。

サッカー部の俺と違い帰宅部の哲にはきつかったらしくとうとう哲は地面に寝転んでしまった。

⏰:08/10/16 10:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#529 [果樹]
「しょーがねぇーなぁ。飲み物買ってきてやるからちょっと待ってろ」

俺は自販機を探して校舎に向かった。


ピッ・・ガコン

校舎内の自販機からスポーツ飲料を取りだし、一口飲み込む。

「ぷはっ」

渇ききっていた喉が潤う。

⏰:08/10/16 10:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#530 [果樹]
「クスクス・・汗すごいよ?」

笑い声と共に聞こえた声を辿ると階段の方に小鶴さんが立っていた。

「マラソンしてきたから。小鶴さんこそ授業中じゃないの?」

俺は笑いながら答えて、首を傾げる。

「サボリ中」

⏰:08/10/16 10:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#531 [果樹]
ふふっと笑いながら俺の隣まで来た小鶴さんは、自販機のボタンを押して中から紅茶を取り出した。

「それなに?」

俺はふと小鶴さんが持っている冊子が気になった。

俺の言葉に反応した小鶴さんが「ん?」と自分の手の中のものを見る。

「ああ。これはあたしの趣味」

そういって捲ったページには沢山の写真。

⏰:08/10/16 10:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#532 [果樹]
「すごいね。すごく温かい感じがする」

俺はペラペラとページを一枚一枚捲りながら写真を見ていく。

「ありがとう。でもまだまだだよ。全然下手」

「そんなことないよ。俺の親が写真家やってるから少しわかるけどうまいと思う」

謙遜する小鶴さんに俺は、親の事を話す。

⏰:08/10/20 13:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#533 [果樹]
「倉橋くんのご両親写真家なの?」

「いや、写真撮ってるのは親父の方。倉橋すぐるって知ってるかな?」

「倉橋すぐる?!!嘘でしょ?」

「え?いや本当だけど・・・」

小鶴さんの思わぬ食い付きぶりに俺は内心ビックリする。

⏰:08/10/20 13:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#534 [果樹]
「あたし倉橋すぐるさんの写真すごく好きなの!!」

少し興奮気味に言う小鶴さんになんだか俺は顔の筋肉が緩むのを感じた。

「そうなんだ。でも本人は何の変哲もないただのおっさんだよ」

俺たちはそんな話題で互いに笑いあった。

別れ際に、今度父さんの撮った写真を持ってくるというと小鶴さんはありがとうと満面の笑みで笑った。

⏰:08/10/20 13:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#535 [果樹]
――――・・

「つる子ー!またサボったなぁ」

教室に入るなり麻衣のお説教が始まった。

「はいはい。すみませんでした」

私は軽く受け流しながら自分の席に座る。

「まったくもう!ん?なんか嬉しそうだね?良いことでもあった?」

⏰:08/10/20 13:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#536 [果樹]
「え?」

怒っていた麻衣が私の顔を見るなりそんなことを言うものだから内心驚いてしまった。

基本ポーカーフェイスの私は、あまり心を悟られないのだが今日はうっかり顔に出ていたらしい。

「うん。まぁちょっとね」

そういいながら私は自分のアルバムを捲る。

⏰:08/10/20 13:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#537 [果樹]
「写真増えたね」

「うん」

麻衣は私が写真好きなのを知っているので、一緒に覗き込んでくる。

倉橋すぐるさんがまさか倉橋くんのお父さんだったなんて・・・。

「ふふっ」

「何いきなり笑いだして。気持悪いよ」

⏰:08/10/26 08:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#538 [果樹]
私の突然の笑いに麻衣がツッコミをいれてくる。

「んーん。なんでもない」

私はまだにやける顔のまままたアルバムを捲った。

――――・・

「小鶴さんいるかな?」

俺は今昼休みを利用して小鶴さんのクラスまで来ている。

⏰:08/10/26 08:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#539 [果樹]
理由は先日約束したものを渡すため。

ドア付近にいた女の子に声をかけるとちょっと待っててと言われたので俺は廊下で待つことにした。

「倉橋くん・・・?」

ドアに寄りかかりながら待っていたら遠慮がちに名前を呼ばれたので振り向くと小鶴さんがドアからひょっこりと顔だけ覗かせていた。

⏰:08/10/26 08:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#540 [果樹]
「約束したやつ持ってきたよ」

そういいながら右手に持っていたアルバムを小鶴さんの目の高さらへんで揺らすと小鶴さんの顔が一気に明るくなった。

「ありがとう!ねぇ中庭に行って一緒に見ない?いろいろ話も聞きたいし」

「・・・いいよ」

⏰:08/10/26 08:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#541 [果樹]
まさか誘われるとは思ってなかった俺は小鶴さんの言葉に戸惑いながらも返事をする。

それから僕たちは中庭に向かった。

――――・・

「すごい・・・。すごく綺麗!」

小鶴さんは次々とページを見ながら感嘆の声を上げる。

⏰:08/10/26 08:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#542 [果樹]
「これなんてすごいアングル!人と風景のバランスもすごく綺麗!!」

興奮を隠すことなく話す小鶴さんは妙に可愛くみえて俺はつい笑いが溢れる。

「ハハッ」

「どうかした?」

いきなり笑った俺を不思議に思ったのか、小鶴さんが首を傾げる。

⏰:08/10/26 08:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#543 [果樹]
一旦キリます!!

果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/10/26 08:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#544 [なな]
>>290-600

⏰:08/10/26 09:56 📱:SH904i 🆔:Hc2u9Hgw


#545 [果樹]
ななさん
アンカーありがとうございます☆

⏰:08/10/31 00:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#546 [果樹]
「ごめん。本当に写真が好きなんだなぁと思ってさ」

俺の言葉に小鶴さんは優しく笑う。


「好きだよ」


その言葉に俺の胸がドクンと大きく鳴る。

「倉橋くんは写真撮らないの?」

⏰:08/10/31 00:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#547 [果樹]
小鶴さんがアルバムから目を離し、俺を見る。

「俺は写真よりも今はサッカーが好きだから。昔はよく父さんに付き合って写真も撮ってたけど」

俺は空を見ながら昔のことを軽く思い出す。

「そうなんだ。もうその写真はないの?」

「ん?あー探せばあると思うけど・・・」

⏰:08/10/31 00:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#548 [果樹]
俺は空を見ながら考える。

「見てみたい」

小鶴さんの思わぬ言葉に俺は少し驚く。

「子供が撮ったお遊びみたいなもんだよ?」

「うん。でも倉橋くんが撮ったの見てみたい」

⏰:08/10/31 00:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#549 [果樹]
「わかった。探してみるよ」

なんだか楽しそうに小鶴さんがいうものだから俺は思わずそう返事をしてしまった。


「でも俺からもお願いがひとつ」

「なに?」

⏰:08/10/31 00:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#550 [果樹]
俺はまるで交換条件とでもいうように人指し指を小鶴さんの顔の前に向ける。


「小鶴さんの写真ももっとたくさん見たい」

「あたしの?」

小鶴さんが少し驚く。

「うん」

⏰:08/10/31 00:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#551 [果樹]
俺の言葉に小鶴さんは少し驚いていたが次の瞬間ふわりと羽根のようにやわらかく笑って
「わかった。もってくる」
と返事をしてくれた。

――――・・

倉橋すぐるさんの写真を倉橋くんに見せて貰ったあの日から、私たちは昼休みによく中庭で互いの写真をみせあった。

⏰:08/10/31 00:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#552 [果樹]
なんだか倉橋くんと一緒にいると時間がゆっくり流れているみたいでとても落ち着いた。

私はそんな温かい時間がとても好きだった。


キーンコーンカーンコーン

「また中庭いくの?」

⏰:08/10/31 00:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#553 [果樹]
4限の終わりを告げるチャイムが鳴った直後に席を立った私に麻衣が聞いてきた。

「うん」

コクリと首を縦に振って私は自分のアルバムを手にとる。

「あたしもいっていい?」

「え?!」

⏰:08/10/31 00:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#554 [果樹]
突然の麻衣の言葉に私の時間が一瞬だけ時を止めた。

「邪魔しちゃ悪いかな?」

麻衣に悪意はないのだろう。

そんな麻衣を断るのはすごく悪い気がして私は麻衣を倉橋くんといつも会う中庭に連れていくことにした。

⏰:08/10/31 00:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#555 [果樹]
――――・・・

「今日は友達を連れてきたの」

「はじめまして倉橋くん!つる子の友達の麻衣です」

そういって紹介されたのは可愛い感じの女の子だった。

⏰:08/10/31 00:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#556 [果樹]
一旦キリます!
果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/10/31 00:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#557 [果樹]
当然今日も二人きりだと思っていた俺は小鶴さんが友達をつれてきたのに少し悲しくなった。


なぜなら・・・

なぜなら俺は
この中庭でいろいろなことを話しているうちにいつのまにか小鶴さんのことが好きになっていたから・・・。

⏰:08/11/03 22:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#558 [果樹]
「ごめんね倉橋くん」

申し訳なさそうに謝る小鶴さん。

そのごめんねは何に対しての“ごめんね”なのだろう。

「気にしなくていいよ。麻衣ちゃんも写真撮ったりするの?」

⏰:08/11/03 22:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#559 [果樹]
小鶴さんに気を遣わせてはいけないと思った俺は、友達だという麻衣ちゃんに普通に話しかけた。

――――・・・

「麻衣ちゃんも写真撮ったりするの?」

「あたしは全然!いつもつる子が撮ったのを見せてもらっているだけだよ」

⏰:08/11/03 22:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#560 [果樹]
楽しそうに話す麻衣と倉橋くんの会話がなんだか遠くに感じた。


“麻衣ちゃん”

そう麻衣のことを呼んだ倉橋くんの声が否に耳に残った。

あたしは今でも“小鶴さん”なのに

⏰:08/11/03 22:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#561 [果樹]
「ねーつる子」

「え?あっごめん・・・。聞いてなかった」

いきなり話しを振られて、私は戸惑うことしかできなかった。

「もーだからねぇ・・・」

私に話しかけてくれる麻衣がとても可愛くみえた。

⏰:08/11/03 22:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#562 [果樹]
いつだって明るくて私とは正反対の麻衣。


倉橋くんも麻衣と同じタイプだろう。


私には二人がずっとずっと遠くにいるように思えた。

⏰:08/11/03 22:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#563 [果樹]
「ずっと元気なかったけどどうしたのつる子?」

倉橋くんと別れて、教室に帰る途中の廊下で麻衣が心配そうに聞いてきた。

「なんでもないよ」

私はいつものポーカーフェイスで答える。

⏰:08/11/03 22:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#564 [果樹]
「そう?ならいいんだけど。それにしても倉橋くんて面白いね!話やすいし」

私は上の空で麻衣の言葉を聞いていた。


なんだろう。
胸のあたりがもやもやする。

⏰:08/11/03 22:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#565 [果樹]
――――・・・

「はぁぁぁー」

「なんかあったのか?」

「哲・・・」

深い溜め息をついて机に突っ伏した俺に哲が話しかけてきた。

⏰:08/11/03 22:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#566 [果樹]
「小鶴さんとのあまーいあまーい一時の後に溜め息ってどーなのよ」

苦笑いでいう哲に俺も苦笑いを返す。

「それがさ。今日は二人きりじゃなかったんだ」

「どういうことだ?」

哲の眉間に皺が寄る。

⏰:08/11/03 22:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#567 [果樹]
「小鶴さんの友達が今日はいてさ。結局小鶴さんとあんま話せなかった」

「あーそれで元気がねぇわけだ」

「まぁな」

俺はまた溜め息をつく。

⏰:08/11/03 22:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#568 [果樹]
「小鶴さんは誰にも落ちねぇよ?お前だってわかってんだろ?」

哲の厳しい言葉が心臓に突き刺さる。

「ん・・・」

更に沈んでしまった俺をみて哲が頭をぐしゃぐしゃかきむしり始めた。

⏰:08/11/03 22:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#569 [果樹]
よろしければ感想ください!!

果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/11/03 22:25 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#570 [果樹]
「あ゙ーーったくしゃーねぇなぁ。明日俺も連れていけ!」

「は!?」

「いーから!明日は俺も連れていけ」

何だかわからない内に哲はついてくることになってしまった。

⏰:08/11/07 23:25 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#571 [果樹]
――――・・・

「「はじめまして!」」

麻衣と哲くんの声が被った。

私を含めて4人は中庭の芝生の上に丸くって座る。

なんだか日を増ごとに人数が増えている気がするのは私だけだろうか?

⏰:08/11/07 23:25 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#572 [果樹]
今日の昼休みも麻衣がついていくというので一緒に来た。

それまでは昨日と同じ。

でも中庭にくるとなぜか倉橋くんの隣にも知らない男の子が立っていた。

「はじめまして!倉のダチの哲です。いつも倉が世話になっちゃって」

⏰:08/11/07 23:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#573 [果樹]
私の顔を見るなり倉橋くんの友達だという哲くんは挨拶をしながら私の手をブンブンと握ってきた。

「ごめんね小鶴さん。哲がどーしてもいくってきかなくてさ・・・」

倉橋くんは哲くんの頭を叩いてから私に謝ってきた。

⏰:08/11/07 23:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#574 [果樹]
困った顔の倉橋くん
終始笑顔の哲くんと麻衣
若干呆れ気味な私

なんだかまとまりのない集団だ。

「大丈夫だよ。あたしも麻衣っていうお荷物つれてきちゃってるから」

冗談混じりに言うとすぐに麻衣がほっぺたを膨らませる。

⏰:08/11/08 22:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#575 [果樹]
「お荷物ってなによー!!」

麻衣に怒られる私を見ながら倉橋くんと哲くんは笑っている。

この空間は楽しいのになんでだろう・・・。

胸にぽっかり穴が開いたみたいで物足りない。

⏰:08/11/08 22:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#576 [果樹]
――――・・・

「あ、倉ーわりぃんだけどなんか飲み物買って来てくんねぇ?」

会話の途中哲がいきなりそんなことを口にした。

「は?!なんで俺が?」

「いーじゃーん。お願い倉くんっ」

⏰:08/11/08 22:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#577 [果樹]
「いーやーだ!」

甘えた声でお願いをする哲。
もちろん俺の答えはNOだ。

「うっわ冷たい!倉くんてそーゆう人だったのー?」

「うるさい」

⏰:08/11/08 22:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#578 [果樹]
気持悪いオカマ言葉を使う哲を一喝して俺はそっぽを向く。

「あ・・・あたし行こうか?」

そんな俺と哲の会話の間に小鶴さんの遠慮がちな声が入る。

「え?マジ?じゃあお願いしちゃおうかなー」

⏰:08/11/08 22:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#579 [果樹]
そう言いながらも俺の顔をちらりと見る哲。

合図を送ってるのがまるわかりだ。

「あーわかったよ!俺が行けばいーんだろ?」

「さっすが倉ーおっとこ前ー」

行かせるように仕向けておいてよく言うよ。

⏰:08/11/08 22:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#580 [果樹]
「ったく。何がいんだよ?」

「俺炭酸ー。あとうすしおポテチとガムとチョコもー」

「あっじゃああたしオレンジジュース」

呆れながらも注文を聞くと次々と品物の名前が飛んできた。

⏰:08/11/10 02:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#581 [果樹]
「はいはい。小鶴さんは?」

「え?えっとー・・・」

小鶴さんは考えていなかったのか上を見て考えている。

そんな時哲がいきなりとんでもない言葉を言う。

⏰:08/11/10 02:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#582 [果樹]
「悩んでるんなら小鶴さんも倉と一緒にいってきちゃえば?」

「え?」

驚く小鶴さん。

「その方が選びやすいし」

ニヒッと哲の口元が弧を描く。
あれは何か企んでる時の顔だ。

⏰:08/11/10 02:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#583 [果樹]
「じゃあ・・・行こうかな」

考えた末に小鶴さんと俺が買い出し班になった。

ったく哲のやつ
余計な気を回しやがって・・・。

――――・・・

学校の中にある購買で言われたものを倉橋くんが買っているので私は外で待機になった。

⏰:08/11/10 02:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#584 [果樹]
ピトッ

「冷たっ!」

突然頬にひやっと冷たい物が触れて思わず肩が跳ねる。

「はい。あげる」

隣にはアイスを持った倉橋くんが立っていた。

⏰:08/11/10 02:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#585 [果樹]
「え?」

首を傾げると倉橋くんの口元が弧を描いた。

「買い出し付き合ってくれたお礼。本当は食べたいものとかなかったんでしょ」

「バレてたんだ・・」

思わず苦笑い。

⏰:08/11/10 02:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#586 [果樹]
私は別に食べたいものもなかったし購買で買いたいものもなかったのだ。

「座って食べよっか?」

片手にアイスを持った倉橋くんがベンチを指して言う。

「戻らなくていいの?」

「んー大丈夫だと思う」

⏰:08/11/10 21:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#587 [果樹]
私の問いに少し考える素振りをした倉橋くん。

麻衣と哲くんには悪いけど結局私たちは近くのベンチに座ってアイスを食べることにした。

「なんか久しぶりな感じがするね」

「え?」

⏰:08/11/10 21:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#588 [果樹]
アイスを食べながらいきなりそんなことを口にした倉橋くんの言葉の意図がわからなくて私は首を傾げる。

「こうやって小鶴さんと二人だけで話すのって」

シャクッとアイスを一口噛みながら倉橋くんが言う。

⏰:08/11/10 21:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#589 [果樹]
「そーだね。昨日は麻衣で今日は哲くんがいたもんね」

私は笑いながら言う。

「まぁ楽しいんだけどね」

「でもちょっと寂しいかな・・・」

「え?」

⏰:08/11/10 21:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#590 [果樹]
・・・・・え?え!?
今言ったのあたし?!

私は無意識の内に言ってしまった言葉に戸惑う。

「ご、ごめんっ。今の忘れて!」

「あ、うん・・・」

そこからは何だかお互い気まずくてずっと無言だった。

⏰:08/11/10 21:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#591 [果樹]
――――・・・

「どーだった?」

教室に戻った俺に哲がにやにやと口元を緩めながらきいてきた。

「変な気遣いやがって」

俺は哲をじとって睨む。

「俺は愛のキューピッドをしてやったんだろー。それよりどうだったんだよ」

⏰:08/11/10 21:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#592 [果樹]
「・・・わかんねぇ」

興味津々とばかりに目を輝かせる哲に、俺は片手で頭を抱えて答える。

「は?」

「余計わかんなくなった・・・」

あの言葉にはどういう意味があったんだ・・・?

⏰:08/11/10 21:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#593 [果樹]
――――・・・

「つーる子!倉橋くんていーよねー。気さくだし優しいかっこいいし!言うことなしって感じ」

教室に戻るやいなや麻衣が倉橋くんを誉め始めた。

「そーだねー」

私はそれを聞き流すように適当に答えた。

⏰:08/11/11 06:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#594 [果樹]
「あれ?不機嫌?もしかしてヤキモチとか?!」

そんな私に麻衣がにやにやと笑って聞いてきた。
私は思わず大きな声が出る。

「ちがうよっ!」

「ふーん。まぁいいけど」

麻衣は私の言葉に適当に受け答えして前を向いてしまった。

⏰:08/11/11 06:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#595 [果樹]
いつもならもっと追求してくるのに。なんだろう。

麻衣の言葉が気になる。
麻衣・・・もしかして倉橋くんのことが・・・?

――――・・・

あと5分早く教室を出てれば
あの時哲たちと一緒に教室をでてれば
こんなことにはならなかったかも。

⏰:08/11/11 06:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#596 [果樹]
今俺は廊下のど真ん中で立ち往生している。

なぜなら

なぜなら俺の行きたい方向に小鶴さんがいるからだ。

小鶴さんだけならいい。
軽く挨拶をして通りすぎればいいのだから。

⏰:08/11/11 06:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#597 [果樹]
でも俺の目線の先には、小鶴さんと知らない男子生徒(ネクタイの色からして三年)がいる。

二人の様子から察するにたぶん告白の真っ最中。


俺が行きたい理科室までは小鶴さんたちがいる階段を上らなきゃいけない。

⏰:08/11/11 06:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#598 [果樹]
何くわぬ顔して二人の真横を通るほど神経が図太くない俺は結局廊下で立ち往生するはめになったわけだ。

どーすっかなぁ・・・。
ここにいてもしょうがねぇし。
もう授業も始まるし。

はぁ。と溜め息をつき俺は廊下に座り込む。

⏰:08/11/11 06:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#599 [果樹]
階段の方からは二人の会話がちょくちょく聞こえてくる。

なんか盗み聞きしてるみたいでしのびない。

しょうがねぇ。
4限はサボるか。


決心をして立ち上がった俺は本日二度目の大失態を侵す。

⏰:08/11/11 06:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#600 [果樹]
とりあえずキリます!

感想はこちらに
果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/11/11 06:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#601 [urahanai]
>>297-500

⏰:08/11/11 18:35 📱:SH904i 🆔:k9PGqM1Y


#602 [果樹]
urahanaiさん
アンカーありがとうございます☆

⏰:08/11/12 00:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#603 [果樹]
立ち上がった瞬間、小鶴さんが階段側から現れて目があってしまった。

言い訳の言葉も出てこない俺はその場で硬直。

「く・・らはしくん・・・」

小鶴さんも驚いているのか大きな目がさらに大きくなっている。

「ご、ごめんっ」

⏰:08/11/12 00:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#604 [果樹]
ガバッと頭を下げて俺は小鶴さんに謝り横を通り抜けて理科室へと向かった。

――――・・・

聞かれちゃったかな・・・。

倉橋くんが行った方を見て私は少し気分が落ちる。

チクン・・・。

⏰:08/11/12 00:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#605 [果樹]
なんだろう。
最近胸が痛くなったりもやもやしたり忙しい。

倉橋くんに会ってから。
倉橋くんに会うたびに・・・。

これってまるで・・・――!!

――――・・・

「なんだ倉〜元気ねぇなぁ」

⏰:08/11/12 01:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#606 [果樹]
机の上でだれていると哲が心配をして声をかけてきた。

「そーかぁ?」

さっきの小鶴さんの表情が忘れられなくて俺は適当に返事を返す。

絶対変に思われたよなぁ。
はぁ・・・。

⏰:08/11/12 01:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#607 [果樹]
「倉ー廊下で女が呼んでたぞ」

「んーサンキュ」

友達に言われて俺はノロノロと立ち上がり廊下に向かう。

「あれ?麻衣ちゃん」

廊下に行くと麻衣ちゃんがいた。

「ちょっといいかな?」

「うん・・?」

⏰:08/11/12 01:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#608 [果樹]
呼ばれるままに俺は麻衣ちゃんと階段の方に行く。


「倉橋くんてつる子のこと好きだよね?」

階段までくると前ふりもなくいきなり麻衣ちゃんが核心をついてきた。

「え!?あっ・・あー・・・それって小鶴さんにもバレてる?」

⏰:08/11/12 01:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#609 [果樹]
質問の内容に焦ったがバレたものはしょうがないと俺は諦めて力なく麻衣ちゃんに質問を投げ返す。

「ううん。つる子は鈍いから」

ふふっと楽しそうに言う麻衣ちゃん。

このこはどこまで知っているんだろう・・・。

⏰:08/11/12 16:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#610 [果樹]
「告白しないの?」

「うーんしたいのはやまやまなんだけど・・・」

「怖い?」

「・・正直」

全てをみすかされたような麻衣ちゃんの言葉に俺はタジタジ。

「あのさぁ・・麻衣ちゃん。ものは相談なんだけど・・・」

⏰:08/11/12 16:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#611 [果樹]
俺は思いきって麻衣ちゃんに相談をする。

・・・・・。

「なんだそんなこと?全然いいよっ」

俺の相談を麻衣ちゃんは快く承諾してくれた。

「ありがとう!じゃあよろしく」

⏰:08/11/12 16:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#612 [果樹]
――――・・・

「ただいまー」

いつのまにかどこかに行っていた麻衣が帰ってきた。

「おかえり。どこ行ってたの?」

「ちょっと恋のキューピッドをしにぃー」

「???」

⏰:08/11/12 16:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#613 [果樹]
麻衣の答えに私の頭にはいくつものハテナが浮かぶ。

「それよりさ!もうお昼休みだけど倉橋くんとの待ち合わせはいいの?」

麻衣の言葉で時計を見るともうとっくにお昼休みに入っていた。

「え?あっ行かなきゃ!・・あれ?今日はついてこないの?」

「うん行かなーい」

⏰:08/11/12 16:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#614 [果樹]
行かないと言いながら笑う麻衣を不思議に思いながらも私は席を立つ。

「そう。じゃあ行ってくるね」

「はいはーい」

麻衣に見送られて私は中庭に向かった。

⏰:08/11/12 16:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#615 [果樹]
「遅れてごめんね」

中庭に行くと倉橋くんは既にいつもの場所で待っていた。

「大丈夫だよ。それより今日はちょっと場所変えない?」

「いいけど。どこに行くの?」

いきなり場所を変えると言う倉橋くんを不思議に思いながらも私は尋ねる。

⏰:08/11/12 16:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#616 [果樹]
「いいとこ見付けたんだ。こっちこっち」

そういって私の空いていた手を握ってどこかへ連れていく倉橋くん。

握られた手から倉橋くんの熱が伝わってきてすごくドキドキする。

私やっぱり―・・・

――――・・・

「ここ?」

⏰:08/11/12 16:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#617 [果樹]
俺が小鶴さんを連れてきたのは特別棟の3階の端っこの教室。

「うん。景色が凄く綺麗なんだ」

ガチャとドアを開けて中に入る。

ガラッと窓を開けると涼しい風が頬をかすめた。

「風がきもちいいね」

「でしょ?サボるのにもすごくいい場所なんだ」

⏰:08/11/12 16:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#618 [果樹]
「確かに」

そう言ってふふっと笑う小鶴さんの表情がとても可愛くて俺はみとれた。


「今日はね。小鶴さんに話があるんだ」

「何?」

きょとんと目を丸くしてきいてくる小鶴さん。

俺は小さく深呼吸をして頭の中で言葉を整理する。

⏰:08/11/12 16:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#619 [果樹]
「・・・小鶴さんがどうしていろんな人からの告白を断るのかはわからない。でも・・・


俺も小鶴さんが好きだよ」



⏰:08/11/12 16:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#620 [果樹]
俺が勇気の限りを振り絞って出した言葉だったが小鶴さんは呆気にとられたのか驚いているのか固まっている。

「あの・・・小鶴さん?」

「え?!あっハイ!!」

「聞いてた?」

俺の問いにコクコクと小鶴さんは必死に首を縦に振る。

「返事もらってもいいかな?」

⏰:08/11/12 16:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#621 [果樹]
――――・・・

倉橋くんからのいきなりの告白に驚いて私はすこしの間放心してしまった。

でも動悸だけは治まらなくてずっと胸が高鳴っている。

これはきっと嬉しさから・・・。

「えっと・・・あの・・・あ・・たしも・・・!」

そこまで言って麻衣の顔が私の頭をよぎった。

⏰:08/11/12 16:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#622 [果樹]
もし麻衣が倉橋くんを好きだったら。
あたしは麻衣の好きな人を盗ることになる・・・。

それだけは・・できない。

「・・・・ごめんなさい」

私には友達の恋よりも自分の恋を優先させることは出来ない。

「そっ・・・かぁ。やっぱり駄目か・・・」

倉橋くんの優しい苦笑い。

⏰:08/11/12 16:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#623 [果樹]
「ちがっ・・!でも・・・ごめんなさい」

倉橋くんの顔が見れなくて私は下を向く。
きっと今見たら泣いてしまう。

「ううん。いいんだ。いきなりごめんね。」

声は元気だけどでも空元気なのが伝わってくる。

「じゃあ俺行くね」

「あっ・・・」

⏰:08/11/12 16:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#624 [果樹]
私の言葉が届かないまま倉橋くんは教室から出ていってしまった。

――――・・・

「てぇーーつぅーー」

教室に戻った俺はドスッと哲の背中にのしかかった。

「うおっ!どうした倉?!」

「・・・・られた」

⏰:08/11/12 16:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#625 [果樹]
「あ?聞こえねぇよ」

何度も言わすな馬鹿野郎。

「振られた・・・・」

きっとこの時の俺は死顔だったんだろう。
その後は哲がなんやかんやと世話を焼いてくれた。

――――・・・

「おっかえりー!」

「ただいま・・・」

⏰:08/11/12 16:24 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#626 [果樹]
麻衣の元気よさとは対称的に私はすごく気分が落ちていた。

「何で元気ないの?倉橋くんと付き合ったんでしょ?」

「え?!」

私が反応を見せると麻衣はまずったっていう顔をした。

⏰:08/11/13 14:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#627 [果樹]
「どういうこと?何で麻衣が倉橋くんに告白されたこと知ってるの?」

私が問つめると麻衣は渋々と言った感じで

「実はー・・・」



「はぁっ・・はぁ」

なんでもっと早く気が付かなかったの?
全部あたしの勘違いだった。

⏰:08/11/13 14:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#628 [果樹]
麻衣の話を聞いた後私は教室を出てあたしは走った。
今一番気持ちを伝えたい人の元へ・・・。


回想―――・・・

「実はね。倉橋くんにつる子と二人きりになりたいから今日の昼休みは来ないでって言われてたの。告白したいからって」

⏰:08/11/13 14:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#629 [果樹]
麻衣が申し訳なさそうに私を見る。

「でも麻衣は倉橋くんのこと好きなんじゃ・・・」

それなのにどうして・・・?

「え?!何言ってるの?あたし倉橋くんのこと何とも思ってないよ?」

麻衣がきょとんとした顔をする。

⏰:08/11/13 14:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#630 [果樹]
「え?だって・・え?!」

私は頭が混乱して思考がうまく回らない。

そんな私を諭すように麻衣が口を開く。

「つる子なんか勘違いしてない?あたしは寧ろ倉橋くんとつる子のこと応援してたんだよ?」

全てはあたしの勘違い?
麻衣は倉橋くんが好きなわけじゃ・・ない?

⏰:08/11/13 15:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#631 [果樹]
じゃああたしは勘違いで倉橋くんを振ったの・・・?

回想終了――――


「あのっ哲くん!倉橋くんいる?」

倉橋くんの教室まで来た私は哲くんに詰め寄る。

「へ?倉なら風にあたってくるっていってどっかいったけど・・・」

⏰:08/11/13 15:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#632 [果樹]
「わかった。ありがとうっ」

バタバタバタ・・・

小鶴が出ていった方を見ながら

小鶴さんてあんなにハキハキしたタイプだったっけ?

とちょっと不思議に思う哲なのであった。

⏰:08/11/13 15:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#633 [果樹]
――――・・・

情けねぇなぁ俺。

屋上から校庭を眺めながら俺は自分に落胆する。

振られると思わなかったわけではない。
覚悟はしていた。

しかしいざ断られるとやっぱりダメージは大きかった。

⏰:08/11/13 16:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#634 [果樹]
「はぁ・・・男のくせにだらしねぇ」


ガチャッ

物思いに耽っていると屋上のドアが開く音がした。

「倉橋くんっ!!」

大きな声で呼ばれて肩がビクッと弾む。

「小鶴さん・・・」

⏰:08/11/13 16:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#635 [果樹]
振り向くとそこには小鶴さんが息を切らして立っていた。

「どうしたの?小鶴さんもサボりに来たの?」

俺は精一杯の笑顔を作る。

――――・・・

倉橋くんが無理に笑顔を作っているのがわかる。

⏰:08/11/13 16:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#636 [果樹]
そうさせているのはあたしだ。

「日差しは眩しいけど風は気持いいよね。昼寝に持ってこいだ。あ、そういえば小鶴さん次の授業何?俺は数学でさー教室で寝るくらいならここで寝ようと思って――・・・」

倉橋くんはあたしが喋る暇も作らせないくらい一人で喋っている。

⏰:08/11/13 16:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#637 [果樹]
「倉橋くんっ!」

痺を切らした私は大きな声で倉橋くんの名前を呼ぶ。

「あのねっ・・・聞いてほしい話があるの」

私がそう言うと倉橋くんはにぱっと笑って。

「大丈夫だよ。これからも友達だから」

⏰:08/11/13 16:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#638 [果樹]
と空元気としか受け取れない笑顔を見せる。

「父さんの写真見たいならまた昼休みに会えばいいし」

「・・・がう」

「なんにも心配いらないよ」

その最後の言葉に私の中の何かがぷちんと音を立てて切れた。

⏰:08/11/13 16:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#639 [果樹]
「ちがうってばーー!!」
大声を出したせいかはぁはぁと息が荒くなる。

倉橋くんは私の大声に驚いたのか目を見開いている。

「私・・・勘違いしてたの。私は・・っ私も・・・」

喋っている最中なんだか目頭が熱くなって鼻の奥がつんとした。

⏰:08/11/13 16:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#640 [果樹]
.
「私は倉橋くんが好きなの・・・ひっ・・・うー」


いつの間にか私は泣いていた。
堪えきれない涙が頬を伝って地面に染みをつくる。

「ご・・・ごめんっ」

「何・・で倉橋くんが謝るの?」

⏰:08/11/13 16:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#641 [果樹]
私は泣いているままの顔で倉橋くんを見る。

倉橋くんはどうしたらいいかわからずオロオロしている。
その姿に私は思わず笑みが溢れる。

「ふふ・・クスクスクス」

「えっ?あの・・・」

「ごめんなさい。告白の返事もらってもいいですか?」

⏰:08/11/13 16:37 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#642 [果樹]
私は涙を拭って精一杯の笑顔で笑う。

「そんなの決まってる」

そういって倉橋くんは私の手を引っ張る。

くんっと前のめりになった私はいつの間にか倉橋くんの腕の中にいて強く抱き締められていた。

⏰:08/11/13 16:38 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#643 [果樹]
耳元で囁かれた

「好きだ」

の言葉は今までのどんな告白より胸に響いた。

――――・・・

告白の成功率0パーセントの美少女

それは小鶴めぐみという一人の少女につけられた秘かなあだ名。

⏰:08/11/13 16:38 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#644 [果樹]
彼女は恋に全く興味がなかった。

しかし、その成功率0パーセントの美少女の成功率を上げた一人の男子がいた。

その男子には成功率0パーセントの美少女自ら告白したという逸話もある。

後にも先にも彼女が告白をしたのも受けたのもそれ一回きりであった。

【成功率0パーセント】

―End―

⏰:08/11/13 16:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#645 [果樹]
.

友達でいた時間が長すぎて、この気持ちが恋だって気付かなかったり、恋までなかなか発展しないことってあるよね。


story 6

【 友達以上恋人未定 】

⏰:08/11/13 22:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#646 [果樹]
「はぁ・・・」

思わず溜め息が漏れるのは私、緒方ユイカの性格が故だろう。

私は、昔から人よりちょっとタイミングが悪いらしく、今もまたそのタイミングのせいで・・・。


「ユイカー何してんの?」

⏰:08/11/13 22:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#647 [果樹]
ブンブン手を振りながらこっちに向かって走ってくるのは腐れ縁の湯沢京太。

「歩いてるの」

「そうじゃないデショ」

本当の事を言っただけなのに京太は頭を軽くチョップしてきた。

私は、はぁと溜め息をつき、立ち止まって、手に持っているダンボールをずいっと京太の前につき出す。

⏰:08/11/13 22:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#648 [果樹]
「柴くんのパシリ」と一言で告げ、また歩き出す。

「またぁ?ユイカいつもこういう役回ってくんな」

京太が隣を歩きながらからかい口調でケラケラと笑ってくる。

「好きでやってるんじゃない。先生たちが私に回してくるの」

⏰:08/11/13 22:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#649 [果樹]
全く人使いが荒いったらないんだあの人たちは!

すねたように頬を膨らませると京太に頭を撫でられた。

「でもそれを素直にやってあげるのはユイカのいいとこだな!」

そういって京太はにこっと笑いながら、私の手からダンボールを取り上げた。

⏰:08/11/13 22:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#650 [果樹]
まるで王子様やん!っていうツッコミをいれたくなるほどだ。

「・・・資料室」

「じゃあ資料室までランデブーと行きますか♪」

にひひっと笑って言う京太。
全く意味わかって言ってんのか疑ってしまう。

⏰:08/11/14 12:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#651 [果樹]
「ばか京太・・・」

私は顔が赤いのを気付かれないように京太の少し斜め後ろを歩いた。

――――・・・

「おっかえりー!!」

教室に入るなり、圭ちゃんが手を振りながら大声で迎えてくれた。

⏰:08/11/14 12:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#652 [果樹]
「ただいま」

私は席について次の授業の用意をする。

「何なに?きょんと2人でどこに行ってたのー?」

圭ちゃんはあたしの前の席に座り、なんだか嬉しそうだ。

「柴くんのパシリで資料室まで行ってただけだよ」

⏰:08/11/14 12:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#653 [果樹]
「ふーん」

本当の事を話したのに圭ちゃんは、ニマニマと怪しい笑顔を浮かべている。

「な・・・なに?」

「ユイカさ。告っちゃえば?」

ガタッガタンッ

盛大に椅子からずり落ちてしまった。

⏰:08/11/14 12:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#654 [果樹]
「圭ちゃん・・・何をいきなり」

椅子に座り直してからも、目の前で満面の笑みを浮かべる圭ちゃんに呆れてしまう。

「だってなんかじれったいんだもん!バシッと気持ち伝えて付き合えばいーのに」

真顔で言ってくる圭ちゃん。

⏰:08/11/14 23:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#655 [果樹]
「別にあたしはっ・・・そのー・・・ト、トイレ行ってくるっ!」

言葉がおぼつかない。
このままじゃあ墓穴を掘るのが落ちだ。
ここは・・・逃げるが勝ち!

あたしは教室を出てトイレへと向かった。

――――・・・

くくっユイカは面白いなー。

⏰:08/11/14 23:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#656 [果樹]
私はユイカが出ていったドアの方を見ながら笑うのを必死に堪えた。

私、柳田圭はユイカの友達で、きょん(京太)との仲を見守るキューピッド・・・なんだけど、なかなか進展しないのがあの二人。

まったくじれったいったらない!

やっぱりユイカって恋愛初心者なのかしら。

⏰:08/11/14 23:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#657 [果樹]
私が一人、思考を巡らせていると視界の隅に子犬が見えた。

「なぁ圭ー」

「なぁにきょん」

子犬はもちろんきょん。

私はきょんの方に視線を向けて話しを聞くことにした。

⏰:08/11/14 23:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#658 [果樹]
「ユイカってさー好きな奴いんのかな?」

きょんの問いに一瞬、ユイカの気持ちに気付いたかと思ったが、きょんは鈍感なのでありえないだろうと思い直した。

「なんで?」

「だってさー最近俺に対してよそよそしいんだよ。前以上にくっついてこなくなった気ぃするし」

⏰:08/11/14 23:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#659 [果樹]
「そりゃあアンタを意識してるからだよ!」
とつっこんでやりたいが、これはユイカが言うことだから私が言ってはいけない。

「さーねぇ?ユイカにもいろいろあるんじゃないの?あ、噂をすればユイカ発見」

「え?!どこっ?」

⏰:08/11/14 23:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#660 [果樹]
ユイカの事となるとすぐ食い付いてくる。
まさに犬。忠犬ハチだ。

「ほらあそこー。柴くんと話してるよ」

私が指差して教えるときょんは窓から身を乗り出してそこを見る。

きょんは楽しそうに話している柴くんとユイカを見てやきもちを妬いているのか、頬を膨らませて不機嫌を露にしている。

⏰:08/11/15 02:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#661 [果樹]
きょんて自分がユイカを好きな自覚ないのかな?

いつになったらこの二人は、お互いが好きあっていることに気が付くのか・・・。
と心配になってしまう圭なのであった。

――――・・・

「はー疲れた」

⏰:08/11/15 02:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#662 [果樹]
教室に戻った私は溜め息をついて席に座る。

「トイレにしては随分と長かったのね」

圭ちゃんは相変わらず楽しそうに聞いてくる。

「それがさー。トイレから出てきたところで柴くんに会っちゃってー・・・」

⏰:08/11/15 02:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#663 [果樹]
ユイカ回想―――

「はぁースッキリした!全く、圭ちゃんが変なこと言うから焦っちゃったじゃん。大体、京太が私のことどう思ってるのかもわからないし、告るにしたって心の準備つーもんが・・・云々」

と怪しくぶつぶつと呟いていたせいで目の前に迫っていたモノに私は全然気付かなかった。

⏰:08/11/15 02:37 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#664 [果樹]
「ぶふっ!」
「うおっ!」
バサーッ!!

二つの声と何かが大量に落ちる音が同時に聞こえた。


「あいたた・・・」

尻餅をついてその場に倒れてしまった私は、何が起こったのかさっぱり把握出来ない。

⏰:08/11/15 02:38 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#665 [果樹]
「悪いなー前見えなかった・・・ってなんだ緒方か」

「あ、柴くん。てか、なんだって何よー!」

目の前には同じように尻餅をついている柴くんがいた。

柴くんは私のクラスの担任で年が若くカッコイイので女子からの人気が高い。

⏰:08/11/15 02:38 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#666 [果樹]
「悪い悪い。ほら立てるか?」

笑いながら手を差しのべてくれたので、その手を借りることにした。

「ありがと」

立ってみて初めて、自分が何にぶつかったのかわかった。

足元には廊下を占領するかのように散乱した大量のノート。

⏰:08/11/15 02:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#667 [果樹]
これか・・・・。

「はー見事にぶちまけたな」


「よっこらせ」
と親父くさい掛け声でしゃがみ、柴くんが床に散らばったノートを拾い始めたので私も手伝う。

⏰:08/11/15 22:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#668 [果樹]
「はい。これで全部かな」

最後の一冊を柴くんに渡す。

「悪いねー緒方。助かったよ」

「あたしも悪かったし」
と言って、改めて柴くんを見ると柴くんの手には高く積み上げられたノート。

まるで漫画だ・・・。

⏰:08/11/15 22:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#669 [果樹]
「ねぇ柴くん。ノートに埋もれて顔見えてないよ・・・?」

「だなー」

だなーって・・・。
なんて脳天気な人なんだろう。

「貸して。半分持つ」

「ありがとな。でも大丈夫だぞ」

⏰:08/11/15 22:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#670 [果樹]
片手を差し出して、自ら手伝うと言っているのに、それを笑顔で断る柴くん。

「後は職員室まで持っていくだけだしなー」
とまたまたお気楽発言。


ここは3階で職員室は1階。

これからこのノートの山を持って階段を降りて、職員室まで誰にもぶつからずにたどり着けるなんてありえない。

⏰:08/11/15 22:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#671 [果樹]
しかもこの様子じゃ絶対またぶつかる!
それも2回!!


「手伝うって。いつもパシリ役やらされてるんだからこういう時こそ使ってよ」

私は柴くんの手からノートを半分奪い取る。

「パシリって・・・人聞きの悪い」

⏰:08/11/15 22:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#672 [果樹]
「似たようなもんでしょ」

つんとした言い方をした私に柴くんはクスッと笑った。


そのあとは無事、職員室にノートを届け教室に戻ってきた。

回想終了―――

⏰:08/11/15 22:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#673 [果樹]
「とゆーわけであたしは柴くんのお手伝いをしてたってわけ」

一部始終を圭ちゃんに話すと圭ちゃんはなんだか呆れていた。

「あんたって本当グッドタイミングってゆーかバッドタイミングってゆーか・・・」

全くだ。
なんで私はこうタイミングが悪いのだろうか。

⏰:08/11/16 16:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#674 [果樹]
ちょっと職員室に行けば先生たちに何かしら押し付けられ、廊下を歩けば荷物持ち。

運が悪いとしかいいようがない。


「緒方ー」

「あれ柴くんだ」

教室のドアのところでこっちに向かっておいでおいでをする柴くん。

⏰:08/11/16 16:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#675 [果樹]
「ちょっと行ってくるね」

私は小走りに柴くんの元へと行った。

――――・・・

「なんで柴っちがユイカ呼んでんだよー」

「うわっ!もーいきなり出てくるからびっくりするじゃんよきょん」

⏰:08/11/16 16:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#676 [果樹]
いきなり机の前にひょっこり現れたきょんに私は文字通り飛び退いた。


「なんかユイカ嬉しそう」

ユイカと柴くんが話しているのをじーっと見ながらぽつりときょんが呟く。

「きょんにはそう見える?」

「うん」

⏰:08/11/16 16:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#677 [果樹]
「ふーん」

「何だよ?!」

「別にー?王子様はご立腹なんだって話ー」

私から見ればきょんと話してるときのユイカは、周りに花が飛んで幸せそうだけどね。

⏰:08/11/16 16:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#678 [果樹]
きょんと話してる間にユイカがパタパタと笑顔で戻ってきた。

「柴くんと何話してたの?」

「なんかねー手伝ってくれたお礼だって言ってコレくれた」

「遊園地の・・チケット?」

ぴらっとユイカが見せてきた紙には『遊園地特別ご優待券』と書かれていた。

⏰:08/11/18 03:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#679 [果樹]
「彼女と行こうと思ったんだけど彼女にキッパリと断られちゃったんだってー」

と笑って言うユイカをよそに私ときょんが柴くんご愁傷さま・・と思ったのは言うまでもない。

――――・・・

「ちょうど2枚あるし圭ちゃん一緒に行かない?」

私は圭ちゃんの目の前に2枚のチケットを出しながら言う。

⏰:08/11/18 03:38 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#680 [果樹]
「いつ?」

「んー・・・今週の日曜!」

「あーごめんユイカ。私その日デートだわ」

圭ちゃんが申し訳なさそうに眉根を下げる。

「そっかーじゃあ仕方ないね」

デートじゃ仕方ないと思っていてもやっぱり寂しくて私はうなだれる。

⏰:08/11/18 03:38 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#681 [果樹]
「きょんと行ってくれば?」

「へ?」「は?」

圭ちゃんからの思わぬ提案に私と京太の声が重なる。

「きょん今週の日曜は部活ないんでしょ?」

「あ・・・あぁ」

「じゃあ決まりだねー。楽しんできてね!」

⏰:08/11/18 03:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#682 [果樹]
いつのまにかとんとん拍子に話が進んでいく中で私の頭は混乱して上手く理解できていなかった。

そんな私を横目に圭ちゃんが声を押し殺して笑っていたのを私は全く知らなかった。

――――・・・

私は急いで家に帰って圭ちゃんにメールを送った。

⏰:08/11/18 03:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#683 [果樹]
宛先:圭ちゃん
圭ちゃんどうしよ〜
あたし京太と二人きりで遊んだことなんて一回もないから緊張するよぉ

返信はすぐにきた。

受信先:圭ちゃん
大丈夫大丈夫♪
とりあえず明日、日曜日に着ていく洋服でも買いに行こっ!

⏰:08/11/19 03:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#684 [果樹]
宛先:圭ちゃん
うんありがとう!
じゃあ明日ね!

圭ちゃんにメールを送信した後、私は携帯をベッドの上に放り投げて私も寝転ぶ。


はぁー緊張するなぁ。
京太とデートかぁ・・・。

は!デデデデデート!?

⏰:08/11/19 03:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#685 [果樹]
うわ!そーじゃん!!
いい年頃の男女が二人きりで遊びに行くってただのお出掛けじゃないんだよね!?

あーやばい・・・。
余計緊張してきちゃったよぉ。

京太はあたしのことどう思ってんのかな?

⏰:08/11/19 03:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#686 [果樹]
――――・・・

「ふぁーあ」

私は大きな欠伸が出て口を押さえる。

「ユイカったらそんなおっきい欠伸して。昨日寝てないの?」

「うん・・なかなか寝つけなくて」

⏰:08/11/19 03:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#687 [果樹]
私は眠たい目を擦りながらまた欠伸をする。

「どうせきょんのことでも考えてたんでしょー」

そう圭ちゃんにからかわれて私は返す言葉がなくぐっと押し黙る。

「あれ?図星?きょんも罪深い男だねー」

「そんなんじゃないってば!」

「なに?俺が何だって?」

⏰:08/11/19 03:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#688 [果樹]
圭ちゃんとの話の最中にいきなり現れた京太に驚いて私は思わず飛び退く。

「きょんは本当に突然出てくるよねー」

「まぁな。それより俺がなに?」

呆れながら言う圭ちゃんに対し京太は何故か威張る。

そしてさっきの話をしつこく聞いてきた。

⏰:08/11/20 13:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#689 [果樹]
私は圭ちゃんに目だけで『言っちゃだめ!』と伝える。

「別になんでもないっ!京太は馬鹿だなって話」

私がはぐらかすと京太がそれに食い付く。

「なんだよそれー。ユイカの方が馬鹿じゃん」

「なにおー!?」

その後、教室に入るまで私たちはずっと言い合いをしていた。

⏰:08/11/20 13:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#690 [果樹]
後ろでその光景を見ながら圭ちゃんが
どこぞのバカップルか!
なんて思っていたのは誰も知らない。

――――・・・

「あー迷うよぉ。何着ていけばいいのー?」

放課後、圭ちゃんと一緒に街まで買い物に出た私はたくさんある服の前で頭を抱えていた。

⏰:08/11/20 13:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#691 [果樹]
京太と遊園地に行くのは明日なのに服が決まらないのだ。

「ユイカってばきょんの好み知らないの?」

圭ちゃんがいくつか服を見ながら聞いてくる。

「知らないよー。だって小学校から今までみてきたけど彼女がいたの見たことないんだもん」

⏰:08/11/20 13:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#692 [果樹]
そうなのだ。
京太は愛想はいいため男女問わず友達は多いが特定の女子とは仲良くはならない。

今までずーっと見てきたが京太が私以外の女子と二人でいるところや帰っているところを見たことはない。

そのため参考にするモデルがいないのだ。

⏰:08/11/21 04:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#693 [果樹]
「うーん悩むわね・・・」

「うん・・・」

私と圭ちゃんは顎に手を当てていろいろ考える。

「あ!これは?遊園地だし。走ったりするわけじゃないからワンピースでも大丈夫だと思うよ」

そういって圭ちゃんが見せてきたのは真っ白な膝上の可愛いワンピース。

⏰:08/11/21 04:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#694 [果樹]
胸下のリボンの切り返しが可愛くて女の子らしいデザインだ。

「あたしこういうの着たことない・・・」

少し怖じけずく私を圭ちゃんが励ます。

「大丈夫だよ!ユイカは髪も黒いし似合う!あたしが保証する」

⏰:08/11/21 04:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#695 [果樹]
「んー・・・じゃあそれにする」

悩んだ末、私は圭ちゃんの後押しもありワンピースを買うことにした。

――――・・・

「買った?」

店から出ると圭ちゃんが笑顔で待っていた。

「うん。つきあってくれてありがとう圭ちゃん」

⏰:08/11/21 16:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#696 [果樹]
私はワンピースが入った袋を胸に抱えてお礼を言う。

「いいよー。娘の成長を見守るのも母の役目ってね」

「ん?」

「いやいやこっちの話」

圭ちゃんの言っている意味が分からず首を傾げるとはぐらかされてしまった。

⏰:08/11/21 16:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#697 [果樹]
そのあとは喫茶店でお茶をして明日の計画を練ってから私たちはそれぞれ家に帰った。

――――・・・

「明日はこれとこれと・・・これでいっかな?」

私はベッドの上に明日来ていく服を並べる。

「はぁー緊張する」

もうすでにバクバクいっている心臓を抑えて深呼吸をする。

⏰:08/11/21 16:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#698 [果樹]
そんなことをしていると携帯からメール受信を告げる音が鳴りだした。

チャラチャラチャ〜♪

「はいはいっと」

私は鞄から携帯を取りだし受信フォルダを開く。

受信先:京太
明日10時にユイカん家に迎えに行くから寝坊すんなよ!

⏰:08/11/21 16:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#699 [果樹]
10時か・・・。
私はメールを送り返す。

宛先:京太
京太こそすっぽかしたら許さないから!
それじゃあ明日ね。
おやすみ。

送信ボタンを押して私は携帯を閉じる。

にやけそうになる顔をパンパンと叩いて私はベッドに潜り込む。

明日遅れないようにしなくっちゃ!

⏰:08/11/21 16:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#700 [果樹]
緊張で眠れないかもと思っていたが疲れていたせいもあってか私はいつのまにか眠っていた。

――――・・・

「寝坊したー!!!」

時刻9時48分。

昨日寝坊するなと言われていたのに私は睡魔には勝てず結局寝坊してしまった。

⏰:08/11/21 23:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#701 [果樹]
京太が来るまであと15分もない。

「あーもう最悪ー」

バタバタと私は部屋中を走り回り支度を始める。

そんな中、ピーンポーンという魔のチャイムが家中になり響く。

やばっ!京太来ちゃった?!

私が階段をすごい勢いで降りると玄関には楽しそうに談笑するママと京太の姿が。

⏰:08/11/21 23:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#702 [果樹]
「あらユイカやっと起きたの?今起こしに行こうと思っていたところなのよ」

私に気付いたママは
「全くしょうがない子ね」
と言ってリビングへと戻っていった。

「ったく。やっぱり寝坊したのかよー」

と私のパジャマ姿を見ながら呆れる京太。

「面目ない・・・」

⏰:08/11/21 23:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#703 [果樹]
返す言葉が無くてうつ向くことしか出来ない私。

「いいから早く支度してこいよ。俺外で待ってっから」

そう行って京太は玄関のドアを開けて外に出ていってしまった。

私は急いで二階の自分の部屋へ戻り準備を再開した。

⏰:08/11/21 23:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#704 [果樹]
――――・・・

「おせぇ!!」

外へ出ると開口一番にそう言われぶにっと両頬をつねられた。

「ごめんなひゃい」

「ったく。行くぞ」

そういってスタスタと前を歩いていく京太を私は追い掛けた。

⏰:08/11/21 23:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#705 [果樹]
「・・・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・」

「・・・」

家を出てからと言うもの何を喋ったらいいか分からずどっちも話し切り出さないため沈黙が続く。


しかも京太は私が寝坊したことにまだ腹を立てているみたいだ。

⏰:08/11/21 23:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#706 [果樹]
はぁー気まずいよぉ
これじゃあ遊園地どころじゃな・・・

「いたっ!」

物思いに耽っていると頭に痛みが走り、見上げると京太がむすっと怒った顔をしていた。

「なーに黙りこんでんだよ」

「べ、別に黙りこんでなんか・・」

⏰:08/11/23 00:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#707 [果樹]
機嫌が直ったのかと思った矢先、京太は私の両頬をつねる。

「にゃいしゅんのよー」

「ぷっ・・まぬけ面」

私の顔を見た京太はケラケラと笑いだした。

「なっ!」

「ククッ・・悪ぃ。もう怒ってないから心配すんな」

⏰:08/11/23 00:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#708 [.]
>>1-250
>>251-500
>>501-750

⏰:08/11/23 08:45 📱:SH903i 🆔:XbjWUa8M


#709 [果樹]
.さん
アンカーありがとうございます!

⏰:08/11/24 02:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#710 [果樹]
今だ笑ったままの京太は真っ赤になる私の頭をぽんぽんと叩いてまた歩き出す。

「京太・・・」

今のは京太なりの仲直りだと気付いた私は二、三歩先にいる京太の元まで走った。

――――・・・

遊園地に着いた私たちは早速入場ゲートをくぐり中に入る。

⏰:08/11/24 02:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#711 [果樹]
「うわぁーあ!」

中に入った私は思わず感嘆の声を上げる。

遊園地の中はジェットコースターにメリーゴーランドにお化け屋敷などこれぞ遊園地!というものが各方向にあって、もちろん色とりどりの風船をもった熊のきぐるみが、子どもたちに風船を配っている光景なんかもあるわけで、私はそんな空間にいるせいか体がうずうずしていた。

⏰:08/11/24 02:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#712 [果樹]
「京太!遊園地!遊園地だよっ」

私は京太の袖を早く行こうと催促するように引っ張る。

「ククッ・・ユイカは昔っから何も変わんねーなぁ」

「何が?」

そんな私を見て京太が歯を出して笑うものだから私は首を傾げる。

⏰:08/11/24 02:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#713 [果樹]
「小さい頃から遊園地や水族館に行くと一人ではしゃいですぐ迷子になってた」

京太が意地悪な笑みを浮かべるものだから私はムッとする。

「もうなんないよ!」

「どーだか」

「なんない!」

⏰:08/11/24 02:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#714 [果樹]
入場してすぐにこんな言い合いをする二人も珍しいと思うが何だか悔しかったのだ。

京太の中での私はまだ幼い頃の“ユイカ”な気がして。


「だといーなー。俺が困るし」

「迷子になんてならないから大丈夫ですー」

⏰:08/11/24 02:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#715 [果樹]
相変わらず意地悪な笑みを浮かべる京太にムカついてあっかんべーをする私。

そんな私に京太はククッ・・と声を押し殺したように笑って私の手を引いた。

「わかったって。ほら行くぞ」

ケンカはどこへやら笑う京太につられて私も笑ってしまい引っ張られるままついていった。

「うん!」

⏰:08/11/24 02:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#716 [果樹]
――――・・・

「京太ー次あれ!あれ乗ろうっ」

京太の袖を引っ張ってはしゃぐ私をよそに京太は青ざめた顔で口元を覆っていた。

「ちょっ・・ちょっとタンマ・・・」

近くにあったベンチにふらふらと頼りない足どりで向かい、座る京太の前に立って私は京太の顔を覗きこむ。

⏰:08/11/24 15:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#717 [果樹]
「もうダウンー?だらしないなぁ」

「あのなぁ・・・」

ジェットコースターをたて続けに5回も乗ればそりゃあグロッキーにもなるだろ・・・。

なんてことを京太が思っていたなんて知らない私はふぅと小さく溜め息をつく。

「しょうがないなぁ。あたし何か暖かいもの買ってくるよ」

⏰:08/11/24 15:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#718 [果樹]
私はベンチから少し離れた売店に走った。

――――・・・

売店で温かいココアを買って京太のいるベンチに戻る道すがら風が一層強く吹いた。

頬に直接触れる風がひんやりと冷たく、目の前を枯れ落ちた葉が風と一緒に踊っている。

⏰:08/11/24 15:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#719 [果樹]
今日も星は綺麗に見えるかな。

なんて考えながら歩いていたら声をかけられた。

「かーのじょ。一人なの?俺らと遊ばない?」

私の歩調に合わせながら二人の男は私を挟むように両隣を歩く。

「結構です」

にやにやと笑いながら話す態度が気に入らなくて私は更に歩調を速める。

⏰:08/11/24 15:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#720 [果樹]
「そんなこと言わないでさー。ほら」

二人の間から抜け出ようとしたところでぐっと手首を掴まれた。


その弾みでココアが手から滑り落ちてパシャッという音を立てて地面に落ちた。

「ちょっとやめてよ!」

⏰:08/11/24 15:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#721 [果樹]
「お前ら何してんの?」

私が必死に手を振り解こうとしていたら後ろから聞き慣れた声がする。

「京太!!」

振り向くと京太がムスッとした顔で立っていた。

「チッ・・男連れかよ」

京太を見るなり二人組の男は舌打ちをしてどこかに行ってしまった。

⏰:08/11/24 15:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#722 [果樹]
ようやく手を離された私は京太の側に駆け寄る。

「気分直ったの?」

「ん・・・」

私の問いかけに京太が無表情で答えるから不思議になる。

でもまだ気持ち悪いのかなと思って私はそれ以上追求はしなかった。

「じゃあ観覧車乗りに行こっか」

⏰:08/11/26 04:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#723 [果樹]
――――・・・

観覧車に乗り込んだ私はさっきから観覧車の窓にかじりついて見える景色に圧倒されていた。

「うわーあ見てみて!夕日がすっごいきれーい!」

頂上までいくと夕日がビルの隙間に落ちていくのが見えた。

⏰:08/11/26 04:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#724 [果樹]
「んー」

そんな私に京太は正面を向いたまま腕組み+足組みの格好で生返事を返す。

「人もアリんこみたい」

「んー」

また生返事・・・。

私は景色から視線を京太に移す。

⏰:08/11/26 04:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#725 [果樹]
「さっきから何怒ってるの?」

少し眉根を下げて言うと京太は視線を横にずらした。

「別に怒ってねぇ」

いやいやいや・・・。

「明らか怒ってるじゃん!」

強めに言う私に京太は少しイラッとした顔をした。

⏰:08/11/26 04:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#726 [果樹]
「うるせぇ・・」

ぼそっと言った京太の声は観覧車の中では響いて私の耳に届く。

「ムッカァー」

京太の態度も頭にはきていたが最後のぼそっと言った言葉で私の中の何かがプチンと切れた。

「わかった。もういい!」

⏰:08/11/26 04:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#727 [果樹]
それだけ言い残して

「お疲れ様でしたー」

といって係員がドアを開けた瞬間私は荷物を持って外に飛び出した。

「え・・ユイカ!?」

私を呼ぶ京太の声が聞こえたがそれを無視して私は遊園地の出口に走った。

⏰:08/11/26 04:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#728 [果樹]
――――・・・

遊園地から一人で家に帰ってきた私はただいまも言わずに階段を上がり自分の部屋に直行する。

「ムカつくー!!!」

バタンとドアを開け、勢いよくベッドにダイブして手足をジタバタと動かしながら叫ぶ。

それでも怒りが治まらない私は、むくっと起き上がり怒りにまかせて枕をベッドに叩き付ける。

⏰:08/11/26 04:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#729 [果樹]
「京太なんかこのっ・・このっ・・」

ボフボフと鳴る枕から綿が出そうなほど叩き付けると今度は枕を殴りにかかる。

「なんでアイツは昔っからああなのよ!こっちの気もしらないで。あたしがどんだけ考えたと思ってんのよ!こんちくしょう!」

枕を叩きに叩いた私は殴るのを止めて最後に枕に叩き付けた手を見つめる。

⏰:08/11/26 04:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#730 [果樹]
「・・・・遊園地デートの・・はずだったのに・・・」

気分がすっかり落ち込んでしまった私は、その夜なんだか寝つけなくて、うんうん唸っているうちにいつのまにか朝を迎えてしまった。

――――・・・

学校行きたくない・・・。

私は何度目かになる溜め息をついて重たい足を引きずるように学校へと続く道を歩く。

⏰:08/11/26 04:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#731 [果樹]
雀がさえずり太陽がサンサンと降り注ぐ朝に、こんな落ち込んだ気持ちで登校するのも如何なものかと思うが、昨日のことを思い出せば私の気分はより一層落ち込む。

はぁ・・とまた溜め息が漏れる


「ユーイカ!おっはよ」

「おはよー・・」

⏰:08/11/26 18:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#732 [果樹]
朝から元気に挨拶をしてくれる圭ちゃんに私は口元だけの弱々しい笑みを返す。

「ん?なんで元気ないの?昨日は楽しい楽しい遊園地デートだったんでしょ?」

「・・・うん。まぁね」

さも楽しかったんでしょ?という顔をする圭ちゃんに私は、苦笑いしか返すことができなかった。

⏰:08/11/26 18:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#733 [果樹]
教室に入りみんなに軽く挨拶を済まして私は真っ先に自分の椅子に座り机に突っ伏す。

いつ京太が入ってきても目を合わせないための防衛策だ。

そんな私の行動の裏が読めない圭ちゃんは机の側に立って不思議そうに私を見下ろす。

「あ!きょんおはよー」

圭ちゃんの言葉にドキッと心臓が跳ねる。

⏰:08/11/26 18:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#734 [果樹]
「はよ・・・」

京太の声も聞こえる。
どうやら京太が登校したようだ。

「あのさ、ユイカ・・・」

ドキッ・・!

「あああああたしトイレいくんだったー。じ、じゃあね圭ちゃん」

京太に名前を呼ばれた私はどうしたらいいか分からず圭ちゃんにだけバイバイを言ってとりあえずその場から逃げた。

⏰:08/11/26 18:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#735 [果樹]
――――・・・

朝からユイカの態度はおかしかった。

昨日楽しんだはずなのだから今日はルンルン気分で登校するのだろうと思っていたがユイカは溜め息ばかり。

挙句の果てにはきょんがユイカに話しかけるやいなやユイカは慌てた様子で教室を出ていってしまった。

⏰:08/11/26 18:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#736 [果樹]
ちらりときょんを見ると下唇を噛んでなんともいえない困った顔をしていた。

私の視線に気付いてすぐに席に戻っていったがなんかおかしい。

これは恋のキューピッドの出番か?
と思った私はきょんの席に行きバン!と机を叩く。

「きょん。どういうこと?」

⏰:08/11/26 18:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#737 [果樹]
バンッ!と机を叩くとビクッときょんの肩が弾む。

「どういうことよ?ユイカのあの動揺っぷりはただ事じゃないんでしょ?白状しなさい」

私が目に力を入れてきょんを睨むときょんは気まずそうに目をそらしてちらっと私を見る。

「実は・・・」

京太は昨日の遊園地デートから今に至るまでの経緯を話だした。

⏰:08/11/27 03:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#738 [果樹]
――――・・・

「はぁ・・・」

教室から逃げ出した後、私は一人屋上に来ていた。

気まずいからといって無視して逃げ出したのはいけなかったかもと今更ながら思う。

でもどうしようもないのだ。

⏰:08/11/27 03:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#739 [果樹]
昨日あんな喧嘩別れをしておいて今日になっていつもどうりにしろだなんて無器用な私には到底無理な話しなわけで。

そんな性格だからこそ逃げるしかなかったのだ。

「はぁー・・」

と一際長い溜め息をつき、私は屋上の柵に寄りかかる。

京太の考えがわからない・・・。

⏰:08/11/27 03:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#740 [果樹]
京太は何を思ってる?
あたしはどうしたらいい?

――――・・・

「なんでアンタたちは・・・」

話を聞いた私は頭を抱えてうなだれる。

「それでさっきユイカに謝ろうと思ったら逃げられて・・・」

小声で言うきょんからはユイカへの謝罪の気持ちでいっぱいなのが伺える。

⏰:08/11/27 03:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#741 [果樹]
全くこの子たちは・・・。

「はぁ・・・。あのさーきょん」

「ん?」

「まだわかんないの?」

「何が?」

私の問いにハテナを浮かばせるあたりまだわかっていないのだろう・・・。

「何できょんは昨日怒ったの?」

⏰:08/11/27 03:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#742 [果樹]
「それはユイカが絡まれてたから・・・」

「何でユイカが絡まれてたからって怒るの?」

「一応幼馴染みだし・・」

「それだけ?」

私の問掛けに素直に答えるきょんに私はさらに問つめる。

「え?」

⏰:08/11/27 03:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#743 [果樹]
「それだけなの?ユイカはただの幼馴染みなの?きょんは・・もう気付いてるんじゃないの?」

目で訴えかけるように私はきょんに静かに問掛ける。

「もし自分の気持ちがわからないならわからないなりにユイカに素直にきょんの気持ちを伝えたらいいのよ」

それだけ言って私は自分の席に戻った。

⏰:08/11/27 03:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#744 [果樹]
あとはきょんが自ら考えるべきことだから・・・。


その後きょんは教室を走って出ていった。

きっとユイカのもとへ行ったのだろう。

がんばれきょん!

私は秘かにきょんに向けてエールを送った。

⏰:08/11/27 03:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#745 [果樹]
――――・・・

「はぁ・・・」

私は今だ屋上にいた。

ここにいつまでも居るわけにいかないのになぁ。

でも教室に行ったら京太いるし・・・。

逃げてるわけにいかないのは、自分でもわかっているのに、体が言うことをきかない。

⏰:08/11/28 17:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#746 [果樹]
私は憎たらしいほどに青い空を見上げて、独り言にしては大きい声を出す。

「京太のばーか」



「誰がばかだ」


えっ?!

私の心臓がドクンと跳ねる。
私しかいない屋上で、私の独り言に返事が返ってくるわけがない。

⏰:08/11/28 17:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#747 [果樹]
でも・・・まさか・・・。

私はゆっくりと声の聞こえた方を向く。

「京・・・太」

見るとそこには息切れしている京太がいた。

「つかお前何で屋上なんかにいんの?すっげ探したじゃん」

「べ、別にあたしの勝手じゃんっ!」

⏰:08/11/28 17:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#748 [果樹]
探してくれて嬉しいくせに可愛くない言葉が口からは出る。

「可愛くなーい」

「うるさいっ!」

ぷうっと頬を膨らます京太に私はいつもの癖で言葉を返す。

・・・これじゃあいつもの口喧嘩だ。

いつも通りに話せて嬉しいけど、このままでは終わらせたくない私がいた。

⏰:08/11/28 17:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#749 [果樹]
そんな心の表れからか、私は京太から視線をずらす。

「何しに来たの?もう授業始まるよ?」

口からは冷たい言葉が出る。

「ユイカ・・・ごめんっ!」

いきなり大声で謝られて驚いて見れば、京太は、腰を90度近く折り曲げて頭を下げていた。

⏰:08/11/30 06:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#750 [果樹]
私が京太を見たまま黙っていると京太がぽつりぽつりと話し始めた。

「ユイカが変な男に絡まれてるのみて俺カーッとなっちゃって。でもそんなんで怒ってるの知られてうざいって思われるのも嫌だったんだ・・・だから・・・」

下を向きながら言う京太は落ち着かない様子で何度も髪をクシャッとかく。

⏰:08/11/30 06:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#751 [果樹]
ああ・・・。
そうだった。
京太は昔から人に嫌われるのを極端に嫌う人だった。

京太は結局私のことなんてなんとも思ってないんだ・・。

「もう・・・いいよ」

私は諦めにも似た返事をする。

⏰:08/11/30 06:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#752 [果樹]
「よくないっ!」

京太がいきなり大声を出すものだからびっくりして肩が跳ねる。

「俺・・よくわかんないんだけど、多分圭が男に絡まれててもあそこまで怒らなかったと思う。でも、ユイカが絡まれてるのみたらなんかムカついて・・・。ユイカだから・・・ユイカだったから」

言っている意味はわかるのに、京太が言おうとしていることがわからない。

⏰:08/11/30 06:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#753 [果樹]
「京太は・・・あたしをどう思っているの?」

流れる沈黙。

顔を上げない京太。

聞いた私が馬鹿だった。
今まで通りでいいんだ。
それが一番なんだ。

「ごめん。今のは忘れて」

立ち上がって、うつ向いて立っている京太の横を通りすぎる。

⏰:08/11/30 06:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#754 [果樹]
今まで通りの幼馴染み。
それがいいんだ。

私は校舎内に通じるドアを開ける。

「ユイカ!」

後ろから大声で名前を呼ばれた反動でドアノブから手を離してしまった。

ドアはそのままバタンとしまる。

⏰:08/11/30 06:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#755 [果樹]
「俺・・・まだよくわかんないんだけど、ユイカのことは手放したくない」

それは友達としてでしょ?

「友達としてじゃなく男として手放したくないんだ!」

まるで私の心の声に答えるように京太が大声で叫ぶ。

⏰:08/11/30 06:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#756 [果樹]
「この気持ちがなんなのかまだわからないんだけど・・・。でも」

「もういい」

京太が喋っている上に私は言葉を重ねる。

「もういいよ」

くるりと京太の方を向く。

「京太のばーか!」

大きな声での悪口。

⏰:08/11/30 06:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#757 [果樹]
「なっ・・・ユイカのバーカ!」

いつのまにか私は笑顔になっていた。

笑顔の私を見てほっとしたのか京太がいつものように言葉を返す。

これが私達流の仲直りの形。

「早く教室に戻ろう?」

ギッとドアを再び開けて私は京太の顔をみる。

⏰:08/11/30 06:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#758 [果樹]
「おう!」

京太もニヒッと顔をクシャクシャにして笑う。

――――・・・

トントンと二人で階段を降りていく。

京太の背中を見ながら私は笑顔が溢れる。

嬉しかった・・・。

友達としてではなく、男として手放したくないって言ってくれて嬉しかった。

⏰:08/11/30 06:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#759 [果樹]
京太が私を好きとかまだわからないけど、今はそれだけで十分だった。

今日は幼馴染みから一歩進めた、私の中での記念日。

友達以上の幼馴染み。
恋人は未定。

だけど私たち二人の時計はまだ動き始めたばかり・・・――

【 友達以上恋人未定 】

―end―

⏰:08/11/30 06:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#760 [果樹]
.
ねえ、先輩。
先輩はあたしのこと好きですか?



Story.7

【 先輩へ 】

.

⏰:08/12/02 22:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#761 [果樹]
私、柏木幸香の日課。
それは、私の彼氏である冴木滉太先輩の寝顔を毎朝拝むこと。

冴木先輩は、今では大学生だけど、半年前までは私と同じ楠行高校に通っていた。

約一年前、入学したての私は、かっこいいと噂の冴木先輩に一目惚れ。

猛アタックの末、付き合うことになったのが3ヶ月前。

⏰:08/12/02 22:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#762 [果樹]
高校生と大学生じゃ時間帯がずれてしまってなかなか会えないため、私はこうして秘かに会いに来ているのだ。


今日も先輩かっこいい〜。
っとやばい!遅刻しちゃうっ!

先輩の寝顔に見とれて時間を気にしていなかった私は、急いで鞄を持ち、先輩の部屋を静かに出ていく。

⏰:08/12/02 22:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#763 [果樹]
大学入学と同時に、一人暮らしを始めた先輩に貰った部屋の鍵を閉めてポケットにしまう。

「いよっし!」

軽い気合いを入れて、私は学校に向かった。

――――・・・

「結女おはよー」

「おはよう幸香」

⏰:08/12/02 22:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#764 [果樹]
教室に入って、私が一番に挨拶をするのは親友の結女。

一見可愛い顔立ちなのに、冷静沈着でさっぱりした性格の結女に、私はいつも助けられていて、正真正銘の親友だ。

「今日も冴木先輩のとこに行ってきたの?」

「もちろん♪」

「相変わらずだね」

⏰:08/12/02 22:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#765 [果樹]
若干飽きれ気味に言われるが、私からは幸せな笑顔しか溢れないことを結女は知っている。

しかし、次の瞬間私の気分は一気に地の底まで沈む。

「幸せなのはいいけど、一限から数学の小テストだよ」

「・・・・。忘れてたー!!!」

「だと思った」

⏰:08/12/02 22:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#766 [果樹]
はぁと溜め息をつく結女の横で、私はアワアワと一人焦る。

もちろん数学の小テストは言うまでもなく無惨な結果で終わった。

――――・・・

昼休み、結女とお弁当を食べていると制服のポケットの中で携帯が震えた。

⏰:08/12/03 11:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#767 [果樹]
携帯を開くと冴木先輩からメールが来ていた。


今日うち来て。
鍋食いたい。


メールの文章は、毎度の事ながら至ってシンプル。

それでも私の顔は緩む。
そんな私の表情を見逃さない結女。

⏰:08/12/03 11:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#768 [果樹]
「冴木先輩から?」

「うん!鍋食べたいんだって」

「鍋?この時期に?」

私の言葉に、結女が怪訝な顔をする。

確かに、と思いながら私は苦笑いを溢した。

⏰:08/12/03 11:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#769 [果樹]
――――・・・

スーパーで鍋に入れる食材を買った私は、今、先輩の家で、鍋をテーブルの真ん中に置き、向かい合って座っている。

箸で鍋の中の食材に手を伸ばす先輩は、楽しそうで可愛かったが、私は結女と話していた時から疑問に思ってた事を口にする。

⏰:08/12/03 11:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#770 [果樹]
「先輩・・鍋って普通冬にやるものですよね・・?」

「うん」

「今夏ですよね?」

「うん」

「暑くないですか?」

「夏だからね」

私の問掛けに普通に返す先輩。

⏰:08/12/03 11:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#771 [果樹]
鍋が食べたいと言うのは別にいい。
人それぞれ好きなものもあるし、それは好みだと思う。

でも夏に鍋。
しかも1ルームの小さな部屋で、二人だけで鍋。

暑いときに熱いものの組み合わせ。

普通は素麺とかサラダうどんとかが定番のはずじゃ・・。

⏰:08/12/03 11:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#772 [果樹]
いや、でも先輩くらいになるとまた違うのか・・・?


私が一人考えを巡らせていると、向かいに座っている先輩が吹き出す。

「ぷっ・・何百面相してんの」

「し、してないですよ!」

恥ずかしくなった私は、誤魔化すように鍋に手を伸ばす。

⏰:08/12/03 11:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#773 [果樹]
「そう?」

「そうです」

「ふーん」

納得したのかしてないのか、先輩はそれ以上何も聞いてこなかった。

――――・・・

時計の針が9時を回った頃、私は鞄を手に玄関へと向かう。

⏰:08/12/04 06:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#774 [果樹]
私はローファーをはいて、くるりと先輩の方を向く。

「それじゃあ帰ります」

「本当に送っていかなくていいのか?」

眉根を下げて心配そうにしている先輩。

帰る数分前、送っていくという先輩の申し出を、私は断固として断った。

⏰:08/12/04 06:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#775 [果樹]
理由は、私なりの心遣い。

先輩は大学が終わったあと、深夜遅くまでアルバイトをしている。

だからアルバイトが無い日くらい、ゆっくり休ませてあげたかったのだ。

まぁ、先輩には理由は話さずに、堅くなに拒否し続けただけだったが、その結果、結局先輩が折れたのだ。

⏰:08/12/04 06:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#776 [果樹]
でも、心配されるのはやはり嬉しい。

「大丈夫ですよ!先輩明日もバイトがあるんですからゆっくり休んで下さい」

にこっと笑う私の頭を、ぽんぽんと先輩が優しく叩く。

「わかった。じゃあ家着いたらメールして」

⏰:08/12/04 06:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#777 [果樹]
そう言いながら先輩の顔が近付いてきた。

大好きな先輩の顔が近付いてくるのに、戸惑いながらも、目を閉じるとちゅっと首筋にキスをされた。

「へ・・?」

てっきり口にキスをされると思っていた私は呆気にとられる。

目を開けると目の前に先輩の顔があって、悪魔のような笑顔で笑っていた。

⏰:08/12/04 06:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#778 [果樹]
「期待した?」

心を見透かしたような先輩の言葉にカァッと顔が赤くなる。

「してませんっ」

「そう?」

恥ずかしくて強めに言うと、先輩は口に手を当ててククッと笑う。

もうっと先輩を軽く叩いくと頭をぽんぽんと軽く叩かれた。

⏰:08/12/04 06:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#779 [果樹]
「家着いたらメールして」

優しい笑顔で言う先輩にはいと返事をして、私は先輩の家を後にした。

――――・・・

無事家に着いた私は、すぐに携帯を開き、メールの新規作成画面を開く。

⏰:08/12/04 20:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#780 [果樹]
家に着きました!
今日は楽しかったです☆
明日バイト頑張ってください!
じゃあおやすみなさい


メールを送った後、パチンと携帯を閉じて、服を着替える。

ふと鏡を見て、首筋にある赤い痣に目が止まる。

何これ?

⏰:08/12/04 20:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#781 [果樹]
不思議に思いながら指先で赤い痣に触れる。

ここは先輩がキスした場所・・・。
まさか・・これってキスマーク?!

赤い痣の正体がわかった途端、私の顔は、ボボッと沸騰したかのように赤くなる。

「先輩のばか・・」

⏰:08/12/04 20:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#782 [果樹]
悪態をつきながらも顔の緩みは隠せない。

恥ずかしく思いながらも、私はそんな小さなことに幸せを感じていた。

だからこそ、こんな幸せな日々に終りが来るなんて、この時の私には想像も出来なかった。


ねぇ、先輩?
先輩はこの時、私のことどう思っていたの?

⏰:08/12/04 20:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#783 [果樹]
――――・・・

「今日も先輩のところ?」

放課後、ルンルン気分で帰り支度をしていると、結女がピトッと私に寄り添うようにくっつく。

「うん!ご飯作って待ってようかと思って」

笑顔で言う私とは正反対に、結女はしゅんと悲しそうな顔をした。

⏰:08/12/05 08:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#784 [果樹]
「たまには私とも遊んでね?」

そんな可愛いことを上目使いで言う結女に、キュンと胸を射ぬかれる。

結女の頭をいいこいいこするように撫でて、「当たり前でしょ」と言うと、結女は可愛い笑顔を見せた。

先輩と仲良くね、と、手を振る結女にバイバイをして、私は教室を出る。

⏰:08/12/05 08:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#785 [果樹]
――――・・・

「牛肉、玉葱、人参、じゃが芋。ルーも入れたし生クリームもバッチリ!」

スーパーに来た私は、今日の夕食のビーフシチューに使う食材が、入ったカゴの中を確認する。

「後はー・・あ!飲み物」

足りない飲み物を買い足すために私はドリンクコーナーに足を向ける。

⏰:08/12/05 08:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#786 [果樹]
「よしっ!オッケー」

ビーフシチューを作るための食材がそろったところでレジに向かいお会計を済ませる。

――――・・・

スーパーの袋を右手にアパートの階段を上る。

鞄から鍵を出し、先輩の部屋のドアを開けると玄関には、靴が何足も並んでいた。

⏰:08/12/05 08:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#787 [果樹]
あれ?今日バイトって言ってたのに・・・。

不思議に思いながらも、家の中に入ると台所と部屋を仕切るドアの向側からたくさんの声が聞こえた。

ドアの向こうは、ガヤガヤと賑わっているようだ。

私は、何の疑いもなく、バイトを休んで友達といるのだろうと思った。

邪魔しちゃ悪いかな。

⏰:08/12/05 08:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#788 [果樹]
一先ず食材を冷蔵庫に入れるため冷蔵庫を開ける。

今日は帰った方が良さそう。


冷蔵庫に食材を入れながら、ドアの向こうの音に、聞耳をたてていると先輩の声が聞こえた。

「友美飲んでるかー?」

私以外の知らない女の名前を呼ぶ先輩。

⏰:08/12/05 08:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#789 [果樹]
続いて知らない女の声が聞こえた。

「飲んでるー。ていうか滉太って彼女いるのー?」

甘ったるい猫撫で声で喋る女に少し苛立ちを覚える。

でも次の瞬間、私は幸せな気持ちに包まれる。

「いるよー」

「どんな子ー?」

⏰:08/12/05 08:24 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#790 [果樹]
「どんなってー2個下の高校生」

先輩が、ちゃんと私のことを話してくれたことが、すごく嬉しかった。

先輩の彼女として、ちゃんと自分ができてるかすごく不安だったから、嬉しかった。


でもそれは、ほんの一時だけで、次の瞬間、私の気分は深い谷底へと落ちていった。

⏰:08/12/05 08:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#791 [果樹]
「えー2個下とかガキじゃん!あたしと付き合おうよぉ」

「んー・・まぁお前ならー・・」


先輩の言葉を聞いた瞬間、大きな音を立てて食材が手から落ちた。


今、何テ言ッタノ・・・?


私ハモウイラナイ?

⏰:08/12/19 07:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#792 [果樹]
必要ナクナッタ?

先輩ニトッテ私ハ、ナニ?


「幸香・・」

名前を呼ばれて、現実に戻ってきた私の目に写ったのは、先輩の姿と先輩の腕に手を絡ませている見知らぬ女。

音に驚いて、台所の様子を伺おうとドアを開けたのだろう。

⏰:08/12/19 07:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#793 [果樹]
先輩は気まずそうな目で私と見知らぬ女を交互に見る。

「ごっごめんなさい!すぐ帰ります」

そんな状況に耐えられなくなった私は、転がった食材をそのままに、鞄を持ち部屋を飛び出した。

「幸香!」

後ろからは、私を呼ぶ先輩の声が聞こえたが、私は聞こえない振りをして走った。

⏰:08/12/19 07:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#794 [果樹]
――――・・・

「幸香っ・・・待てって!」

パシッと手を掴まれて、体力の限界にきていた私の足はゆっくりと止まる。

どのくらい走ったのか、息は絶え絶えで、視界は涙で霞んでいた。

「俺の話・・聞いて?」

手を掴まれたまま、くるりと先輩の方を向かされた。

⏰:08/12/19 07:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#795 [果樹]
私は下を向いたまま、嫌々をするように横に首を振る。

そんな私に構わず、先輩は話し出す。

「あれは別に、幸香と別れたいっていってるんじゃなくて・・・」

何も聞きたくない。
先輩の声が届かない。

私は出来る限りの声を振り絞るように出す。

⏰:08/12/19 07:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#796 [果樹]
「先輩は本当に私のこと好きですか・・・?」

涙で霞んだ視界でも、先輩が一瞬戸惑った表情をしたのがわかった。

私は、視線を右手の薬指で光っているものに移す。

それは、付き合った当初、先輩に道端で買ってもらった指輪。

ダイヤが埋め込んであるわけでも、ブランド品なわけでもなかったけど、私には何より大切なものだった。
私はそれをそっと外す。

⏰:08/12/19 07:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#797 [果樹]
「これ返します・・。さようなら・・」

押し付けるように、先輩の手に指輪を握らせて私は、また背を向けて走り出した。

終わったんだ・・・。
先輩とはもう終わったんだ。

私は、溢れ出る涙をゴシゴシと手の甲で拭きながら走った。

⏰:08/12/19 07:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#798 [果樹]
――――・・・

先輩に別れを告げてから3日が経った。

私は、何もする気が起きず、朝から晩まで学校にも行かずにぼーっとしている。

携帯を開くと先輩から電話やメールが来るから電源はずっと切ってある。

先輩からのメールを見たらきっと返してしまうから。

⏰:08/12/19 10:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#799 [果樹]
白いテーブルに片腕を伸ばして、頭をその片腕に乗せて、定まらない視線を部屋の中に巡らせる。

ふと箪笥の上に飾ってある写真立てに目が行く。

それは先輩と二人で写っている写真。

付き合う前、先輩の卒業式の日に、一緒に撮ってもらったものだった。

目から溢れた暖かいものが、頬を濡らす。

⏰:08/12/19 10:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#800 [果樹]
私は声を出すわけでもなく、涙はゆっくりと頬を流れた。


コンコン

一人、部屋で思い出に浸っていると部屋のドアを叩く音が聞こえた。

私は流れた涙をゴシゴシと手の甲で拭き取る。

カチャッとドアノブが回り、ドアの隙間から結女が顔を覗かせた。

⏰:08/12/19 10:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#801 [果樹]
「幸香?」

「結女・・・」

結女の顔を見たら涙が出そうになった。

結女は、そんな私を何を聞くわけでもなく、優しく抱き締めてくれた。

私はそのぬくもりに身を委ねるように、結女の胸で声を出して泣いた。

「ゆめぇ・・・ぐすっ・・ひっ」

⏰:08/12/19 10:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#802 [果樹]
――――・・・

どのくらい泣いたのか覚えてないけど、結女は、私が泣き病むまで何も言わずにただ抱き締めてくれた。

涙も収まり落ち着いた頃を見計らって、結女が静かに話だした。

「学校に来ないから心配したよ?メール送っても返事ないし」

「ごめん」と小さな声で言うことしか出来なかった。

⏰:08/12/22 03:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#803 [果樹]
「幸香が学校に来ない間に、冴木先輩来たよ」

先輩の名前に心臓がドキッと反応する。

「事情聞いた・・・」

「そっか・・・。もう・・ね、終わっちゃったんだ」

無理矢理笑顔を作って、結女に笑いかけると結女は辛そうな顔をする。

あたしのことなのに結女はまるで自分のことのように悲しんでいた。

⏰:08/12/22 03:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#804 [ピノ]
頑張ってください!

⏰:08/12/27 15:59 📱:P703i 🆔:☆☆☆


#805 [我輩は匿名である]
>>1-200
>>201-400
>>401-600
>>601-800
>>801-1000

頑張ってください

⏰:08/12/27 19:47 📱:F906i 🆔:DX2CQXoM


#806 [果樹]
ピノさん、我輩さん
ありがとうございます
久々の更新です!

⏰:09/01/15 14:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#807 [果樹]
「先輩、幸香と話したいって言ってたよ」

「うん・・・」

「元気になったら学校おいでね?待ってるから」

「うん・・・」

私の返事を聞いた結女は優しい笑顔を見せて、部屋を出ていった。

ぽつんと一人になった部屋で私は再び写真を見る

⏰:09/01/15 14:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#808 [果樹]
その中では私が幸せそうに笑っていた

先輩は私のことすきだったのかな

それも、もうわからない

付き合えたから好かれてると思ってたけど

本当はいつも不安だった

先輩は人気があって格好いいから
いつか私から離れていくんじゃないかって

⏰:09/01/15 14:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#809 [果樹]
いつも不安で押し潰されそうだった

先輩・・・先輩・・・
本当は今でも大好きです・・・

――――・・・

重たい足を引きずるように私は学校に向かう

周りでは朝の挨拶が飛び交うけどそんな晴れやかな気分になれない私は、うつ向いたまま教室に入る

⏰:09/01/15 14:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#810 [果樹]
「幸香・・・!」

教室に入るといきなり名前を呼ばれた

振り替えると心配そうに私を見る結女が立っていた

「結女・・・おはよう」

「おはよう・・・」

私が力なく笑うと結女も悲しそうな顔をした

心配させちゃ駄目ってわかってるのに

情けないね

⏰:09/01/15 14:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#811 [果樹]
ぼーっとしていると先輩のことばかり考えてしまう私は、出来るだけ授業に集中して何も考えないようにただただぺンを走らせた

――――・・・

「また月曜ねー」

「ばいばーい」

放課後になると教室内には帰りの挨拶が飛び交う

そして次々に生徒は教室を去っていく

⏰:09/02/14 02:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#812 [果樹]
なんとなくまだ帰りたくない私は、机に頬杖をついてぼんやりと茜色の空を眺めていた

「幸香・・・」

弱々しく呼ばれて振り向くと結女がいた

「先輩に連絡とった?」

結女の質問に私はただ静かに首を横に振る

⏰:09/02/14 02:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#813 [果樹]
「これ・・・読んで」

結女から手渡された1枚の紙切れ

結女は私にそれを手渡すと教室から出ていった

一人になった教室で私は綺麗に折り畳まれた紙切れを開く

そこには見慣れた綺麗な文字が刻まれていた

⏰:09/02/20 06:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#814 [果樹]
幸香へ

傷付けて悪かった

幸香は俺の前ではいつも笑っていたから、初めて涙を見たとき、俺は取り返しのつかないことをしたんだと思ったよ

まだ怒ってる・・・よな
あたりまえだよな

⏰:09/02/20 06:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#815 [果樹]
でもあれは浮気なんかじゃなかったんだ

酔った勢いって言ったらそれまでかもしんねぇけど、俺は今でも幸香を大切に思ってる

高校の時は、なんだこのしつこい女って思ってすげぇうざかったたけど、大学になってからもお前は、俺のことを好きでいてくれて・・・
俺はお前に会えてよかったと思ってる

⏰:09/02/20 06:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#816 [果樹]
また幸香とやり直したい

今度は俺がお前を追い掛けるから


手紙の最後の行には、書いてから恥ずかしくて消したのであろう文字が薄く残っていた。

「ばか・・・」

憎たらしい事を言う口とは裏腹に、私の目からは暖かいものが流れて、紙に染みを作った。

⏰:09/02/20 06:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#817 []
あげ

⏰:09/08/24 09:36 📱:SH904i 🆔:xGNd0/7M


#818 []
>>1ー50
>>51ー100
>>100ー150
>>151ー200
>>201ー250
>>251ー300
>>301ー350
>>351ー400
>>401ー450
>>451ー500
>>501ー600
>>601ー700

⏰:09/08/24 18:53 📱:SH904i 🆔:xGNd0/7M


#819 []
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:09/08/24 18:56 📱:SH904i 🆔:xGNd0/7M


#820 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/08 20:24 📱:Android 🆔:xK0uSzd2


#821 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/08 20:26 📱:Android 🆔:xK0uSzd2


#822 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>780-810

⏰:22/10/08 20:27 📱:Android 🆔:xK0uSzd2


#823 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>780-820

⏰:22/10/08 20:27 📱:Android 🆔:xK0uSzd2


#824 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>30-60

⏰:22/10/08 21:02 📱:Android 🆔:xK0uSzd2


#825 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>60-90

⏰:22/10/08 21:03 📱:Android 🆔:xK0uSzd2


#826 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>85-100

⏰:22/10/08 21:04 📱:Android 🆔:xK0uSzd2


#827 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/18 00:33 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#828 [○○&◆.x/9qDRof2]
cosmic dust


 夕方になり、長い勤務時間から解放されても、帰りの電車がたまたま空いていてゆったり座れても、こころにかかったモヤモヤが消えることは無かった。気だるいのは、会社に忘れていた傘を二本と、取手の小さいカバンを持っているからではない。

⏰:22/10/18 13:58 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#829 [○○&◆.x/9qDRof2]
何ヵ月も開いていないスケジュール帳が、カバンの底で異様に重たく、自分の存在よりも大きな影として、そこに鎮座(ちんざ)しているのだった。わたしは、湖の底と同じくらい「暇」なのだ。

⏰:22/10/18 13:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#830 [○○&◆.x/9qDRof2]
去年の末から春に向けて、世の中がめまぐるしく変化して行く中で、わたしの暇に歯止めがかかることは無かった。それは新しいスマートフォンを買っても解決しなかった。わたしには考えることすら見当たらなかったので命や人生について考えようとした。

⏰:22/10/18 13:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#831 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし、わたしの生命とか存在なんていうものは、もう潰すところが無くなったプチプチのようなもの。これにすらエアークッションという、仕組みと目的が明確にされた素晴らしい名前が付いている。

⏰:22/10/18 13:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#832 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしは大学を卒業し、なんとなくいまの会社に入り、名前を奪われたのだ。千と千尋の神隠しのように、それはとても忙しい毎日を過ごしていた。しかし、わたしは忙しいということに満足してしまい、自分という個性の存在を求められていないことに気付かなかったのだ。

⏰:22/10/18 13:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#833 [○○&◆.x/9qDRof2]
そして、木から葉っぱが散るように、わたしの予定はポツポツと穴が開き、誰もいなくなった教室の扉を閉めるように、スケジュール帳は閉じられた。夕暮れ時の、小雨が降る中を電車は走っている。

⏰:22/10/18 13:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#834 [○○&◆.x/9qDRof2]
天井の裏にあるパンタグラフが火花を散らす音がする。大きい駅に着いたとき、大勢の乗客が乗り込んできた。わたしは椅子の端にからだと鞄と傘を寄せ集め、ひとりでも多くの乗客が座れるようにと心がけた。車内は瞬く間に人で埋め尽くされた。

⏰:22/10/18 14:00 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#835 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし、わたしが座る椅子にだけ誰も座ることは無かった。大きい駅から発車するとき、わたしの目の前に立つ乗客たちは慣性(かんせい)の法則にしたがい斜めに傾いた。それはまるでシンクロナイズドスイミングのように統率された動きだった。

⏰:22/10/18 14:00 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#836 [○○&◆.x/9qDRof2]
そして窓の外を見ると、建物までがシンクロしているように傾いて見えた。わたしは、このまま世界に取り残されるのではないかという錯覚がした。わたし以外のすべてのものはこのまま進行方向に走り、ビルや高速道路、地球の自転、そして太陽を回る軌道からも放たれて、宇宙空間にただ座っているだけの自分になってしまうのではないか、そう思うと寒気がした。

⏰:22/10/18 14:00 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#837 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかしわたしの運命は、火の鳥に罰せられて無限の彼方を放浪(ほうろう)させられる訳でもなく、ただ電車の時刻通りに進行方向に運ばれて行くだけだった。きっとわたしは、からだが緊張していて慣性の法則を辛うじて防いだだけなのだ。

⏰:22/10/18 14:00 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#838 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしは何も特別では無いのだ。ただ楽しそうに音楽を聞いていたり、スマートフォンを指で擦って楽しんでいる人が目の前に立っていたせいで緊張していただけなのだ。鉄道や道路は、都市という巨体を動かすための血管のような物だ。

⏰:22/10/18 14:00 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#839 [○○&◆.x/9qDRof2]
血液である乗客は、それぞれの役割を果たすために毎日運ばれ、同じところをグルグル廻ることでしか生きられないのだ。しかしわたしは、鞄の底に眠っているスケジュール帳の重みを感じれば感じるほど、まるで耳栓をしているように、血液の流れる音が遠くに消えていく気がするのだ。

⏰:22/10/18 14:01 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#840 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしは乗客を見渡し、彼らが蝋人形(ろうにんぎょう)のように見えることに気が付いた。他人の表情を読み取れないなんて、自分の感性が錆びてしまったのでは無いかと思い、一瞬ヒヤリとしたのだが、やはり彼らの顔はのっぺらぼうのようになっていた。

⏰:22/10/18 14:01 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#841 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしの椅子の横に、ひとりの男が腰掛けた。静止したように思える車内で、わたしと彼だけが鮮明にそこに存在しているような気がした。彼は声を掛けては来ないが、明確な目的を持ってわたしの横に座ったことに間違いはない。

⏰:22/10/18 14:01 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#842 [○○&◆.x/9qDRof2]
そして彼は、首をくるっと廻してわたしの方を見た。男はまんまるとした眼球をこちらに見やり言った。

「あなたは宇宙に必要とされていません」

意味が分からなかった。

⏰:22/10/18 14:01 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#843 [○○&◆.x/9qDRof2]
「次の駅で降りるか、このまま消えて無くなるのかを選ばせてあげます」

頭のおかしい奴もいるものだと思った。わたしは元々次の駅で降りるつもりだったので、電車が止まると黙ってそこから離れたのだ。

⏰:22/10/18 14:01 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#844 [○○&◆.x/9qDRof2]
ホームに降りると、背後で扉のしまる音が聞こえた。いつもは乗り降りのたくさんある駅だが、いま、ホームにいるのはわたしだけだった。電車が発進し、走り去る姿をなんとなく見ていた。

⏰:22/10/18 14:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#845 [○○&◆.x/9qDRof2]
すると、進行方向の空が、曇り空を割って急に光輝いた。電車はそのまま光に向かい、大蛇が鎌首を持ち上げるように、線路から離れ、雲の向こうに走って行った。未知なる存在によって、人々が誘拐されている。

⏰:22/10/18 14:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#846 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし世間は、誰もそのことに触れようとしなかった。わたしの会社でも、毎日のように従業員が減っていったのだが、居なくなった者のことは、一切話題にならなかった。いつもと変わらない毎日の中で、ただ周りからひとが消えて行ったのだ。

⏰:22/10/18 14:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#847 [○○&◆.x/9qDRof2]
ある晩、両親と妹とわたしの四人で晩御飯を食べていた。テレビのニュースキャスターは毎日のようにひとが変わっているが、無論、そんなことは話題にならなかった。わたしは家族に話しかけることはほとんどしないのだが、自然と涙がポツポツとこぼれて来て、自分が体験したこと、世の中が異常なことを話し始めた。

⏰:22/10/18 14:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#848 [○○&◆.x/9qDRof2]
一通り話し終えてから三人の顔を見ると、蝋人形のようなのっぺらぼうになっていた。わたしは思わず叫び声を上げ、自分の部屋に逃げ込む。部屋の扉に鍵をかけ、ベッドに飛び込んだ。そして扉のほうを見ると、あの丸い目をした男が立っていた。

⏰:22/10/18 14:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#849 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしは男に、一体なんのつもりなのかを聞いた。男が両手を翼のように広げると、部屋の天井がなくなり、大きな映像が映し出される。そこには、空中に浮かぶ大きな都市が写し出されていた。画面は拡大され、巨大なビル群の間を、スーツを着た人々や、作業着を着た人々が規則正しく、碁盤の目のように整備された道を往来していた。

⏰:22/10/18 14:03 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#850 [○○&◆.x/9qDRof2]
みんな顔は無表情だったが、ただ働くことだけに集中しているようだった。男は語り始めた。

「ある一定の水準まで文化を成長させた種族を、我々は迎えに来たのだ。この星に住む生物の種は元々は我々が蒔いたのだよ。我々は天に住まうもの、あなた方は労働力なのです。特にこの日本という島に生息するホモサピエンスは、よく働いてくれるのです」

⏰:22/10/18 14:03 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#851 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あなたはなぜ、宇宙に必要とされていないのか解りますか?」

わたしは、カバンの底に眠るスケジュール帳の存在を思い出した。わたしがどうしても暇だから、そして何も努力をしないからだろうか。

⏰:22/10/18 14:03 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#852 [○○&◆.x/9qDRof2]
周りの友人や家族や、いろんなひとがあの空中に浮かぶ都市に連れて行かれているのに、自分はそんなにも必要とされていないなんて。

「あなたは、地球人ではないのです」

わたしは宇宙人だったのだ。

⏰:22/10/18 14:03 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#853 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしのまわりはそのことに気付いていたのかも知れない。だからみんな、自分に仕事をさせなかったのだ。わたしは、自分の両親が橋の下で拾ってきた子だと言われて育てられてきた。冗談だと思っていたが、わたしは地球人に拾われた宇宙人だったのだ。

⏰:22/10/18 14:03 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#854 [○○&◆.x/9qDRof2]
「二十年前、この星を調べに来たあなたの本当の両親は、あなたを実験台に使ったのです。地球人に育てられた者は、一体どう育つのか。そして、あなたの目を通して地球人の暮らしや、文明の水準を探ろうとしたのだ。しかしあなたは、我々にも、地球人にも成れなかったのです。あなたは明らかに、パワーがありませんから」

⏰:22/10/18 14:04 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#855 [○○&◆.x/9qDRof2]
 会社や学校に、何を考えているのか、やる気があるのか無いのか分からない、宇宙人のような若者はいないだろうか。どうか彼らを、温かく見守ってあげてほしい。

⏰:22/10/18 14:04 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#856 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>820-860

⏰:22/10/18 14:04 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#857 [○○&◆.x/9qDRof2]
躊躇いも嘘も、


 おれの彼女は、とんでもない猫かぶりだった。

 容姿はこれといって秀でていたわけではない。ただ、コミュニケーション能力は抜群にあったし、声と笑顔はめちゃくちゃかわいかったもので、おれはすぐさま虜になった。

⏰:22/10/18 17:54 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#858 [○○&◆.x/9qDRof2]
「ねえね、きみ、頭いいの?」

 それがおれと彼女の、初めての接触だった。猫みたいなふうに首を傾げながら、それでもすこし高慢な雰囲気を漂わせながら、彼女はおれに話しかけてきた。

「え、ああ、まあ、うん」
「ふうん、勉強すき?」
「う、うん」
「じゃ、今度教えて?」

⏰:22/10/18 17:54 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#859 [○○&◆.x/9qDRof2]
 おれは言葉もなく頷くほかなかった。きらきらした瞳に見つめられると、言葉が恥ずかしがって喉元から出てこなくなってしまうのだ。
⏰:11/12/28 00:54 📱:H001 🆔:☆☆☆

#3 [我輩は匿名である]
 しかしそれきり、彼女と会話を交わすことはなかった。おれは至極ふつうな男子生徒だったし、彼女はクラスメイトとのコミュニケーションで、毎日駆け回っていた。
 すこし、寂しい。いや、かなり寂しい。

⏰:22/10/18 17:54 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#860 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女がほかの誰かに笑いかけるたびに、おれのなかの焦燥感が鎌首をもたげた。どうしようもなく愛しいその姿に、ただ一度でも触れてみたいと思った。いけないと知りながらも、情欲の炎は燃え上がるばかり。
 そしておれは、見てしまった。

⏰:22/10/18 17:55 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#861 [○○&◆.x/9qDRof2]
#4 [我輩は匿名である]
 彼女が、泣いている。斜陽を一身に浴びながら、ただただ泣いているのだ。
 音はない。しゃくりあげる様子もない。ただ静かに、口元をかたくつぐんでいる。

「……見ないでよ」

 おれの存在は、いつの間にか彼女にバレていたらしい。彼女はおれをねめつけて言った。

「あんたなんかには、ぜったい分かりっこないんだから」

⏰:22/10/18 17:55 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#862 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれはもうどうすればいいのかわからなかった。いつも愛らしい笑顔を振りまいている彼女が、泣きながら牙を剥いているのだ。
 おれは彼女にとって気の許せる人間でないから、触れることなんてできない。当然ながら同情さえも、いまの彼女にとっては余計なお世話といったところか。

⏰:22/10/18 17:56 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#863 [○○&◆.x/9qDRof2]
 ほんとうは、その涙を拭ってやりたいと思ったし、冷え切った心身を抱き締めてやりたいと思った。行き場を失った衝動が、彼女のうちを食い破るのなら、それがすべておれに向けばいいのにと思った。
 それでも、おれは彼女にとって他人であり、さしたる会話を交わしたわけでもない。彼女からすればおれは日常を彩るただの記号で、下手をすれば踏み台にすらならない程度の存在なのだから、今のおれには彼女のためにしてやれることなど、なにひとつないのだ。

⏰:22/10/18 17:56 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#864 [○○&◆.x/9qDRof2]
 どうしようもない沈黙がおれと彼女を包み込む。それでも彼女の涙が止むことはないし、おれの緊張が治まることもない。どうすればいいのだろうと思案したところで、おれにはなにも出来ない。

「出てって」

 そのときのおれには、彼女の言葉に従うのが精一杯だった。動揺が喉元でせせら笑って、声すら出せない状況において、むしろなにが出来たというのだろうか。
 おれは彼女を救いたいという衝動に後ろ髪を引かれながら、やむなく背を向けた。

⏰:22/10/18 17:56 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#865 [○○&◆.x/9qDRof2]
 彼女の特別になりたい。もう二度と泣くことのないよう、おれの胸で暖めてやれるよう。彼女がおれだけを、見てくれるように。


 そう一度覚悟を決めてしまえば、もうなにも躊躇うことなどなかった。
 まず真っ先におれは彼女の友達になった。いや、友達というのはいささか無理があるかもしれない。彼女のグループの一員となった、というのが正しい。

⏰:22/10/18 17:56 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#866 [○○&◆.x/9qDRof2]
まだ彼女はまっすぐにおれを見ることはなかったけれども、おれは確かに彼女の周囲に溶け込み、また、上辺といえども定期的に彼女と談笑を交わすようになった。
 そして彼女の周囲にいて改めて気付いたことといえば、やはり彼女の笑みは花も綻ぶほどにかわいいということである。笑うと、ちいさく口角がへこむ。すると年中赤いほっぺがすこし持ち上がって、やけに突っつきたくなる衝動に駆られる。

⏰:22/10/18 17:56 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#867 [○○&◆.x/9qDRof2]
 もしかしたらおれは、彼女のことを加護すべき小動物だと認識しているのかもしれないとも思う。背丈は小さいし、よく転ぶ。おまけにちょこまかと、動き回る。正直言ってしまえば、我が家のハムスターにそっくりである。

⏰:22/10/18 17:57 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#868 [○○&◆.x/9qDRof2]
「おはようチロル!」

 わたしは五十嵐千広(いがらしちひろ)。あだ名は何故か中学の頃からチロルなのだ。そんな可愛いあだ名の顔じゃないんだけどねぇ。

「おはよう、暁子(きょうこ)ちゃん。」

暁子ちゃんは私と同じ美術学科で、とてもいい子だ。こんな私と仲良くしてくれてすごく嬉しい。

「聞いてよ暁子ちゃん。あたくし今朝痴漢に会っちまいましたよ。」

「え?!大丈夫?!」
「なんか素敵なお兄さんが助けてくれたよ〜。いやぁ好青年でねー。」

⏰:22/10/18 17:57 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#869 [○○&◆.x/9qDRof2]
私はまるで年とったおばはんみたいな喋り方をした。私が可愛いかったり積極的だったらお兄さんの名前とか聞いて恋に発展するんだろうなぁとしみじみ思う。はぁ……私はあと何年こんな思いをしなくてはならないのだろうかねぇ……。

⏰:22/10/18 17:57 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#870 [○○&◆.x/9qDRof2]
「チロル……もしかしてそな人に惚れたとか?」
「あーないない。それ以前に向こうが私をお断りだよ。」

いかにも気のない素振りだが、少しもう一度会えないかと思う自分に少し呆れた。アンタそんな身分の奴じゃないだろうっちゅーのに。

⏰:22/10/18 17:58 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#871 [○○&◆.x/9qDRof2]
「さ、イーゼル用意しよ!」

ガラガライーゼルを用意しながら、私達はいつもの他愛ない話をした。

――――――――……

「じゃバイバーイ!」

「バイバーイ。」

あ゛ー今日も終わったぁー。家帰って早く漫画読みたーい。私は少女漫画が大好きだ。あの胸を切り裂かれるような痛み……そして感動的な告白。甘い2人の時間。全てが憧れ。私もあんな恋がしたいなぁと読んだ後は悶えに悶えてそして落ち込む。

⏰:22/10/18 17:58 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#872 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……私には無理だっけと……。現実なんてつまらない。漫画みたいな奇跡、偶然、運命はそうそうそこらに転がっているものじゃない。ホームの向かいでイチャつくカップル。思わず履いてる靴を脱いで力一杯叩いてやりたい衝動にかられた。

⏰:22/10/18 17:58 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#873 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……つくづく思う。人生は辛いと。電車に乗り、窓の外の暗くなった街並みを見ながらため息を吐いた。耳から流れてくる音楽はこんなにも素敵なのに……どうして私は素敵じゃないかねぇ。窓に映る自分。にらめっこは決着つくけとなく、私とのにらめっこは引き分けで終わった。

⏰:22/10/18 17:58 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#874 [○○&◆.x/9qDRof2]
味わってみたいな……。冬に一緒に手を温めてくれるような相手。甘いキスをくれて、ギュッと抱き絞めてくれる相手。私にとって全て幻想。いいんだ。行きてるだけで幸せなんだと思うし……。そうだよ。私は幸せなんだよ。そう思って、私は良しとした。

――――――――……

⏰:22/10/18 17:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#875 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……今日もホームに人が溢れかえってる……。何故……。

プシュー……

電車到着と共にドアが開き、人が入れ替わる。なんとかして車内に乗り込む。今日も昨日と変わらずギュウギュウだ。あぁ嫌だ……。すると、前にいた人が揺れのせいで私にもろにぶつかってきた。私は顔がその人の胸元に埋まった。

⏰:22/10/18 17:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#876 [○○&◆.x/9qDRof2]
「んぐっ……!」

思わず少し声を漏らす。全く……満員電車はやっぱり好かない。まぁ好きな人はいないだろうけどさ。ってか昨日から微妙についてないな私……。

「オイッたら!」

ん?もしかして私に言ってる?聞いてる音楽の間間に人の声が混ざって聞こえた。多分頭上からだろうと顔を少し上に上げた。

⏰:22/10/18 17:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#877 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あっ。」
「やっと気付いた……。」

話かけた相手は昨日痴漢から私を助けてくれたあのお兄さんだった。……そうすると何かい?さっきまでこのお兄さんの胸に顔を埋めてたっていう……。顔が暑くなって、少しだけ汗ばんでしまった。

⏰:22/10/18 17:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#878 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あ、その節はどうも…。」
「別に。あーゆーの嫌いなだけだから。」

おぉ。正義の見方ですか。凄いなお兄さん。最近の若者にしては珍しい。私はそう思いながら会話は終了したと思い、またうつ向いて音楽に集中し始めた。するとまたもや揺れ。

⏰:22/10/18 17:59 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#879 [○○&◆.x/9qDRof2]
人が垂れているイヤホンのコードを引っ張ってしまったせいで、それでなくても私の耳の穴にしては少し大きいイヤホンなのに簡単に外れてしまった。次の駅まで片耳状態は嫌いなので、なんとかして手を出そうとした。

「ねぇ、何聞いてんの?」

突然お兄さんが話出したので、出そうとしていた手がまた引っ込んでしまった。

⏰:22/10/18 18:00 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#880 [○○&◆.x/9qDRof2]
「何……って……。色々ですけど……。」

「何を一番聞いてるの?」

「え、EXIL●とか……。Y●Iとか……。」

ってか何でんな事聞く?自分でも顔を少し歪めているのが分かった。何故こんな私にそこまで構うかな。

⏰:22/10/18 18:00 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#881 [○○&◆.x/9qDRof2]
「何かいつも真剣に聞いてるからそんなに好きなのかなと思って。」

「はぁ、そうですか……。……ん?いつも?」

「ウン。俺いつもアンタ見かけてたから知ってるんだよね。アンタは全然ぽいけど。」

だって周りになんて然程(さほど)興味ないんだもん。逆に興味持ってキョロキョロしてる方が怪しいだろうし……。また会話が途切れた時、すぐに駅についた。

⏰:22/10/18 18:00 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#882 [○○&◆.x/9qDRof2]
「じゃあな。」

「あ、ハイ。どうも。」

私はお兄さんを見ながらイヤホンをつけた。なるほど。昨日お兄さんがいなくなったのはこの駅で降りるからだ。着いた駅は昨日降りた駅と同じ。それにしても変わったお兄さんだ。私が近くにいても嫌な顔ひとつしないなんて。大抵は私の様なデブスは遠ざける筈なのに。……まぁ満員電車で動けって方が無理か。

⏰:22/10/18 18:00 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#883 [○○&◆.x/9qDRof2]
お兄さん私なんかが近くでスイマセンでした……。私は心の中でそっとお兄さんに手を合わした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

学校までは坂道だ。
涼しくなったとは言え坂道を登れば多少は汗をかいてしまう。この体が1つは原因だろうがね。タオル片手に私はひーこらひーこら上がり、やっと学校に着いた。教室に行って、即効でさらさらシートと脇シューをする。体が少し清潔になった気がする。

⏰:22/10/18 18:01 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#884 [○○&◆.x/9qDRof2]
念のため帰りの電車乗る前にもしておこう。汗臭い奴が乗ってきたら迷惑だよね。ただでさえデブって邪魔なのに。

「おはよーチロル!」

「あぁ暁子ちゃん。」

暁子ちゃんは私の隣に座ると、何だか意味あり気に私を見つめてきた。私は暁子ちゃんを見つめ返しながら瞬きを何回かする事で「何?」と言う意味を示した。暁子ちゃんはにまぁと笑った。

⏰:22/10/18 18:01 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#885 [○○&◆.x/9qDRof2]
「いやね、昨日の王子様とは会えたのかなってっ。」

私は思わず大笑いしてしまった。

「アハハハハハ!!お、お、王子さ…っまって!んな素敵な言葉ウチの人生にはないねっ。」

「えーっ!そんなことないよ。で、やっぱり昨日っきり?」

⏰:22/10/18 18:01 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#886 [○○&◆.x/9qDRof2]
「今朝会ったけど?」

それを聞くと暁子ちゃんは目を輝かせた。可愛いらしいのう……と私は暁子ちゃんのキラキラした目の光を浴びながら思った。


「名前は?!」
「さぁ。」
「歳は?!」
「さぁ。」
「どこの人?!」
「さぁ。」
「えぇー!」

⏰:22/10/18 18:01 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#887 [○○&◆.x/9qDRof2]
「えー。」

私の答えに暁子ちゃんは心底がっかりした。だって何故に名前やら歳やらを聞かねばならないのだろうか。別に私がその人にズキュン!ときた訳じゃないのに。いやズキュン!ときたとしても、私はそんなに積極的タイプではないし。

⏰:22/10/18 18:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#888 [○○&◆.x/9qDRof2]
「暁子ちゃん。知ってるでしょ?私が男の人恐いって。」

「でも彼氏は欲しいでしょ?なんならその人好きになったらいいじゃない!」

どちらかと言えば相手に選ぶ権利があると思うんだが……。第一私なんかに好きになられたら相手は困るだろうに。私は遠い目をしながらそう思った。

⏰:22/10/18 18:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#889 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あ、そういえば、どっかの大学から生徒が美術学科の作品見に来るらしいよ。」

え、何その迷惑な話。

「何の為に……。」

「知らない。でも来るって。今日。」

「今日―――――っ?!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

授業の油絵で私は頭を悶々とさせながらキャンバスに向かっていた。飾られているのならまだしも、今からここに来てじろじろ見られるだなんて辛抱ならなかった。

⏰:22/10/18 18:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#890 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……どこかへ消えてしまいたい……。唯一それを止めてくれるのが聞いてる音楽だった。何かに集中したい時はこうするのが一番なのだ。


「こんにちわー。」

!!!!
来た……。

先生達の挨拶を微かに聞きながら私はキャンバスに集中しようとしていた。しかしチロリと視線を来た人達に向けると私は絶句した。なんと女の子だけじゃなく男の子もいたのだ。あぁー最悪……。一切私はそちらに気にならない様に音楽の音量をさっきより上げた。これでいいだろう。筆をまた動かせた。

⏰:22/10/18 18:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#891 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>850-890

⏰:22/10/18 18:02 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#892 [○○&◆.x/9qDRof2]
「おはようチロル!」

 わたしは五十嵐千広(いがらしちひろ)。あだ名は何故か中学の頃からチロルなのだ。そんな可愛いあだ名の顔じゃないんだけどねぇ。

「おはよう、暁子(きょうこ)ちゃん。」

⏰:22/10/18 18:10 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#893 [○○&◆.x/9qDRof2]
暁子ちゃんは私と同じ美術学科で、とてもいい子だ。こんな私と仲良くしてくれてすごく嬉しい。

「聞いてよ暁子ちゃん。あたくし今朝痴漢に会っちまいましたよ。」

「え?!大丈夫?!」
「なんか素敵なお兄さんが助けてくれたよ〜。いやぁ好青年でねー。」

⏰:22/10/18 18:10 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#894 [○○&◆.x/9qDRof2]
私はまるで年とったおばはんみたいな喋り方をした。私が可愛いかったり積極的だったらお兄さんの名前とか聞いて恋に発展するんだろうなぁとしみじみ思う。はぁ……私はあと何年こんな思いをしなくてはならないのだろうかねぇ……。

⏰:22/10/18 18:10 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#895 [○○&◆.x/9qDRof2]
「チロル……もしかしてそな人に惚れたとか?」
「あーないない。それ以前に向こうが私をお断りだよ。」

いかにも気のない素振りだが、少しもう一度会えないかと思う自分に少し呆れた。アンタそんな身分の奴じゃないだろうっちゅーのに。

⏰:22/10/18 18:10 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#896 [○○&◆.x/9qDRof2]
「さ、イーゼル用意しよ!」

ガラガライーゼルを用意しながら、私達はいつもの他愛ない話をした。

――――――――……

「じゃバイバーイ!」

「バイバーイ。」

あ゛ー今日も終わったぁー。家帰って早く漫画読みたーい。私は少女漫画が大好きだ。あの胸を切り裂かれるような痛み……そして感動的な告白。甘い2人の時間。全てが憧れ。私もあんな恋がしたいなぁと読んだ後は悶えに悶えてそして落ち込む。あぁ……私には無理だっけと……。

⏰:22/10/18 18:11 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#897 [○○&◆.x/9qDRof2]
現実なんてつまらない。漫画みたいな奇跡、偶然、運命はそうそうそこらに転がっているものじゃない。ホームの向かいでイチャつくカップル。思わず履いてる靴を脱いで力一杯叩いてやりたい衝動にかられた。あぁ……つくづく思う。人生は辛いと。電車に乗り、窓の外の暗くなった街並みを見ながらため息を吐いた。

⏰:22/10/18 18:11 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#898 [○○&◆.x/9qDRof2]
耳から流れてくる音楽はこんなにも素敵なのに……どうして私は素敵じゃないかねぇ。窓に映る自分。にらめっこは決着つくけとなく、私とのにらめっこは引き分けで終わった。味わってみたいな……。冬に一緒に手を温めてくれるような相手。甘いキスをくれて、ギュッと抱き絞めてくれる相手。私にとって全て幻想。

⏰:22/10/18 18:11 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#899 [○○&◆.x/9qDRof2]
いいんだ。行きてるだけで幸せなんだと思うし……。そうだよ。私は幸せなんだよ。そう思って、私は良しとした。

――――――――……

あぁ……今日もホームに人が溢れかえってる……。何故……。

プシュー……

電車到着と共にドアが開き、人が入れ替わる。なんとかして車内に乗り込む。今日も昨日と変わらずギュウギュウだ。あぁ嫌だ……。

⏰:22/10/18 18:11 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#900 [○○&◆.x/9qDRof2]
すると、前にいた人が揺れのせいで私にもろにぶつかってきた。私は顔がその人の胸元に埋まった。

「んぐっ……!」

思わず少し声を漏らす。全く……満員電車はやっぱり好かない。まぁ好きな人はいないだろうけどさ。ってか昨日から微妙についてないな私……。

⏰:22/10/18 18:11 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#901 [○○&◆.x/9qDRof2]
「オイッたら!」

ん?もしかして私に言ってる?聞いてる音楽の間間に人の声が混ざって聞こえた。多分頭上からだろうと顔を少し上に上げた。

「あっ。」
「やっと気付いた……。」

話かけた相手は昨日痴漢から私を助けてくれたあのお兄さんだった。……そうすると何かい?さっきまでこのお兄さんの胸に顔を埋めてたっていう……。顔が暑くなって、少しだけ汗ばんでしまった。

⏰:22/10/18 18:12 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#902 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あ、その節はどうも…。」
「別に。あーゆーの嫌いなだけだから。」

おぉ。正義の見方ですか。凄いなお兄さん。最近の若者にしては珍しい。私はそう思いながら会話は終了したと思い、またうつ向いて音楽に集中し始めた。するとまたもや揺れ。人が垂れているイヤホンのコードを引っ張ってしまったせいで、それでなくても私の耳の穴にしては少し大きいイヤホンなのに簡単に外れてしまった。

⏰:22/10/18 18:12 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#903 [○○&◆.x/9qDRof2]
次の駅まで片耳状態は嫌いなので、なんとかして手を出そうとした。

「ねぇ、何聞いてんの?」

突然お兄さんが話出したので、出そうとしていた手がまた引っ込んでしまった。

「何……って……。色々ですけど……。」

「何を一番聞いてるの?」

「え、EXIL●とか……。Y●Iとか……。」

ってか何でんな事聞く?自分でも顔を少し歪めているのが分かった。何故こんな私にそこまで構うかな。

⏰:22/10/18 18:12 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#904 [○○&◆.x/9qDRof2]
「何かいつも真剣に聞いてるからそんなに好きなのかなと思って。」

「はぁ、そうですか……。……ん?いつも?」

「ウン。俺いつもアンタ見かけてたから知ってるんだよね。アンタは全然ぽいけど。」

だって周りになんて然程(さほど)興味ないんだもん。逆に興味持ってキョロキョロしてる方が怪しいだろうし……。また会話が途切れた時、すぐに駅についた。

⏰:22/10/18 18:12 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#905 [○○&◆.x/9qDRof2]
「じゃあな。」

「あ、ハイ。どうも。」

私はお兄さんを見ながらイヤホンをつけた。なるほど。昨日お兄さんがいなくなったのはこの駅で降りるからだ。着いた駅は昨日降りた駅と同じ。それにしても変わったお兄さんだ。私が近くにいても嫌な顔ひとつしないなんて。大抵は私の様なデブスは遠ざける筈なのに。……まぁ満員電車で動けって方が無理か。

⏰:22/10/18 18:12 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#906 [○○&◆.x/9qDRof2]
お兄さん私なんかが近くでスイマセンでした……。私は心の中でそっとお兄さんに手を合わした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

学校までは坂道だ。
涼しくなったとは言え坂道を登れば多少は汗をかいてしまう。この体が1つは原因だろうがね。タオル片手に私はひーこらひーこら上がり、やっと学校に着いた。教室に行って、即効でさらさらシートと脇シューをする。体が少し清潔になった気がする。

⏰:22/10/18 18:13 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#907 [○○&◆.x/9qDRof2]
念のため帰りの電車乗る前にもしておこう。汗臭い奴が乗ってきたら迷惑だよね。ただでさえデブって邪魔なのに。

「おはよーチロル!」

「あぁ暁子ちゃん。」

暁子ちゃんは私の隣に座ると、何だか意味あり気に私を見つめてきた。私は暁子ちゃんを見つめ返しながら瞬きを何回かする事で「何?」と言う意味を示した。暁子ちゃんはにまぁと笑った。

⏰:22/10/18 18:13 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#908 [○○&◆.x/9qDRof2]
「いやね、昨日の王子様とは会えたのかなってっ。」

私は思わず大笑いしてしまった。

「アハハハハハ!!お、お、王子さ…っまって!んな素敵な言葉ウチの人生にはないねっ。」

「えーっ!そんなことないよ。で、やっぱり昨日っきり?」

「今朝会ったけど?」

⏰:22/10/18 18:13 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#909 [○○&◆.x/9qDRof2]
それを聞くと暁子ちゃんは目を輝かせた。可愛いらしいのう……と私は暁子ちゃんのキラキラした目の光を浴びながら思った。


「名前は?!」
「さぁ。」
「歳は?!」
「さぁ。」
「どこの人?!」
「さぁ。」
「えぇー!」

⏰:22/10/18 18:13 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#910 [○○&◆.x/9qDRof2]
「えー。」

私の答えに暁子ちゃんは心底がっかりした。だって何故に名前やら歳やらを聞かねばならないのだろうか。別に私がその人にズキュン!ときた訳じゃないのに。いやズキュン!ときたとしても、私はそんなに積極的タイプではないし。

⏰:22/10/18 18:13 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#911 [○○&◆.x/9qDRof2]
「暁子ちゃん。知ってるでしょ?私が男の人恐いって。」

「でも彼氏は欲しいでしょ?なんならその人好きになったらいいじゃない!」

どちらかと言えば相手に選ぶ権利があると思うんだが……。第一私なんかに好きになられたら相手は困るだろうに。私は遠い目をしながらそう思った。

「あ、そういえば、どっかの大学から生徒が美術学科の作品見に来るらしいよ。」

⏰:22/10/18 18:14 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#912 [○○&◆.x/9qDRof2]
え、何その迷惑な話。

「何の為に……。」

「知らない。でも来るって。今日。」

「今日―――――っ?!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

授業の油絵で私は頭を悶々とさせながらキャンバスに向かっていた。飾られているのならまだしも、今からここに来てじろじろ見られるだなんて辛抱ならなかった。

⏰:22/10/18 18:14 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#913 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……どこかへ消えてしまいたい……。唯一それを止めてくれるのが聞いてる音楽だった。何かに集中したい時はこうするのが一番なのだ。


「こんにちわー。」

!!!!
来た……。

先生達の挨拶を微かに聞きながら私はキャンバスに集中しようとしていた。しかしチロリと視線を来た人達に向けると私は絶句した。なんと女の子だけじゃなく男の子もいたのだ。あぁー最悪……。

⏰:22/10/18 18:14 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#914 [○○&◆.x/9qDRof2]
一切私はそちらに気にならない様に音楽の音量をさっきより上げた。これでいいだろう。筆をまた動かせた。

⏰:22/10/18 18:14 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#915 [○○&◆.x/9qDRof2]
白い君


「…ぃ」


「おーい」

ん…





うるせぇな

ゆっくりとまだ重たい目を開く

「…うわっ!」


ガタン



「っ…痛ぇ」
「何落ちてんだよ」

⏰:22/10/18 18:16 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#916 [○○&◆.x/9qDRof2]
目の前にはぎゃはぎゃは笑っている健太


「うっせぇな…何で俺ここいんの」
「お前俺の電話中に急に喋んなくなってさーおかしいと思って、まぁ一回切ったんだよ

担任が呼んでこい呼んでこいうっせぇから屋上に避難してたわけ

そしたらお前から着信あってさ」

⏰:22/10/18 18:16 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#917 [○○&◆.x/9qDRof2]
「は?俺かけてねぇぞ」

「まぁ最後まで聞けって」
⏰:09/08/17 21:04 📱:SH001 🆔:cN1dyu0A

#34 [:ゆりか:]
「女が喋って…」

「女?」

⏰:22/10/18 18:16 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#918 [○○&◆.x/9qDRof2]
「「この人道で倒れてるよ」って。俺疑問ばっか浮かんで質問したんだよ」

健太の事だからばーって質問攻めしたんだろうな


「俺の質問にその娘全く答えねぇで「公園に捨てときます」だってさ!」

⏰:22/10/18 18:17 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#919 [○○&◆.x/9qDRof2]
#35 [:ゆりか:]
捨てときますって…



その女って


何かあいつっぽい

本当にあいつだったり?

「しょーがねぇから公園まで行ったんだぜ俺」

「へー…」

「何だよその反応!もっと感謝の気持ちはねぇのか」

⏰:22/10/18 18:17 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#920 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あーども」

「はぁ…もうお前しらねぇぞ」
⏰:09/08/17 21:35 📱:SH001 🆔:cN1dyu0A

#36 [:ゆりか:]
「女は」

「あ?」

「その女どんな感じだった」

「それがさ、いなかったんだよ」

「いなかった?」

⏰:22/10/18 18:17 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#921 [○○&◆.x/9qDRof2]
「お前だけだったよ」
⏰:09/08/17 22:29 📱:SH001 🆔:cN1dyu0A

#37 [:ゆりか:]
「何か不思議だよなー」

ガラガラ

「あら起きたの?」

「お、先生じゃーん」

鼻の下をのばす健太


俺この先生嫌いなんだよな

保険室に来たくない訳

こいつがいるから

⏰:22/10/18 18:18 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#922 [○○&◆.x/9qDRof2]
男には美人で有名な先生

でもすげぇ香水でいい女って感じが嫌だ

「長島くん大丈夫?」

「…あぁ」

まだだるい体を起こして布団からでようとする

「ちょっと、まだ熱あるのよ」

「うるせぇよ」

⏰:22/10/18 18:18 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#923 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺を触ろうとした手をはらいのけて保健室を出る

「おい祥ー忘れてんぞ」

健太の手には俺の荷物

「あぁ悪いな」

「お前本当に嫌いだよなーあの先生」

「あいつうぜぇ」

「そうかー?俺にはマリリンモンローにしか見えねんだけど笑」

⏰:22/10/18 18:18 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#924 [○○&◆.x/9qDRof2]
「お前見る目ねぇなー全然似てねぇよ」

「いや胸とかそっくりだろ」

胸…知らねぇよ

「おい長島ー」

後ろを振り向くと担任の姿


「げっ森岡じゃん」

健太が顔をしかめる

「何だよ」

⏰:22/10/18 18:19 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#925 [○○&◆.x/9qDRof2]
「何だよじゃないだろー今日は体調悪かったみたいだが、ちゃんと学校に来い」

「あぁ」

健太は森岡が苦手

俺は…別に嫌いじゃねぇけど

「帰るわ」

「はぁー…今日は見逃してやるから明日は来い」

「行くっつの」

森岡に背をむけて歩き出す

「お前どうやって帰んだよ」

⏰:22/10/18 18:19 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#926 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁそうか

俺今日バイクじゃねぇんだ

「健太のバイ「無理」」

「んなフラフラしてるお前に貸したくねぇ」

何だかんだでこいつも心配してくれてんだな

「そんなけちけちしてっと女できねぇぞ」

「なっ!うるせぇよ。帰りよるとこあるから先行くぜ」
「じゃあな」

「おお」

歩いて帰るか…

ポケットから携帯をとりだそうとする


あれ…ねぇじゃん

はぁ、ついてねぇな

保健室では使ってねぇし

なくなったとしたら…あの公園か

めんどくせぇなー

⏰:22/10/18 18:20 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#927 [○○&◆.x/9qDRof2]
重たい足で公園に向かった

健太は確か…俺ベンチに倒れてたたっつってたな

この公園にベンチはひとつしかねぇし

これのことか


目の前には古ぼけたベンチ


「汚ぇな」

10分ぐらい探したけど携帯の姿は見当たらない


「ねぇじゃん」

⏰:22/10/18 18:20 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#928 [○○&◆.x/9qDRof2]
諦めるか…

煙草を取り出して火をつけた

フー


「君これ探してる?」

後ろを振り向くと



あいつの姿…と手に持った携帯


「何で持ってんだよ」

「助けてあげたのに」

⏰:22/10/18 18:21 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#929 [○○&◆.x/9qDRof2]
やっぱりこいつか

「助けたじゃなくて捨てただろ」

「ははっお友達に聞いたの?」
「あぁ」
「だって君の友達ちょっとうるさかったからさ」

あいつはベンチに座る

服汚れねぇのかよ

「はい」

携帯を突き出す

「あ、そういえば何で持って帰ったんだよ」

さっき答えてねぇよな

⏰:22/10/18 18:21 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#930 [○○&◆.x/9qDRof2]
「間違えたの」

は?どう間違えんだよ

「勝手に見て悪いんだけどあの待受何………?」

待受


何でそんなこと
あれは

誰が見ても絶対意味は分からねぇ



「…別に何もねぇよ」

⏰:22/10/18 18:22 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#931 [○○&◆.x/9qDRof2]
「…そっか」

あいつは少し顔をふせた


何だよ…



「もう帰るね」

ばっと立ち上がる

こんな時間に一人でかよ

「送る」

「いいよ」

⏰:22/10/18 18:22 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#932 [○○&◆.x/9qDRof2]
「俺がよくねぇ」

「じゃあ近くまでね」

振り向くあいつ


俺の少し前を歩く細くて華奢な体

ちゃんと食ってんのか


「お前…何で前歩くんだよ」

「んー?癖なの」

「癖って…変な癖だな」

⏰:22/10/18 18:22 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#933 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そうかな」

それからしばらく俺達は喋らなかった

でも不思議とこの空間が

心地よかった

ドンッ


「痛ぇー」

あいつの頭にぶつかった俺の顎

「いきなり止まんなよ」

「ここ」

⏰:22/10/18 18:23 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#934 [○○&◆.x/9qDRof2]
「は?」

「君に送ってもらうのはここまで」

くるっと振り返るあいつ


ここってあの丘の前かよ


「ありがとね」

素直だな

「あぁ」

「見て」

あいつが指差す方向には


綺麗に輝く満月

⏰:22/10/18 18:23 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#935 [○○&◆.x/9qDRof2]
「君が狼男だったら私死んでるね」

いきなり何だよ

「はっそうだな」
「はい」

差し出された手

「何だよ」

「お別れの握手」

⏰:22/10/18 18:23 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#936 [○○&◆.x/9qDRof2]
お別れ?

「お前どっか行くのか?」

「行かないよ」

「じゃあ何で…」

「今日のお別れの握手」

「あぁ」

俺は少し強くその手を握った

⏰:22/10/18 18:24 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#937 [○○&◆.x/9qDRof2]
「君…まだ熱あったんだ」



そういえばそうだったな


「たいしたことない」


「強がんないでさ…ゆっくり休みな」



「あぁ」

ぱっと離れた手

「さぁそろそろ帰るね」

「本当にここまででいいのかよ」

⏰:22/10/18 18:24 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#938 [○○&◆.x/9qDRof2]
「いいの」


「そうか…気ぃつけて帰れよ」
「うん」

「明日…」
「ん?」
「明日も会えるか…?」

⏰:22/10/18 18:24 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#939 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>870-900

⏰:22/10/18 18:25 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#940 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれの彼女は、とんでもない猫かぶりだった。

 容姿はこれといって秀でていたわけではない。ただ、コミュニケーション能力は抜群にあったし、声と笑顔はめちゃくちゃかわいかったもので、おれはすぐさま虜になった。

⏰:22/10/18 18:29 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#941 [○○&◆.x/9qDRof2]
「ねえね、きみ、頭いいの?」

 それがおれと彼女の、初めての接触だった。猫みたいなふうに首を傾げながら、それでもすこし高慢な雰囲気を漂わせながら、彼女はおれに話しかけてきた。

「え、ああ、まあ、うん」
「ふうん、勉強すき?」
「う、うん」

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#942 [○○&◆.x/9qDRof2]
「じゃ、今度教えて?」

 おれは言葉もなく頷くほかなかった。きらきらした瞳に見つめられると、言葉が恥ずかしがって喉元から出てこなくなってしまうのだ。

 しかしそれきり、彼女と会話を交わすことはなかった。おれは至極ふつうな男子生徒だったし、彼女はクラスメイトとのコミュニケーションで、毎日駆け回っていた。

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#943 [○○&◆.x/9qDRof2]
 すこし、寂しい。いや、かなり寂しい。
 彼女がほかの誰かに笑いかけるたびに、おれのなかの焦燥感が鎌首をもたげた。どうしようもなく愛しいその姿に、ただ一度でも触れてみたいと思った。いけないと知りながらも、情欲の炎は燃え上がるばかり。

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#944 [○○&◆.x/9qDRof2]
 そしておれは、見てしまった。

 彼女が、泣いている。斜陽を一身に浴びながら、ただただ泣いているのだ。
 音はない。しゃくりあげる様子もない。ただ静かに、口元をかたくつぐんでいる。

「……見ないでよ」

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#945 [○○&◆.x/9qDRof2]
 おれの存在は、いつの間にか彼女にバレていたらしい。彼女はおれをねめつけて言った。

「あんたなんかには、ぜったい分かりっこないんだから」

 おれはもうどうすればいいのかわからなかった。いつも愛らしい笑顔を振りまいている彼女が、泣きながら牙を剥いているのだ。

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#946 [○○&◆.x/9qDRof2]
 おれは彼女にとって気の許せる人間でないから、触れることなんてできない。当然ながら同情さえも、いまの彼女にとっては余計なお世話といったところか。
 ほんとうは、その涙を拭ってやりたいと思ったし、冷え切った心身を抱き締めてやりたいと思った。行き場を失った衝動が、彼女のうちを食い破るのなら、それがすべておれに向けばいいのにと思った。

⏰:22/10/18 18:31 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#947 [○○&◆.x/9qDRof2]
 それでも、おれは彼女にとって他人であり、さしたる会話を交わしたわけでもない。彼女からすればおれは日常を彩るただの記号で、下手をすれば踏み台にすらならない程度の存在なのだから、今のおれには彼女のためにしてやれることなど、なにひとつないのだ。

⏰:22/10/18 18:31 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#948 [○○&◆.x/9qDRof2]
 どうしようもない沈黙がおれと彼女を包み込む。それでも彼女の涙が止むことはないし、おれの緊張が治まることもない。どうすればいいのだろうと思案したところで、おれにはなにも出来ない。

「出てって」

⏰:22/10/18 18:31 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#949 [○○&◆.x/9qDRof2]
 そのときのおれには、彼女の言葉に従うのが精一杯だった。動揺が喉元でせせら笑って、声すら出せない状況において、むしろなにが出来たというのだろうか。
 おれは彼女を救いたいという衝動に後ろ髪を引かれながら、やむなく背を向けた。

⏰:22/10/18 18:31 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#950 [○○&◆.x/9qDRof2]
 彼女の特別になりたい。もう二度と泣くことのないよう、おれの胸で暖めてやれるよう。彼女がおれだけを、見てくれるように。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#951 [○○&◆.x/9qDRof2]
 そう一度覚悟を決めてしまえば、もうなにも躊躇うことなどなかった。
 まず真っ先におれは彼女の友達になった。いや、友達というのはいささか無理があるかもしれない。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#952 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女のグループの一員となった、というのが正しい。まだ彼女はまっすぐにおれを見ることはなかったけれども、おれは確かに彼女の周囲に溶け込み、また、上辺といえども定期的に彼女と談笑を交わすようになった。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#953 [○○&◆.x/9qDRof2]
 そして彼女の周囲にいて改めて気付いたことといえば、やはり彼女の笑みは花も綻ぶほどにかわいいということである。笑うと、ちいさく口角がへこむ。すると年中赤いほっぺがすこし持ち上がって、やけに突っつきたくなる衝動に駆られる。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#954 [○○&◆.x/9qDRof2]
もしかしたらおれは、彼女のことを加護すべき小動物だと認識しているのかもしれないとも思う。背丈は小さいし、よく転ぶ。おまけにちょこまかと、動き回る。正直言ってしまえば、我が家のハムスターにそっくりである。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#955 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>930-960

⏰:22/10/18 18:33 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#956 [○○&◆.x/9qDRof2]
 笑ってごまかそうにも俺の頭をよぎったのは、さっき呼ばれた「カケルちゃん」の一言。え?まさか?うそ、だって.......。

⏰:22/10/18 18:35 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#957 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そう、そのまさかだよ。正真正銘、藤堂 雛太、本人だ」

踏ん反り返る圭太郎に目の前の七川さんもコクリと頷く。は?え?有り得ないだろぉ!?

⏰:22/10/18 18:35 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#958 [○○&◆.x/9qDRof2]
「だって、雛太は男だし!一緒に木ぃ登ったし!だいたい名字が違うじゃん!アイツ藤堂!目の前にいるの七川さん!!」
「親が離婚して.......こっちに帰ってきたの」

申し訳なさそうに上目使いでそう言ったのは七川さん。

⏰:22/10/18 18:35 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#959 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あはは、あ、そう‥そうなんだ?」

 多分俺いま、涙目。

「改めまして。七川雛多です。ただいま、カケルちゃん」

ひなたは、女で.......七川さん?しかも“雛多”って!なになに?いつから漢字を間違ってたの?遠ざかる意識の中で“雛多”と圭太郎の手が俺を支えてくれるのがわかった。いつかもこんなことあったっけ。

⏰:22/10/18 18:35 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#960 [○○&◆.x/9qDRof2]
嗚呼、そうだ、あの時。


 それは俺達がまだ木に登ってじゃれ合っていた日のこと。俺が木の枝にひっついてた何かのサナギを取ろうとして、木から落ちそうになったのを二人が支えきれずに三人一緒に落っこちて、仲良く病院送りになった日までさかのぼる。

⏰:22/10/18 18:36 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#961 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺だけ処置が長引き、あとの二人は待合室で俺のことを待っててくれた。その時、まさかこんな会話がされてたなんて、当時の俺が知るはずもなく、


「転校、するんだ.......」

雛多のいきなりの告白にうろたえる圭太郎。

⏰:22/10/18 18:36 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#962 [○○&◆.x/9qDRof2]
「もう会えないの?」
「わかんない.......だけど、次会う時にはちゃんと女の子らしくなってるから」

大きな目をさらに大きくして驚く圭太郎。

「カケルちゃんには、そのいつかまで言わないで。いまはまだ、このサナギにもなれてないけど。絶対、蝶々みたいに綺麗になって、綺麗に、なって.......カケルちゃんのとこへ戻ってくるから!」

⏰:22/10/18 18:36 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#963 [○○&◆.x/9qDRof2]
「てな事があったわけよ!」

 なんとか意識を保った俺は、引き続き昼休みの音楽準備室で昔話を聞かされた。俺の隣には、雛太改め、雛多がいる。もちろん俺と同じくらい顔を真っ赤にして。

「何て言うかその.......」

⏰:22/10/18 18:36 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#964 [○○&◆.x/9qDRof2]
まごつく俺を見るに見兼ねた圭太郎が「ま、そういう事だから!後は二人でごゆっくり!」と、また意地悪そうにヒヒヒと笑って俺達を残し準備室から去って行った。

「.......ひ、雛多?」

ここにいるのがあの、ひなた?信じられない思いでいっぱいの俺を、雛多が笑顔で包んでくれる。

⏰:22/10/18 18:36 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#965 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あの時は、おてんばだったし、みんなわたしのこと男の子だって思ってたから.......でも、騙すつもりはなかったの、ごめんなさい」

そんな事はどうでもいい!

「俺んとこに戻ってくるって.......どういう意味?」

ヤベっ、圭太郎の意地悪がうつっちゃったかな。

⏰:22/10/18 18:37 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#966 [○○&◆.x/9qDRof2]
「えっ」と小さく呟くと、さらに顔を赤くしてうつむく雛多。

「こっこういう意味って思っても、いい?」

そんなきみがめちゃくちゃ可愛い過ぎて、思わず日向を抱き寄せる。コクンとわずかに首が揺れて、きみの甘い香りが俺達を包む。人ってこんなにあったかいんだ。窓から漏れる光に反射して、きみの髪がキラキラ光る。

⏰:22/10/18 18:37 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#967 [○○&◆.x/9qDRof2]
 そういえば、雛太の髪も、柔らかかったっけ.......だけど、こんなにいい匂いはしなかったな。なんて、幼い頃の“雛太”の面影を、俺の傍らで小さくなってる“雛多”の姿に重ねてみる。すると、わずかに白い息を吐きながら、雛多がぽつりと呟いた。

「.......カケルちゃん、知ってる?」

⏰:22/10/18 18:37 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#968 [○○&◆.x/9qDRof2]
その声が少しかすれてて、思わず耳を傾けると同時に、雛多の肩をもう一度強く引き寄せた。

「知ってる?青虫はね、空に恋い焦がれて一生懸命綺麗になるの。少しでも空に近づきたくて、羽まで伸ばして空を翔けるの.......」

⏰:22/10/18 18:37 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#969 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺の胸にうずくまりながら、雛多が窓の外を見る。

「ねぇカケルちゃん.......わたし、蝶々になれた?」
「あぁ、俺にはもったいないくらい、綺麗.......に、なったよ」

自分で自分が恥ずかしい。俺ってこんなセリフ言えるんだ。

⏰:22/10/18 18:37 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#970 [○○&◆.x/9qDRof2]
「まっまさか蝶に帰省本能があるとは知らなかったけどな!」

照れ臭いのを隠すように、わざとおどけて話してみる。その勢いできみの頭に俺のこめかみがコツンとぶつかる。そのまま、顔を見合わせるとお互い耳まで真っ赤っか。俺ときみの笑い声が、甘い香りと共に準備室をいっぱいにする。俺が空だと笑う、きみ。

⏰:22/10/18 18:38 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#971 [○○&◆.x/9qDRof2]
どうせ翔けるなら青空がいい。空にたどり着いた蝶には、一体どんなご褒美が待ってるんだろう?


「雛多、」

 きっと空だって蝶が可愛くて仕方ないから、優しく見守るだけじゃ済まないだろ。そんなこじつけを考えながら、きみのおでこにキスをする。顔を見合わせると、またも笑顔がこぼれてしまう。

⏰:22/10/18 18:38 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#972 [○○&◆.x/9qDRof2]
「こんな.......俺でいいの?」

おでこをくっつけて、きみにだけ聞こえるくらいの声で話す。まばゆい程の甘い笑顔で頷くきみは可愛過ぎて.......時が止まったんじゃないかと思えるくらい、長い長いキスを交わした。いつも見上げればそこにあるあの空ように、永遠にきみを見守り続ける。

⏰:22/10/18 18:38 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#973 [○○&◆.x/9qDRof2]
甘ったるいこの感覚は、さしずめ、花の蜜ってとこかな?



  □■■■■■■■■   END
  ■■■■■■■■□

⏰:22/10/18 18:38 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#974 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>500-530

⏰:22/10/18 18:39 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#975 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>530-560

⏰:22/10/18 18:39 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#976 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>560-590

⏰:22/10/18 18:40 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#977 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>590-620

⏰:22/10/18 18:40 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#978 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>620-650

⏰:22/10/18 18:41 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#979 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>640-670

⏰:22/10/18 18:42 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#980 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>670-700

⏰:22/10/18 18:42 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#981 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>700-730

⏰:22/10/18 18:42 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#982 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>730-760

⏰:22/10/18 18:43 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#983 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>760-790

⏰:22/10/18 18:44 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#984 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>790-820

⏰:22/10/18 18:44 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#985 [○○&◆.x/9qDRof2]
 よしっ!と、いちかばちかで、いつもは通らない左に曲がる。二分ぐらいバイクを走らせると、大きな屋敷が見えた。

「は?」

ああ、マジで迷った。何処か全然分かんねぇ。ふと前を見ると白いワンピースを着た女がいた。道…聞くしかねぇな。

⏰:22/10/18 18:48 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#986 [○○&◆.x/9qDRof2]
「すいません、影山高校どうやって行ったら近いっすか?」

女が振り返る

一瞬

時が止まったかと思った

黒い大きな瞳

白い肌

俗に言う美人

⏰:22/10/18 18:48 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#987 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あっち」

女は俺の後ろを指差した

「は?」

戻らねぇといけねぇのかよ

「君のすぐ後ろの道を曲がって左行ったらすぐ」


「どーも」

女のいうとおりに行ったら本当に近かった

バイクに鍵をかけてヘルメットをはずす

⏰:22/10/18 18:49 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#988 [○○&◆.x/9qDRof2]
3時20分

「ぎりぎり…」

俺は走って教室にむかう

ドアを開けると皆が一斉にこっちを見た

ガタンと席に着く

「お前またサボりかよ」

唯一仲のいい前の席の健太

⏰:22/10/18 18:49 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#989 [○○&◆.x/9qDRof2]
「うっせぇ」

「今日遅刻したら留年じゃねぇの?」

「ばーか休んでねぇから大丈夫だっつの」

「後5分で終わりだぜ?」

「それでも来てんだからいいだろ」

「かーっ!甘ぇなこの学校も」

「俺が校長だったら即退学させるな〜」

ケラケラと笑う健太

⏰:22/10/18 18:49 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#990 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そしたらお前ボコボコにして学校やめてやるよ」

「はっ怖い怖い。笑 そういえば女の子が祥探しに来てたぜ」
永野祥(ながのしょう)
俺の名前

結構モテる

女には困らねぇし
自分から誘ったりしねぇ

そういうのは正直めんどい

⏰:22/10/18 18:49 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#991 [○○&◆.x/9qDRof2]
「誰だっけ?顔は見た事あんだけどなー」

「いいよ思い出さなくて。めんどくせぇし」

「えーでも結構可愛い子だぜ?」

「興味ねぇ。俺帰って寝るわ」
チャイムが鳴り終わってかばんを持つ

「来た意味ねぇな」

「まぁな。」

⏰:22/10/18 18:50 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#992 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あっ今度バイク貸せ」

「無理に決まってんだろ」

「何でだよ」

「お前に貸してもいいことねぇから」

健太がバイクを貸してくれって言うときはだいたい…ろくなことがない


「ちょっと走りてぇんだよ」

ほらな

⏰:22/10/18 18:50 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#993 [○○&◆.x/9qDRof2]
健太の走るは暴走すんのと同じぐらいスピードが出る

前に貸してボロボロになって返ってきた

まあ当然一発殴って修理代貰ったけど

「何回も言うけど自分勝手ので走りゃいいだろ」

「俺のじゃ気分がのらねぇの。祥のは渋いかんなー」

「とりあえず却下」

文句を言う健太を置いて教室を出る

帰りも…あの道で帰るか

⏰:22/10/18 18:50 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#994 [○○&◆.x/9qDRof2]
近道だから
なんて本当は言い訳かもしれない

少しだけあの女に会えるかもって期待がある


俺は速めにバイクを走らせた

朝見かけた大きい屋敷

行きは気付かなかったけどこの屋敷の横には丘がある

「でけぇなー」

屋敷を見て改めて思う

丘も負けないぐらい高い

⏰:22/10/18 18:50 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#995 [○○&◆.x/9qDRof2]
何故か丘にすっげー登ってみたくなってバイクを降りた

登ってみると意外と暑くて

すぐ降りた

まぁ景色はいいんだけどな

一人暮らしはたまに嫌になる

かと言って女も呼びたくもないし

健太ぐらいしか来ねぇな

⏰:22/10/18 18:50 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#996 [○○&◆.x/9qDRof2]
時計を見ると9時

そろそろ腹減ったし…コンビニでも行くか

俺は財布と携帯を持って家を出た

「ありがとうごさいました」

ウィーン

コンビニから出ると知らない女に声をかけられた

⏰:22/10/18 18:51 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#997 [○○&◆.x/9qDRof2]
「祥じゃん!」

誰だよこいつ

「あ?誰」

「ひっどーい。ねぇ遊ばない?」

絡まりついてくる腕

「うぜぇよお前」

ぎゃあぎゃあ言う女を振り払う

お、こっからでもあの丘見えるのか

⏰:22/10/18 18:51 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#998 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あれ…あいつ」

間違いない

あの女だ

俺はその丘に向かった

あいつは座って空を見ていて

俺は後ろで横に行っていいのか迷った

⏰:22/10/18 18:51 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#999 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そんなとこいないでこっち来なよ」

あいつの言葉に少し驚いた

「あぁ、気付いてたんや」

「まぁね」

「何で君こんなとこ来たの」

⏰:22/10/18 18:51 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#1000 [○○&◆.x/9qDRof2]
あいつは俺に視線をうつすことなく言う

「たまたまに決まってんだろ」

「何それ」

「お前は?」

「ん?」

「お前は何してんの?」

「見てんの」

「何を」

「見て分かるでしょ。空だよ」

⏰:22/10/18 18:51 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#1001 [我輩は匿名である]
このスレッドは 1000 を超えました。
もう書けないので新しいスレッドを建ててください。

⏰:22/10/18 18:51 📱: 🆔:Thread}


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194