・・万華鏡・・
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#251 [果樹]
総、寒くないのかな・・・?
あのままじゃ風引いちゃうかも・・・。
・・・よしっ!
「総?」
「ん?まだ起きてたのか?つかさ」
私が総に声をかけると背中を向けていた総がこっちを向いた。
:08/06/09 05:12
:P902iS
:☆☆☆
#252 [果樹]
「あ、あの・・・床じゃ痛いでしょ?よかったらこっちこない?」
「は?」
総はまぬけな声を出す。
私の顔はきっと恥ずかしさで真っ赤なはずだ。
現に今だって心臓が激しく脈を刻んでいる。
「つかさ、それ意味わかっていってるのか?」
むくりと起き上がって聞く総。
:08/06/09 05:12
:P902iS
:☆☆☆
#253 [果樹]
総の表情は暗くてよくわからなかった。
「はい・・・」
「ふぅん。そんじゃご相伴に預かりますか」
そういうと総は立ち上がって私の眠るベッドに近付く。
ギシッとスプリングが鳴り、総はベッドに身体を預ける。
私は総と向き合って眠るのはさすがに恥ずかしかったので、総に背中を向けて眠ることにした。
:08/06/09 05:13
:P902iS
:☆☆☆
#254 [果樹]
・・・・・・眠れない。
背中に総を感じる。
シングルベッドだからさすがに二人で寝るには厳しいものがある。
総の体温を背中に感じて恥ずかしくなる。
「つかさ。そんな隅っこにいたら落っこちるよ?もっとこっち来れば?」
「え?」
:08/06/09 05:13
:P902iS
:☆☆☆
#255 [果樹]
総の声が聞こえた瞬間、肩を掴まれて、反転させられた。
総の顔が近い。
「ほら・・・おいで」
そういって総は背中に手を回して引き寄せる。
私は総の胸に身体を密着させて、抱き締められるような形になった。
「おやすみ」
上を少し見上げると目を瞑って総は寝る体勢にはいっていた。
:08/06/09 05:14
:P902iS
:☆☆☆
#256 [果樹]
え?ええ?
これで眠れっていうの?
嘘でしょ!?
恥ずかしくて眠れないわよぉ!
すぐ近くでは総の心臓がトクントクンと脈を打っている。
あ・・・心地いい音。
あったかい。
「おやすみなさい・・・」
:08/06/09 05:15
:P902iS
:☆☆☆
#257 [果樹]
私もぽつりと呟いて目を閉じた。
――――――――・・・・
「んー・・・」
目を覚ますと見知らぬ天井が、目の前にあった。
ここ・・・どこだっけ?
私は何回か瞬きを繰り返して、自分がいる場所を確かめた。
:08/06/09 05:16
:P902iS
:☆☆☆
#258 [果樹]
あ、そっか。
昨日先生が家から連れ出してくれて、それで・・・。
それで・・・。
ん?なんか枕硬い?
少し顔を動かして見てみると総が隣で静かに寝息を立てていた。
そして私の頭の下には総のたくましい腕があった。
「きっ・・・!」
私は大声で叫びそうになった自分の口を急いで手で塞ぐ。
:08/06/09 17:05
:P902iS
:☆☆☆
#259 [果樹]
「んん゙・・・」
隣で眠っていた総が少し声を洩らす。
しかし総はまたすぐ寝息を立て始めた。
私は総が起きなかった事にほっと静かに胸を撫で下ろして、またそーっと総の顔を見る。
今までは総の顔をしっかり見たことなんてなかったが、総はよく見ると端整な顔立ちをしていた。
:08/06/09 17:06
:P902iS
:☆☆☆
#260 [果樹]
長いまつげに薄い唇、スッと通った鼻筋と綺麗に弧を描いた眉そして綺麗な黒髪。
街を歩けば女の人が振り返るような美形だ。
総は彼女なんていないのだろうか?
もしいたら、私なんかにかまっている時間なんてないだろうけど。
じっと総を見ていたらおもむろに総の目が開いた。
:08/06/09 17:06
:P902iS
:☆☆☆
#261 [果樹]
「あ、つかさおはよ」
「お、おはようございます」
目を擦りながら私を見る総に、ずっと見ていたことが気づかれないように、私は急いで天井の方に向きを変えた。
顔が赤くなっていたのに気づかれてしまっただろうか。
「んあー・・・よく寝た」
:08/06/09 17:07
:P902iS
:☆☆☆
#262 [果樹]
総は起き上がって、両手を上に伸ばして軽く伸びをしてからベッドを降りた。
「コーヒーでも飲むか?」
「は、はい」
キッチンに向かいながら肩越しに聞いてきた総に、起き上がって私はこくこくと頷く。
――――――――・・・・
「つかさ。今日どっか行きたいとこあるか?」
:08/06/09 17:08
:P902iS
:☆☆☆
#263 [果樹]
「行きたいところ?」
総が作ってくれた朝食を食べている際に、聞かれたので私は首を傾げる。
少し考えてから、私はパッと頭に電球が点いたように閃く。
「お買い物!お買い物に行きたい!!」
「買い物?別にいいけど」
私の言葉に総は不思議そうな顔をしたが、承諾してくれた。
:08/06/09 17:09
:P902iS
:☆☆☆
#264 [果樹]
「ありがとう総!」
「ん?・・・ああ」
私が笑いかけると、総は軽い返事を返して黙々と朝食を平らげた。
総の顔が一瞬赤らんだのは気のせいだったのかな・・・?
――――――――・・・・
「うっわぁ・・・人がたくさんいる」
:08/06/09 17:09
:P902iS
:☆☆☆
#265 [果樹]
目の前を通り過ぎる大勢の人に思わず感嘆と驚愕の声が洩れる。
「当たり前だろ?つかさってこういうところにもこないのか?」
私の驚きようが不思議だったのだろう。
総は眉根を寄せて私の顔を覗き込んだ。
「お洋服は萩野が買ってくるから自分で行ったことはあまりなくて・・・」
:08/06/09 18:44
:P902iS
:☆☆☆
#266 [果樹]
私はそれに少し俯き加減で答える。
「萩野?」
「私が生まれる前から家に仕えているものです」
萩野・・・。
きっと今頃血眼になって探しているのだろう。
お父様が許すはずないのだから・・・。
「・・・・・。総、買い物に行きましょう!私靴欲しいんです。お洋服も」
:08/06/09 22:07
:P902iS
:☆☆☆
#267 [果樹]
また俯きそうになった顔を必死に上げ、私は総より一歩前に出て振り返る。
そして笑顔を作り、総の腕をグイグイ引っ張って総を急かす。
「俺は荷物持ちか」
私には聞こえなかったが、この時総はため息をついていた。
――――――――・・・・
「つかさ・・・お前買いすぎじゃねぇ?」
:08/06/09 22:08
:P902iS
:☆☆☆
#268 [果樹]
どっさりと腕に下げた紙袋を持ちながら呆れ顔で総が聞いてくる。
「だって楽しいんですもの!」
私は満面の笑みで総に笑いかけた。
総はそんな私に仕方がないなぁというような笑みを返した。
「お嬢様!」
「は・・・萩野っ!!」
:08/06/09 22:09
:P902iS
:☆☆☆
#269 [果樹]
聞き覚えのある声に振り向くと、50m先に厳しい顔をした萩野がいた。
私の身体がビクッと跳ねる。
「探しましたよ。ご自宅の方にお戻り下さい」
ツカツカと私の目の前まで来た萩野は、厳しい目つきをしながらも恭しく頭を下げた。
「い、嫌ですっ!!」
顔が強張る。
:08/06/09 22:10
:P902iS
:☆☆☆
#270 [果樹]
「またそんな我儘をお言いになって。いい加減にして下さいお嬢様」
「っ!!」
顔を上げた萩野の目つきがさらに厳しいものになり、私を捕らえる。
その目に捕らえられた私は、つい身体が動けなくなる。
「さぁ帰りますよ」
グッと腕を掴まれ、そこに力が加えられる。
:08/06/09 22:11
:P902iS
:☆☆☆
#271 [果樹]
「い、嫌・・・」
振り払いたいのに力じゃ適わない自分が悔しい。
「あのー俺抜きで話進めないで貰えますか?」
そんなピリピリした雰囲気の中で一つの声と共に、にゅっと手が挙がった。
「貴方は?」
萩野が私から総に視線を移す。
「時田総一郎。つかさの家庭教師」
:08/06/09 22:12
:P902iS
:☆☆☆
#272 [果樹]
「ああ、貴方でしたか。お嬢様を誑かして連れ出したのは」
「萩野!!失礼なこと言わないで!あれは私の意志で出て行ったのです」
私が萩野の言葉に反抗するように大きな声で怒鳴ると、萩野は冷ややかな目で私を見てからふっと嫌な笑みを溢す。
「まぁどちらでもよろしいですが。さぁ、参りますよ」
:08/06/09 22:13
:P902iS
:☆☆☆
#273 [果樹]
萩野が私の手を力づくで引っ張る。
しかしその萩野の手は、総によって振り払われた。
「おいおい、嫌がる女を無理やり連れて行こうとするのは、ちょっと男としてないんじゃねぇのか?」
いつものにやけ顔と違う怖い顔を総は萩野に向ける。
萩野の眼光が鋭く光る。
:08/06/09 22:14
:P902iS
:☆☆☆
#274 [果樹]
「貴方には関係の無い事だ。第一貴方、少々お嬢様と一緒に時を過ごしたからといってお嬢様のすべてを知ったつもりか?お嬢様の幸せを考えてものを言うんだな」
「っ・・・」
総は言葉に詰まって口を閉ざしてしまった。
そんな総に萩野は勝ち誇ったような顔をしてから、少し緩めた顔で私に向き直る。
:08/06/09 22:15
:P902iS
:☆☆☆
#275 [果樹]
「さぁお嬢様。参りますよ。旦那様もご心配なさっています」
「嘘よ・・・」
顔がまた俯く。
お父様が私を心配してるなんて、そんなの嘘・・・。
お父様は一度だって私に優しい顔も悲しい顔も見せたことがない。
涙だって・・・。
「嘘ではございません。旦那様のお気持ちも少しはお考え下さい」
:08/06/09 22:15
:P902iS
:☆☆☆
#276 [果樹]
「っ!」
「さぁお車にお乗り下さい」
私たちの側につけた車に萩野は私を無理やり押し込もうとする。
「いや・・・。総!総っ!」
私は周りの目を気にすることなく叫んだ。
力の限り総の名前を叫んだ。
でも総は俯いて、私の方を見ようとはしない。
:08/06/09 22:16
:P902iS
:☆☆☆
#277 [果樹]
総・・・?
「つかさ」
名前を呼ばれ顔を上げると、総が虚ろな目で私を見ていた。
「お前は家に帰れ」
「え・・・?」
総の口から信じられない言葉が発せられて、私は身体から力が抜けるのを感じた。
「家に帰って今までの生活に戻るんだ。それが普通だ」
:08/06/09 22:17
:P902iS
:☆☆☆
#278 [果樹]
総が何を言ってるのかわからない。
何を言ってるの総・・・?
なんで家に戻れなんて。
「そんな・・・。だって言ったじゃないですか」
だらんと身体の力が抜けた私を萩野の腕が支えている。
でもそんなことはどうでもいい。
私は振り絞るようにして精一杯の声を出す。
:08/06/09 22:17
:P902iS
:☆☆☆
#279 [果樹]
「総言ってくれたじゃないですかっ。私に自由をくれるって・・・!」
私の目からは、いつの間にか大粒の涙が流れて、頬をめいっぱい濡らしていた。
「総っ!!」
叫んでも叫んでも総に声は届かない。
総はまるで私の声を遮断するように顔を背けている。
:08/06/09 22:18
:P902iS
:☆☆☆
#280 [果樹]
「行きますよ」
萩野に押し込まれるように私は車に乗り込み、それを確認して車は発車した。
家に着くまでの時間、私の頬はずっと濡れていて、それが乾くことはなかった。
「つかさ・・・ごめんな」
:08/06/09 22:19
:P902iS
:☆☆☆
#281 [果樹]
一人その場に取り残された総一郎はもういないつかさの名前を呼び、涙が地面を濡らしていた。
――――――――・・・・
「お嬢様。ご夕食のお時間です」
「いらない。食べたくないの」
「しかし・・・」
「いらないったらいらない!」
:08/06/09 22:20
:P902iS
:☆☆☆
#282 [果樹]
ドアに向かって投げた枕がぼふっと音を立ててあたり、床にずり落ちる。
私はそれを見届けてからベッドにうつ伏せになるように飛び込む。
ギシっとベッドのスプリングがしなる。
「総のばかぁ・・・っ」
あんなに涙は流したはずなのにまだ出るのね。
頬を伝う涙が嫌なものにしか思えない。
:08/06/09 22:20
:P902iS
:☆☆☆
#283 [果樹]
ねぇ、総。
あの時あなたが言った言葉は嘘なの?
あの言葉は信じてもいいものなの・・・?
ねぇ、総・・・!
――――――――・・・・
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
萩野の声がドアの外から聞こえる。
:08/06/09 22:21
:P902iS
:☆☆☆
#284 [果樹]
「お父様が?・・・今行きます」
私は支度をしてから、部屋を出て、お父様の部屋へ向かった。
コンコン
「つかさです」
「入りなさい」
相変わらず迫力たっぷりの声だ。
つい背筋がピッと伸びる。
:08/06/10 04:59
:P902iS
:☆☆☆
#285 [果樹]
「失礼します」
私は深呼吸をしてからドアノブを回し、一礼して部屋に入る。
お父様は、革張りの椅子に座って葉巻を吹かしている。
相変わらず怖い顔をして、私を見ている。
「つかさ。明日お前には婚約者を決めてもらう」
「婚約者?私はそのような話聞いていません!」
:08/06/10 05:00
:P902iS
:☆☆☆
#286 [果樹]
淡々と告げられた婚約者の言葉に驚愕する。
「既に決まったことだ。明日パーティを開く。50人程婚約者候補を用意してやるからその中から選びなさい」
「でもお父様・・・っ!」
「口答えはならん」
納得がいかないと反論をしようと思ったが、ピシャリと一喝されてしまった。
「・・・すみません」
:08/06/10 05:03
:P902iS
:☆☆☆
#287 [果樹]
私はそれ以上何も言えなくなり、お父様の部屋を出て自室に戻ってベッドに伏せた。
「婚約者なんていらないのにっ・・・!」
また頬を涙が伝った。
――――――――・・・・
「よろしかったら僕と一曲踊っていただけますか?」
:08/06/10 05:04
:P902iS
:☆☆☆
#288 [果樹]
まただ。
きっと婚約者候補だろう。
さっきからダンスの誘いがひっきりなしにくる。
私は壁の花で充分なのに。
「ごめんなさい。私、気分が優れないので失礼します」
相手に軽く会釈をして、椅子から立ち上がると私はテラスに繋がる扉を開いて外の風にあたる。
:08/06/12 00:55
:P902iS
:☆☆☆
#289 [果樹]
「はぁ・・・」
パーティなんてつまらない。
50人の婚約者候補・・・。
もう少ししたらお父様から紹介されるだろう。
抗うことは出来ない。
お父様のお言いつけは絶対。
私は結局自由にはなれないのね。
「おや?君はもしかしてつかさお嬢さん?」
:08/06/12 00:56
:P902iS
:☆☆☆
#290 [果樹]
名前を呼ばれたので声の主を探すと、タキシード姿の男の人がテラスの柵に寄りかかるようにして立っていた。
顔は月の光を背中に浴びているせいでよく見えない。
「そうですけどあなたは?」
「君の婚約者候補、とでも言うべきかな?つかさお嬢さん」
:08/06/12 00:59
:P902iS
:☆☆☆
#291 [果樹]
含みのある言い方をされて眉間に皺が寄るが、招待客なので無下には出来ない。
私はなるべく角が立たないように笑顔を作る。
「そうですか。本日はわざわざ足を運んで頂いてありがとうございます。それでは私はこれで失礼します」
長居は無用とばかりに踵を返して戻るところで、後ろから声をかけられた。
:08/06/12 01:01
:P902iS
:☆☆☆
#292 [果樹]
「ねぇもうちょっと話さない?」
「遠慮します」
と言いたかったけれど、中に戻ってもまたダンスの誘いが嵐のように来るだけなので、ここの方がまだマシだと思い、私はテラスでこの男の相手をすることにした。
・・・・・・・・・・・・・
「君の家は随分としきたりに煩い家のようだね」
:08/06/12 01:10
:P902iS
:☆☆☆
#293 [果樹]
「古くからある旧家ですので、決まり事は絶対なんです」
男の言葉に貼りつけたような笑みを作る。
「ふぅん。しきたりを重んじる旧家か。自由なんか皆無だろうね」
「あなただって私と変わらないんじゃありません?」
男の言葉に私が問掛けると、男はクスッと笑いを溢す。
:08/06/12 01:12
:P902iS
:☆☆☆
#294 [果樹]
「そうだけど。俺は自由が欲しくて逃げた人間だから」
「え?」
「俺たちの住む世界は窮屈で仕方がない。やれ習い事だ。やれ勉強だと縛られた中の自由しかない。それはまるで籠の鳥だ。だから俺は籠から逃げ出した。空をおもいっきり飛んでみたかったからね」
空をおもいっきり飛んでみたい・・・か。
それは何度私が願った、叶わない望みだろう。
:08/06/12 01:15
:P902iS
:☆☆☆
#295 [果樹]
「君は逃げ出さないの?」
問掛ける男に私もクスッと笑みを一つ浮かべる。
「無理ですよ。連れ戻されてしまいましたから」
「自由が欲しくないの?」
自由?
そんなの欲しいに決まっている。
でも・・・。
:08/06/13 22:24
:P902iS
:☆☆☆
#296 [果樹]
.
「自由が欲しいなら俺がくれてやるよ」
.
:08/06/13 22:26
:P902iS
:☆☆☆
#297 [果樹]
「え!?」
思わず顔の見えない男の顔を見てしまう。
この台詞・・・。
これはあの時・・・。
「お前の知らない世界を俺が見せてやるよ」
この台詞はあの時に総が私に向けた言葉・・・。
もしかして・・・。
:08/06/13 22:27
:P902iS
:☆☆☆
#298 [果樹]
私は一筋の望みを託して本当に小さな声でその名前を呼ぶ。
「そ・・・う?」
月明かりを背にしていた男は私の隣まで来て、にやっと笑う。
「やっと気付いた?」
月明かりに照らされたその顔は紛れもなく総だった。
「なん・・・で?」
:08/06/13 22:27
:P902iS
:☆☆☆
#299 [果樹]
「つかさが婚約者を決めるパーティを開くって言うから親父に頼み込んで招待客として紛れ込んだ」
笑いながらいう総。
「親父って・・・それに招待客・・・?え??」
総のいきなりの登場と言葉に考えることのに容量を越えていて、私の頭はついていかない。
「クスッ・・・とりあえず落ち着け」
:08/06/13 22:28
:P902iS
:☆☆☆
#300 [果樹]
笑みを浮かべた総が私の頭をぽんぽんっと叩く。
それだけで私の心には安心感が生まれた。
それから総は自分の素性やここにいる理由を少しずつ話し出した。
「俺の本当の名前は此木(くのぎ)総一郎」
「此木?此木って・・・」
どこかで聞いたことが・・・。
:08/06/16 02:50
:P902iS
:☆☆☆
#301 [果樹]
顎に手を当てて考える私に総がフッと笑み浮かべる。
「此木財閥。俺はそこの長男」
「え?!」
そうだ!
全国に名を轟かせる此木財閥。
社長は随分と厳しい方だって聞いたことがある。
でも、総があの此木財閥の息子でしかも長男だなんて!
:08/06/16 02:50
:P902iS
:☆☆☆
#302 [果樹]
「だって名前・・・。名前は?!時田って!」
そうだよ!
初対面の時、確かに“時田総一郎”って言ってた!
「時田は母親の旧姓。此木じゃいろいろと不便なんだよ」
総は軽く伸びをして、月を見上げる。
確かに・・・。
此木の姓を使っていたらいろいろと面倒かもしれない。
:08/06/16 02:54
:P902iS
:☆☆☆
#303 [果樹]
:08/06/16 02:55
:P902iS
:☆☆☆
#304 [果樹]
「それより・・・ごめんな」
「え?」
総は私の方を見ながら顔を歪める。
「あの時助けてやれなくて・・・」
「あ・・・」
総の言葉で萩野に連れ戻された時の事が頭をよぎる。
総は私から顔を背けてテラスの下の噴水を見る。
:08/06/19 01:15
:P902iS
:☆☆☆
#305 [果樹]
「俺はさ此木の家が嫌いで、高校入学と同時に家を出たんだ」
初めて聞く総の過去。
「だからつかさの気持はよくわかった。逃げ出したいって気持ちも・・・でも」
“でも”を総が強調する。
「つかさには家に戻った方が幸せだと思った。俺は家を出てから大分苦労したから・・・」
:08/06/19 01:16
:P902iS
:☆☆☆
#306 [果樹]
寂しそうな総の横顔に心が痛む。
「今はさ、親父も納得してくれて支援してくれてんだけど。つかさには俺みたいな思いしてほしくなかったから」
総の気持ち。
私を思う、私の事を考えてくれる総の気持ちに心が高鳴る。
「いいんです」
「良くないだろ。好きな女を泣かせるなんて男として最低だよ」
:08/06/19 01:16
:P902iS
:☆☆☆
#307 [果樹]
え・・・?
振り向いて言った総の言葉に思考が停止する。
「あ・・・」
総は気まずそうな顔をして、口元を手で抑える。
顔が赤いのは私の気のせい・・・?
総は咳払いをしてから私の方に向き直って真面目な顔をする。
それにつられて私も背筋が伸びる。
:08/06/19 01:17
:P902iS
:☆☆☆
#308 [果樹]
「つかさが好きだ。苦労してもいいなら俺と来るか?」
伸ばされた手を私は迷うことなく取る。
「はいっ」
いつのまにか流れていた涙が頬を伝って流れ落ちる。
恋愛なんて経験したことない私だけど、この気持ちは恋だと思った。
:08/06/19 01:17
:P902iS
:☆☆☆
#309 [果樹]
「つかさ。こんなところで何をしているんだ」
「お父・・・様」
低く響く声がして見ると、テラスの入り口にお父様の姿があった。
「ん?貴様は・・・っ」
お父様が私の横にいる総に気付く。
総を見ると総は口元に笑みを浮かべて堂々とした様子だ。
:08/06/19 01:18
:P902iS
:☆☆☆
#310 [果樹]
:08/06/19 01:19
:P902iS
:☆☆☆
#311 [果樹]
「お久しぶりです。本日はお招き頂きありがとうございます。此木家の嫡男として参りました」
「此木家?」
お父様の眉間に皺が寄る。
「僕の名前は此木総一郎。此木家の嫡男です」
「素性を隠しておったのか」
睨みをきかせるお父様に怯む様子もなく総は堂々としている。
:08/06/24 05:43
:P902iS
:☆☆☆
#312 [果樹]
「こっちの方が動きやすいものですから」
へらっと笑う総にお父様は更に厳しい顔をしてから私の方をちらりと見る。
お父様の目に見つめられると私は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまう。
「つかさこっちへ来なさい。将来お前の夫となる者の紹介をしよう」
お父様の言葉には逆らえない・・・。
:08/06/24 05:43
:P902iS
:☆☆☆
#313 [果樹]
私が一歩歩みだそうとするとそれを総が止める。
驚いて総を見ると総は笑っている。
「申し訳ありませんがそれは出来ません」
「貴様には関係のないことだ」
ピシャリと総の言葉を払い除けるように言うお父様。
「そうもいかないんです。つかささんは僕の物ですから」
「っ!!」
:08/06/24 05:44
:P902iS
:☆☆☆
#314 [果樹]
私の前にまるでかばうように立つ総に私は何故か涙が出そうになる。
「何をふざけたことを」
お父様がふっと笑う。
このままじゃいけない。
総の後ろにばかり隠れていたら何も進まない・・・!
私はおずおずと総の後ろから出て総の横に並ぶ。
今から言うことに冷汗なのか脂汗なのかわからない汗が額に滲む。
ぎゅっと握った拳は力が入りすぎてもう感覚がない
:08/06/24 05:44
:P902iS
:☆☆☆
#315 [果樹]
「お父様ごめんなさい。私は総と一緒に生きていきます」
強い意思表示の為かお父様への恐怖からか握った拳が震える。
真っ直ぐにお父様を見つめる私にお父様も真っ直ぐ私を見返すが迫力の違いに少し腰が引けるが、足に力を入れて崩れないように踏ん張る。
「クッ・・・ククッ」
「?!」
:08/06/30 05:19
:P902iS
:☆☆☆
#316 [果樹]
ふいに聞こえた笑い声に隣を見ると総が口許を抑えてはっきりとしない笑いを漏らしていた。
私が眉間に皺を寄せると総は笑ったまま私の頭をポンポンと叩き目線を動かしお父様を見据える。
「そういうわけでつかさは貰って行きます」
そういって身を翻して総はいきなりテラスから下に飛び下りた。
それはまるであの時・・・。
私を家から連れだした時のように。
:08/06/30 05:19
:P902iS
:☆☆☆
#317 [果樹]
「総!?」
下を覗き込むと平気そうな顔で総手を広げて笑っていた。
「おいで、つかさ」
あの時と同じ台詞・・・。
行きたい!!
ギュッとテラスの柵を握り締めてテラスから飛び降りようとするが、後ろから低く地を這いずるような声に名前を呼ばれると身体がビクッと跳ねて身動きがとれなくなる。
:08/06/30 05:20
:P902iS
:☆☆☆
#318 [果樹]
「つかさ」
お父様の方を振り向くとお父様は一度だって見せたことのない柔和な優しい顔で笑っていた。
「行きなさい」
お父様の口から出た言葉は信じられないくらい優しく暖かいものだった。
私の目からは自然に涙が溢れ、気が付けば私はお父様に抱きついていた。
「ありがとうございます・・・。お父様」
:08/06/30 05:20
:P902iS
:☆☆☆
#319 [果樹]
わんわんと子供みたいに泣く私の頭を優しく撫でるお父様の手は暖かく“愛情”を感じた。
一頻り泣いた後、私はお父様から離れテラスの柵に手をかける。
「行って参ります!」
お父様に向かって笑顔で言ってから私はテラスから総の胸の中に飛込んだ。
――――――――・・・・
「よろしいんですか?旦那様」
:08/06/30 05:21
:P902iS
:☆☆☆
#320 [果樹]
萩野は数歩下がった所から自分の主人に声をかける。
「あぁ。いいんだ」
本当ならつかさの婚約者を選ぶ為に開かれたパーティだ。
しかしつかさはもう最愛の人を見つけて愛の逃避行をしてしまった。
メインがいなくなってはパーティは成立しない。
つかさの父が大恥じをかくのはわかっているはずなのに当の本人は柔和にそれは優しく笑っていた。
:08/06/30 05:22
:P902iS
:☆☆☆
#321 [果樹]
そんな主人をみて萩野もまた笑みを溢すのであった。
つかさのあんなに真剣な目を見たのは初めてだ。
それにあの笑顔・・・。
何年振りに見たことか。
それもあの男のお陰か。
ふっと笑いを溢して、つかさの父は萩野と共にパーティへと戻って行った。
――――――――・・・・
「つかさの父親ならぜってぇ許してくれると思ったんだ」
:08/06/30 05:22
:P902iS
:☆☆☆
#322 [果樹]
夜道を歩きながらネクタイを緩めた総がカラカラと笑う。
「どうしてですか?」
総が自信たっぷりに言うものだからつい目を見開いてしまう。
すると総は笑ったまま私の方をちらりと見てすぐ前を向く。
「つかさの父親と母親も駈け落ちしたからだよ」
「え?!」
:08/06/30 05:23
:P902iS
:☆☆☆
#323 [果樹]
総の口から出た信じられない言葉に私の足が止まる。
それに合わせるように総も足を止めて私の前に立つ。
「つかさの父親と母親は周りから見ても本当に幸せそうだったらしい。だから俺たちもきっと幸せになれる。いや、なるんだ!」
力強くそう言った総の言葉に私は涙を流しながら何度も頷く。
そんな私を抱き寄せて力強く総は私を抱き締める。
:08/06/30 05:24
:P902iS
:☆☆☆
#324 [果樹]
総から伝わるぬくもりが暖かくて心地好くて私はまた涙を流した。
――――――――・・・・
ねぇ総?
籠の鳥は籠の中で生きている方が幸せだって誰かが言っていたけれどそれは間違いだったみたい。
なんで?
だって籠の外だって私はこんなに幸せに満ち溢れているもの。
:08/06/30 05:25
:P902iS
:☆☆☆
#325 [果樹]
貴方のお陰で私は再び羽を伸ばす事ができたの。
自由はもう憧れでも夢でもなくなったのよ。
これって私にとっては凄い事だわ!
ありがとう総。
あ、でもね。
飛ぶだけじゃ疲れちゃうからたまには休ませて。
休む・・・?
:08/06/30 05:26
:P902iS
:☆☆☆
#326 [果樹]
うん!
貴方の胸の中が一番私が羽を休めて落ち着けるところだから。
大好きよ・・・。
【自由に憧れた鳥】
―END―
:08/06/30 05:26
:P902iS
:☆☆☆
#327 [果樹]
.
大人の恋?
そんなのが欲しいんじゃない。
あたしはただあたしだけを見てほしかったの。
story 4
【恋患い】
.
:08/07/01 02:37
:P902iS
:☆☆☆
#328 [果樹]
ガタガタン!!
ん?何だ?
俺は、柴浦要。
この学校の教師で、今は校内の循環中。
さっき近くの教室から聞こえてきた机が倒れたっぽい音。
「お前なんかこっちから願い下げだよ!!」
「うっさい!もー早く出てって!!」
:08/07/01 02:38
:P902iS
:☆☆☆
#329 [果樹]
そして続けて聞こえる男女の怒鳴り声。
なんだー?
痴話喧嘩か?
俺はつい野次馬心で聞耳を立てる。
「言われなくても出てってやるよ!バカ女!」
バンッと大きな音と共に開かれた教室のドアからは、金髪の男子生徒が不機嫌な顔を露にして、出てきた。
:08/07/01 02:39
:P902iS
:☆☆☆
#330 [果樹]
「チッ」
俺を見るなりそいつは舌打ちをして、近くの階段を降りていく。
チッて昭和のヤンキーですか、とそいつの背中を見送りながら俺はついツッコミを入れる。
そしてさっき金髪の男子生徒が出てきた教室の中を見ると、栗色の髪をした女の子が涙を目いっぱいに溜めて泣いていた。
――――――――・・・・
.
:08/07/01 02:41
:P902iS
:☆☆☆
#331 [果樹]
「笹原さーん。もう授業は始まっているんですけどー?」
足元の方からから聞こえてきた声。
教師か。
でも動くの面倒いや。
「だから?」
私は近付いてくる教師に冷たく言い返し、寝転がったまま雲一つない青空を見つめる。
:08/07/01 02:42
:P902iS
:☆☆☆
#332 [果樹]
私は、笹原真理奈。高1。
今日は天気が良すぎて机に向かう気にならないので、私は裏庭で昼寝をしている。
そして今、教師に昼寝の邪魔をされたところだ。
近付いてきた教師を見れば担任の柴浦だ。
柴浦は私のすぐ横に来るなり、少し眉間に皺を寄せるが、すぐに眉間の皺は消えた。
:08/07/01 02:43
:P902iS
:☆☆☆
#333 [果樹]
「はー。まぁ、いーか。」
と言って柴浦は隣に腰を下ろした。
なんだこいつ・・・。
普通の教師ならもっとカンカンになって怒鳴ってくるのに、こいつは違った。
てゆーか一緒になってくつろいでるし。
「いい天気だなー」
:08/07/01 02:44
:P902iS
:☆☆☆
#334 [果樹]
柴浦は足を前に投げ出し、手は後ろについて、空を見上げながら言う。
「・・・・・・・」
「話かけてるんだから何か答えなさいよ」
なんで・・・?と言う疑問が湧いたが、面倒くさいので一応言葉を返す。
「そーですね」
感情もなく言う私に、柴浦はクッと笑って着ていたジャケットのポケットから煙草を取り出す。
:08/07/01 02:45
:P902iS
:☆☆☆
#335 [果樹]
「不良教師」
「ハハッそれは君もデショ?笹原真理奈さん」
ぼそっと言ったつもりだったけど聞えていたらしい。
柴浦は煙草を吹かしてこっちを見てきた。
変なやつ・・・。
心の中で静かに悪態をついて、私は暖かい陽気の中、放課後までひたすら眠り続けた。
:08/07/01 20:21
:P902iS
:☆☆☆
#336 [果樹]
.
――――――――・・・・
「斎藤ー」
「はーい」
「笹原ー」
シーン・・・。
「笹原ー。いないのかー?」
俺は教室中を見渡すが、生徒たちはお互いの顔を見合わせている。
:08/07/01 20:22
:P902iS
:☆☆☆
#337 [果樹]
「笹原さんなら2限終わったあたりからいませーん」
一人の女子生徒が手をあげて言う。
「・・・・・・」
――――――――・・・・
私は今屋上で寝転んで空を見ている。
ぼーっとただ雲が自分の上を過ぎていくのを見ていると世界に自分しかいない気がして気持ちがいい。
:08/07/01 20:23
:P902iS
:☆☆☆
#338 [果樹]
:08/07/01 20:23
:P902iS
:☆☆☆
#339 [我輩は匿名である]
:08/07/01 22:08
:P903i
:YQQlX4Z2
#340 [果樹]
「おーい。そこの不良少女」
私の至福の一時を邪魔する存在がきた。
そいつはこっちに向かって歩いてくる。
「無視しなーい」
面倒くさ。
「なんですか?」
私はむくりと起き上がりその邪魔する存在こと柴浦を睨む。
:08/07/02 07:20
:P902iS
:☆☆☆
#341 [果樹]
「化学の時間いなかったろ?」
「・・・・・・・」
なんだそんなことか。
私は、はぁと溜め息をつき立ち上がって屋上の柵に肘をついて校庭を眺めた。
「ここにいたのか?」
うるさいなぁ。
当たり前じゃん。
「・・・・・・」
:08/07/02 07:21
:P902iS
:☆☆☆
#342 [果樹]
心の中では返事をするが決して口には出さない。
「聞いてんだから答えなさいな」
背後から柴浦が頭にチョップをかましてきた。
「いったいなー。暴力教師!」
私は振り返って頭を擦りながら後ろで腕を組んで笑っている柴浦を睨む。
「なんで授業にでない?」
結局説教か。
:08/07/02 07:21
:P902iS
:☆☆☆
#343 [果樹]
「かったるいから」
「でも前は出てたろ?」
「・・・・・・・」
「なんでいきなり出なくなった?」
何こいつ?
尋問でも始める気?
私は柵に寄りかかる。
「別に。意味なんかないよ」
「ふーん」
:08/07/02 07:22
:P902iS
:☆☆☆
#344 [果樹]
それっきり柴浦はそこに胡座をかいて座り込んだ。
「てゆーか。居座らないでくれる?」
「なんで?」
上目使いで見てくる柴浦。
「ここはあたしが見つけた場所だから」
「プハッお前かわいーね」
真顔で言った私に柴浦は吹き出してクックッと喉の奥で笑っている。
:08/07/02 07:22
:P902iS
:☆☆☆
#345 [果樹]
:08/07/02 07:23
:P902iS
:☆☆☆
#346 [果樹]
嫌な感じ。
「は?馬鹿にしてんの?」
睨んだ私を、柴浦はまた上目使いで見てきて
「違うよ。褒めてんの」
とか言いやがった。
なんだこいつ。
意味がわからない。
私は眉間に皺が寄る。
「用がないならどっか行ってよね!」
:08/07/02 20:00
:P902iS
:☆☆☆
#347 [果樹]
私は、柴浦から目線を外しまた校庭を見る。
「用ならあるよ。なんであの時泣いてたんだ?」
「あの時?」
柴浦の言っている言葉の意味がわからず思わず聞き返してしまう。
「先週の放課後。男と別れた後の教室」
柴浦の言う短い言葉にピンと来るがこいつの前で戸惑いを見せるのは嫌なのであくまで平常心を保つ。
:08/07/02 20:01
:P902iS
:☆☆☆
#348 [果樹]
「見てたんだ。変態。あんた覗きが趣味なの?」
柴浦の言う“あの時”とは、あいつと最悪な別れ方をした放課後のことだ。
「違います」
「変態教師」
「だから違うって言ってるでしょーが」
柴浦は着ているジャケットから煙草を出して、火をつける。
:08/07/02 20:01
:P902iS
:☆☆☆
#349 [果樹]
「どうでもいいけど、あたしに関わらないでくれる?」
「そうはいかないんだよ。一応お前は俺のクラスの生徒だからな」
煙草を吹かしながら言う柴浦に言われても説得力に欠ける。
「教師の勤めってやつ?くっだらない。」
ハッと悪態をつくが柴浦はへらへらと脳天気に笑っている。
:08/07/02 20:02
:P902iS
:☆☆☆
#350 [果樹]
「まぁそー言わないで仲良くやろうぜ。笹原真理奈さん」
「馬鹿らしい。」
手を出して握手を求める柴浦を無視して私は校庭を見続けた。
――――――――・・・・
あれからというもの柴浦は私を見かければ声をかけてくる。
:08/07/08 00:19
:P902iS
:☆☆☆
#351 [果樹]
トイレから出れば
「おー笹原ー」
屋上に行こうとすれば
「笹原サボんなー」
昼ご飯を食べてれば
「うまそーなの食ってんな笹原」
私にも我慢の限界がある。
こんなのが一週間も続いたら鬱病になってしまう。
:08/07/08 00:20
:P902iS
:☆☆☆
#352 [果樹]
「真理奈さぁ。なんか最近柴くんにストーカーされてない?」
今は廊下で友達の百合と話している。
「そうみたい」
私は窓の桟に肘をつき、手に顎を乗せて溜め息をつく。
「相当参ってるわね」
そんな私を見た百合は苦笑いを溢す。
:08/07/08 00:20
:P902iS
:☆☆☆
#353 [果樹]
「勘弁してほしーよ。毎日毎日、笹原笹原ってほんとうざったい!」
悪態をつく私に百合は紅一点、さっきの顔とは違い、今度はにこにこと嬉しそうに笑っている。
「真理奈にはいい変化なんじゃないの?」
「何それ」
百合の言っている意味が分からず聞き返すと、百合は更ににこっと笑って、「そのまんまの意味よ」といって教室の中に入っていってしまった。
:08/07/08 00:22
:P902iS
:☆☆☆
#354 [果樹]
いい変化・・・?
あいつに追われることのどこがいい変化?
「あ!笹原ー」
百合の言葉に頭を悩ましていると廊下の向こうから呼ばれた。
来た。今一番会いたくない奴ナンバー1が!!
「何ですか?柴浦せんせ」
私は、顔に貼りつけたような笑顔で柴浦に対応する。
:08/07/10 07:05
:P902iS
:☆☆☆
#355 [果樹]
「そんな他人行儀な」
「他人ですから」
相変わらずうざいなこいつ。
「今日は授業出る気になったの?」
「先生には関係ないと思いますが?」
「冷たっ!先生泣いちゃうよ?」
:08/07/10 07:06
:P902iS
:☆☆☆
#356 [果樹]
相手をしてるだけ時間の無駄に思えてきた私は、柴浦を無視して柴浦とは反対方向に歩く。
「あ、ちょっと笹原どこ行くの?笹原ー?」
後ろでは柴浦がしつこく名前を呼んでいたけど、そんなのは無視。
私は屋上へと繋がる階段を上った。
――――――――・・・・
カチャッ・・キィ
:08/07/10 07:06
:P902iS
:☆☆☆
#357 [果樹]
鉄製のちょっと重たい扉を開いて屋上に出ると、空は相変わらずの快晴で、とても気持ちが良かった。
私はいつも通り寝転び目を閉じる。
なんでみんなは授業なんかに出る気になるんだろうとふと思ってしまう。
こんなに風も気持よくて、暖かいのに。
そんなことを思ってると屋上の扉がゆっくりと開き、人が出てきた。
:08/07/10 07:07
:P902iS
:☆☆☆
#358 [果樹]
「やっぱりここにいた」
来たのは柴浦だった。
私は、うっすらと開けた目からその姿を確認してまた目を閉じる。
「なー笹原。授業出れば?」
私は寝たふりを決めこむ。
「笹原笹原笹原ー!」
耳元でいきなり大声で名前を連呼されたせいでキーンと耳の中で音が反響する。
:08/07/13 22:17
:P902iS
:☆☆☆
#359 [果樹]
「煩いんですけど」
上体を起こし柴浦を睨む。
「授業出れば?」
「嫌です」
「何で?」
「・・・・・・・」
最近この繰り返しばかりな気がする。
「この間の男と別れてからだよな。お前が授業に出なくなったの」
:08/07/13 22:18
:P902iS
:☆☆☆
#360 [果樹]
こいつ・・・!
柴浦を今までにないくらい鋭い目付きで睨んでからにっこりと口元で笑みを作る。
「柴浦先生。一つ忠告してあげます。人の心の中にズカズカと土足で踏み込むと痛い目に合いますよ?」
それだけ言って私は柴浦を置いて屋上を後にした。
――――――――・・・・
「よっ!」
:08/07/13 22:19
:P902iS
:☆☆☆
#361 [果樹]
うざいの言葉しか思いつかない私は目を瞑ったまま今、声をかけてきた奴に背中を向ける。
「無視すんなよ。寂しいだろー?」
トサッと音がして声が近くに聞こえる。
柴浦が私の横に腰を下ろしたのだろう。
「なぁ笹原?授業出ない?」
またこの繰り返しか。
:08/07/13 22:19
:P902iS
:☆☆☆
#362 [果樹]
:08/07/13 22:56
:P902iS
:☆☆☆
#363 [果樹]
「出ません」
「じゃあ恋愛すれば?」
いつものように言葉を返すといつもと違う言葉が返ってきた。
“恋愛”
それは今の私には重く痛い言葉だった。
「当分恋はしないって決めたんです」
そう、恋なんてしない。
:08/07/16 21:55
:P902iS
:☆☆☆
#364 [果樹]
恋なんて痛みしかない。
辛さしか知らない。
幸せになれないのなら恋なんてしたくない。
「あの男のために人生棒に振るのか?」
「柴浦先生」
私は体を起こして柴浦の方を見る。
「何かな?不良少女の笹原さん?」
柴浦は意地悪そうな顔を私に向ける。
:08/07/16 21:55
:P902iS
:☆☆☆
#365 [果樹]
「もう私につきまとわないでで下さい」
「いやだ」
きっぱりと言った私に柴浦は子供みたいな言葉を返す。
「なぁ笹原」
柴浦の言葉なんて聞きたくなくて私は柴浦に背中を向けて体育座りをして膝に顔を埋める。
:08/07/16 21:56
:P902iS
:☆☆☆
#366 [果樹]
「お前が一生恋愛をしなくてもきっと相手の男は恋愛をするぞ?それもたくさん」
煩いうるさいウルサイ!
そんなの言われなくてもわかってる。
他に女がいるって知ってた。
でも・・・それでもあいつのことが大好きで、好きって気持ちは止められなかった。
:08/07/16 21:56
:P902iS
:☆☆☆
#367 [果樹]
だから他の女の事も目を瞑ってきた。
でもやっぱり1番になりたかった。
あいつの中の1番になりたかった。
「先生には・・・関係ない。放っといて」
すくっと立ち上がって歯をくいしばりながら溢れそうになる涙を必死に堪えて私は中庭を離れようと歩き出す。
が、柴浦によってそれは阻まれた。
:08/07/16 21:57
:P902iS
:☆☆☆
#368 [果樹]
柴浦は私の手首をつかんで離さない。
「離して!」
「嫌だ」
「離してってばぁ!」
ぶんぶんと振ってもなかなか離してくれない柴浦に苛立ちが募り、思わず大きな声が出る。
「離さないし放っけねー。悪りぃけどそんな泣きそうな顔してる奴を放っておけるほど俺鬼蓄じゃねーんだわ」
:08/07/20 05:20
:P902iS
:☆☆☆
#369 [果樹]
「っ!!」
強く握られた手首から柴浦の熱を感じる。
「笹原」
柴浦の私を呼ぶ声が煩いくらい耳に響く。
「こっち向け笹原」
グイッと肩を掴まれ強制的に柴浦の方を向かされた。
「もう泣いてんじゃん」
:08/07/20 05:20
:P902iS
:☆☆☆
#370 [果樹]
「うるさい・・・」
ふっと笑う柴浦。
私は泣き顔を見られたのが恥ずかしくて柴浦から顔を背けた。
「そんなに歯ぁくいしばらなくても泣けばいいよ。思いきり泣けばいい」
そう言って柴浦は私の頭をぽんぽんと優しく叩いた。
それに応じるように私の涙は積を切ったように流れ出す。
:08/07/26 05:21
:P902iS
:☆☆☆
#371 [果樹]
「うっ・・ひっく・・」
止まらない涙をまるで見ないようにでもするかのように、柴浦は私の頭を抱えるようにして抱き締めた。
「いっぱい泣け」
柴浦の優しい言葉に余計に涙がでそうになって私はそれを誤魔化すように悪態をつく。
「なに・・・それ。偉そうに」
:08/07/26 05:22
:P902iS
:☆☆☆
#372 [唄]
:08/07/26 09:24
:D905i
:4hzSTtkc
#373 [果樹]
:08/07/26 15:34
:P902iS
:☆☆☆
#374 [果樹]
でも柴浦は何も言わずに優しく私が泣き止むまで頭を撫でてくれた。
―――――――――――
「あ゙ぁぁーーー」
私は野太い雄叫びを出してベッドに突っ伏した。
あの後、次第に冷静になった私は柴浦に抱き締められている状況が恥ずかしくなり柴浦を突き飛ばして逃げた。
:08/07/26 15:39
:P902iS
:☆☆☆
#375 [果樹]
しかも廊下で柴浦に会うたびに心臓がどくんと音を立てるのでその気まずさから、私は学校を早退して帰ってきてしまった。
そして今は部屋でベッドに突っ伏している。
「あ゙ぁぁぁーーーー」
さっきよりも長い雄叫びが出る。
それもこれも柴浦のせいだ。
:08/07/26 15:40
:P902iS
:☆☆☆
#376 [果樹]
♪〜・・♪〜・・
ごろごろとベッドで転がっていたら突然携帯が鳴り、それは着信を知らせていた。
サブ画面を見ると知らない番号・・・。
出ようか出ないか迷っている私を急かすかのように着信音が部屋に響く。
うるさい・・。
:08/07/26 15:41
:P902iS
:☆☆☆
#377 [果樹]
ピッとボタンを押し携帯を耳に当てる。
「はい」
『俺だ俺ー』
イタ電・・・?
「俺と言う人物に心当たりはありませんけど」
『ハハッ相変わらず冷たいなぁ。担任の声も忘れちまったか?』
は・・・?
:08/07/26 15:42
:P902iS
:☆☆☆
#378 [果樹]
「担任って・・・まさか柴浦?!」
『柴浦先生ですかだろ?まったく・・・』
電話の向こうで柴浦が軽く溜め息をついたのが聞こえた。
「てゆーか何で柴浦があたしの番号知ってるの?」
教えてないし教える気もなかったのに。
『石川に聞いた』
:08/07/26 15:42
:P902iS
:☆☆☆
#379 [果樹]
石川とは百合のことだ。
百合め・・・。
今度会ったらたたじゃおかねぇと心に近い今は取り合えず柴浦とうるさいぐらい鳴っているこの心臓をどうにかしなければということに頭が回る。
「何の用ですか?」
口調をいつも通りに私は平静を装う。
『お前勝手に早退してんなよなー』
:08/07/26 15:43
:P902iS
:☆☆☆
#380 [果樹]
そんなことで電話かよ。
「お腹があまりの激痛を訴えたので帰ったんですが何か問題がありましたか?」
『あのなぁ・・・一言くらい俺に言っていけよなー』
「すみませんでしたー」
さして反省の色も見せず言うと柴浦がまた溜め息をつく。
:08/07/26 15:44
:P902iS
:☆☆☆
#381 [果樹]
『まぁいいけどさ。明日はちゃんと学校来いよ』
「・・・・・」
『クスッ・・じゃあな』
プツッという音と共に電話は切れてツーツーという機械音だけが耳に残った。
もうこれ以上あたしに構わないで欲しい・・・。
今だうるさく鳴る心臓を押さえて私は仰向けに寝転ぶ。
:08/07/28 01:11
:P902iS
:☆☆☆
#382 [果樹]
♪〜・・♪〜・・
今日はよく鳴るな。
再び鳴った携帯に目をやればそれは驚く人物からの着信だった。
サブ画面に写し出された名前は“進藤啓祐(シンドウ ケイスケ)”
啓祐はあたしの彼氏。
いや、彼氏だった人。
あたしたちはあの放課後の教室で終わった。
:08/07/28 01:12
:P902iS
:☆☆☆
#383 [果樹]
鳴り響く着信音。
携帯を掴む手が震える。
ピッとボタンを押して携帯を耳に当てがう。
「はい・・・」
『真理奈ー久しぶりだなぁギャハハ』
「啓祐・・・」
電話の向こうの啓祐はなにやら上機嫌で相変わらず軽いノリだった。
:08/07/28 01:12
:P902iS
:☆☆☆
#384 [果樹]
『俺、女と別れちまってよぉ。また相手してくんね?』
「何・・いってんの?」
『あん時のことまだ怒ってんのかぁ?水に流してまた仲良くしようぜ。なぁ?』
「・・・・・」
『まぁいーや。とりあえず明日の放課後残ってろ。教室行くから。じゃな』
:08/07/28 01:13
:P902iS
:☆☆☆
#385 [果樹]
啓祐との会話はプツッという音と共に切れた。
なんで今更・・・。
私はベッドに倒れこんで顔を腕で覆い隠して明日のことを考えたまま寝てしまった。
―――――――――――
「はぁ・・・」
:08/07/28 01:13
:P902iS
:☆☆☆
#386 [果樹]
結局考えもまとまらぬまま放課後が来てしまった。
帰りたいけど帰ったら帰ったで後が怖いのだ。
私は机に突っ伏してまた盛大に溜め息をついた。
「そんなに溜め息ばっかりしてると幸せ逃げるよ?」
カタンという音がして顔を上げると百合が前の席に座っていた。
:08/07/29 19:53
:P902iS
:☆☆☆
#387 [果樹]
「百合ぃー」
「うわ!何?どうした?」
半泣き状態で百合に泣き付くと百合がビックリしたようなでも心配そうな顔で聞いてきた。
私はとりあえず百合に昨日あったことの一部始終を話し啓祐のことも話した。
「あたしこのまま待ってるべきかなぁ?」
:08/07/29 19:53
:P902iS
:☆☆☆
#388 [果樹]
「うーん・・真理奈はさ啓祐くんとヨリ戻したいの?」
そう聞かれて一瞬戸惑ってしまった。
前の私だったら即「うん」と答えていたのに今はそうではない。
「ううん・・・もういい」
私は首を横に振って否定を表す。
:08/07/29 19:54
:P902iS
:☆☆☆
#389 [果樹]
あんなに好きだった人だけれど今は違う。
何故かはわからないけどあたしの心が好きじゃないっていっている。
「じゃあ啓祐くんにきっぱりと言ったら?このまま逃げてたって同じ学校にいるんだからいつかは捕まるでしょ?だったら今日きっぱりと別れるって言った方がいいよ」
「・・・・・うん。そうだね。そうする」
:08/07/29 19:56
:P902iS
:☆☆☆
#390 [果樹]
「大丈夫!強い見方を呼んであげるから!何かあったら電話して」
そう言って百合は手を振って教室を出ていった。
強い見方・・・?
百合が最後に言っていた言葉が気になったが分からなかったのでとりあえず考えるのを止めた。
:08/07/29 19:56
:P902iS
:☆☆☆
#391 [果樹]
教室に一人になってから10分。
もう帰ろうかなと思っていた時に教室のドアがガラッと開いて制服を身に纏った男子生徒が入ってきた。
入ってきたのは啓祐。
体が一瞬ビクッと震える。
「ちゃんと待ってたんだ。えらいじゃん。ギャハハ」
不愉快になるほどの笑いを浮かべて啓祐は私に近付いてくる。
:08/07/29 19:57
:P902iS
:☆☆☆
#392 [果樹]
あたしはぎこちなく立ち上がり啓祐と向かい合わせになる。
「あ、あたし啓祐とはもう終わってるから・・・ヨリ戻す気もないし」
「は?ヨリ戻す気は俺にもねぇけど。ただやらせろって言ってんの」
・・・・・・え?
何言ってるの?
:08/07/29 19:57
:P902iS
:☆☆☆
#393 [果樹]
「い・・・いや」
私は勇気を振り絞って啓祐に自分の意思を伝えた。
震えて今にも崩れそうな足を床につけて踏ん張る。
啓祐は自分の嫌なことがあるとすぐ物に当たったり私を殴ってくる人だった。
だから怖い。
啓祐の逆鱗に触れたら私は間違いなく殴られるだろう。
:08/07/29 19:58
:P902iS
:☆☆☆
#394 [果樹]
ぎゅっと目を瞑って啓祐の言葉を待つ。
・・・・・・・・・。
長い沈黙の後、それを打ち破るように啓祐が口を開く。
「お前誰に向かってそんな口きいてんだよ!!」
ガンッという音と共に啓祐の側にあった机が大きな音を立てて倒れた。
:08/07/29 19:59
:P902iS
:☆☆☆
#395 [果樹]
ビクッと体が跳ねる。
「ヤらせろよ」
「い・・や・・・・・キャッ!」
二度目の否定をしたところでいきなり腕を掴まれて啓祐に引っ張られた。
「口ごたえしてんじゃねぇよ」
パシンッと乾いた音と頬に走った痛みが啓祐に叩かれたことを私に認識させた。
:08/08/02 17:56
:P902iS
:☆☆☆
#396 [果樹]
「真ー理奈♪まだ俺のこと好きなんだろ?」
ぎゅっと啓祐に抱き締められたが私は頬を押さえたまま呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
恐怖で頭が混乱して今から何をされるかわかっているのに抵抗できなかった。
私はぎゅっと固く目を瞑って今ある恐怖をやりすごすことだけに専念した。
「気持ちよくしてやるからな?」
:08/08/02 17:56
:P902iS
:☆☆☆
#397 [果樹]
ちゅっと首筋に啓祐がキスを落とす。
嫌なのに抵抗できない・・・。
助けて・・・逃げたい・・・。
誰かっ・・・!!
心の中で叫んでも誰も来ないのはわかってる。
だけど望んでしまう。
助けて・・・と。
:08/08/02 17:57
:P902iS
:☆☆☆
#398 [果樹]
ダンッ!!
「痛っ」
啓祐に押し倒されて机に仰向けにされた。
押し倒された時に打ったようで肩が痛い。
啓祐の手が制服の上から胸を触る。
キモチワルイ・・・。
「いや・・・いやー!!」
:08/08/02 17:57
:P902iS
:☆☆☆
#399 [果樹]
―ガラガラッ
私が叫んだ直後に教室のドアが開く音がして啓祐の顔がそちらに向く。
私も少し顔を上げて見ると入り口には不機嫌そうな柴浦が立っていた。
「お取り込み中か?」
「見りゃあわかんだろ」
いつもより低い声の柴浦。
:08/08/02 17:58
:P902iS
:☆☆☆
#400 [果樹]
啓祐はだるそうに柴浦を睨みながら言う。
「そりゃあ悪かったな。でも」
言葉の途中で柴浦は早歩きでこちらに向かってきて私の手首を掴むといきなりグイッと引き寄せ、
「笹原は返してもらう」
とだけ言って、そのまま呆然とする啓祐を残し、私の手を引いたまま教室の外へ連れだした。
:08/08/02 17:58
:P902iS
:☆☆☆
#401 [果樹]
読んでくれている方いらっしゃるのでしょうか?
もしよろしかったら感想ください


:08/08/02 17:59
:P902iS
:☆☆☆
#402 [ako]
こんにちわ

ずっと読んでます

更新は大変だと思いますが頑張ってください

柴浦

カッコイイです

:08/08/03 15:37
:SH903i
:T9PJiczc
#403 [我輩は匿名である]
:08/08/03 17:56
:SH905i
:olveaEGw
#404 [果樹]
akoさん、我輩さんへの
お返事は感想板で


:08/08/05 19:04
:P902iS
:☆☆☆
#405 [果樹]
―――――――――・・・・
「お前は無防備すぎだ!」
「はぁ?!柴浦にそんなこと言われる筋合いないし」
「あるね」
「ない」
「ある」
「ない」
:08/08/05 19:05
:P902iS
:☆☆☆
#406 [果樹]
私たちがこんな言い合いをする20分前―――。
教室を出てから私の手を引いたままずんずんと進んでいた柴浦の足が急に止まった。
見上げるとそこは校舎の一番端にある視聴覚室。
「入れ」
ドアを開けた柴浦は私を視聴覚室の中に促す。
:08/08/05 19:05
:P902iS
:☆☆☆
#407 [果樹]
私が入った後、柴浦も入り、後ろ手でドアを閉めた。
私は何で柴浦が教室に来たのかもわからないし、何でここに連れてきたのかもわからなくてとりあえず頭が混乱していた。
じっと柴浦が見つめるので私も何となく柴浦を見ていた。
気まずいはずの沈黙がこの時はなんとなく心地好く感じた。
:08/08/05 19:06
:P902iS
:☆☆☆
#408 [果樹]
「何にもされてないか?」
先に口を開いたのは柴浦だった。
「あ・・うん。大丈夫・・」
私は柴浦から目をそらし自分の体を見渡す。
「そうか」
柴浦がふぅっと息を吐いた気がして少し顔を上げるとどこか安心したような柴浦の顔があった。
:08/08/05 19:06
:P902iS
:☆☆☆
#409 [果樹]
その顔に少しドキッとしてしまったのはきっと間違いではないと思う・・・。
「お前さぁもっと警戒心持てば?」
近くにあった机に軽く腰をかけた柴浦がいきなりそんなことを口にした。
「は?」
「お前は無防備すぎる!」
こんな感じで話は冒頭に戻る訳で・・・。
:08/08/05 19:07
:P902iS
:☆☆☆
#410 [果樹]
「何いきなり・・・」
つい眉間に皺が寄る。
「お前に隙があるからアイツにだって襲われそうになったんだろ?」
この時、私の中で何かのスイッチが入ってしまった。
「はぁ?!柴浦にそんなこと言われる筋合いないし」
「あるね」
:08/08/05 19:07
:P902iS
:☆☆☆
#411 [果樹]
私の言葉に柴浦がすかさず言葉を返して来た。
「ない」
「ある」
「ない!」
あるかないかっていう下らない言い合いが続く。
どちらも意地になっていて止める気配なんてない。
:08/08/05 19:08
:P902iS
:☆☆☆
#412 [果樹]
バチバチバチと火花が散る中、柴浦が溜め息をついた。
「あるよ。好きな女が無防備すぎたら不安になんだろ?」
「な・・・・・・・は?」
那覇?
いやいや違う違う。
今柴浦はなんていった?
好きな女?
:08/08/08 21:05
:P902iS
:☆☆☆
#413 [果樹]
「誰が誰の好きな女?」
思わず思ったことが口から出てしまった。
「お前が俺の好きな女」
「冗談でしょ・・?」
“冗談”だったらよかった。
でも私を見る柴浦の目は真剣で冗談なんて言葉で誤魔化せないことがわかった。
:08/08/08 21:06
:P902iS
:☆☆☆
#414 [果樹]
「何・・で?いつから?どうして・・・?」
頭が混乱する。
「何でつっても人を好きになるのに理由なんかないだろ。ただ泣いてるお前を守りたいって思った。それだけだ」
顔が熱い。
鼓動が高鳴って心臓が破裂しそう。
「かっ・・・帰る!」
:08/08/08 21:07
:P902iS
:☆☆☆
#415 [果樹]
私は柴浦が持ってきてくれた私の鞄を掴んで逃げるように視聴覚室を出た。
―――――――――・・・・
「はぁはぁ・・・」
走って校舎を出てきたせいで息切れが激しい。
私は息を整えながら柴浦が言った事を頭の中で繰り返していた。
:08/08/08 21:08
:P902iS
:☆☆☆
#416 [果樹]
お前が俺の好きな女――
人を好きになるのに理由なんかない――
ただ泣いてるお前を守りたいって思った――
「なんで・・・」
何で柴浦の事ばっかり考えてるのあたし・・・。
「はぁ・・・・」
:08/08/08 21:10
:P902iS
:☆☆☆
#417 [果樹]
何度目かになる溜め息をついた時パッパーと車のクラクションらしき音が聞こえた。
まだ校門を出ていなかった私は、学校の中なのに・・・と不思議に思い後ろを振り向くと車のライトが目に入ってきて眩しさに目を細める。
「乗ってけば?」
いつの間にか私の横に来ていた白い車の窓からは柴浦が顔を出していた。
:08/08/08 21:10
:P902iS
:☆☆☆
#418 [果樹]
「っ!!!」
驚きすぎて声にならなかった。
「何世にも恐ろしいものを見たような顔してんの」
フッと笑う柴浦に不覚にもドキッとしてしまった。
「あ、歩いて帰れるから」
柴浦の顔が見れなくてつい顔が横に向いてしまう。
:08/08/08 21:11
:P902iS
:☆☆☆
#419 [果樹]
そんな私を咎める訳でもなく柴浦は優しく笑っている。
「危ないから乗っていけって」
「そんな柔じゃないし」
「女の一人歩きは危ないぞ?世の中狼だらけだからな」
「じゃあ柴浦も狼だね」
間発いれない会話が飛び交う。
:08/08/08 21:12
:P902iS
:☆☆☆
#420 [果樹]
「茶化すな。ほら乗れって」
柴浦はまるで急かすように助手席を指していう。
「いいよ」
私は柴浦をちらっと見てからまた横を向き直して断る。
「いいから乗れ」
痺を切らしたような少し不機嫌な声・・・。
:08/08/08 21:12
:P902iS
:☆☆☆
#421 [果樹]
「・・・・・・はい」
そう言われてしまえば逆らえるはずもなく私は素直に言うことを聞いて車に乗り込んだ。
―――――――――・・・・
車に乗り込んでから沈黙が続く。
視聴覚室の時とは違うどこか重たい沈黙。
:08/08/08 21:13
:P902iS
:☆☆☆
#422 [果樹]
いや、あたしがそう思っているだけかもしれないけど・・・。
「寒くない?」
いい加減苦しくなってきた頃柴浦が聞いてきた。
冷房が効いている車内で私が寒がっていないか心配してくれているみたいだ。
「大丈夫・・・です」
「何他人行儀に答えてんの?」
:08/08/08 21:14
:P902iS
:☆☆☆
#423 [果樹]
柴浦はハンドルを握ったまま、フッと笑う。
「もしかして緊張してんの?」
その言葉に心臓が跳ねる。
緊張しないわけがない。
さっきの今で心の整理がつくはずもなく私の心臓の音は車に乗ってからずっと煩いくらいに耳に響いている。
:08/08/08 21:15
:P902iS
:☆☆☆
#424 [果樹]
気まずくなって私は下を向くことしかできなかった。
「可愛い奴」
クスッと柴浦が笑ったのが横から聞こえてきて顔が赤くなる。
―キキッ
柴浦がブレーキを踏んで車が停止する。
車はいつの間にか私の家の前に着いていた。
:08/08/08 22:12
:P902iS
:☆☆☆
#425 [果樹]
「着きましたよお嬢様」
「ありがとうございました・・・」
カチャとドアを開けたと同時に腕を掴まれてまた車内に引き込まれた。
「俺は本気だからな」
じっと目を見つめられて言われればまた心臓がドクンと跳ねる。
それだけ言うと柴浦は私の手を放す。
:08/08/08 22:12
:P902iS
:☆☆☆
#426 [我輩は匿名である]
:08/08/10 00:13
:N905i
:BbNK714E
#427 [果樹]
止まっていた私の思考が、手を放されたと同時に動き出したので、私は自分の鞄を持ち、車を降りた。
ドアを閉める瞬間、柴浦が
「また明日」
と言ったのが聞こえたが、それに答える余裕なんてなかったのでバタンとドアを閉め、急いで家の中に入った。
:08/08/17 23:55
:P902iS
:☆☆☆
#428 [果樹]
外で柴浦の車が走り去る音を聞いてから私は玄関のドアに持たれるようにして崩れ落ちた。
どうしよう・・・。
止まない心臓を抑えて私は天井を見上げた。
―――――――――・・・・
「柴浦に告白されたーー?!」
「ばかっ声大きい!!」
:08/08/17 23:55
:P902iS
:☆☆☆
#429 [果樹]
百合の声より遥かに私の声が大きかった気がするのはとりあえず無視しておこう・・・。
今、私は百合と屋上に繋がる階段の踊り場で座りながら話をしている。
内容はもちろん昨日あったこと。
淡々と話す私に対し、百合は百面相を繰り返す。
本当に忙しい奴。
:08/08/17 23:56
:P902iS
:☆☆☆
#430 [果樹]
私は横目でそんな百合を見ながら冷静に思った。
「それで?!真理奈は何て答えたの??」
百合の目がキラキラしているのは私の気のせいだろうか。
「答えないで逃げてきた」
「・・・・・・・は?」
私の言葉に百合があんぐりと口を開ける。
:08/08/17 23:56
:P902iS
:☆☆☆
#431 [果樹]
きっと私の答えが余りにも百合の妄想の世界と欠け離れていたのだろう。
とりあえず百合に突っ込みは入れず、その後家まで送ってもらった経緯を話すと、百合の口許が今度はにんまりと笑みを浮かべる。
「何・・・?」
気味が悪くて、恐る恐る聞くとにまにまと笑いながら百合がとんでもないことを口にした。
:08/08/17 23:56
:P902iS
:☆☆☆
#432 [果樹]
「真理奈さぁ、柴ちゃんに惹かれてるでしょ?」
「・・・・・・は?」
「いやー柴ちゃんを呼んだのは正解だったかも」
ふふっと怪しく笑う辺りが恐ろしい。
「自分で気付いてないだけかもしれないからよく考えてみたら?」
そういって百合は私の肩をポンポンと叩いて教室の方に歩いて行ってしまった。
:08/08/17 23:57
:P902iS
:☆☆☆
#433 [果樹]
一人になった私は屋上に出た。
頬をかすめる風に気持ちよさを感じて私はフェンスの側まで行き、校庭を眺める。
校庭では休み時間だというのに小学生のようにはしゃぐ男子生徒が数人いた。
それを見ながら私は、さっき百合が言った言葉を繰り返し考えていた。
惹かれてる・・・?
私が・・・柴浦に・・・?
:08/08/17 23:58
:P902iS
:☆☆☆
#434 [果樹]
“自分では気付いてないだけかもよ”
わからない。
どうやって確かめたらいい・・・?
こんな感情は初めてだ。
今まで付き合ってきた男たちとは違う。
胸がぎゅって締め付けられたり、側にいたいのにいたくない。
自分がどうしたいのかわからない。
:08/08/17 23:59
:P902iS
:☆☆☆
#435 [果樹]
―カチャ・・・キィ
思いに耽っていたら不意に屋上のドアが開いた。
「真理奈ーギャハハ」
啓祐・・・。
近付いてくる啓祐と距離を取るように私はフェンスに体を押し付けた。
「お前さぁあれはまずくね?」
:08/08/27 23:57
:P902iS
:☆☆☆
#436 [果樹]
隣まで来た啓祐がいきなりそんなことを口にした。
私が啓祐の言葉の意図が分からなくて首を傾げると啓祐はにやっと嫌な笑いを浮かべる。
「“笹原は返してもらう”だっけか?教師と生徒の関係には見えないよなー」
横目でちらりと私を見ながら言う啓祐の目は明らかに面白がっている。
:08/08/27 23:57
:P902iS
:☆☆☆
#437 [果樹]
「何が言いたいの?」
私は墓穴を掘らないように啓祐の言葉の続きを促す。
「お前が俺のものになれば許してやるよ」
「え・・・?」
「いいんだぜ?学校側にチクっても。学校側に言ったら柴浦はどうなるんだろうな?謹慎・・・は当たり前か。ギャハハ」
:08/08/27 23:58
:P902iS
:☆☆☆
#438 [果樹]
「・・・・・・っ!」
悔しい!
足元を見られているんだ。
私は唇から血が出そうなくらい下唇をぎゅっと噛んだ。
負けちゃいけない・・・。
負けちゃ・・・。
「い・・・やだ」
:08/08/27 23:58
:P902iS
:☆☆☆
#439 [果樹]
「あ?」
啓祐の眉間に皺が寄る。
「いやだ・・・」
「お前自分が何言ってるかわかってんのか?」
「わかってる・・・。言いたかったらいえばいいよ。」
私は震える手をぎゅっと握り締めて自分を震いたたせる。
「生意気な奴」
:08/08/27 23:59
:P902iS
:☆☆☆
#440 [果樹]
低くドスの効いた声で啓祐が言った後、私の耳元でパチンと破裂音がして頬に痛みが走る。
数秒後、叩かれたという事に気付いた。
「もぉいいわ。お前いらねぇ」
それだけ言って啓祐は屋上から出ていった。
痛い・・・。
:08/08/28 00:00
:P902iS
:☆☆☆
#441 [果樹]
私はふらつく足で屋上を降り保健室に向かった。
―――――――――・・・・
「ちゃんと冷やしておきなさいよー」
保健の先生が出ていった後、私は座っていた長椅子に寝転び目を閉じた。
頬には腫れを抑えるための濡れタオル。
:08/08/30 18:56
:P902iS
:☆☆☆
#442 [果樹]
―ガラガラガラ・・
誰かが保健室のドアを開けた音がしたが、きっと生徒だろうと気にも留めずに寝転んだままいると
「起ーきーろ!」
という声と共にパチンと額を弾かれた。
「〜〜〜っなんなんですか?!」
:08/08/30 18:57
:P902iS
:☆☆☆
#443 [果樹]
ガバリと起き上がり額を弾いた張本人の柴浦を見ると何処か不機嫌そうな顔をしていた。
「柴浦・・・?」
私が呼び掛けるとスッと柴浦の手が延びてきて私のまだ腫れている頬に触れる。
「あんまり無茶するな・・・」
呟くように言ったその顔は悲し気で何故か胸が痛くなった。
:08/08/30 18:58
:P902iS
:☆☆☆
#444 [果樹]
胸が痛い・・・なんで?
「まだ痛むか?」
「大丈夫・・・。私強いし」
そう言うと今度は腫れていない方の頬をむにっとつねられた。
「馬鹿野郎」
「なっ・・!」
「強がってないでいい加減素直になれ」
:08/08/30 18:59
:P902iS
:☆☆☆
#445 [果樹]
柴浦の言葉が胸に大きくのしかかる。
“強がり”
それは自分が一番よく分かっていることだ。
弱音を吐かない。
吐きたくない。
昔からそれが弱い自分を見せないための唯一の方法だった。
「別に強がってなんか・・・っ!」
:08/08/30 18:59
:P902iS
:☆☆☆
#446 [果樹]
「意地っ張り」
言葉とは裏腹に柴浦が私の頭を撫でる。
「全部受け止めてやるから。弱いお前も泣き虫なお前も。だからいい加減素直になれ」
そんなこと今まで誰も言ってはくれなかった。
いつだって“真理奈は強いな”“真理奈のそういう強いところが好きだ”って言われて来たから・・・。
:08/08/31 00:01
:P902iS
:☆☆☆
#447 [果樹]
本当に素直になってもいいの・・?
泣いてもいい・・・?
優しく頭を撫でる手に促されるように私は静かに涙を流した。
―――――――――・・・・
「柴浦と付き合うことになったーーーぁ?!」
「だから声が大きいってば!」
:08/08/31 00:30
:P902iS
:☆☆☆
#448 [果樹]
屋上へと続く階段の踊り場に百合の声と私の声が響く。
でも百合が驚くのも無理はない。
昨日の今日でいきなり“私たち付き合います”なんて報告をされたら誰だって驚くはずだ。
だって柴浦と付き合う決心をしたのは、昨日私が泣いたあの保健室でなのだから・・・。
:08/08/31 00:31
:P902iS
:☆☆☆
#449 [果樹]
―――――――――・・・・
「落ち着いたか?」
「ん・・・」
柴浦は私が泣き止むまでずっと頭を撫でてくれていた。
「ほら」と言って渡されたのは濡れタオル。
泣いて目が腫れた私のために柴浦が用意してくれたのだ。
:08/09/08 02:00
:P902iS
:☆☆☆
#450 [果樹]
「ありがと・・・」
それを受け取り、私は泣いて熱った目元に濡れタオルを当てがう。
♪〜・・・♪〜・・・
そんな時室内に携帯の着信が鳴り響いた。
鳴ったのは柴浦の携帯。
ゴソッとポケットを探り携帯を取り出して着信画面を見る柴浦の顔が少し歪む。
:08/09/08 02:01
:P902iS
:☆☆☆
#451 [果樹]
「出ないの?」
いつまでも鳴り響く着信音。
なかなか出ようとしない柴浦。
「ああ・・・悪い」
私が聞くとまるで覚醒したかのようにハッとして、バツが悪そうに柴浦は私に背中を向けて電話に出る。
「・・・もしもし?」
:08/09/08 02:02
:P902iS
:☆☆☆
#452 [果樹]
私はタオルを少しずらして電話中の柴浦の背中を見る。
「わかってるよ。用件は何だ?」
あ・・・ちょっと不機嫌。
『・・・・・でよ。あの時・・・・謝る・・・・・』
女の人・・・?
「今更だな。別れたいって言ったのはそっちだろ?」
:08/09/08 16:36
:P902iS
:☆☆☆
#453 [果樹]
『・・・もう一回・・・・まだ・・きなの・・・忘れ・・・・』
「無理だ。俺はもう忘れた。用件がそれだけなら切るぞ」
『・・・待って・・・要!』
プツッ・・ツーツー
女の人の叫び声は携帯の無機質な音によって遮られた。
「大丈夫なの・・・?」
「ん?あぁ、悪かったな」
:08/09/08 16:38
:P902iS
:☆☆☆
#454 [果樹]
私の声に気付き柴浦がこちらを向く。
その手に携帯はもう握られてなかった。
「昔の・・・彼女さん?」
「え?」
「話声が聞こえたから・・・」
気まずそうな顔をする柴浦。
言ってはいけないと思いつつも、私の口が止まることはなく何故か次から次へと言葉が出てくる。
:08/09/08 16:38
:P902iS
:☆☆☆
#455 [果樹]
「よかったじゃん。ヨリ戻したいって話なんでしょ?戻してあげなよ。元カノさん必死だったし。柴浦もいい年なんだからいい加減身を固めたり・・・」
バンッ!
私の止まることのなかった口は柴浦が私の横の壁をおもいっきり叩いた音によってようやく止まる。
「俺はお前が好きなんだよ。俺の気持ちが迷惑だったらそう言え。こんな遠回しにいってんじゃねぇ・・・」
:08/09/08 16:39
:P902iS
:☆☆☆
#456 [果樹]
最後の方は聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声が私の耳に届いた。
「ちゃんと冷やせよ」
それだけ言うと柴浦は私の頭をぽんぽんと軽く叩いて保健室を出ていった。
「・・・・・・・」
残された私は暫く放心状態のまま固まっていたがハッとして私はすぐ柴浦の後を追い掛けたがもう姿はなかった。
:08/09/08 16:40
:P902iS
:☆☆☆
#457 [果樹]
傷付けた。
その言葉だけが私の頭の中に響いた。
最後に見せたあの切なそうな今にも泣きそうな顔が頭から離れない。
好きだって言ってくれたのにそれを信じられなかった。
自分の中でブレーキかけて柴浦に惹かれている自分を無視し続けた。
:08/09/08 16:40
:P902iS
:☆☆☆
#458 [果樹]
恋シテハイケナイ相手。
自分の中でそう決めつけて自分の心と向き合おうともしなかった。
本当ハイツノ間ニカ好キニナッテイタ癖ニ。
臆病な私がそこにいた。
もう傷付きたくない。
これ以上苦しい思いはしたくない。
そんな風に思っていたから柴浦をあんな形で傷付けてしまった。
:08/09/08 16:41
:P902iS
:☆☆☆
#459 [果樹]
私は再び保健室に入り放課後がくるのを待った。
―――――――――・・・・・
キーンコーンカーンコーン
『校舎内に残っている生徒は速やかに下校して下さい』
「・・・・寝過ぎた」
起きたら空は茜色に染まっていてもう薄暗くなる手前だった。
:08/09/08 16:42
:P902iS
:☆☆☆
#460 [果樹]
私はベッドから降りて鞄を取りに教室に向かう。
渡り廊下を歩けば、校庭から部活動をする生徒の活気ある声と下校し始めた生徒が校門をくぐっていくのが見えた。
私はそれを横目で見ながら教室へと歩みを進めた。
―――――――――・・・・・
「やっと起きたか」
:08/09/08 16:43
:P902iS
:☆☆☆
#461 [果樹]
声がして振り向けば、教室のドアにもたれかかるようにして柴浦が立っていた。
「さっき起きたの」
私は柴浦と話ながら鞄に荷物を詰める。
「気を付けて帰れよ」
その言葉に振り向けば、柴浦はもうそこにはいなかった。
:08/09/08 16:46
:P902iS
:☆☆☆
#462 [果樹]
伝えなきゃ・・・っ!
私は鞄を机に投げ捨てて、走った。
柴浦の足跡を辿るように階段を降りて廊下を走って、やっと柴浦の背中が見えたのは昇降口の前。
「柴浦!!」
私の大声に肩を震わせて柴浦が振り返る。
「ビックリさせんなよ。ったく・・・」
:08/09/08 16:47
:P902iS
:☆☆☆
#463 [果樹]
頭をガシガシとかきながら苦笑いをする柴浦。
私はゆっくりと柴浦に近付く。
「さっきは・・・ごめんなさい」
少し震える声。
柴浦の顔が見れなくて、うつ向いていると頭に少し重みを感じる。
そろりと顔を上げると柴浦が笑って私の頭を撫でていた。
:08/09/08 16:47
:P902iS
:☆☆☆
#464 [果樹]
「しょーがねぇから許してやるよ」
はにかんだような照れたような柴浦のその笑いに、私はなんだか無償に泣きたくなった。
「柴・・・浦・・・」
「ん?」
小さな声で呼んだにも関わらず柴浦は気付いてくれて、小首を傾げる。
:08/09/08 16:48
:P902iS
:☆☆☆
#465 [果樹]
.
「あたし・・・柴浦のことが・・・す・・・き・・・みたい」
.
:08/09/08 16:49
:P902iS
:☆☆☆
#466 [果樹]
うつ向いた顔から火が出そうなほど自分の顔が熱いのがわかる。
「・・・みたいって何だよ」
ハハッと笑った声がして顔を上げれば眩しいくらいに柴浦が笑っていた。
「〜〜っ!」
:08/09/08 16:53
:P902iS
:☆☆☆
#467 [果樹]
いつも直球な言葉。
行動はいい加減且つ、子供。
それなのに生徒思いで優しい。
私が好きになった柴浦要はそういう人。
:08/09/08 16:54
:P902iS
:☆☆☆
#468 [果樹]
「あ!遊園地のチケット貰ったんだけど行くか?」
私たちが付き合って1週間後、柴浦からのいきなりのデートの誘い。
誘ってもらったのは嬉しい。
でも私の返事は・・・。
「行かない」
無表情で言う私に柴浦はクスクスと笑いながら、
「素直じゃねぇなぁ」
と私の頭をぽんぽんと叩いた。
私が素直になるのはもうちょっと先の事になりそうだ。
:08/09/08 16:55
:P902iS
:☆☆☆
#469 [果樹]
.
【恋患い】
―END―
.
:08/09/08 16:56
:P902iS
:☆☆☆
#470 [果樹]
:08/09/08 17:08
:P902iS
:☆☆☆
#471 [果樹]
.
「好きです!俺と付き合ってください!!」
「・・・ごめんなさい」
story 5
【成功率0パーセント】
.
:08/09/08 19:01
:P902iS
:☆☆☆
#472 [果樹]
「あ、小鶴さんだ」
仲間の一人が廊下を見ながら言うと全員が同じ方を向いたので、俺も例に習って向いた。
すると廊下では背の小さい女生徒とあれは確か・・・Ε組の大杉だ!
その大杉と背の小さい女生徒は何やら固い顔で話をしていた。
なんか大杉はすげーテンパってる感じに見える。
:08/09/08 19:04
:P902iS
:☆☆☆
#473 [果樹]
「いつ見ても可愛いよなー。あれって告られてんだよなー絶対!」
「まぁ小鶴さんだし」
「小鶴さん・・?」
さっきから聞こえるその小鶴さんとやらのことが分からず、俺は頭にはてなを浮かべる。
すると全員がばっと俺の方を向いて、まるで幽霊でもみたような顔をしている。
:08/09/08 19:05
:P902iS
:☆☆☆
#474 [果樹]
「倉、お前まさか小鶴さんを知らない・・・とか?」
「うん」
素直に頷く俺に何故かみんなは脱力。
「お前・・・。まぁ倉だしな。それでいいと思う。うん」
仲間の一人、哲が俺の肩をぽんぽんと叩くので俺は何だか除け者にされた気分だ。
:08/09/10 03:27
:P902iS
:☆☆☆
#475 [果樹]
「なんだよそれー!」
それからしつこく聞いたところ、哲は最初は面倒臭そうにしていたが、途中から興奮しだして、最後には吠えるように説明してくれた。
まぁ哲の話を要約するとつまりこうだ。
大杉と話していたあの小さい女生徒は、小鶴めぐみといって入学当初から美少女と騒がれて有名だったらしい。
:08/09/10 03:28
:P902iS
:☆☆☆
#476 [果樹]
3年から1年までの何人もの男が告白をしたが、全員玉砕。
彼女の断り文句は決まって
「ごめんなさい。」
の一言。
一見冷たそうに見える彼女だが、笑うと実は可愛いとか、誰にもこびないところが逆に好かれて、人気はさらに鰻のぼりらしい。
:08/09/10 03:29
:P902iS
:☆☆☆
#477 [果樹]
美少女か・・・
俺には無縁の話かな。
――――――――・・・・
「つる子ー!!」
名前を呼ばれて振り向くと、走りながらこっちに向かってくる人影がいた。
あ、ちなみにつる子は私の愛称。
「麻衣」
:08/09/11 06:52
:P902iS
:☆☆☆
#478 [果樹]
走ってきたのは友達の麻衣。
「まぁた告られてたでしょー」
にやにやと笑いながら麻衣は脇腹をこずく。
「覗き魔」
ぼそりと呟くと麻衣は「酷い!」と言ってよろめき三文芝居を始めた。
:08/09/11 06:53
:P902iS
:☆☆☆
#479 [果樹]
「覗きなんて・・・!あたしは純粋につる子が心配で」
「はいはい」
いい加減このやりとりにも飽きた私は、麻衣を適当にあしらう。
「それで?それで?なんて返事したの?」
さっきの三文芝居はもうやめたらしく、麻衣はまたにやにやと笑いながら私の顔を覗きこんできた。
:08/09/11 06:53
:P902iS
:☆☆☆
#480 [果樹]
「別に?いつも通りだよ。」
「また?もうちょっとは告白してくる人の身になって返事してあげたら?」
またいつものお説教か。
麻衣は私がいつも通りの“ごめんなさい”という言葉で、告白してきた相手を振ると必ずお説教をしてくる。
「わかったって。ほら行こう!授業始まっちゃう」
:08/09/11 06:54
:P902iS
:☆☆☆
#481 [果樹]
始まると長いので、私は麻衣のお説教が始まる前に麻衣を急かし、教室へと急いだ。
――――――――・・・・・
昼休み
飯を食う為に、弁当を持ちみんなのところへ、ルンルン気分で行こうとした時、放送が流れた。
ピンポンパンポーン
『1年С組、倉橋空。至急職員室まで来なさい』
:08/09/11 06:54
:P902iS
:☆☆☆
#482 [果樹]
・・・・は?俺?
「なんだ倉〜?なんかやらかしたのかぁ?」
哲がからかってきた。
「し、してねぇ!」
と思うがわかんねぇ・・・。
「とりあえず俺行ってくるわ!」
:08/09/12 01:08
:P902iS
:☆☆☆
#483 [果樹]
弁当を机の上に置き、俺は職員室へ急いだ。
・・・・・・・・・・・・・・・
「失礼しましったー」
ガラガラガラ・・・パタン
はー何だよ。
焦って損したぁ。
俺が職員室へ呼ばれた理由。
それは、母ちゃんからの土産の礼だった。
:08/09/12 01:09
:P902iS
:☆☆☆
#484 [果樹]
俺の母ちゃんと父ちゃんは、世界中飛び回ってる翻訳家とカメラマンで、結構名前は知れてんだ。
けど何故か、行った先の外国の土産を学校に送りつけてくるっていうちょっと変わった人たち。
いつもは学校側から礼の電話をしてるらしいんだけど、前に母ちゃんが
「たまには空の声も聞きたい!」
:08/09/12 01:09
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:☆☆☆
#485 [果樹]
とか愚痴ったお陰で、担任に
「今日はお前から電話してやれ!」
とか頼まれた。
はー母ちゃんと話すと長くなるから極力電話は避けてたのに最悪だ。
案の定休み時間を20分も削られた。
元気そうで何よりだったけど、貴重な休み時間を削られたのは痛い。
:08/09/12 01:09
:P902iS
:☆☆☆
#486 [果樹]
昼飯をゆっくり食う時間がなくなったことに、俺は肩を落とし、一人とぼとぼと廊下を歩いていると、向こうから本を読みながら歩いてくる子が視界に入った。
あのままじゃ壁に激突するんじゃないかなーと思った矢先、彼女は壁に一直線に進む。
「うわっ前!前ー!」
――――――――・・・・
「うわっ前!前ー!」
:08/09/12 01:10
:P902iS
:☆☆☆
#487 [果樹]
え・・・・?
ゴンッ
「―――っっ!」
頭部に鈍い痛みが走り目の前には星が飛ぶ。
ああ・・・またやってしまった。
「あ、あの・・・大丈夫?」
横からスッと手が延びてきて見上げると、オレンジ色に近い髪の色の可愛い男の子が心配そうな顔で手を差し出してくれていた。
:08/09/14 22:56
:P902iS
:☆☆☆
#488 [果樹]
「はい。なんとか・・・。すみません。いつものことなんで大丈夫です。」
あたしはその手を借りて立ち上がると、スカート裾をパッパッと手で払った。
「あの・・・本読みながら歩いたら危ないよ?」
「そうですね。気を付けます」
心配そうに見てくるオレンジ頭の男の子に無表情で返す。
「あ!」
いきなり大声を出したオレンジ頭の男の子にちょっとびっくりしてしまう。
「これあげる!」
「え・・・?」
「ほら手ぇ出して!」
「え?あ、はい」
とっさに出した右の手の平に、ちょんと可愛らしい赤い包みが乗せられた。
:08/09/14 22:57
:P902iS
:☆☆☆
#489 [果樹]
「うーんとどっか外国のお菓子だから美味しいと思うよ。じゃあね」
それだけ言ってオレンジ頭の男の子は走って行ってしまった。
残された私は、ぼんやりとその後ろ姿を見続けた。
――――――――――・・・・
「倉ー遅かったなぁ」
:08/09/14 22:58
:P902iS
:☆☆☆
#490 [果樹]
教室に入るなり哲が声をかけてきた。
「あー・・・母ちゃんの話が長くてさ」
苦笑い気味に言うと哲も苦笑いで「あーね」と返してきた。
哲は家が近いせいか何度か俺ん家に来ていて、母ちゃんのことも何度か見ている。
そのため母ちゃんが俺を溺愛してんのも知ってんだ。
:08/09/20 09:39
:P902iS
:☆☆☆
#491 [果樹]
「相変わらずなのな。お前の母ちゃん」
「ハハッまーな」
哲と話しながら俺は弁当を口の中にかきこんだ。
「あ、ほーだ!ふぁっきはぁひゃんからのみひゃげもはった」
「何言ってっかわかんねーから食ってから話せよ」
哲が呆れながら言うので俺は急いで口の中の物を飲み込む。
:08/09/20 09:40
:P902iS
:☆☆☆
#492 [果樹]
「だからぁさっき母ちゃんからの土産もらってきたつってんの!」
「おっマジで?!」
食い物の話に釣られて哲が前のめりで聞いてきた。
「ほら」
「やりぃ!サンキュー倉!ほれみんな食い物だぞー」
哲はニカッと笑ってから、俺が渡した土産を配りにみんなのとこへ行った。
:08/09/26 03:33
:P902iS
:☆☆☆
#493 [果樹]
あれ、そういえばさっきの子どっかで・・・。
えーっと・・・。
俺はふと、さっき土産をあげた子のことを思い出したが、結局誰かわからなかったので、諦めて弁当の残りをかきこんだ。
――――――――――・・・・
「あ、いたいた。おーいつる子ー」
:08/09/26 03:33
:P902iS
:☆☆☆
#494 [果樹]
後ろから麻衣の声が聞こえたと思い振り向けば、案の定麻衣がこちらへと走ってきていた。
「帰ってくるのが遅いと思って探しに来てみれば。やっぱりこんなところにいた」
ぷくーっと頬に膨らませて麻衣は、冗談めかしく怒る。
「あれ?何それ?」
麻衣が私の掌を指差しながら首を傾げる。
:08/09/26 03:34
:P902iS
:☆☆☆
#495 [果樹]
私の手にはさっきオレンジ頭の男の子からもらった赤い包み。
「どっかの国のお菓子だって」
「は?」
更に首を傾げる麻衣を横目に、私は赤い包み紙を開けて中のお菓子をポイッと口の中に放り込む。
口の中にはほのかな甘さが広がり、クッキーの様な歯応えがあってとてもおいしい。
:08/09/26 03:35
:P902iS
:☆☆☆
#496 [果樹]
「あ゙!ずるい!」
「あーはいはい。ごめんね」
私はすねる麻衣の口に残りのお菓子を放り込む。
「あ!おいしい」
頬に手を当てて、嬉しそうな顔をする麻衣に笑いかけ私は教室に足を進める。
「ねっねっ!あのお菓子誰に貰ったの?」
:08/09/26 03:35
:P902iS
:☆☆☆
#497 [果樹]
廊下を歩きながら麻衣が興味津々といった顔で、聞いてきた。
「えーっと・・・」
私はあの菓子をくれた男の子のことを思い出す。
「アレンジ頭」
「は?」
私の返答に、麻衣の頭にはてながいくつも浮かんだ。
:08/10/05 00:15
:P902iS
:☆☆☆
#498 [果樹]
あ。
お礼言い忘れちゃった・・・。
――――――――――・・・・
「くそーたなっちめぇ。長々と世間話なんかしやがって。おかげでもう真っ暗じゃんかー!」
担任に話があると呼ばれた俺は、結局担任の世間話につき合わされた挙句、下校時間もとっくに過ぎてしまった。
:08/10/05 00:16
:P902iS
:☆☆☆
#499 [果樹]
「あ。くっそーっ負けたぁ!あ・・・?うわーーっ!」
ズダダダダダダダァン!
「いってーーぇ・・・」
凄い音と共に俺は階段から盛大に落っこちてしまった。
はぁ・・・人がいなくてよかった。
こんなださい姿見られたら俺は国外に逃亡するしかない。
:08/10/05 00:18
:P902iS
:☆☆☆
#500 [果樹]
「あれ?」
「あ?あれ?君は・・・」
上から声が聞こえたと思い見れば、階段の踊場に少女が立っていた。
「大丈夫ですか?」
タンタンと軽やかに少女は階段を下りてくる。
「はい。落し物」
俺の側まで来た少女の手には、ゲーム機。
:08/10/05 00:18
:P902iS
:☆☆☆
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