・・万華鏡・・
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#201 [果樹]
「こんばんは、つかさちゃん。僕は時田総一郎。よろしくね。」
これがこれから私の家庭教師となる時田総一郎との最初の出会いだった。
Story 3
【自由に憧れた鳥】
:08/06/05 15:00
:P902iS
:☆☆☆
#202 [果樹]
「おい。・・・・おい!」
煩い・・・。
「呼んでんだから返事くらいしろよ」
私は、はぁと溜め息をつき、シャーペンを机に置いて後ろを振り替える。
「お言葉ですが時田先生。私の名前は“おい”じゃありません」
さっきから煩く話しかけてくるこの男は、一週間前私の家庭教師になった時田総一郎。
:08/06/05 15:01
:P902iS
:☆☆☆
#203 [果樹]
椅子に座って足と腕を組んで、とても偉そうにしている。
これが家庭教師の姿なのだろうかと神経を疑う。
「じゃあつかさ」
しかも馴れ馴れしい。
「呼び捨てにしないでください」
私はばっさりと時田先生の言葉を切り捨て、また机に向かって勉強を始める。
:08/06/05 15:03
:P902iS
:☆☆☆
#204 [果樹]
「ったく可愛くねー女だな」
「あなたに可愛いとか思われたくありません」
ていうか教える気がないなら出ていって欲しい。
「お前さぁ顔は綺麗なんだから笑えばいいのに」
時田先生は私の横まで椅子を持ってきて、顔を覗き込んできた。
「先生、それは勉強に関係ないと思いますが」
:08/06/05 15:03
:P902iS
:☆☆☆
#205 [果樹]
相手をしても仕方がないので、私は時田先生と目を合わせないでひたすら目の前の問題を解いた。
「つーかお前さ。頭良いんだから家庭教師なんかいらなくね?」
今のは家庭教師としてあるまじき言葉だろう。
私は、また溜め息をつくと時田先生をちらりと見る。
「先生何も知らないんですね」
:08/06/05 15:04
:P902iS
:☆☆☆
#206 [果樹]
私が言葉を掃き捨てるように言うと先生は「何を?」と言って全く分からないという顔をした。
だから私は、問題を解きながら淡々と言葉にする。
「家庭教師っていうのは建前です。父の目的は私の監視ですから」
「監視・・?」
先生は眉間に皺を寄せ、怪訝な顔をする。
:08/06/06 00:52
:P902iS
:☆☆☆
#207 [果樹]
私は、手を休めることなく問題を解きながら先生の疑問に答える。
「私は父が決めた道を歩んで将来は父の跡を継ぐ。全て決められた事柄を私は実行するだけ。あなたは私が変な行動をしないように監視するんです」
淡々と述べる私に、先生は更に眉間に皺を寄せて、私を見てくる。
「お前はそれで満足なのか?」
:08/06/06 00:52
:P902iS
:☆☆☆
#208 [果樹]
満足・・・?
私はついふふっと笑ってしまった。
「私に自由はありませんから・・・」
満足だなんて一度も思ったことない。
いくら高いお洋服やブランド品を買って貰っても心までは満たされない。
一人で買い物も行けず、遊びに行くことも出来ない。
:08/06/06 03:03
:P902iS
:☆☆☆
#209 [果樹]
ただ籠の中でじっとして、父に飼われている鳥そのもの。
いくら籠の中で羽ばたいたって飛べるわけもなく、ただただ必死にもがくだけの滑稽な姿。
自由になりたいって何度も思った。
でもそれは叶わない夢。
籠の中で飼われている鳥は、籠の中から出ることを許されない。
:08/06/06 03:03
:P902iS
:☆☆☆
#210 [果樹]
「自由が欲しいなら俺がくれてやるよ」
そう言ってにっと笑った先生は、いきなり椅子から立ち上がると、テラスに通じる窓を開ける。
8月とはいえ、少し涼しい風が部屋の中に入ってくる。
一瞬風の冷たさに驚いて目を瞑る。
目を開けると、先生はテラスの手摺に片足をかけていた。
:08/06/06 03:04
:P902iS
:☆☆☆
#211 [果樹]
「え?ちょ・・先生何してるんですか?!危ないですよ!」
私はありえない光景に驚き、止めるために近付こうとした時、先生が振り返った。
「あれ?心配してくれんの?」
「ばっばかだって言ってるんです!」
にっと笑って言う先生に対して、私は何故か顔が熱くなった。
:08/06/06 03:04
:P902iS
:☆☆☆
#212 [果樹]
先生は、そんな私を見てふっと笑うとテラスから飛び下りた。
「きゃっ・・せ、先生?!」
私は急いでテラスに出て下を覗くと先生が背中を向けて立っていた。
私は先生が生きていたことに胸をほっと撫で下ろす。
「おいで。」
:08/06/06 03:05
:P902iS
:☆☆☆
#213 [果樹]
先生はさっきと同じ顔で笑って両手を広げる。
「だ、だめ・・・いけません。」
私はここから出られない・・・。
ぎゅっと目を瞑り視界から先生を消す。
それでも耳から先生の声が入ってくる。
「お前の知らない世界を俺が見せてやるよ。」
:08/06/06 03:05
:P902iS
:☆☆☆
#214 [果樹]
「―――――っ!!」
どうしてこの人はこんなことをいうのだろう・・・。
私はいつの間にか瞑っていた目を開けて先生の方を見ていた。
ふらっと先生に導かれるまま行ってしまいそうになった時、部屋のドアを叩く音が聞こえた。
「お嬢様?どうかなさいましたか?お嬢様?!」
:08/06/06 03:06
:P902iS
:☆☆☆
#215 [果樹]
ドンドンと鳴り止まない音が私の足枷を重くする。
「つかさ、おいで。」
下では先生がまだ両手を広げたまま笑顔でこっちを見ている。
あなたは私を解放してくれる・・・?
優しく笑う先生に全てを引き寄せられるように、私はテラスから先生の腕の中へ飛び下りた。
:08/06/06 03:07
:P902iS
:☆☆☆
#216 [果樹]
先生は私をしっかりと受け止めると、「じゃあ行くか!」と言って肩に担いで走り出した。
――――――――・・・・
家の門の前に出るとバイクが置いてあった。
:08/06/06 03:07
:P902iS
:☆☆☆
#217 [果樹]
「これは・・・?」
「俺の愛車♪よいせっ・・と」
バイクにすとんと下ろされ、かぽっとヘルメットを被せられた。
「へ?あの・・・」
先生もバイクに跨りエンジンをかける。
「よし。ちゃんとつかまってろよ?」
:08/06/06 03:08
:P902iS
:☆☆☆
#218 [果樹]
ちらっとこっちを見てそう言うと、先生は私の手を引いて腰周りにしがみつかせた。
「え?ちょっキャー!!」
私がしがみついたのを確認して、先生はバイクを走らせた。
――――――――・・・・
コンコン
:08/06/06 03:08
:P902iS
:☆☆☆
#219 [果樹]
「入れ」
低く唸るような声で革張りの黒い椅子に座った人物が喋る。
カチャと重々しい木の扉を開け、スーツ姿の男が入ってきた。
男は扉の前で一礼をして、革張りの椅子に座り背を向けている人物に向かって、目をキッと少し細める。
「申し訳ありません旦那様。お嬢様を見失いました。」
男はそのまま深く頭を下げる。
:08/06/06 03:09
:P902iS
:☆☆☆
#220 [果樹]
革張りの椅子に座り、背を向けている人物はふぅーと長い溜め息を吐く。
「探し出せ」
低く厳しい声で言った革張りの椅子に座る人物に、「直ちに」と言ってまた一礼するとスーツ姿の男は部屋を出ていった。
「逃げても無駄だ。つかさ」
部屋の中には革張りの椅子に座った人物の低く唸る声だけが響いた。
:08/06/06 03:10
:P902iS
:☆☆☆
#221 [果樹]
.
――――――――・・・・
「先生!どこに向かってるんですか!?」
「たのしいところ♪」
バイクで風を受けながら大声で叫ぶと、先生も叫んでいたが、声はギリギリで私の耳に届くくらいだった。
楽しいところ?
ってどこ?
:08/06/07 01:34
:P902iS
:☆☆☆
#222 [果樹]
私は走ってる最中、先生が楽しいと言った場所をずっと想像して過ごした。
――――――――・・・・
「着いたよ」
大きなビルの駐車場に入り、エンジンが止まり先生がヘルメットを取って、振り返る。
「何ですかここ?」
私はヘルメットを取って先生に聞く。
:08/06/07 01:35
:P902iS
:☆☆☆
#223 [果樹]
「んー・・・。アミューズメントパーク?」
「アミューズメントパーク・・・」
私は首を傾げ、周りを見る。
ビルの入口の方にボーリング、カラオケ、ビリヤードなどと赤い光が点灯している。
「まぁ入ろうぜ」
先生はバイクを降りて私に笑いかけて先生はビルの入口に向かって歩いていく。
:08/06/07 01:36
:P902iS
:☆☆☆
#224 [果樹]
「は、はぁ」
私もバイクを降り、先生の後についていく。
――――――――・・・・
「うっわぁ・・・」
中に入ると思わず口から感嘆の声が出る。
「こういう所は初めて?」
口が開きっぱなしで周りを見る私に、先生がにやっと笑いながら顔を覗き込む。
:08/06/07 19:29
:P902iS
:☆☆☆
#225 [果樹]
先生は嫌味で聞いてきたのかもしれないが、私はその言葉に腹立たしさを感じることもなく、こくこくと首を縦に振るだけしか出来なかった。
「そっかそっか♪じゃあまずは・・・行っとく?」
うんうんと嬉しそうに先生は頷くと、ある方向を指差して歯を見せて笑った。
先生が指差す方を見ると、“ボーリング”と書いてあった。
:08/06/07 19:31
:P902iS
:☆☆☆
#226 [果樹]
.
――――――――・・・・
「きゃー!!」
全て倒れたピンに感激した私は、つい大きな声で叫んでしまった。
「おお!うまいうまい」
先生は椅子に座って私の方を見ながら拍手をした。
「もう一回投げていい?」
私は先生の方に振り返って、興奮が冷めやらぬうちに言葉に出す。
:08/06/07 19:32
:P902iS
:☆☆☆
#227 [果樹]
「お好きにどうぞ」
「やったぁ」
先生は私を見てクスクス笑っていたが、私は万歳をして喜んだ。
ゴロゴロゴロ・・・ガコーン
「あーおしいっ」
8本しか倒れなかったピンを見て、私は眉尻を下げる。
しかも奥の両端が残ってしまったからどちらかに絞らないと倒せない。
:08/06/07 19:32
:P902iS
:☆☆☆
#228 [果樹]
「じゃあ俺がスペアとってやるよ」
「え?」
先生が椅子から立ち上がり、私の方に来て肩をポンっと叩いた。
「まぁ見てなって♪」
そう言って先生は自分のボウルをタオルで研くと位置について構えた。
ゴロゴロゴロ・・・ガコーン
「先生すごーい!」
:08/06/07 19:34
:P902iS
:☆☆☆
#229 [果樹]
私は感嘆の声と拍手を先生に向ける。
ピンは見事に二つ倒れた。
もちろんスペアだ。
「まぁな。てゆうかその先生っていうのやめない?」
椅子に座っていた私の方に向かって来ながら先生がいきなり口にする。
「え・・・じゃあ何て呼べば?」
「んー・・・」
:08/06/07 19:34
:P902iS
:☆☆☆
#230 [果樹]
椅子に座った先生に首を傾げて聞くと、先生は腕と足を組み、しばらく目を瞑ってから「総でいいよ」と言った。
「総?」
私は首を更に傾げて先生に言葉を返す。
「俺の名前が総一郎だから総。俺もつかさって呼ぶからさっ」
「はい」
にっこりと笑う先生、いや総に私も笑いかけ、お互い名前で呼ぶことを承諾した。
:08/06/08 01:21
:PC
:☆☆☆
#231 [果樹]
「そんじゃ投げるか」
そう言って立ち上がる総に私も心の中で“よし!”と言って立ち上がる。
「先生、じゃない総には負けませんよ?」
総を見上げて言う私に総はにやりと笑った。
――――――――・・・・
「総やっぱり強いですね!」
「ん?そうか?お前も初心者の癖にすごかったけどな」
:08/06/08 15:10
:P902iS
:☆☆☆
#232 [果樹]
充分ボーリングを遊んだ私たちは、ボーリング場を出ながら話す。
私が総の強さを話すと総はにやりと笑って顔を覗きこんできた。
「お世辞なら結構です」
「いやいやマジで♪」
プンっと顔を背けると総は白い歯を見せて笑った。
総のこの顔を見ると、なんだか本当に思えてくるから不思議だ。
:08/06/08 15:11
:P902iS
:☆☆☆
#233 [果樹]
「次はアレにするか」
「ビリヤード・・・ですか?」
「ああ」
総が指差す方向にはビリヤードの文字と台が並べてあった。
「私ビリヤードも初めてですよ?」
ここにあるものはきっと私にとって全部はじめてのものばかりだろう。
そう言うと総はにっと笑ってピースのサインを送ってきた。
:08/06/08 16:58
:P902iS
:☆☆☆
#234 [果樹]
「大丈夫だって♪俺が教えてやるから」
「はい!」
そういった総に私も笑って返事をして、ビリヤードの方に向かった。
――――――――・・・・
「くはーっ!遊んだなぁ」
「そうですね」
ビルを出てバイクに向かう途中、ニカッと笑う総に、私はクスクス笑う。
:08/06/08 17:00
:P902iS
:☆☆☆
#235 [果樹]
「楽しかったか?」
「はい!こんなに楽しかったの初めてです!」
「そうかそうか♪」
覗き込んできた総に、満面の笑みで言うと総も満面の笑みで笑った。
「じゃあ帰るか」
「え・・・?」
帰るってどこに・・?と心の中で総に問いかけると総は、ポンポンと私の頭を撫でた。
「心配すんな!とりあえず俺の家でも行くか」
:08/06/08 17:00
:P902iS
:☆☆☆
#236 [果樹]
「総の家?」
「ああ。ほら乗れよ」
バイクに跨ると総にまたカポッとヘルメットを被せられた。
そして総もバイクに跨りヘルメットを被ると、私たちはそうの家に向かって走り出した。
――――――――・・・・
「到着」
:08/06/08 17:01
:P902iS
:☆☆☆
#237 [果樹]
バイクが止まり、総がヘルメットを取り、バイクから降りる。
「ここが総の家?」
私もヘルメットをとってバイクから降りる。
周りはもう暗くてわからなかったが、大きなマンションの前にいることはわかる。
「ああ。ほら行くぞ」
「あっはい!」
:08/06/08 17:02
:P902iS
:☆☆☆
#238 [果樹]
総はバイクの鍵をクルクルと指で回しながらマンションに向かって歩いていく。
私もその後を追ってマンションに入った。
エレベータを降りて、角のドアの前まできたところで総の足が止まる。
総はジーパンのポケットから鍵を取り出して、そのドアの鍵穴に鍵を差し込む。
:08/06/08 17:03
:P902iS
:☆☆☆
#239 [果樹]
ガチャガチャ・・・キィ
「入らないの?」
ドアを開けて中に入った総がドアの前で立ち尽くす私に、にやっと笑う。
「お・・・おじゃまします・・・」
私は、軽くお辞儀をして、部屋に入る。
「その辺適当に座っとけ」
そういってリビングを差してから、総はキッチンに引っ込んだ。
:08/06/08 17:03
:P902iS
:☆☆☆
#240 [果樹]
「はい・・・」
私は総に言われた通りリビングに向かった。
総の部屋の中はとてもすっきりしていた。
一人暮らしにしてはずいぶんと広い部屋だ。
黒を基調に無駄なものは一切なく、家具も少くなかった。
生活に困らないのかしら?
それに、少し寂しい感じがする・・・。
:08/06/08 18:41
:P902iS
:☆☆☆
#241 [果樹]
テーブルの前に座り、部屋の中を見回しているとコトッと目も前にマグカップが置かれた。
「ほい、どうぞ?」
見上げると総が笑ってマグカップを口に運んでいた。
「ありがとうございます・・・」
私もそれに口つけて、一口飲む。
「総は一人暮らしなんですか?」
:08/06/08 18:42
:P902iS
:☆☆☆
#242 [果樹]
「まぁな」
私の隣に胡坐をかいて座った総に聞くと、総は少し寂しそうに言った。
何だろう、この感じ。
見に覚えがある気がする。
「てゆうかお前さ。男の部屋にいるのに危機感とかないの?」
「へ?」
:08/06/08 18:46
:P902iS
:☆☆☆
#243 [果樹]
思考の世界に行っていた私は、総の言葉の意味がいまいち理解できなかった。
「俺だって一応男なんだぜ?危ないんじゃないの?」
「――――っ!」
にやりと笑った総の顔で、私はやっと意味がわかった。
顔が赤くなるのを感じてずざざざざーっと後ろに下がり、総との間に距離をとる。
:08/06/08 18:47
:P902iS
:☆☆☆
#244 [果樹]
そうだった!
総は男の人で、男の人は狼で、それでそれで、私はバイクやらなんやらで総にたくさん抱きついちゃっててっ!!
ど、どうしよう・・・っ。
いまさらになって恥ずかしくなってきたっ!
「プッ・・アハハハハハ」
「そ・・・総!?」
いきなり笑い出した総に、私は意味がわからず目を大きく開いて総を見つめる。
:08/06/08 19:47
:P902iS
:☆☆☆
#245 [果樹]
すると総は、涙を溜めた目で私を見て、「冗談だよ冗談。何もしねぇから安心しろよ」といってポンポンと私の頭を撫でる。
「・・・・・・・」
遊ばれた・・・。
完全に遊ばれた。
なんだか私は総に無償に腹が立ち、顔を背ける。
「ククッ・・・とりあえず疲れたから風呂入って寝るか」
そんな私を喉の奥で笑って、総は立ち上がる。
:08/06/08 19:47
:P902iS
:☆☆☆
#246 [果樹]
「お、お風呂!?」
総の言葉に私はまた目を見開いて、総を見る。
しかし総は、そんなこと気にもせず部屋の奥のドアの前に行き、中に入った。
そしてしばらくして総は手に何かを持って戻ってきた。
「寝る服貸してやっから先に入ってこいよ」
「あ、はい・・・」
差し出されたのは洋服。
:08/06/08 19:48
:P902iS
:☆☆☆
#247 [果樹]
総が部屋に行ったのはこれをとりに行くためだったんだ。
私は総の手からそれを受け取り、総に案内されるままお風呂場に行った。
カチャ・・・パタン
私は風呂場のドアを閉めると、ドアにもたれかかってズルズルと腰を下ろした。
総が変なこと言うから焦っちゃったじゃないの。
:08/06/08 19:49
:P902iS
:☆☆☆
#248 [果樹]
心配する必要なかったのかも・・・。
なのになんだろう。
がっかりする気持ちとほっとする気持ちが一緒にあるのは・・・。
私は少し考えたがわからなかったので、お風呂に入ることにした。
――――――――・・・・
「お風呂お借りしました」
:08/06/08 19:50
:P902iS
:☆☆☆
#249 [果樹]
「おう!じゃあ疲れてるだろうからベッド使って先に寝とけ」
私が出ると総はすぐにお風呂場に向かった。
私は総に言われたとおり、リビングの部屋に置かれているベッドに横になる。
総はなんでこんなに広い家に一人で住んでいるんだろう?
確か総は大学4年生で22歳のはず。
22歳ってそんなにお金を持っているものなの?
:08/06/08 19:56
:P902iS
:☆☆☆
#250 [果樹]
私と4つしか違わないのに。
総ってよくわからない・・・。
そんなことを考えていたらカチャっとドアが開く音がして、総がお風呂場から出てきた。
そのままベッドに入ってくるのかと思ったが、総は床に寝転んでしまった。
「・・・・・・・」
まさか床で眠るつもり?
:08/06/09 05:11
:P902iS
:☆☆☆
#251 [果樹]
総、寒くないのかな・・・?
あのままじゃ風引いちゃうかも・・・。
・・・よしっ!
「総?」
「ん?まだ起きてたのか?つかさ」
私が総に声をかけると背中を向けていた総がこっちを向いた。
:08/06/09 05:12
:P902iS
:☆☆☆
#252 [果樹]
「あ、あの・・・床じゃ痛いでしょ?よかったらこっちこない?」
「は?」
総はまぬけな声を出す。
私の顔はきっと恥ずかしさで真っ赤なはずだ。
現に今だって心臓が激しく脈を刻んでいる。
「つかさ、それ意味わかっていってるのか?」
むくりと起き上がって聞く総。
:08/06/09 05:12
:P902iS
:☆☆☆
#253 [果樹]
総の表情は暗くてよくわからなかった。
「はい・・・」
「ふぅん。そんじゃご相伴に預かりますか」
そういうと総は立ち上がって私の眠るベッドに近付く。
ギシッとスプリングが鳴り、総はベッドに身体を預ける。
私は総と向き合って眠るのはさすがに恥ずかしかったので、総に背中を向けて眠ることにした。
:08/06/09 05:13
:P902iS
:☆☆☆
#254 [果樹]
・・・・・・眠れない。
背中に総を感じる。
シングルベッドだからさすがに二人で寝るには厳しいものがある。
総の体温を背中に感じて恥ずかしくなる。
「つかさ。そんな隅っこにいたら落っこちるよ?もっとこっち来れば?」
「え?」
:08/06/09 05:13
:P902iS
:☆☆☆
#255 [果樹]
総の声が聞こえた瞬間、肩を掴まれて、反転させられた。
総の顔が近い。
「ほら・・・おいで」
そういって総は背中に手を回して引き寄せる。
私は総の胸に身体を密着させて、抱き締められるような形になった。
「おやすみ」
上を少し見上げると目を瞑って総は寝る体勢にはいっていた。
:08/06/09 05:14
:P902iS
:☆☆☆
#256 [果樹]
え?ええ?
これで眠れっていうの?
嘘でしょ!?
恥ずかしくて眠れないわよぉ!
すぐ近くでは総の心臓がトクントクンと脈を打っている。
あ・・・心地いい音。
あったかい。
「おやすみなさい・・・」
:08/06/09 05:15
:P902iS
:☆☆☆
#257 [果樹]
私もぽつりと呟いて目を閉じた。
――――――――・・・・
「んー・・・」
目を覚ますと見知らぬ天井が、目の前にあった。
ここ・・・どこだっけ?
私は何回か瞬きを繰り返して、自分がいる場所を確かめた。
:08/06/09 05:16
:P902iS
:☆☆☆
#258 [果樹]
あ、そっか。
昨日先生が家から連れ出してくれて、それで・・・。
それで・・・。
ん?なんか枕硬い?
少し顔を動かして見てみると総が隣で静かに寝息を立てていた。
そして私の頭の下には総のたくましい腕があった。
「きっ・・・!」
私は大声で叫びそうになった自分の口を急いで手で塞ぐ。
:08/06/09 17:05
:P902iS
:☆☆☆
#259 [果樹]
「んん゙・・・」
隣で眠っていた総が少し声を洩らす。
しかし総はまたすぐ寝息を立て始めた。
私は総が起きなかった事にほっと静かに胸を撫で下ろして、またそーっと総の顔を見る。
今までは総の顔をしっかり見たことなんてなかったが、総はよく見ると端整な顔立ちをしていた。
:08/06/09 17:06
:P902iS
:☆☆☆
#260 [果樹]
長いまつげに薄い唇、スッと通った鼻筋と綺麗に弧を描いた眉そして綺麗な黒髪。
街を歩けば女の人が振り返るような美形だ。
総は彼女なんていないのだろうか?
もしいたら、私なんかにかまっている時間なんてないだろうけど。
じっと総を見ていたらおもむろに総の目が開いた。
:08/06/09 17:06
:P902iS
:☆☆☆
#261 [果樹]
「あ、つかさおはよ」
「お、おはようございます」
目を擦りながら私を見る総に、ずっと見ていたことが気づかれないように、私は急いで天井の方に向きを変えた。
顔が赤くなっていたのに気づかれてしまっただろうか。
「んあー・・・よく寝た」
:08/06/09 17:07
:P902iS
:☆☆☆
#262 [果樹]
総は起き上がって、両手を上に伸ばして軽く伸びをしてからベッドを降りた。
「コーヒーでも飲むか?」
「は、はい」
キッチンに向かいながら肩越しに聞いてきた総に、起き上がって私はこくこくと頷く。
――――――――・・・・
「つかさ。今日どっか行きたいとこあるか?」
:08/06/09 17:08
:P902iS
:☆☆☆
#263 [果樹]
「行きたいところ?」
総が作ってくれた朝食を食べている際に、聞かれたので私は首を傾げる。
少し考えてから、私はパッと頭に電球が点いたように閃く。
「お買い物!お買い物に行きたい!!」
「買い物?別にいいけど」
私の言葉に総は不思議そうな顔をしたが、承諾してくれた。
:08/06/09 17:09
:P902iS
:☆☆☆
#264 [果樹]
「ありがとう総!」
「ん?・・・ああ」
私が笑いかけると、総は軽い返事を返して黙々と朝食を平らげた。
総の顔が一瞬赤らんだのは気のせいだったのかな・・・?
――――――――・・・・
「うっわぁ・・・人がたくさんいる」
:08/06/09 17:09
:P902iS
:☆☆☆
#265 [果樹]
目の前を通り過ぎる大勢の人に思わず感嘆と驚愕の声が洩れる。
「当たり前だろ?つかさってこういうところにもこないのか?」
私の驚きようが不思議だったのだろう。
総は眉根を寄せて私の顔を覗き込んだ。
「お洋服は萩野が買ってくるから自分で行ったことはあまりなくて・・・」
:08/06/09 18:44
:P902iS
:☆☆☆
#266 [果樹]
私はそれに少し俯き加減で答える。
「萩野?」
「私が生まれる前から家に仕えているものです」
萩野・・・。
きっと今頃血眼になって探しているのだろう。
お父様が許すはずないのだから・・・。
「・・・・・。総、買い物に行きましょう!私靴欲しいんです。お洋服も」
:08/06/09 22:07
:P902iS
:☆☆☆
#267 [果樹]
また俯きそうになった顔を必死に上げ、私は総より一歩前に出て振り返る。
そして笑顔を作り、総の腕をグイグイ引っ張って総を急かす。
「俺は荷物持ちか」
私には聞こえなかったが、この時総はため息をついていた。
――――――――・・・・
「つかさ・・・お前買いすぎじゃねぇ?」
:08/06/09 22:08
:P902iS
:☆☆☆
#268 [果樹]
どっさりと腕に下げた紙袋を持ちながら呆れ顔で総が聞いてくる。
「だって楽しいんですもの!」
私は満面の笑みで総に笑いかけた。
総はそんな私に仕方がないなぁというような笑みを返した。
「お嬢様!」
「は・・・萩野っ!!」
:08/06/09 22:09
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:☆☆☆
#269 [果樹]
聞き覚えのある声に振り向くと、50m先に厳しい顔をした萩野がいた。
私の身体がビクッと跳ねる。
「探しましたよ。ご自宅の方にお戻り下さい」
ツカツカと私の目の前まで来た萩野は、厳しい目つきをしながらも恭しく頭を下げた。
「い、嫌ですっ!!」
顔が強張る。
:08/06/09 22:10
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:☆☆☆
#270 [果樹]
「またそんな我儘をお言いになって。いい加減にして下さいお嬢様」
「っ!!」
顔を上げた萩野の目つきがさらに厳しいものになり、私を捕らえる。
その目に捕らえられた私は、つい身体が動けなくなる。
「さぁ帰りますよ」
グッと腕を掴まれ、そこに力が加えられる。
:08/06/09 22:11
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#271 [果樹]
「い、嫌・・・」
振り払いたいのに力じゃ適わない自分が悔しい。
「あのー俺抜きで話進めないで貰えますか?」
そんなピリピリした雰囲気の中で一つの声と共に、にゅっと手が挙がった。
「貴方は?」
萩野が私から総に視線を移す。
「時田総一郎。つかさの家庭教師」
:08/06/09 22:12
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#272 [果樹]
「ああ、貴方でしたか。お嬢様を誑かして連れ出したのは」
「萩野!!失礼なこと言わないで!あれは私の意志で出て行ったのです」
私が萩野の言葉に反抗するように大きな声で怒鳴ると、萩野は冷ややかな目で私を見てからふっと嫌な笑みを溢す。
「まぁどちらでもよろしいですが。さぁ、参りますよ」
:08/06/09 22:13
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#273 [果樹]
萩野が私の手を力づくで引っ張る。
しかしその萩野の手は、総によって振り払われた。
「おいおい、嫌がる女を無理やり連れて行こうとするのは、ちょっと男としてないんじゃねぇのか?」
いつものにやけ顔と違う怖い顔を総は萩野に向ける。
萩野の眼光が鋭く光る。
:08/06/09 22:14
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#274 [果樹]
「貴方には関係の無い事だ。第一貴方、少々お嬢様と一緒に時を過ごしたからといってお嬢様のすべてを知ったつもりか?お嬢様の幸せを考えてものを言うんだな」
「っ・・・」
総は言葉に詰まって口を閉ざしてしまった。
そんな総に萩野は勝ち誇ったような顔をしてから、少し緩めた顔で私に向き直る。
:08/06/09 22:15
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:☆☆☆
#275 [果樹]
「さぁお嬢様。参りますよ。旦那様もご心配なさっています」
「嘘よ・・・」
顔がまた俯く。
お父様が私を心配してるなんて、そんなの嘘・・・。
お父様は一度だって私に優しい顔も悲しい顔も見せたことがない。
涙だって・・・。
「嘘ではございません。旦那様のお気持ちも少しはお考え下さい」
:08/06/09 22:15
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:☆☆☆
#276 [果樹]
「っ!」
「さぁお車にお乗り下さい」
私たちの側につけた車に萩野は私を無理やり押し込もうとする。
「いや・・・。総!総っ!」
私は周りの目を気にすることなく叫んだ。
力の限り総の名前を叫んだ。
でも総は俯いて、私の方を見ようとはしない。
:08/06/09 22:16
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#277 [果樹]
総・・・?
「つかさ」
名前を呼ばれ顔を上げると、総が虚ろな目で私を見ていた。
「お前は家に帰れ」
「え・・・?」
総の口から信じられない言葉が発せられて、私は身体から力が抜けるのを感じた。
「家に帰って今までの生活に戻るんだ。それが普通だ」
:08/06/09 22:17
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#278 [果樹]
総が何を言ってるのかわからない。
何を言ってるの総・・・?
なんで家に戻れなんて。
「そんな・・・。だって言ったじゃないですか」
だらんと身体の力が抜けた私を萩野の腕が支えている。
でもそんなことはどうでもいい。
私は振り絞るようにして精一杯の声を出す。
:08/06/09 22:17
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:☆☆☆
#279 [果樹]
「総言ってくれたじゃないですかっ。私に自由をくれるって・・・!」
私の目からは、いつの間にか大粒の涙が流れて、頬をめいっぱい濡らしていた。
「総っ!!」
叫んでも叫んでも総に声は届かない。
総はまるで私の声を遮断するように顔を背けている。
:08/06/09 22:18
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#280 [果樹]
「行きますよ」
萩野に押し込まれるように私は車に乗り込み、それを確認して車は発車した。
家に着くまでの時間、私の頬はずっと濡れていて、それが乾くことはなかった。
「つかさ・・・ごめんな」
:08/06/09 22:19
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:☆☆☆
#281 [果樹]
一人その場に取り残された総一郎はもういないつかさの名前を呼び、涙が地面を濡らしていた。
――――――――・・・・
「お嬢様。ご夕食のお時間です」
「いらない。食べたくないの」
「しかし・・・」
「いらないったらいらない!」
:08/06/09 22:20
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:☆☆☆
#282 [果樹]
ドアに向かって投げた枕がぼふっと音を立ててあたり、床にずり落ちる。
私はそれを見届けてからベッドにうつ伏せになるように飛び込む。
ギシっとベッドのスプリングがしなる。
「総のばかぁ・・・っ」
あんなに涙は流したはずなのにまだ出るのね。
頬を伝う涙が嫌なものにしか思えない。
:08/06/09 22:20
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:☆☆☆
#283 [果樹]
ねぇ、総。
あの時あなたが言った言葉は嘘なの?
あの言葉は信じてもいいものなの・・・?
ねぇ、総・・・!
――――――――・・・・
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
萩野の声がドアの外から聞こえる。
:08/06/09 22:21
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:☆☆☆
#284 [果樹]
「お父様が?・・・今行きます」
私は支度をしてから、部屋を出て、お父様の部屋へ向かった。
コンコン
「つかさです」
「入りなさい」
相変わらず迫力たっぷりの声だ。
つい背筋がピッと伸びる。
:08/06/10 04:59
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:☆☆☆
#285 [果樹]
「失礼します」
私は深呼吸をしてからドアノブを回し、一礼して部屋に入る。
お父様は、革張りの椅子に座って葉巻を吹かしている。
相変わらず怖い顔をして、私を見ている。
「つかさ。明日お前には婚約者を決めてもらう」
「婚約者?私はそのような話聞いていません!」
:08/06/10 05:00
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:☆☆☆
#286 [果樹]
淡々と告げられた婚約者の言葉に驚愕する。
「既に決まったことだ。明日パーティを開く。50人程婚約者候補を用意してやるからその中から選びなさい」
「でもお父様・・・っ!」
「口答えはならん」
納得がいかないと反論をしようと思ったが、ピシャリと一喝されてしまった。
「・・・すみません」
:08/06/10 05:03
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:☆☆☆
#287 [果樹]
私はそれ以上何も言えなくなり、お父様の部屋を出て自室に戻ってベッドに伏せた。
「婚約者なんていらないのにっ・・・!」
また頬を涙が伝った。
――――――――・・・・
「よろしかったら僕と一曲踊っていただけますか?」
:08/06/10 05:04
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:☆☆☆
#288 [果樹]
まただ。
きっと婚約者候補だろう。
さっきからダンスの誘いがひっきりなしにくる。
私は壁の花で充分なのに。
「ごめんなさい。私、気分が優れないので失礼します」
相手に軽く会釈をして、椅子から立ち上がると私はテラスに繋がる扉を開いて外の風にあたる。
:08/06/12 00:55
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:☆☆☆
#289 [果樹]
「はぁ・・・」
パーティなんてつまらない。
50人の婚約者候補・・・。
もう少ししたらお父様から紹介されるだろう。
抗うことは出来ない。
お父様のお言いつけは絶対。
私は結局自由にはなれないのね。
「おや?君はもしかしてつかさお嬢さん?」
:08/06/12 00:56
:P902iS
:☆☆☆
#290 [果樹]
名前を呼ばれたので声の主を探すと、タキシード姿の男の人がテラスの柵に寄りかかるようにして立っていた。
顔は月の光を背中に浴びているせいでよく見えない。
「そうですけどあなたは?」
「君の婚約者候補、とでも言うべきかな?つかさお嬢さん」
:08/06/12 00:59
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:☆☆☆
#291 [果樹]
含みのある言い方をされて眉間に皺が寄るが、招待客なので無下には出来ない。
私はなるべく角が立たないように笑顔を作る。
「そうですか。本日はわざわざ足を運んで頂いてありがとうございます。それでは私はこれで失礼します」
長居は無用とばかりに踵を返して戻るところで、後ろから声をかけられた。
:08/06/12 01:01
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:☆☆☆
#292 [果樹]
「ねぇもうちょっと話さない?」
「遠慮します」
と言いたかったけれど、中に戻ってもまたダンスの誘いが嵐のように来るだけなので、ここの方がまだマシだと思い、私はテラスでこの男の相手をすることにした。
・・・・・・・・・・・・・
「君の家は随分としきたりに煩い家のようだね」
:08/06/12 01:10
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:☆☆☆
#293 [果樹]
「古くからある旧家ですので、決まり事は絶対なんです」
男の言葉に貼りつけたような笑みを作る。
「ふぅん。しきたりを重んじる旧家か。自由なんか皆無だろうね」
「あなただって私と変わらないんじゃありません?」
男の言葉に私が問掛けると、男はクスッと笑いを溢す。
:08/06/12 01:12
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:☆☆☆
#294 [果樹]
「そうだけど。俺は自由が欲しくて逃げた人間だから」
「え?」
「俺たちの住む世界は窮屈で仕方がない。やれ習い事だ。やれ勉強だと縛られた中の自由しかない。それはまるで籠の鳥だ。だから俺は籠から逃げ出した。空をおもいっきり飛んでみたかったからね」
空をおもいっきり飛んでみたい・・・か。
それは何度私が願った、叶わない望みだろう。
:08/06/12 01:15
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#295 [果樹]
「君は逃げ出さないの?」
問掛ける男に私もクスッと笑みを一つ浮かべる。
「無理ですよ。連れ戻されてしまいましたから」
「自由が欲しくないの?」
自由?
そんなの欲しいに決まっている。
でも・・・。
:08/06/13 22:24
:P902iS
:☆☆☆
#296 [果樹]
.
「自由が欲しいなら俺がくれてやるよ」
.
:08/06/13 22:26
:P902iS
:☆☆☆
#297 [果樹]
「え!?」
思わず顔の見えない男の顔を見てしまう。
この台詞・・・。
これはあの時・・・。
「お前の知らない世界を俺が見せてやるよ」
この台詞はあの時に総が私に向けた言葉・・・。
もしかして・・・。
:08/06/13 22:27
:P902iS
:☆☆☆
#298 [果樹]
私は一筋の望みを託して本当に小さな声でその名前を呼ぶ。
「そ・・・う?」
月明かりを背にしていた男は私の隣まで来て、にやっと笑う。
「やっと気付いた?」
月明かりに照らされたその顔は紛れもなく総だった。
「なん・・・で?」
:08/06/13 22:27
:P902iS
:☆☆☆
#299 [果樹]
「つかさが婚約者を決めるパーティを開くって言うから親父に頼み込んで招待客として紛れ込んだ」
笑いながらいう総。
「親父って・・・それに招待客・・・?え??」
総のいきなりの登場と言葉に考えることのに容量を越えていて、私の頭はついていかない。
「クスッ・・・とりあえず落ち着け」
:08/06/13 22:28
:P902iS
:☆☆☆
#300 [果樹]
笑みを浮かべた総が私の頭をぽんぽんっと叩く。
それだけで私の心には安心感が生まれた。
それから総は自分の素性やここにいる理由を少しずつ話し出した。
「俺の本当の名前は此木(くのぎ)総一郎」
「此木?此木って・・・」
どこかで聞いたことが・・・。
:08/06/16 02:50
:P902iS
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