・・万華鏡・・
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#1 [果樹]
ここでは様々な恋のお話を書こうと思います((∀・!

ご意見ご感想はこちらまで
↓↓↓

果樹の感想板.゚
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3647/

⏰:08/05/28 20:39 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#2 [果樹]
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知ってる・・・?


万華鏡ってね一度見た模様はもう二度と見れないの。

不思議だよね。



恋愛もきっと同じ。

その時楽しかったことや悲しかったことはきっとその時一度きりのその時だけの感情。

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⏰:08/05/28 20:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#3 [果樹]
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例え何度楽しいことや悲しいことを繰り返したって、同じ高揚感や焦燥感にはならない。

だからきっと恋愛は一瞬の刻が大事で一分一秒だってもったいないんだね・・・。


ほら・・・
万華鏡覗いてみよう。

きっと何か素敵なものが見れるよ。

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⏰:08/05/28 20:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#4 [果樹]
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Story 1

【桜咲クミライ恋ユメ】



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⏰:08/05/28 20:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#5 [果樹]
「もう桜も散ったのか・・・」


彼女と出会ったのは、この桜が満開に咲いていた頃だったな・・・。



・・・・・・・・・・・・



桜が咲き出して、あー春だなぁなんて思う4月。

高校の入学式で、俺は彼女に出会った。

⏰:08/05/28 21:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#6 [果樹]
入学式。


正直かったるい。

聞きたくもねぇジジババの話を延々と一時間も聞かされるなんて、苦痛以外のなにものでもない。

きっと全校生徒がそう思ってるはずだ。


俺は、サボる場所を見つけるために歩いていたら、学校の隅に追いやられるように咲いていた桜を見つけた。

⏰:08/05/28 21:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#7 [果樹]
ちょーどいいや!

桜の下で一寝することに決めた俺は、そこに近付く。


しかし先客がいたようだ。

桜の木に寄りかかる様にして座る少女。

黒く長い髪が風が吹く度に揺れる少女は、制服の感じからいって新入生だろう。

まだ着慣れない感じと制服の新品具合いがそれを物語っていた。


ちぇ、ここは駄目か。

俺は別の場所を探そうと回れ右をしようとした時、桜の方から声が聞こえた。

⏰:08/05/28 21:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#8 [果樹]
「あなたもサボリ?」

一瞬桜が喋ったのかと思ったが、それは紛れもなく少女の声。

澄んだ綺麗な声は、まだ世の中の醜さも何も知らないようだった。


俺は回れ右をしようとした足を止めて、少女の方に向き直る。

「まぁな。昼寝の場所取られちまったけど」

⏰:08/05/28 21:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#9 [果樹]
俺はちょっと意地悪く言う。

しかし少女はそれに気を悪くした感じもなく笑っている。


「あ、ごめんなさい。よかったら隣どうぞ。別にお昼寝の邪魔するつもりはないから」


寝れるならなんでもいーやと思った俺は、少女の誘いを受ける事にした。

⏰:08/05/28 21:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#10 [果樹]
ごろんと桜の下の芝生に寝転ぶと空よりも鮮やかな色の桜が目に飛込んできた。

暖かい陽気にはうってつけのそよ風と桜の花の隙間からたまに溢れる日射しが気持ちよかった。


ふと少女に目線を移すと少女はさっきと変わらず木に寄りかかったまま本を読んでいた。

「なぁ、あんたさっきから何読んでんだ?」

俺の声に気付いたようで少女もこっちを見たが、その顔は何だか笑っている。

⏰:08/05/28 21:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#11 [果樹]
「寝ないの?」

「う、うるせぇな!聞いてんだから答えろよ!」

少女につっこまれた俺は、軽く動揺してしまった。

「詩よ」

「詩?なにそれ」

「うーん。分かりやすくいうと自分の思った事を文章にしたもの・・・かな?」

少女は説明してくれたが、詩を読んだことのない俺にはいまいちよく分からなかった。

⏰:08/05/28 21:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#12 [果樹]
「ふーん。面白いの?」

「読んでみる?」

「いい」

笑顔で勧める彼女に俺は寝返りをうち、背中を向けて答えた。

「そう?以外とハマるかもよ?」

後ろでクスクスと笑う彼女。

そんなのに俺がハマるわけがない。

俺が今度こそ眠りにつこうと目を閉じて数分。

⏰:08/05/28 21:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#13 [果樹]
体育館の方から生徒のざわつきが聞こえた。

「あ、始業式終わったみたい。それじゃあさようなら」

パタンと本を閉じた声に俺は反応し、上体を起こすと少女は校舎に歩いていってしまった。

「あっ・・・。」

はぁ。名前くらい聞いとけってんだ俺のバカ!

しょうがねぇ俺も教室に行くとするか。

俺は軽く伸びをして、自分の教室へと向かった。

⏰:08/05/28 21:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#14 [果樹]
教室に行くと、中は入学式独特のざわつき感があった。

まぁ廊下も大概煩かったけど・・・。

俺は黒板に貼ってあった座席表で自分の席を確認し、椅子に座ると机に突っ伏した。

女どもの甲高い笑い声や男たちのくだらない話声を聞かないように目を閉じて、さっきの桜の木の下で会った少女のことを思い出した。

⏰:08/05/29 05:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#15 [果樹]
綺麗な子だった。
純粋そうで儚げで、でもどこか影のある子。

やっぱり名前聞いときゃよかった。

また会えるかな・・・。



「千晃ー!お前入学式サボったろー!」

名前を呼ばれて顔を上げると目の前の席に馴染みの顔があった。

「あれ猛。お前いたの?」

⏰:08/05/29 05:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#16 [果樹]
目の前のこいつは、木田猛。

中学からつるんでる奴で、明るくていい奴なんだ。

高校が一緒なのは知ってたけどまさかクラスまで一緒だとは・・・。

「“いたの?”じゃねー!俺はなぁ聞きたくもねぇジジババの話を延々と1時間も聞かされたんだぞ?」

「あー悪かったって」

煩い猛を俺は適当にあしらう。

⏰:08/05/29 05:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#17 [果樹]
「つかさーお前始業式の間どこにいたんだ?」

切り替えの早さが猛のいいところだ。

「どーせどっかでサボってたんだろ?」

「あー・・・まぁな」

俺の頭の中に少女の顔が浮かぶ。


「なんだなんだ?なんか楽しいことでもあったのか?」

「あったところでお前には教えてやらねーよ」

⏰:08/05/29 05:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#18 [果樹]
「なんだよー。千晃のいけずぅ」

ベッと舌を出すと猛は気色悪い声をだした。

「やめろ。気持ち悪い」

俺は猛から遠退くように椅子の背持たれに身体を預ける。


「あ、つーか聞いて聞いて。耳より情報♪」

「耳より情報?」

「おぅ!聞きたい?」

⏰:08/05/29 05:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#19 [果樹]
猛は目を爛々と輝かせて聞いてきた。

「つーか話したいんだろ?」

にひひと笑う猛。
これは話したくてうずうずしている顔だ。


「それがさー今年の新入生にすんげー美少女がいるらしーんだ!」

「美少女?くだらねぇ」

女ってゆーのはどうも煩くて敵わない。

⏰:08/05/29 05:20 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#20 [果樹]
「まぁそう言うなって。俺もチラッとしか見てねぇんだけど確かにあれは美少女だった!」

「ふーん」

「黒髪サラサラの可愛い子だったぜ」

「黒髪ねぇ」


一瞬だけ桜の下で出会った少女が脳裏よぎった。

まさかな・・・。

⏰:08/05/29 05:21 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#21 [果樹]
「ん?どした」

「いや・・・なんでもねぇ。」

「ふーん。あ担任きた。そんじゃまた後でな!」


猛は自分の席に戻っていった。

⏰:08/05/29 05:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#22 [もも]
次の日

猛と昼飯を食った俺は、昼寝のために桜の木のところまでやってきた。


「あ」「あ」


昨日と同じ場所にこれまた昨日と同じ少女がいた。


「昨日はドーモ」

「こちらこそ」

俺は軽く挨拶をして、また昨日と同じところに寝転んだ。

⏰:08/05/29 13:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#23 [もも]
「随分この桜が気に入ってるみたいね」

少女が桜を見上げながら言う。

「あ?あーまぁな」

少女の問掛けに俺は曖昧な返事を返す。


ちらりと少女を見るとまた本を読んでいた。

「また詩読んでんのか?」

「うん!」

満面の笑みで答える少女。

⏰:08/05/29 13:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#24 [もも]
「本当に好きなんだな。その本」

「え?」

「昨日も同じの読んでただろ?」

俺の言葉に少女はにっこりと微笑んだ。

「覚えててくれたんだ」

「べ、別に・・・」

俺は何だか顔が赤くなっている気がして寝返りをうって少女に背中を向けた。

⏰:08/05/29 13:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#25 [もも]
「そんなに好きなのか?」

俺は背中を向けたまま聞く。

「うーん・・・どうだろ?共感出来るの。だからつい読んじゃって」

「ふーん」

少女の顔は見えなかったが声は何だか寂しそうだった。



キーンコーンカーンコーン

⏰:08/05/29 13:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#26 [もも]
授業開始5分前を告げるチャイムが鳴った。

「あ、授業始まっちゃう。それじゃあさようなら」

「あ・・・」

俺が振り返った時には、少女はもう校舎に向かって歩いてしまっていた。


また名前聞けなかった。
全く・・・俺は何してんだ。

⏰:08/05/29 13:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#27 [果樹]
自分の不甲斐無さに嫌気が差しながら俺は教室へと戻った。


――――――――・・・・・


「千晃ー。どこ行ってたんだよー」

「ヤボ用」

俺はガタンと椅子を引いて座ると、机に突っ伏した。

俺は授業なんか耳にも入らず、ずっと少女のことを考えて一時間過ごした。

⏰:08/05/29 18:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#28 [果樹]
「なぁ猛」

俺は休み時間に目の前で漫画を読んでいる猛に声をかけた。

猛は「んー?」と生返事を返す。

「この間お前が言ってた美少女って・・・」

“美少女”のフレーズを出すと猛は読んでいた漫画を閉じ、身を乗り出してきた。

「お?ついに興味持ったかぁ?」

⏰:08/05/29 18:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#29 [果樹]
「あー・・・まぁな」

適当に返した答えにも関わらず猛はうんうんと頷いている。

「それでこそ男だ!あ、そういやー美少女について新情報だぞ」

「ん?」

表面上は関心の無さそうに聞くが内心では、聞きたくて仕方がなかった。


「美少女の名前は水嶋咲良チャン♪かんわいー名前だろぉ」

⏰:08/05/29 18:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#30 [果樹]
「咲良・・・ねぇ」

俺が名前を口にすると、猛はにんまりと怪しい笑みを浮かべる。

「なんだなんだぁ?恋の予感か?」

「さーあ。どうだろうな?」

恋か・・・。
そんなんじゃないだろ。



俺はこの時は、そう思っていた。

⏰:08/05/29 18:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#31 [果樹]
すいません(。_、)
上の名前で“もも”ってなってますがこちらも果樹です!!
ほんとややこしくてすみません

⏰:08/05/29 18:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#32 [果樹]
次の日の昼休み

また桜の木のところにいくと例の少女は、また木に寄りかかるようにして本を読んでいた。

俺は何も言わずに側へ行き、また例の如く寝転ぶ。


「あんたの名前、咲良っていうんだろ?」

俺が唐突に聞くと少女は本から俺に視点をずらし驚いたようにこっちを見ていた。

「そうだけど。何で知ってるの?」

⏰:08/05/30 15:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#33 [果樹]
あ、やべぇ。
いきなり名前知ってたら変だよな。

でも口にしてしまったものは仕方がない。
俺は正直に答える。

「だちに聞いた」

すると少女、いや咲良はあの時と同じように気を悪くした様子もなくにこっと笑った。

「ふふッ・・・随分情報通のお友達なのね」

「ただのおせっかい野郎だ」

⏰:08/05/30 15:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#34 [果樹]
俺が悪態をつくと咲良はクスクス笑ってまた本に目を戻した。



何分くらいたった時だろう。
咲良が突然口を開いた。

「あなたは?」

「え?」

俺は桜を見ながらぼーっとしていたのでその言葉を聞き流してしまった。

⏰:08/05/30 15:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#35 [果樹]
ばっと上体を起こし咲良の方を見るとふわっと柔らかい笑顔で笑っていた。


「あなたの名前はなんていうの?」

「中村・・・千晃」


何故か俺の顔に身体中の熱が集まってくる気がした。

「ふふッもう何度も会ってるのに自己紹介するのが今日だなんてね」

咲良はそういいながらまたクスクスと笑っていた。

⏰:08/05/30 15:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#36 [果樹]
それから俺は昼休みになると必ず桜の木の下へ行った。

咲良は俺が行くより先に必ずいて、いつのまにか咲良に会うのは俺の日課になっていた。


――――――――・・・・・


「ちっあっきくーん♪」

猛がなんだか楽しそうに俺の元へスキップでやってきた。

⏰:08/05/30 15:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#37 [果樹]
「あ?ていうか猛きしょい!」

おれは眉間に皺を寄せ、猛を見るがそんな俺はお構い無しに猛はにまにま笑っている。
気味が悪い。

「そんなこと言っていーのかなー?俺ばっちりこの目で見ちゃったもんねー♪」

「何を?」

にまにま笑いを止めない猛に呆れた顔で聞き返す。

⏰:08/05/30 15:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#38 [果樹]
「桜の木の下での噂の美少女との密会♪」

「なっ・・・!」

猛のいきなりの言葉に俺はつい椅子から立ち上がって猛を見るが、猛は相変わらずだ。

「まぁまぁ落ち着けって」

とりあえず俺は椅子に座り直して頬杖をつくと猛と目を合わせないようにした。

⏰:08/05/30 15:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#39 [果樹]
「なるほどなー。美少女に会うために千晃は昼食うと必ず消えてたんだなー」

「うるせーな。別にいーだろ」

猛の言葉につい俺は、喧嘩腰っぽい口調になってしまった。


「やだなー千晃。俺は応援してんの♪千晃モテんのに今まで女作んなかっただろ?だから美少女が千晃の彼女になればいーなぁって♪」

⏰:08/05/30 15:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#40 [果樹]
あー確かに今まで複数なら女はいたけど一人の女と付き合うってのはなかったなー。

猛の言葉につい納得してしまう。


いや待てよ。

「つか咲良は別にそんなんじゃねぇし」

「咲良とか呼んじゃってるくせに何言ってんだか・・・。まっ頑張れよ♪」

猛は俺の肩をぽんぽんと叩いて席に戻って行った。

⏰:08/05/30 15:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#41 [果樹]
昼休み

弁当を食い終わってガタンと席をたった俺に、猛は顔を上げた。


「あれ?千晃どこに・・・ああ!愛しの咲良チャンのとこ?」

分かっているくせに聞いてくるところがわざとらしい・・・。

「うるせー」

「いってらっしゃーい♪」

⏰:08/05/30 23:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#42 [果樹]
ぶんぶんと手を振って見送る猛を無視して俺は桜の木へと向かった。


――――――――・・・・・


「あれ・・・?」

桜の下まで来た俺は、いつもと違うことに気付いた。


咲良がいない。

珍しいな咲良が俺より早く来てないなんて。

⏰:08/05/30 23:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#43 [果樹]
いつもは必ず俺より早く来ているのに、と少し不安になったが、とりあえずいつも通り桜の木の下に寝転び咲良を待つことにした。

もう葉桜になってきたか・・・。

俺の上では桜の花が散り始め、段々と葉が茂ってきていた。


俺は、目を瞑って瞼の裏に咲良を思い浮かべる。


黒髪の綺麗な髪。
ぱっちりとした二重の目。

⏰:08/05/30 23:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#44 [果樹]
少し茶色みがかった瞳と薄いピンク色の唇。。

全てが綺麗で俺を惹き付ける存在。


「千晃!」

名前を呼ばれて俺は現実に引き戻された。
校舎の方から走ってくるのは猛だ。

「なんだよ猛こんなところまで・・・」

「ばか!んなこと言ってる場合かよっ!!」

「は?」

⏰:08/05/30 23:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#45 [果樹]
猛は息を切らせて俺のところまでくるといきなり怒鳴りつけてきた。

意味が分からない俺はただただ目を丸くする。

「咲良ちゃんが教室で倒れて保健室に担ぎ込まれたらしいんだ!」

「――――っ!」

猛の言葉を聞いた俺はすぐさま立ち上がって猛には目もくれず保健室へ走った。

⏰:08/05/30 23:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#46 [果樹]
咲良っ!

咲良――――!!


――――――――・・・・


「宮ちゃん!!」

勢い良く保健室のドアを開け、俺は保険医である宮ちゃんの名前を呼ぶ。

「なんだ中村ー。またサボリ?」

宮ちゃんは回転式の椅子に座って笑っていう。

⏰:08/05/30 23:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#47 [果樹]
「違くて!咲良が・・・運び込まれたって・・・」

気持ちが焦って言葉がうまく出てこない。

宮ちゃんは「ああ」と目線を動かし部屋の奥にある窓際のベッドを指差した。

「そこのベッドに寝てるよ。あたしちょっと職員室いってくるからくれぐれも変なことしないよーに!」

カタンと椅子から立った宮ちゃんは、部屋から出ていく際に俺の方を向いて忠告してきた。

⏰:08/05/30 23:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#48 [果樹]
「しねーよ!」

俺はカァっと顔が赤くなる。

宮ちゃんはケラケラと笑って部屋を出ていった。



窓際のベッドに行くと咲良が気持ち良さそうに寝息を立てて眠っていた。

俺はなんだかほっとして、近くに立掛けてあったパイプ椅子に座って、咲良の寝顔を見る。

⏰:08/05/30 23:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#49 [果樹]
「咲良・・・」

名前を呼ぶと咲良は身じろいでから目を開けた。

「ん・・・千晃・・・くん?」

まだ少し朧気な咲良は、上体を起こそうとするので、俺は椅子から立ち上がり、咲良の背中に手を回してそれを手伝う。

「お前大丈夫なのか?」

「あ、ごめんね?心配かけちゃった?軽い脳震盪みたいなものだから心配ないよ」

⏰:08/05/30 23:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#50 [果樹]
優しく笑う咲良はどこか儚げで今にも消えてしまいそうだった。

「本当に?」

「心配しすぎ。大丈夫だから」

不安を拭い切れない俺が聞き返すと、咲良は笑って返事をした。

「今日桜の木の下、行けなかった」

窓の外を見ながら言う咲良に一瞬俺は目を奪われた。

⏰:08/05/30 23:37 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#51 [果樹]
「また明日があるだろ?」

「・・・そうだね!」

咲良は一瞬哀しそうな目をして、にこっと屈託のない笑顔を見せた。



でも咲良。
お前はこの時にはもう分かってたんだな。
自分の体のこと・・・。

⏰:08/05/30 23:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#52 [果樹]
次の日の昼休み

いつものように桜の木に向かおうとしていた途中俺は、女に話しかけられた。

名前までは知らないが、顔に見覚えがあった。
たぶん同じ1年だろう。


彼女は、顔を真っ赤にして体をもじもじとさせ、さっきから俺をチラチラと見ている。

あーこの感じ。
なんか身に覚えがある。
たぶんこれは・・・

⏰:08/05/30 23:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#53 [果樹]
「中村くん!」

「へ・・・?」

あ、俺か。

いきなり名前を呼ばれた俺は一瞬思考が止まる。

「中村くんのことずっと好きだったの・・・!良かったらあたしと付き合ってくれませんかっ?」

顔を真っ赤にさせた彼女はぎゅっと目を瞑り、少し震えていた。

⏰:08/05/30 23:43 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#54 [果樹]
やっぱり・・・。
これは属に言う愛の告白。

「あー・・・悪いけど、俺あんたに興味ないんだわ」

俺が頭をかきながら言うと彼女は目にいっぱい涙を溜めて、走って行ってしまった。

俺はその後ろ姿を見ながらはーぁと盛大に溜め息をつく。

「見ーちゃった♪」

⏰:08/05/30 23:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#55 [果樹]
「なっ・・・咲良!!」

ひょこんと木の後ろから顔をだした咲良に俺は、驚いて少し後退る。

「見てたのかよ・・・」

「見えるところにいたのは千晃くんの方でしょー?」

咲良はぷくっと頬を膨らませた。

⏰:08/05/30 23:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#56 [果樹]
まあ確かに此処は桜の木から目と鼻の先で、咲良がいつも通りあの場所にいたなら見られて当然だった。

なんかいろんなことに後悔だ・・・はぁ。


「それより」

俺が片手で頭を抑えながらうなだれていると、ズイッと視界の真ん中に咲良が現れた。

なんだか顔が怒っている感じだ。

⏰:08/05/30 23:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#57 [果樹]
「駄目じゃん千晃くん!!女の子は繊細なんだからあんな言い方したら傷付いちゃうよ!」

ああ、断る時の台詞まで聞いてたのか。

俺は、はぁーとまた溜め息をつき、咲良の額にデコピンをくらわせた。

「バーカ。どーせ諦めるならこっぴどく振られた方が諦めるもつくだろ!?」

⏰:08/05/30 23:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#58 [果樹]
咲良は面食らった顔をしたが、すぐにいつもの笑顔になった。

「ふふッ」

「なんだよ・・・」

「千晃くんは優しいなーと思っただけ♪」

「ばーか」

そんなことを笑顔で言う咲良に俺はなんだか恥ずかしくなった。

⏰:08/05/30 23:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#59 [果樹]
「ふふッ・・・っ!」

「咲良!?」

笑っていた咲良の顔が歪み、いきなり足元から崩れるようによろけたので、俺は急いでその身体を受け止めた。

「ごめ・・・ちょっとよろめいちゃった」

弱々しく笑顔を見せる咲良が俺はなんだか愛しくて堪らなくなった。

⏰:08/05/30 23:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#60 [果樹]
「ばか無理すんな。保健室行くぞ」

「え・・・?」

俺は咲良の背中と膝の裏に手を回し、抱え上げた。

属に言うお姫様抱っこだ。

腕の中では咲良が目を丸くしていた。

「掴まってろな?」

「へ・・・?あ・・・うん」

⏰:08/05/30 23:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#61 [果樹]
俺の言葉に咲良はおずおずと胸元のカーディガンに手を伸ばしそれをぎゅっと握り締めた。

それを確認した俺は、なるべく咲良に負担がかからないように、歩いて保健室に向かった。


――――――――・・・・


保健室のベッドに咲良を下ろすと安心したのか、咲良はいつの間にか眠りについていた。

⏰:08/05/31 00:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#62 [果樹]
俺は5限目をサボって咲良についている。

今は宮ちゃんが入れてくれた茶を一緒に飲んでいるところだ。


「なぁ、宮ちゃん・・・。咲良どっか悪いのか?」


俺はこの間からずっと思っていたことを宮ちゃんに聞いた。

⏰:08/05/31 00:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#63 [果樹]
本当は、咲良本人から聞きたいが、きっと咲良に聞いたって、なんでもない大丈夫と返されるのが落ちだから咲良には聞けなかった。


宮ちゃんは「んー・・・」と俺の顔を見ながらしばらく考えて、はぁと短い溜め息をついた。

そしてゆっくりと口を開く。

⏰:08/05/31 00:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#64 [果樹]
「水嶋はね・・・心臓の病気なんだ」

「え!?」

俺の頭に衝撃が走る。

一瞬理解が出来なかった。

どうしてだろう身体が震える。

「本当なら病院にいないといけないのに本人の希望で学校に通ってるらしいんだけど・・・もう限界かもな」

宮ちゃんが少し寂しそうに言った。

⏰:08/06/01 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#65 [果樹]
「そんな・・・」

咲良が病気・・・?

俺はうまく自分の中で今聞いた事が処理できなかった。

うつ向く俺の肩を宮ちゃんはぽんぽんと叩いて、「ついててやんな」と一言残して保健室を出ていった。


俺は立ち上がって咲良が眠っているベッドに行き、パイプ椅子に腰を下ろすと布団の上に出ていた咲良の白く細い指を握り締めた。

⏰:08/06/01 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#66 [果樹]
なぁ咲良・・・。
俺はどうすればいいんだ・・・っ!?



「千晃くん・・・?」

名前を呼ばれ、顔を上げると咲良がこっちを見て笑っていた。

「咲良・・・!」

「私の病気のこと聞いちゃった・・・?」

起き上がって俺の方を見て、どこか悲しげに聞いてくる咲良。

⏰:08/06/01 02:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#67 [果樹]
なんでわかったのだろうかと疑問に思っていたら、咲良の指が延びてきて、俺の目元に触れる。

「泣いてる・・・」

見ると、咲良の指には水滴がついていた。

俺の涙・・・?

いつのまにか俺の目からは涙が溢れていた。

俺は急いでそれをカーディガンの袖口で拭った。

⏰:08/06/01 02:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#68 [果樹]
「もうっ宮島先生のお喋り!」

と咲良は冗談めかしげに怒っていた。

そして咲良はうつ向き哀しそうな表情でぽつりぽつりと話し始めた。

「私ね・・・学校ってまともに行ったことなかったの。小さい頃からずっと病院にいて、病院の中だけしか知らなかった。だからこの学校に通えた時すごく嬉しかったんだ。友達もできて、毎日楽しかった。でも、もう限界かなぁ・・・」

⏰:08/06/01 02:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#69 [果樹]
「咲良・・・」

咲良の目から一筋の涙が流れ落ちた。

「自分と同じ名前の・・・桜の花の下で千晃くんにも会えたのに・・・。なんであたしの心臓はちゃんと動いてくれないのかなぁ・・・っ」

ポタポタと咲良の目から流れ落ちた涙が布団に染みをつくった。

咲良は声を出すまいと下唇を噛んで必死に声を押し殺していた。

⏰:08/06/01 02:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#70 [果樹]
俺はそんな咲良が無償に愛しく感じて心臓がぎゅうっと痛くなった。


気が付けば俺は、自分の腕の中にその小さな身体を収めていた。


「俺が毎日見舞いに行くから!桜の花持って見舞いに行くからっ・・・だから早く治せよ!そんで元気になったらいっぱい遊びに行こう!なっ?」

⏰:08/06/02 13:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#71 [果樹]
俺の目からは拭ったはずの涙がまた溢れていたが、そんなことも気にせず俺は力いっぱい咲良を抱き締めた。


今俺にできることはこれくらいしかなかった。


すると咲良も俺の服をぎゅっと掴んで、「・・・・うん!」と涙を流しながらも笑顔で答えた。

⏰:08/06/02 13:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#72 [果樹]
それから咲良は、ちゃんと病院に戻った。

もちろん俺は桜の花を持って見舞いに行ったが、最初、枝を折って持っていったら咲良にこっぴどく叱られた。

咲良いわく、桜の枝は生えてきたりしないから折っちゃ駄目だったらしい。

それからは花びらを持って見舞いに行くと、咲良は笑って「ありがとう」と大事そうにその花びらを栞にしていた。

⏰:08/06/02 13:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#73 [果樹]
でも桜は咲いている時期が決まっているため散ってしまうと中々手に入れるのが難しかった。

でも俺はどうしても咲良に桜を見せてやりたくて、ネットや雑誌を使ってたくさん調べて毎日毎日なんとか咲良の元に桜の花を届けた。

その度に咲良は嬉しそうに笑うから俺はそれだけで、心が温かくなった。


そして季節は過ぎていった。

⏰:08/06/02 13:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#74 [果樹]
いつだったか嬉しそうに咲良が話してくれたことがあった。

「あたしの読んでいる本の詩の中にね、一番好きな詩があるの。それはね」



それは・・・――――

.

⏰:08/06/02 13:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#75 [果樹]
“僕はいつも窓から外を見ている

楽しそうな笑い声に耳を傾けるだけの僕

そんな僕をいつも励ますのは窓から見える桜の花

そこから動けない君はまるで僕そのもの

でもいつかこの足で陽の光のあるところに出られたなら僕はまず君の側で本を読もう

そしてこう言うんだ

『ああ、幸せだな』”

⏰:08/06/02 13:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#76 [果樹]
話し終えた後、「素敵でしょ?」と咲良は笑っていた。


なぁ、咲良。

お前は桜の木の下で本を読んでいるだけで、それだけで幸せだったんだな・・・。
お前が共感できるって言った意味が、今なら分かるよ。

⏰:08/06/02 13:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#77 [果樹]
.
――――――――・・・・


あれから二年・・・。

時が過ぎ、今日俺は卒業式を迎える。

去年より少し早く咲いた桜の木が俺の門出を祝ってくれているようだ。

いや、俺たちか・・・。

⏰:08/06/02 13:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#78 [果樹]
.



「千晃くーん!もーまたここにいたー。卒業式始まっちゃうよー?」



.

⏰:08/06/02 13:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#79 [果樹]
桜の木の下で寝転がっていた俺に、咲良が駆けよって来た。

「ああ」

返事をするだけで一向に起き上がろうとしない俺に諦めたのか、咲良は隣に腰を下ろした。


咲良をみる度、咲良がここにいるのが不思議な感じがする。

⏰:08/06/02 14:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#80 [果樹]
出席日数やら何やらいろいろ大変だったらしいが、咲良も無事、一緒に卒業できることになった。


「この桜ともお別れだね。」

上に咲く桜を見ながら寂しそうに言う咲良。

綺麗だ・・・。
とただそう思えた。


「咲良」

「ん?」

⏰:08/06/02 14:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#81 [果樹]
上体を起こした俺に咲良は小首を傾げる。

「ずっと言えなかったんだけどさ・・・。俺、お前が好きだよ」

「―――――っ!」

咲良の顔は驚いていてみるみる真っ赤になっていった。

「さっ卒業式に行くか!」

⏰:08/06/02 14:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#82 [果樹]
立ち上がって制服についた葉を手でぱんぱんと払いとり校舎に歩き出そうとした俺は、強い力に引き留められ進むことが出来ない。

後ろを振り返ると、咲良が俺のブレザーの裾をぎゅうっと両手で掴んでいた。

「あっあのね!」

「うん?」

俺は肩越しに咲良を見る。

⏰:08/06/02 14:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#83 [果樹]
咲良はうつ向いているが耳まで真っ赤になっていた。

「あたしも!あたしも千晃くんのこと・・・好きだよ」

「うん♪知ってる」

「なっ・・・!」

咲良は真っ赤な顔で俺をみて口をぱくぱくしている。

俺は咲良の方に振り向き、咲良と向き合う。

⏰:08/06/02 14:37 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#84 [果樹]
「クス・・・大好きだ咲良」

ちゅっと不意打ちで咲良の唇にキスをすれば咲良は顔を更に真っ赤にして「もうっ」と俺の胸を叩いてきた。


そしてすぐにいつもの優しい笑顔でふわっと笑ったんだ。

⏰:08/06/02 14:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#85 [果樹]
なぁ咲良。


俺たちの出会いはこの桜からだったな。

じゃあ今度はここから恋愛を始めようか・・・。



【桜咲クミライ恋ユメ】

―End―
.

⏰:08/06/02 14:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#86 [果樹]
.

あなたを見ている時間だけは幸せに包まれる。



story 2

【レンズ越しの恋】

.

⏰:08/06/03 02:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#87 [果樹]
あーやっぱり冴木先輩かっこいいなぁ。

あの取り巻きさえいなければ私が今頃!

・・・って何自惚れているんだろう私は。

はぁ・・・。


私は神田涼子。

私は毎朝、この渡り廊下から登校してくる冴木先輩を見ている。

⏰:08/06/03 05:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#88 [果樹]
冴木先輩とはあたしの想い人。

学校の中でもかっこいいと有名で、いつも周りには取り巻きの綺麗なお姉さま方。

三年生の冴木先輩に二年生の私が寄り付けるわけもなく、ここから見てることしか出来ない私。

はぁあー。

「また明日来よう」

私は渡り廊下を降りて教室に向かった。

⏰:08/06/03 05:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#89 [果樹]
だけど冴木先輩にみとれていた私は、渡り廊下にもう一人居たことに気が付かなかった。


「んーええ写真や。タイトルはさしずめ『切ない心』やろか?」


――――――――・・・・


あー今日も冴木先輩かっこいい。

また今日も私は、渡り廊下で冴木先輩を見ている。

⏰:08/06/03 05:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#90 [果樹]
軽くストーカーだ・・・。


今日は青空で気持ちがいいし、天井の無いこの渡り廊下はあたしの大好きな場所だ。

なんていったって冴木先輩も見れるし!


カシャッ

え?

「タイトルは『熱視線』。んー我ながらええタイトルや!」

⏰:08/06/03 05:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#91 [果樹]
声のした方を振り向けば、渡り廊下の端っこから人が歩いて来た。

髪は金髪、耳にはたくさんのピアスに手にはカメラ。

「はぁ。またですか?上條先輩」

「はろー涼ちゃん♪」

私が上條先輩の方を向いて嫌そうな顔をしているのに上條先輩はへらへらと笑って片手を振っている。

⏰:08/06/03 05:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#92 [果樹]
この人、上條先輩とはついこの間ここで出会った。

私がいつものごとく冴木先輩を見ていたら、いきなり写真を撮られ「ええ写真が撮れたわ!」とへらっと笑った上條先輩。

それからというもの毎朝上條先輩はここに来て、写真を撮っては、私の至福の一時を邪魔してくれる。


「涼ちゃんてさーいっつもここから滉太のこと見とるよな」

⏰:08/06/03 05:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#93 [果樹]
上條先輩は私の隣にきて、柵に寄りかかるようにしてこちらを見る。

滉太か・・・。
いいなぁ冴木先輩のこと呼び捨てに出来て。


「そして先輩はそんな私をいつも撮ってますよね」

「はははー。ばれたか」

少し睨むが上條先輩は気にしてないようにまたへらっと笑う。

⏰:08/06/03 05:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#94 [果樹]
「いつか盗撮の容疑で訴えますから」

「それはあかーん!堪忍してやぁ」

顔の前で両手を合わせてお願いする上條先輩。

私はなんだかおかしくて笑ってしまった。

「ふふっ」

すると先輩は片目だけ開けてそろりと私を見ると手を下ろしてまた柵に寄りかかった。

⏰:08/06/03 05:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#95 [果樹]
「そないに好きやんなら声かけれたらええのに」

先輩の言葉につい表情が曇る。

「無理ですよ。取り巻きの方々がすごい怖いって噂ですし。私は冴木先輩を見れるだけでいいんです」

私は校門に目を向けて答える。

「せやけどー。俺らもうすぐ卒業やで?」

「・・・・・・」

⏰:08/06/03 05:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#96 [果樹]
そんなの分かってる。

3月になれば先輩は卒業して、この学校を去ってしまう。

そしたらもう先輩を見ることは出来ない。

でも・・・・。


キーンコーンカーンコーン

チャイムの音で私は現実に引き戻された。

⏰:08/06/03 05:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#97 [果樹]
「あ、私もう行かなきゃ!先輩さようならっ」

私は上條先輩から逃げるように渡り廊下を下りて教室に向かった。


――――――――・・・・


はーぁ。授業が耳に入ってこない。

上條先輩があんなこと言うからいけないんだ!

⏰:08/06/03 05:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#98 [果樹]
人が幸せに浸ってたって言うのに。


私は授業を聞く気になれず、窓の外に目を向けて先生の言葉を右から左へ流すことにした。

窓の外には校庭が見えてグラウンドではサッカーをしている人たち。

ん・・・?

んん・・・!?

⏰:08/06/03 07:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#99 [果樹]
窓にかじりつくように校庭を見るとそこには冴木先輩の姿が。

先輩のクラス、この時間体育だったんだぁ!

授業中にも見れるなんてすっごい幸せ!


冴木先輩を目で追っていると金髪の髪が視界に入ってきた。

ん?あれは上條先輩!?

あ、ずるい!

⏰:08/06/03 07:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#100 [果樹]
私の視線の先には冴木先輩と肩組んで笑いあってる上條先輩の姿。

ううう、いいなぁ。

私が触れられない冴木先輩にああも簡単に触るなんて罰あたりなっ!


私は眉間に皺を寄せて、上條先輩が呪われるように念を送った。

⏰:08/06/03 07:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#101 [果樹]
そんなことをしている間に授業は終わっていた。


――――――――・・・・


私が冴木先輩を好きになったのは一年生の時。

まだ入学したての私は、校内で迷ってしまった。


・・・・・・・・・・・・・・・


ここはどこなのよー!

⏰:08/06/03 07:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#102 [果樹]
理科室はどこ?
っていうかここはA棟なの?B棟なの?

もーどっちよー!?


どこに行ったらいいかもわからない私は廊下のど真ん中で立ち往生。

さっきから同じ場所を行ったり来たりしている。

うちの学校はA棟もB棟も同じ造りをしていて、渡り廊下で繋がっている。

⏰:08/06/03 07:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#103 [果樹]
A棟に一、二年生の教室があって、B棟に三年生の教室と特別教室があるらしいが、外見が同じすぎてわけがわからない。

途方に暮れた私は、とりあえずまた歩くことに。

一時間さ迷い続けたらどうしよう・・・。

そんなことを思いながら歩いているといきなり後ろから声が聞こえた。


「あれ?迷子がいる」

⏰:08/06/03 07:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#104 [果樹]
天の助けだ!と思いばっと後ろを振り向くと、そこにいたのは、緑のネクタイを締めた綺麗な男の人。

男の人に綺麗って言葉は変かもしれないけど、でも本当に綺麗で、纏っているオーラが違う。

私がみとれていると男の人はクスッと笑った。

「どうしたの?迷子じゃないの?」

「へ?あっはい!迷子です!」

⏰:08/06/03 07:55 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#105 [果樹]
私がシャキンと背筋を伸ばし直立で答えると、男の人はまたクスクスと笑い出す。

「そんなに大きな声でカミングアウトしなくても」

あ・・・。

私は何だか急に恥ずかしくなった。

「どこに行きたいの?」

目にうっすら涙を溜めて聞いてきた男の人に、「理科室です!」と言うと「ん、じゃあおいで」と手招きをされたので、私は素直についていった。

⏰:08/06/03 07:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#106 [果樹]
「着いたー!!」

教室の上には“理科室”の文字。
間違いなくここは理科室。

私が一人でばんざいをしていると、男の人がまたクスクス笑った。

「ん、良かったね」

笑った顔はあまりにも綺麗で、ついまたみとれてしまう。

⏰:08/06/03 07:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#107 [果樹]
「じゃあ俺はこれで。勉強頑張って」

そう言って男の人は、私に手をひらひらと振ってから歩き出した。

「あ、あのお名前は?」

私がその後ろ姿に声をかけると男の人は少し振り向いてにこっと笑うと、「冴木滉太。またね神田涼子ちゃん♪」と言って歩いて行ってしまった。

⏰:08/06/03 07:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#108 [果樹]
私は、その後ろ姿を見送ってから理科室に入り、先生に謝って席についた。

前では先生が何か実験の説明をしていたが、私はさっき会った冴木先輩のことで頭がいっぱいだった。


冴木滉太先輩・・・。

緑のネクタイって事は二年生かぁ。

かっこよかったなぁ。

⏰:08/06/03 11:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#109 [果樹]
あ!そういえば私お礼言ってない!
うわー非常識な奴って思われたかも。

しかもまたねって・・・。

あれ?そういえば何で私の名前知ってたんだろう・・・?


結局、私が冴木先輩のことで頭がいっぱいな内に授業は終わった。

⏰:08/06/03 11:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#110 [果樹]
後で、その話を友達の由香にしたら「ノートに名前書いてあるからそれ見たんじゃない?」と言われた。

よくよく見てみると私のノートには“神田涼子”とご丁寧にふりがなまで振ってあった。


・・・・・・・・・・・・・・


その時の事を思い出して私はついふっと笑ってしまう。

⏰:08/06/03 11:30 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#111 [果樹]
瞼を閉じればあの時の様子が、鮮明に思い出せるから不思議だ。

一年の片想いか・・・。
ううん、もうすぐ二年だ。
長い長い片想い。


私はもう一度目を閉じる。


今は昼休み。

⏰:08/06/03 11:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#112 [果樹]
天気がいいため、私はこの渡り廊下で昼食をとり、今は寝そべって太陽の光を浴びている。


カシャッ

ん・・・?

「タイトルは『眠れる森の女子高生』でどやろ?」

カメラを手に、にひっと笑うのは上條先輩。

私は上体を起こし、隣に立っている上條先輩を見上げる。

⏰:08/06/03 20:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#113 [果樹]
「上條先輩。ネーミングセンス悪すぎです」

「えぇ!?そないな言い方酷いわ涼ちゃーん」

私がはっきり言うと上條先輩は顔を歪ませてしゃがみこんでしまった。

この人のこういうところは可愛いなー。

「なんですか?昼休みまで」

⏰:08/06/03 20:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#114 [果樹]
私が顔を伺うように覗き込むと、上條先輩は顔を上げ、また笑った。

「教室から涼ちゃんが見えてんやんかー。せやから飛んで来た♪」

「――――っ!!」

いきなりの言葉に私は戸惑い、顔が赤くなって行くのがわかる。

上條先輩って一見軽そうだけど、面白いしかっこいいから何気に憧れている人は多い。

⏰:08/06/03 20:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#115 [果樹]
そんな人にいきなり笑顔で、あんな事を言われたら誰だって顔が赤くなる。

「あれ?涼ちゃん顔赤いで?熱でもあるんちゃう?」

「へ?あ・・・いや大丈夫です」

あなたのせいです・・・。

そしてお願いだからそれ以上近付かないでー!!

⏰:08/06/03 20:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#116 [果樹]
顔が赤くなる私をお構い無しに上條先輩は顔を近付けてくる。

「ほんまかいな?無理したらあかんで?」

「は・・・はい」

私はこれ以上顔が見られないようにうつ向いて返事をした。

「あ、ほんなら俺行くさかいに。またなっ」

そういって上條先輩はぱたぱたと走っていった。

⏰:08/06/03 20:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#117 [果樹]
一人になった渡り廊下に私は寝転び心臓のある左側の胸を上から触る。

「はー。心臓の音が止まないよ・・・」


――――――――・・・・


「失礼しまーす。上條先輩?」

私は今、写真部の部室に来ている。

なぜかって?

⏰:08/06/03 20:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#118 [果樹]
それは遡ること今日の朝。


いつものように冴木先輩のストーキングをしていたら上條先輩が来て、「涼ちゃんに見せたいもんあんねん。せやから放課後写真部にきてやぁ」とだけ言って、上條先輩は私の返事を聞かぬ内に行ってしまった。


そして冒頭に戻るわけで。

⏰:08/06/03 20:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#119 [果樹]
写真部のドアを開けて上條先輩を呼んでるが、上條先輩の姿はない。

「上條せんぱーい」

私は中に入り、もう一度上條先輩を呼ぶ。

すると部屋の奥のドアがガチャッと開き、上條先輩が顔を出した。

「あ、涼ちゃん!はよはよぉ。今出来たとこやねん」

「へ?あ・・・はぁ」

⏰:08/06/03 20:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#120 [果樹]
手招きをする上條先輩に誘われるように、私は今上條先輩が顔を出した部屋に入る。



中に入るとそこは赤い照明の為か、部屋全体が赤く色付いていた。

上條先輩はピンセットで写真らしきものを水に浸している。

「それで現像してるんですか?」

⏰:08/06/03 20:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#121 [果樹]
「せやでー。もっと簡単な方法もあんねんけど俺はこれが好きやねん」

そう言っている上條先輩の顔は楽しそうだった。


「あ、これな♪」

ぽんと掌に置かれたのはいくつかの写真。

でも部屋の照明のせいで、何が写っているのかはっきりわからない。

⏰:08/06/03 20:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#122 [果樹]
「ここじゃアレやから。あっちで見ようや」

そういって私たちは赤い部屋を出て、さっきの部室に戻った。



「うっわぁ・・・」

部室に戻って掌に置かれた数枚の写真を見て、私は思わず声を上げる。

「でやっ?」

⏰:08/06/03 20:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#123 [果樹]
隣では上條先輩が私の顔を覗き込んでいるが、私の目は写真に釘付けにされている。

「綺麗ー・・・」

写真には、青空が夕暮れの赤い空に変わる時の写真やピンク、紫、紺の色が同じ空の中に写し出されたものがあった。

どれも幻想的で思わず見惚れる。

「ほんま?」

⏰:08/06/03 20:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#124 [果樹]
「うんうん!すごい!」

私はついはしゃいでしまう。

「何や嬉しいなぁ。きばって撮った甲斐があったわ」

「え?!これって先輩が?」

先輩の方を見ると、先輩は少し照れたように頭をかいた。

「せやでー。まぁ素人の遊びに毛ぇ生えたようなもんやけど」

⏰:08/06/03 20:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#125 [果樹]
「でもすごい・・・」

私はまた写真に目を戻す。

見ていると、まるで吸い込まれるような写真に惹き付けられるような不思議な感覚になる。

「先輩って写真が本当に好きなんですね♪」

そう笑いかけると上條先輩は顔を反対方向に向けて「ん・・・まぁな」と何だか歯切れ悪く言った。

⏰:08/06/03 20:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#126 [果樹]
先輩の様子が気になったが、とりあえずその日は写真を貰って私は帰った。


――――――――・・・・


「おっはー涼ちゃん♪」

「おはようございます上條先輩」

渡り廊下の向こうから歩いてくるのは上條先輩。

上條先輩とは出会ってから何故か毎日顔を会わせている。

⏰:08/06/03 20:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#127 [果樹]
でも最近私はこの時間が、とても楽しい。

「毎日毎日ご苦労やなぁ」

「日課ですから♪」

そう!今日もやっぱり私は冴木先輩のストーキング中。

「日課・・・なぁ」

「上條先輩?」

「ん?なん?」

⏰:08/06/03 20:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#128 [果樹]
上條先輩の顔が少し曇った気がしたので、名前を呼ぶとすぐにいつもの笑顔になっていた。

私はそれを見て安心して、ほっと胸を撫で下ろした。


「今日も写真部行ってもいいですか?」

「ええでー」

「ありがとうございます!じゃあまた後で!」

⏰:08/06/03 20:18 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#129 [果樹]
私は笑顔で上條先輩に手を振って渡り廊下を後にした。


「負けへん・・・」

一人残った渡り廊下で、上條先輩が呟いた言葉は、私の耳には届かず、青い空に溶けた。


――――――――・・・・


「失礼しまーす」

⏰:08/06/03 20:19 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#130 [果樹]
「はーい。あれ?」

写真部のドアを開けると、緑のリボンをした女の人が小首を傾げてこちらを見てきた。

「あ、すみません私・・・」

「あなた涼ちゃんね!」

へ・・・?

自分で名前を言う前に女の人に言われてしまった。

⏰:08/06/04 00:25 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#131 [果樹]
「はい。そうですけど・・・」

私が眉間に皺を寄せながら言うと女の人は可愛い顔で笑った。

「やっぱりー♪実物見れて嬉しーい!私はリカ。あっ座って座って」


緑のリボン・・・。
上條先輩と同じ三年生。

勧められるままに椅子に座る私に背中を向けて、リカ先輩は何か作業をしている。

⏰:08/06/04 00:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#132 [果樹]
「今お茶入れるからねー」

あ、お茶かーってなごみそうになる自分を叱咤して、頭に疑問府を浮かべる。

なんで私の名前を知っているの?

しかも実物って何?

私の頭では理解できないことばかり。


「あのー・・・何で私の事知ってるんですか?」

⏰:08/06/04 00:28 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#133 [果樹]
「え?あ、それはねー・・・きゃっ!!」

お茶を入れたらしいコップを手に、振り向こうとしたリカさんは机につまづき、バサッと本が落ちるような音がした。

「あっ大丈夫ですか!?」

幸いにもお茶は溢れなかったが、床にはたくさんの写真が散らばった。

「うん・・・ごめんねぇ」

⏰:08/06/04 00:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#134 [果樹]
私はリカさんと一緒に写真を拾おうとしゃがむ。

そこで“ある事”に気付いてしまった。


「これ・・・」

私が手に撮った写真を見て、リカさんは苦い笑いを溢す。

「あ・・・。あーこれね、全部上條が撮ったものなの」

「上條先輩が・・・?」

⏰:08/06/04 01:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#135 [果樹]
私は写真から目を離さず聞く。

「あいつってさぁ好きなものをひたすら撮るクセがあって、涼ちゃんの写真も気付いたらこんなにいっぱい。すごいでしょ?」

リカさんはそう言ったが、これはすごいなんてものじゃない。

床に散らばるのは、数えきれないほどの私が写っている写真。

⏰:08/06/04 01:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#136 [果樹]
どれも朝、冴木先輩が登校してくるのを待っている横顔や後ろ姿のものばかり。

「ほーんと馬鹿なんだから」

ぼそっとリカさんがそんなことを言ったが、私の頭は今それどころじゃなかった。


なんで・・・?

だって上條先輩とはこの間会ったばかりなのに。

⏰:08/06/04 01:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#137 [果樹]
こんなたくさんの写真撮れるはずがない。

それにまだ今よりも顔が少し幼い私もいる。

いつから・・・?

上條先輩はいつから私を知っていたの?


頭の中にそんな疑問ばかりが浮かんでいた時、部室のドアがカチャと開いた。

「ちーぃす。お?涼ちゃん来てたんやぁ」

⏰:08/06/04 01:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#138 [果樹]
上條先輩っ!!

部室に入ってきたのは上條先輩だった。


「あ、あのっ私帰ります!すみません!!」

私はすくっと立って、鞄とブレザーを持つと上條先輩と一度も目を合わせないで先輩の前を通りすぎ、部室を出る。

「え?涼ちゃん?!」

⏰:08/06/04 02:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#139 [果樹]
後ろでは戸惑った感じで上條先輩の声が聞こえたが、それを振り切るように私は走った。


――――――――・・・・


あのまま走って家に帰ってきた私は、着替えもしないままベッドにうつ伏せに倒れこんだ。

「どうしよう・・・」

ベッドに伏せても考えるのは、上條先輩のことと写真のことばかり。

⏰:08/06/04 02:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#140 [果樹]
なんで?

どうして私の写真があんなにたくさんあったの?

ねぇ、あなたはいつから私を見ていたの?

何で私は今まで気付かなかったんだろう・・・?


「私はどうしたらいいの・・・?」

⏰:08/06/04 02:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#141 [果樹]
結局一睡も出来ぬまま、枕を抱き締めながら私は朝を迎えた。


――――――――・・・・


「あ、涼子おはよ」

クラスに入ると一番に由香が手を上げて挨拶をしてくれた。

「おはよー・・・」

眠れなかったせいで目がショボショボする。

⏰:08/06/04 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#142 [果樹]
私は由香に挨拶してから席につく。

「あれ?今日は渡り廊下行かないの?」

由香が私の近くに来て、机に手をつき顔を覗き込んできた。

「うん。ちょっとね・・・」
うつ向く私に由香は不思議そうだったが、それ以上は聞いてこなかったので、由香に感謝した。

⏰:08/06/04 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#143 [果樹]
私はその日、一日中ぼーっとして過ごした。

もちろん授業なんか頭に入るわけもなく、頭は上條先輩のことで支配されていた。


――――――――・・・・


放課後

・・・帰ろう。

私は早々に帰る支度をして、鞄を持つ。

⏰:08/06/04 02:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#144 [果樹]
はぁと一つ溜め息をついて席を離れようとしたところで、「涼ちゃんおったー!!」とクラス中に響いた声に肩をビクッと震わせる。

「上條先輩!!」

教室の前のドアの見ると上條先輩が立っていた。

私は、考える余裕もなく鞄を持ち教室を飛び出した。

――――――――・・・・


「なんで追ってくるんですか―?!」

⏰:08/06/04 02:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#145 [果樹]
「涼ちゃんが逃げるからやろ?!」

うう・・・そんなこと言われたって。

教室を飛び出してから約10分。

私は校内をぐるぐる駆け回っている。

後ろからは上條先輩がついてくる。

やば、疲れてきちゃった・・・。

⏰:08/06/04 02:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#146 [果樹]
さすがに全力で駆け回っただけあって私はもう体力の限界だった。


「あ・・・れ?」

ダダダダダッという上條先輩の足音がいつの間にか止んだことに気付き、私は足を止めて後ろを振り返るが上條先輩の姿はない。

諦め・・・た?

荒くなっていた息を整えながらそんことを考えると胸がチクンと痛んだ。

⏰:08/06/04 02:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#147 [果樹]
なんか・・・痛い。


「涼ちゃん」

「へ?」

胸の辺りを擦っていたら、いきなり後ろから名前を呼ばれ振り向く前に脇の間から手が延びてきて、後ろからガッチリと掴まれてしまった。

「つかまえた」

声の主は上條先輩。

⏰:08/06/04 02:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#148 [果樹]
「きゃあ!上條先輩離してくださいー!」

上條先輩は先回りしていたらしい。

ジタバタと暴れるが、上條先輩の腕はなかなか剥がれない。

「嫌や。話し聞いてくれるまで離したらへん」

密接しているためか、耳に直接声が流れ込んで、体が熱くなる。

「聞きます聞きますからー!!」

⏰:08/06/04 02:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#149 [果樹]
そういうと手はパッと離れた。

私はなるべく上條先輩から距離を取ろうと、少し後ろに下がる。

すると、上條先輩に手首をパシッと掴まれてしまった。

「逃げたい気持もわかんねんけどな。とりあえず話聞いてや・・・」

そういう上條先輩の声はどこか震えていて、金色の髪の間から見える目が悲しそうに私を見ていた。

⏰:08/06/04 02:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#150 [果樹]
私は胸が締め付けられているような気がして、こくりと小さく頷くことしかできなかった。

「ありがとう」

そういうと上條先輩はふわっと笑って、私を人気の少ないB棟の特別教室へと誘導した。


――――――――・・・・


教室に入り、私は椅子に、上條先輩は机に腰を下ろし、私達は向き合う形に座った。

⏰:08/06/04 02:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#151 [果樹]
そして開口一番に上條先輩は昨日のことを口にした。


「ごめんな写真のこと・・・。リカから全部聞いてん。きもいやんなぁ。あんなん見せられたら」

うつ向いているため、上條先輩の表情までは分からなかった。

でも声は、私の胸を締め付けるくらい切ないものだった。

⏰:08/06/04 02:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#152 [果樹]
「俺な、実は涼ちゃんのことずっと前から知っとってん」

顔を上げた上條先輩が軽く笑顔を作る。

「ずっと前から・・・?」

「せや。そやなぁ・・・もう一年くらい前やったかな?毎朝毎朝渡り廊下にいて、なんや幸せそーな顔して目ぇキラキラさせてる涼ちゃんが印象的やってん。せやからついシャッター押してもうた」

⏰:08/06/04 02:13 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#153 [果樹]
上條先輩はその時のことを思い出すように遠くを見つめて話す。


「俺な、自分が綺麗と思うたもんはカメラに納めな気が済まん質やねん。せやから涼ちゃんを見たとき迷わずシャッターを押してん」

上條先輩の目が私を捕える。

胸が早鐘を打つように高鳴っているのがわかる。

⏰:08/06/04 02:14 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#154 [果樹]
なんで?

なんでこんなにドキドキするの?


「それからやったかな?俺は毎朝渡り廊下に行ってん。そこには必ず涼ちゃんが居って、相変わらずキラキラした目ぇで滉太のこと見とった」

少し悲しそうに上條先輩が笑う。

⏰:08/06/04 02:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#155 [果樹]
「涼ちゃんは気付かんかったと思うけど俺、涼ちゃんに話かける前からずっと俺、渡り廊下で昼寝しててんで?」

白い歯を見せて笑う上條先輩はどこかやっぱり悲しみを纏っていた。

なんでこの人はこんな悲しそうに笑うの・・・?

「まぁ、涼ちゃんの目ぇはいつも滉太に向いててんから気付かんでもしゃーないんやけど・・・」

先輩はまたうつ向いてしまった。

⏰:08/06/04 02:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#156 [果樹]
「・・・正直羨ましかってん」

「え・・・?」

ぼそりと言った上條先輩の言葉の意味が分からず、私は聞き返す。

すると先輩は顔を上げ、ふっと笑って、ゆっくり口を開いた。

「あんなキラキラした目ぇで涼ちゃんに見られてた滉太が俺は羨ましかってん。いつのまにか、その目で俺を見て欲しゅうなった」

⏰:08/06/04 02:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#157 [果樹]
「せんぱ・・・」

語尾まで言葉が続かない。
体が震える。


「せやからあの日涼ちゃんに声かけてん。赤の他人で終りたなかったから」

先輩は相変わらず笑っている。

悲しそうに、辛そうに笑っている。

⏰:08/06/04 02:17 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#158 [果樹]
「毎日毎日涼ちゃん撮ってる間にいつのまにかあんなに溜ってしもてんなぁ」

上を軽く見上げて上條先輩は、ははっと自潮ぎみに笑いを溢した。

「ごめんな。嫌な思いさせて。写真は気味悪いやろから全部捨てる」

私に向かって真剣な顔で言う先輩。

先輩の手が私の方に延びてきたが、先輩は途中でその手をピタッと止めて、握り拳を作ると、だらんと下に垂らした。

⏰:08/06/04 14:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#159 [果樹]
先輩の顔を見るとなんだか眉間に皺を寄せて眉毛を垂らし、顔を歪めていた。

「せんぱ・・・」

「ほんまごめん!」

机から下りた先輩が私の言葉を遮って頭を下げて私に謝る。

「顔・・・あげてください」

私は、震える声でそれだけ言う。

⏰:08/06/04 15:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#160 [果樹]
「最後に一つだけ聞いてくれるか?」


顔を上げた先輩は私をじっとみて真剣な顔で言った。

私は首を縦に振るだけで精一杯だった。

でも先輩はそんな私をみて優しく、ふっと笑うと椅子に腰を下ろした。

⏰:08/06/04 15:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#161 [果樹]
「あんな、俺は涼ちゃんが好きやねん。ずっとずっと好きやった。もしかしたらあの日、シャッターを切った時から好きやってんかもなぁ」

真っ直ぐ私を見つめていう先輩。

私の頬を目から溢れた涙が伝う。

「せんぱ・・・っ」

言葉にならない。

私は今あなたになんて返せるの?

⏰:08/06/04 15:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#162 [果樹]
「あぁ泣かんといてや?ごめんな?いきなし言うてもうて。返事はいらんから」

優しい声で言ってくれる先輩に私はさらに涙が溢れた。

「ほんまごめんな?」

そう最後に言って先輩は教室から出て行った。

最後にまた私に手を伸ばしたが、結局先輩が私に触れることはなかった。

⏰:08/06/04 15:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#163 [果樹]
「ふっ・・・うぅ・・・」

先輩が出ていってしまった教室の中では私の声だけ響いている。


私はなんで泣いているの・・・?

なんでこんなに胸が苦しいの?


「痛・・・っ痛いよぅ・・・グスッ・・・先輩・・・っ」

⏰:08/06/04 15:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#164 [果樹]
それすらもわからないまま私は泣き続けた。


――――――――・・・・


あれからずいぶん時が経った。

私は日課のごとく行っていっていた渡り廊下にも行かなくなった。


上條先輩と会うのが怖いんじゃない。

⏰:08/06/04 15:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#165 [果樹]
ううん、違う。

あたしは怖がってる。

でもそれ以上に、渡り廊下に行かない理由がある。


それは・・・必要を感じなくなってしまったから。

今まで、私が渡り廊下に行っていたのは冴木先輩を見たいがためだった。

でも今は、別に見たいと思わない。

⏰:08/06/04 15:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#166 [果樹]
なんで・・・?

それ以上に考えなきゃいけないことがあるから?

いくら考えても結局その答えは出なかった。


あの日、告白された日。

上條先輩は返事はいらないといった。

でもそんなわけにはいかない。

ちゃんと答えを出さなくちゃ。

⏰:08/06/04 15:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#167 [果樹]
でも考えれば考えるほど、足から黒い沼に埋まっていってしまうように、考えがまとまらなくなる。


私が答えを出せないまま明日、三年生は卒業式を迎える。

「涼子?うんうん唸ってどうしたの?」

上から声が聞こえたので、顔を上げると由香が心配そうな顔で立っていた。

「あ・・・別に」

⏰:08/06/04 15:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#168 [果樹]
「じゃないんでしょ?」

私は心配をかけまいと、平静を装った。

でも由香は私の言葉を遮り、顔をズイッと近付けてきて私の額を指で小突いた。

「最近渡り廊下にも行ってないし。なんか悩んでるっぽいし。心配してんだよ?これでも。話してよ」

優しく笑う由香になんだか私は癒された。

⏰:08/06/04 15:12 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#169 [果樹]
そして少しずつ上條先輩のことや自分の気持ちを話した。

由香は私の前の席に座って、私が話し終わるまで黙って聞いてくれた。



「つまり涼子は上條先輩に返事をしなければいけないんだけど、考えがまとまらなくて返事ができないのよね?」

私は由香の言葉にこくりと頷く。

⏰:08/06/05 00:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#170 [果樹]
「でも、冴木先輩を見ても今は前みたいにときめかないと?」

また一回頷く。

「んで、なんでこんな気持ちになってるのかわからないってことよね?」

核心をつく由香の言葉に私は何回も頷いて、教えてほしいという目で由香を見る。

すると由香は、はぁーと少し長い溜め息をついて、私と向き合って真剣な顔で私を見る。

⏰:08/06/05 00:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#171 [果樹]
「あのね涼子。心っていうのは頭にあるんじゃなくて、ここにあるのよ?」

“ここ”と言って由香が指したのは心臓がある左側の胸。


「頭にない自分の心をいくら頭で考えたってわからないの。素直に感じとった気持ち。それが自分の心なの」

優しい声色で言う由香。

⏰:08/06/05 00:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#172 [果樹]
素直に感じとったのが自分の心・・・。

私は由香の言葉を心の中で復唱する。


「目を閉じて一番に浮かぶ顔は誰?笑顔をみたいと思うのは誰?」

浮かぶ顔・・・?

「涼子はどうして上條先輩に告白された時、泣いたの?」

どうして・・・?

⏰:08/06/05 00:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#173 [果樹]
「心で感じて、一番強く想うのは誰?」

それだけ言うと由香はにっこり笑って席を離れた。


私は一人になった席で目を閉じる。


笑顔が見たいと思うのは・・・。

私があの時泣いたのは・・・。

一番強く想うのは・・・。

⏰:08/06/05 00:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#174 [果樹]
心で感じる人は・・・。



―――――っ!!!



ねぇ・・・。

私分かったよ。


――――――――・・・・


卒業式当日

「由香!私行ってくる!」

⏰:08/06/05 00:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#175 [果樹]
「うん!行っておいで」


卒業式が終わってから、私は急いで由香の元に向かいそう告げると、由香はにっこり笑って送り出してくれた。

ありがとう由香!



私は学校中を走り回った。

たった一人の・・・大切な人に会いたいから。

⏰:08/06/05 00:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#176 [果樹]
教室、渡り廊下、屋上、中庭、体育館。

ありとあらゆるところを回ったのにあの人はいない。

帰っちゃったとか・・・?

校門の方では三年生が学校との別れを惜しむ姿が見える。

私の頭に不安がよぎるが、私は頭をぶんぶんと横に振ってその考えを頭の片隅に追いやった。

⏰:08/06/05 00:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#177 [果樹]
そして必死に探してない場所を考える。

あと行ってないのは・・・。

そこである場所が頭に浮かんだ。

もしかしたら・・・!

藁にもすがるような思いで私はそこに走った。


――――――――・・・・


「先輩っ!?」

⏰:08/06/05 00:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#178 [果樹]
カチャっとドアを開け、中に勢いよく入るが、室内はガランとしていた。

ここにもいなかったらもうどこにいるかわからない・・・。

弱まりそうになる涙腺をしっかり引き締めて、私はもう一度校内を探そうとドアに手をかける。

その時、奥の部屋からカシャンと金属が落ちるような音が聞こえた。


「え・・・?」

⏰:08/06/05 00:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#179 [果樹]
まさか・・・!


私は恐る恐るそこに近付き、ドアノブに触れてそれをゆっくりと回す。

部屋から赤い光が漏れた。


「先輩・・・?」

「涼・・・ちゃん・・?」

中を覗くと、先輩が驚いた表情でこっちを見ていた。

⏰:08/06/05 00:53 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#180 [果樹]
「やっと見つけた」

私は中に入り、ドアを閉める。

狭い暗室に二人だけになった。

「見つけたって・・・え?」

先輩は固まったまま今の状況が上手く飲み込めていないようだ。
「告白の返事をしに来ました」

「え?あっ・・・ちょ・・ちょっお待って」

⏰:08/06/05 00:54 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#181 [果樹]
私が言うと先輩は物凄く慌てた感じで、動きも挙動不審になっている。

私はスゥっと息を吸い込む。


「私は・・・」


「ストップ!!」

いいかけた言葉を先輩の大きな声に遮られた。

私は一先ず黙ることにした。

⏰:08/06/05 00:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#182 [果樹]
「とりあえずここから出よか。お茶・・・入れたるさかいに」

「はい・・・」

先輩に促されるまま私たちは暗室を出て、隣の部屋で話をすることにした。


――――――――・・・・


「はい」

「ありがとうございます」

⏰:08/06/05 00:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#183 [果樹]
私の目の前に湯気のたったたお茶が出された。

私は喉の乾きを抑えるために一口、口にする。

暖かくておいしい。


「俺、返事はいらへんて言うたよね?」


私がなごんでいると先輩が真面目な顔をしながら聞いてきた。

先輩は私の方を見ずに、じっと机を見ていた。

⏰:08/06/05 00:57 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#184 [果樹]
「でも言いにきました」

コトッと机にお茶を置き、先輩の方に向き直る。

「あんま聞きたない・・・」

何かいじけるような感じで言う先輩がなんだか可愛く思えてしまう。



「先輩・・・私ね。たくさん考えました。でも考えても考えても答えが出なかった」

⏰:08/06/05 00:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#185 [果樹]
「なんであの時泣いたのかもわからなかったんです。




でもね・・・。やっと答えが出ました。





私は、あなたが・・・。」

⏰:08/06/05 01:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#186 [果樹]
.






「上條先輩が好きです」






.

⏰:08/06/05 01:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#187 [果樹]
あの時私が泣いたのは、あなたが泣きそうな顔をしていたか。

あなたが辛いと私も辛かった。

胸が苦しくて仕方がなかった。

だから涙が出たの。

先輩・・・私はね。


「あなたが好きです。上條先輩」

⏰:08/06/05 01:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#188 [果樹]
「ほ・・・んま?」

口を開いて間抜けな顔で私を見る上條先輩がなんだかおかしくて、私は笑いながらコクンと頷く。


「うっそんぷーとかなしやねんで?!ほんまにほんま?」

立ち上がって、先輩はみぶり手振りで何かを表現したい様だが、慌てているのか全然わからない。

⏰:08/06/05 01:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#189 [果樹]
「大好きですよ」

私が笑っていうと先輩はへたりと床に座り込んでしまった。


「上條先輩!?」

「あかん・・・。手ぇ震えて力入らへん・・・」

先輩の元に駆け寄ると先輩はへらっと笑っていた。

見ると先輩の手は本当に震えていた。

⏰:08/06/05 01:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#190 [果樹]
そんな先輩が私は何だか無償に可愛くてしかたがなくなった。


「ほんまに俺でええの?」

首を傾げて聞く先輩。

「何回言わせるんですか?私は上條先輩が―――・・・キャッ」

「わかった!もうそれ以上はええ!頭おかしなってしまう・・・」

⏰:08/06/05 01:22 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#191 [果樹]
“好きです”の言葉を言う前に私は上條先輩の体にすっぽりと包まれてしまった”

先輩・・心臓の音が速い・・・。


「俺も大好きや」

ダイレクトに耳に囁かれた言葉に、私の心臓は跳ね上がり、上條先輩と同じ速さで刻み始めた。

「上條先輩・・・」

⏰:08/06/05 01:23 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#192 [果樹]
「あ・・・!」

しばらくそのままの体勢でいたら、上條先輩がいきなり大きな声を出した。

「どうしたんですか?上條先輩」

何事かと先輩を見上げて聞くと先輩が私の方を見る。


「それ!」

「え?」

⏰:08/06/05 01:24 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#193 [果樹]
何・・・?

「その上條先輩っていうのやめようや」

上條先輩をやめる・・・?

「え?でも・・・」

“何て呼べば?”と言おうとしたら上條先輩がにっこり笑う。


「隼人」


「え・・・?」

⏰:08/06/05 01:25 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#194 [果樹]
「俺の名前は上條隼人。言うて?」

言うてって・・・。

先輩が無邪気に言うものだから断れなくなってしまった。


「隼・・・人」


小さく先輩の名前をつむぐ。

⏰:08/06/05 01:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#195 [果樹]
「もっかい」

私をじってみて言う先輩の顔が近い。

「隼人」

私はさっきより少し大きな声で言う。



「え・・・ちょ隼・・・っ」

「大好きや涼子」

再び引き寄せられ、耳に流れ込んできた優しくて愛しい声。

⏰:08/06/05 01:26 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#196 [果樹]
「あたしも・・・隼人が好き」




目を閉じた時、笑顔が見たいと思うのも、一番強く想うのも、私の心が求めているのも。

全部全部あなただけだよ?


隼人。

⏰:08/06/05 01:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#197 [果樹]
あ!そういえばこの間、隼人の部屋で大量の写真を見つけたの。

その写真ていうのがどれも私の横顔や後ろ姿ばっか。

しかもその中には、あの時写真部の部室で床に散らばったやつもあって・・・。


隼人を問いただしたら、「やってー涼ちゃんが写ってる写真やってんからなんや捨てるに捨てれんくて・・・」としゅんと小さくなってた。

⏰:08/06/05 01:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#198 [果樹]
「でもこれ、冴木先輩を好きな時のやつだよ?」と私がいうと隼人は、「それは確かに嫌やねんけどー。今は俺にその目ぇが向いてるさかいにええねん」と笑っていた。




ねぇ隼人・・・?


私の目があなたに向いてるのは今だけじゃないよ?

⏰:08/06/05 01:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#199 [果樹]
10年先も20年先もずっとずっと私の目はあなたに向いているよ。

これからもたくさんの思い出をそのカメラに刻もうね。

カシャッ




【レンズ越しの恋】

―End―

⏰:08/06/05 01:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#200 [果樹]
父に呼ばれて居間に行くと、知らない男の人がソファに座り父と話をしていた。


「つかさ。今日からお前に勉強を教えてくれる時田先生だ。挨拶しなさい。」

ああ新しい人・・・。

私はぺこっとお辞儀をして簡単な挨拶を済ます。

すると男の人は、にこっと綺麗な顔に笑みを作った。

⏰:08/06/05 14:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#201 [果樹]
「こんばんは、つかさちゃん。僕は時田総一郎。よろしくね。」


これがこれから私の家庭教師となる時田総一郎との最初の出会いだった。




Story 3

【自由に憧れた鳥】

⏰:08/06/05 15:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#202 [果樹]
「おい。・・・・おい!」

煩い・・・。

「呼んでんだから返事くらいしろよ」

私は、はぁと溜め息をつき、シャーペンを机に置いて後ろを振り替える。

「お言葉ですが時田先生。私の名前は“おい”じゃありません」

さっきから煩く話しかけてくるこの男は、一週間前私の家庭教師になった時田総一郎。

⏰:08/06/05 15:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#203 [果樹]
椅子に座って足と腕を組んで、とても偉そうにしている。

これが家庭教師の姿なのだろうかと神経を疑う。

「じゃあつかさ」

しかも馴れ馴れしい。

「呼び捨てにしないでください」

私はばっさりと時田先生の言葉を切り捨て、また机に向かって勉強を始める。

⏰:08/06/05 15:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#204 [果樹]
「ったく可愛くねー女だな」

「あなたに可愛いとか思われたくありません」

ていうか教える気がないなら出ていって欲しい。

「お前さぁ顔は綺麗なんだから笑えばいいのに」

時田先生は私の横まで椅子を持ってきて、顔を覗き込んできた。

「先生、それは勉強に関係ないと思いますが」

⏰:08/06/05 15:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#205 [果樹]
相手をしても仕方がないので、私は時田先生と目を合わせないでひたすら目の前の問題を解いた。

「つーかお前さ。頭良いんだから家庭教師なんかいらなくね?」

今のは家庭教師としてあるまじき言葉だろう。

私は、また溜め息をつくと時田先生をちらりと見る。

「先生何も知らないんですね」

⏰:08/06/05 15:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#206 [果樹]
私が言葉を掃き捨てるように言うと先生は「何を?」と言って全く分からないという顔をした。

だから私は、問題を解きながら淡々と言葉にする。

「家庭教師っていうのは建前です。父の目的は私の監視ですから」

「監視・・?」

先生は眉間に皺を寄せ、怪訝な顔をする。

⏰:08/06/06 00:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#207 [果樹]
私は、手を休めることなく問題を解きながら先生の疑問に答える。

「私は父が決めた道を歩んで将来は父の跡を継ぐ。全て決められた事柄を私は実行するだけ。あなたは私が変な行動をしないように監視するんです」

淡々と述べる私に、先生は更に眉間に皺を寄せて、私を見てくる。

「お前はそれで満足なのか?」

⏰:08/06/06 00:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#208 [果樹]
満足・・・?

私はついふふっと笑ってしまった。

「私に自由はありませんから・・・」

満足だなんて一度も思ったことない。

いくら高いお洋服やブランド品を買って貰っても心までは満たされない。

一人で買い物も行けず、遊びに行くことも出来ない。

⏰:08/06/06 03:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#209 [果樹]
ただ籠の中でじっとして、父に飼われている鳥そのもの。

いくら籠の中で羽ばたいたって飛べるわけもなく、ただただ必死にもがくだけの滑稽な姿。


自由になりたいって何度も思った。

でもそれは叶わない夢。
籠の中で飼われている鳥は、籠の中から出ることを許されない。

⏰:08/06/06 03:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#210 [果樹]
「自由が欲しいなら俺がくれてやるよ」

そう言ってにっと笑った先生は、いきなり椅子から立ち上がると、テラスに通じる窓を開ける。

8月とはいえ、少し涼しい風が部屋の中に入ってくる。

一瞬風の冷たさに驚いて目を瞑る。

目を開けると、先生はテラスの手摺に片足をかけていた。

⏰:08/06/06 03:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#211 [果樹]
「え?ちょ・・先生何してるんですか?!危ないですよ!」

私はありえない光景に驚き、止めるために近付こうとした時、先生が振り返った。

「あれ?心配してくれんの?」

「ばっばかだって言ってるんです!」

にっと笑って言う先生に対して、私は何故か顔が熱くなった。

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#212 [果樹]
先生は、そんな私を見てふっと笑うとテラスから飛び下りた。

「きゃっ・・せ、先生?!」

私は急いでテラスに出て下を覗くと先生が背中を向けて立っていた。

私は先生が生きていたことに胸をほっと撫で下ろす。

「おいで。」

⏰:08/06/06 03:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#213 [果樹]
先生はさっきと同じ顔で笑って両手を広げる。

「だ、だめ・・・いけません。」

私はここから出られない・・・。

ぎゅっと目を瞑り視界から先生を消す。

それでも耳から先生の声が入ってくる。

「お前の知らない世界を俺が見せてやるよ。」

⏰:08/06/06 03:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#214 [果樹]
「―――――っ!!」

どうしてこの人はこんなことをいうのだろう・・・。

私はいつの間にか瞑っていた目を開けて先生の方を見ていた。

ふらっと先生に導かれるまま行ってしまいそうになった時、部屋のドアを叩く音が聞こえた。

「お嬢様?どうかなさいましたか?お嬢様?!」

⏰:08/06/06 03:06 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#215 [果樹]
ドンドンと鳴り止まない音が私の足枷を重くする。

「つかさ、おいで。」

下では先生がまだ両手を広げたまま笑顔でこっちを見ている。

あなたは私を解放してくれる・・・?

優しく笑う先生に全てを引き寄せられるように、私はテラスから先生の腕の中へ飛び下りた。

⏰:08/06/06 03:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#216 [果樹]
先生は私をしっかりと受け止めると、「じゃあ行くか!」と言って肩に担いで走り出した。


――――――――・・・・


家の門の前に出るとバイクが置いてあった。

⏰:08/06/06 03:07 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#217 [果樹]
「これは・・・?」

「俺の愛車♪よいせっ・・と」

バイクにすとんと下ろされ、かぽっとヘルメットを被せられた。

「へ?あの・・・」

先生もバイクに跨りエンジンをかける。

「よし。ちゃんとつかまってろよ?」

⏰:08/06/06 03:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#218 [果樹]
ちらっとこっちを見てそう言うと、先生は私の手を引いて腰周りにしがみつかせた。

「え?ちょっキャー!!」

私がしがみついたのを確認して、先生はバイクを走らせた。


――――――――・・・・


コンコン

⏰:08/06/06 03:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#219 [果樹]
「入れ」

低く唸るような声で革張りの黒い椅子に座った人物が喋る。

カチャと重々しい木の扉を開け、スーツ姿の男が入ってきた。

男は扉の前で一礼をして、革張りの椅子に座り背を向けている人物に向かって、目をキッと少し細める。

「申し訳ありません旦那様。お嬢様を見失いました。」

男はそのまま深く頭を下げる。

⏰:08/06/06 03:09 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#220 [果樹]
革張りの椅子に座り、背を向けている人物はふぅーと長い溜め息を吐く。

「探し出せ」

低く厳しい声で言った革張りの椅子に座る人物に、「直ちに」と言ってまた一礼するとスーツ姿の男は部屋を出ていった。

「逃げても無駄だ。つかさ」

部屋の中には革張りの椅子に座った人物の低く唸る声だけが響いた。

⏰:08/06/06 03:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#221 [果樹]
.
――――――――・・・・


「先生!どこに向かってるんですか!?」

「たのしいところ♪」

バイクで風を受けながら大声で叫ぶと、先生も叫んでいたが、声はギリギリで私の耳に届くくらいだった。

楽しいところ?
ってどこ?

⏰:08/06/07 01:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#222 [果樹]
私は走ってる最中、先生が楽しいと言った場所をずっと想像して過ごした。


――――――――・・・・


「着いたよ」

大きなビルの駐車場に入り、エンジンが止まり先生がヘルメットを取って、振り返る。

「何ですかここ?」

私はヘルメットを取って先生に聞く。

⏰:08/06/07 01:35 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#223 [果樹]
「んー・・・。アミューズメントパーク?」

「アミューズメントパーク・・・」

私は首を傾げ、周りを見る。

ビルの入口の方にボーリング、カラオケ、ビリヤードなどと赤い光が点灯している。

「まぁ入ろうぜ」

先生はバイクを降りて私に笑いかけて先生はビルの入口に向かって歩いていく。

⏰:08/06/07 01:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#224 [果樹]
「は、はぁ」

私もバイクを降り、先生の後についていく。


――――――――・・・・


「うっわぁ・・・」

中に入ると思わず口から感嘆の声が出る。

「こういう所は初めて?」

口が開きっぱなしで周りを見る私に、先生がにやっと笑いながら顔を覗き込む。

⏰:08/06/07 19:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#225 [果樹]
先生は嫌味で聞いてきたのかもしれないが、私はその言葉に腹立たしさを感じることもなく、こくこくと首を縦に振るだけしか出来なかった。

「そっかそっか♪じゃあまずは・・・行っとく?」

うんうんと嬉しそうに先生は頷くと、ある方向を指差して歯を見せて笑った。

先生が指差す方を見ると、“ボーリング”と書いてあった。

⏰:08/06/07 19:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#226 [果樹]
.
――――――――・・・・


「きゃー!!」

全て倒れたピンに感激した私は、つい大きな声で叫んでしまった。

「おお!うまいうまい」

先生は椅子に座って私の方を見ながら拍手をした。

「もう一回投げていい?」

私は先生の方に振り返って、興奮が冷めやらぬうちに言葉に出す。

⏰:08/06/07 19:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#227 [果樹]
「お好きにどうぞ」

「やったぁ」

先生は私を見てクスクス笑っていたが、私は万歳をして喜んだ。


ゴロゴロゴロ・・・ガコーン

「あーおしいっ」

8本しか倒れなかったピンを見て、私は眉尻を下げる。

しかも奥の両端が残ってしまったからどちらかに絞らないと倒せない。

⏰:08/06/07 19:32 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#228 [果樹]
「じゃあ俺がスペアとってやるよ」

「え?」

先生が椅子から立ち上がり、私の方に来て肩をポンっと叩いた。

「まぁ見てなって♪」

そう言って先生は自分のボウルをタオルで研くと位置について構えた。


ゴロゴロゴロ・・・ガコーン

「先生すごーい!」

⏰:08/06/07 19:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#229 [果樹]
私は感嘆の声と拍手を先生に向ける。

ピンは見事に二つ倒れた。
もちろんスペアだ。

「まぁな。てゆうかその先生っていうのやめない?」

椅子に座っていた私の方に向かって来ながら先生がいきなり口にする。

「え・・・じゃあ何て呼べば?」

「んー・・・」

⏰:08/06/07 19:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#230 [果樹]
椅子に座った先生に首を傾げて聞くと、先生は腕と足を組み、しばらく目を瞑ってから「総でいいよ」と言った。

「総?」

私は首を更に傾げて先生に言葉を返す。

「俺の名前が総一郎だから総。俺もつかさって呼ぶからさっ」

「はい」

にっこりと笑う先生、いや総に私も笑いかけ、お互い名前で呼ぶことを承諾した。

⏰:08/06/08 01:21 📱:PC 🆔:☆☆☆


#231 [果樹]
「そんじゃ投げるか」

そう言って立ち上がる総に私も心の中で“よし!”と言って立ち上がる。

「先生、じゃない総には負けませんよ?」

総を見上げて言う私に総はにやりと笑った。


――――――――・・・・


「総やっぱり強いですね!」

「ん?そうか?お前も初心者の癖にすごかったけどな」

⏰:08/06/08 15:10 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#232 [果樹]
充分ボーリングを遊んだ私たちは、ボーリング場を出ながら話す。

私が総の強さを話すと総はにやりと笑って顔を覗きこんできた。

「お世辞なら結構です」

「いやいやマジで♪」

プンっと顔を背けると総は白い歯を見せて笑った。

総のこの顔を見ると、なんだか本当に思えてくるから不思議だ。

⏰:08/06/08 15:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#233 [果樹]
「次はアレにするか」

「ビリヤード・・・ですか?」

「ああ」

総が指差す方向にはビリヤードの文字と台が並べてあった。

「私ビリヤードも初めてですよ?」

ここにあるものはきっと私にとって全部はじめてのものばかりだろう。

そう言うと総はにっと笑ってピースのサインを送ってきた。

⏰:08/06/08 16:58 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#234 [果樹]
「大丈夫だって♪俺が教えてやるから」

「はい!」

そういった総に私も笑って返事をして、ビリヤードの方に向かった。


――――――――・・・・


「くはーっ!遊んだなぁ」

「そうですね」

ビルを出てバイクに向かう途中、ニカッと笑う総に、私はクスクス笑う。

⏰:08/06/08 17:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#235 [果樹]
「楽しかったか?」

「はい!こんなに楽しかったの初めてです!」

「そうかそうか♪」

覗き込んできた総に、満面の笑みで言うと総も満面の笑みで笑った。

「じゃあ帰るか」

「え・・・?」

帰るってどこに・・?と心の中で総に問いかけると総は、ポンポンと私の頭を撫でた。

「心配すんな!とりあえず俺の家でも行くか」

⏰:08/06/08 17:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#236 [果樹]
「総の家?」

「ああ。ほら乗れよ」

バイクに跨ると総にまたカポッとヘルメットを被せられた。

そして総もバイクに跨りヘルメットを被ると、私たちはそうの家に向かって走り出した。


――――――――・・・・


「到着」

⏰:08/06/08 17:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#237 [果樹]
バイクが止まり、総がヘルメットを取り、バイクから降りる。

「ここが総の家?」

私もヘルメットをとってバイクから降りる。

周りはもう暗くてわからなかったが、大きなマンションの前にいることはわかる。

「ああ。ほら行くぞ」

「あっはい!」

⏰:08/06/08 17:02 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#238 [果樹]
総はバイクの鍵をクルクルと指で回しながらマンションに向かって歩いていく。

私もその後を追ってマンションに入った。


エレベータを降りて、角のドアの前まできたところで総の足が止まる。

総はジーパンのポケットから鍵を取り出して、そのドアの鍵穴に鍵を差し込む。

⏰:08/06/08 17:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#239 [果樹]
ガチャガチャ・・・キィ


「入らないの?」

ドアを開けて中に入った総がドアの前で立ち尽くす私に、にやっと笑う。

「お・・・おじゃまします・・・」

私は、軽くお辞儀をして、部屋に入る。

「その辺適当に座っとけ」

そういってリビングを差してから、総はキッチンに引っ込んだ。

⏰:08/06/08 17:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#240 [果樹]
「はい・・・」

私は総に言われた通りリビングに向かった。

総の部屋の中はとてもすっきりしていた。

一人暮らしにしてはずいぶんと広い部屋だ。

黒を基調に無駄なものは一切なく、家具も少くなかった。

生活に困らないのかしら?
それに、少し寂しい感じがする・・・。

⏰:08/06/08 18:41 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#241 [果樹]
テーブルの前に座り、部屋の中を見回しているとコトッと目も前にマグカップが置かれた。

「ほい、どうぞ?」

見上げると総が笑ってマグカップを口に運んでいた。

「ありがとうございます・・・」

私もそれに口つけて、一口飲む。

「総は一人暮らしなんですか?」

⏰:08/06/08 18:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#242 [果樹]
「まぁな」

私の隣に胡坐をかいて座った総に聞くと、総は少し寂しそうに言った。

何だろう、この感じ。

見に覚えがある気がする。


「てゆうかお前さ。男の部屋にいるのに危機感とかないの?」

「へ?」

⏰:08/06/08 18:46 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#243 [果樹]
思考の世界に行っていた私は、総の言葉の意味がいまいち理解できなかった。

「俺だって一応男なんだぜ?危ないんじゃないの?」

「――――っ!」

にやりと笑った総の顔で、私はやっと意味がわかった。

顔が赤くなるのを感じてずざざざざーっと後ろに下がり、総との間に距離をとる。

⏰:08/06/08 18:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#244 [果樹]
そうだった!

総は男の人で、男の人は狼で、それでそれで、私はバイクやらなんやらで総にたくさん抱きついちゃっててっ!!

ど、どうしよう・・・っ。

いまさらになって恥ずかしくなってきたっ!


「プッ・・アハハハハハ」

「そ・・・総!?」

いきなり笑い出した総に、私は意味がわからず目を大きく開いて総を見つめる。

⏰:08/06/08 19:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#245 [果樹]
すると総は、涙を溜めた目で私を見て、「冗談だよ冗談。何もしねぇから安心しろよ」といってポンポンと私の頭を撫でる。

「・・・・・・・」

遊ばれた・・・。
完全に遊ばれた。

なんだか私は総に無償に腹が立ち、顔を背ける。

「ククッ・・・とりあえず疲れたから風呂入って寝るか」

そんな私を喉の奥で笑って、総は立ち上がる。

⏰:08/06/08 19:47 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#246 [果樹]
「お、お風呂!?」


総の言葉に私はまた目を見開いて、総を見る。

しかし総は、そんなこと気にもせず部屋の奥のドアの前に行き、中に入った。

そしてしばらくして総は手に何かを持って戻ってきた。

「寝る服貸してやっから先に入ってこいよ」

「あ、はい・・・」

差し出されたのは洋服。

⏰:08/06/08 19:48 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#247 [果樹]
総が部屋に行ったのはこれをとりに行くためだったんだ。

私は総の手からそれを受け取り、総に案内されるままお風呂場に行った。



カチャ・・・パタン

私は風呂場のドアを閉めると、ドアにもたれかかってズルズルと腰を下ろした。

総が変なこと言うから焦っちゃったじゃないの。

⏰:08/06/08 19:49 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#248 [果樹]
心配する必要なかったのかも・・・。

なのになんだろう。

がっかりする気持ちとほっとする気持ちが一緒にあるのは・・・。

私は少し考えたがわからなかったので、お風呂に入ることにした。


――――――――・・・・


「お風呂お借りしました」

⏰:08/06/08 19:50 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#249 [果樹]
「おう!じゃあ疲れてるだろうからベッド使って先に寝とけ」

私が出ると総はすぐにお風呂場に向かった。

私は総に言われたとおり、リビングの部屋に置かれているベッドに横になる。


総はなんでこんなに広い家に一人で住んでいるんだろう?

確か総は大学4年生で22歳のはず。

22歳ってそんなにお金を持っているものなの?

⏰:08/06/08 19:56 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#250 [果樹]
私と4つしか違わないのに。

総ってよくわからない・・・。

そんなことを考えていたらカチャっとドアが開く音がして、総がお風呂場から出てきた。

そのままベッドに入ってくるのかと思ったが、総は床に寝転んでしまった。


「・・・・・・・」

まさか床で眠るつもり?

⏰:08/06/09 05:11 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


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