・・万華鏡・・
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#4 [果樹]
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Story 1
【桜咲クミライ恋ユメ】
.
:08/05/28 20:56
:P902iS
:☆☆☆
#5 [果樹]
「もう桜も散ったのか・・・」
彼女と出会ったのは、この桜が満開に咲いていた頃だったな・・・。
・・・・・・・・・・・・
桜が咲き出して、あー春だなぁなんて思う4月。
高校の入学式で、俺は彼女に出会った。
:08/05/28 21:04
:P902iS
:☆☆☆
#6 [果樹]
入学式。
正直かったるい。
聞きたくもねぇジジババの話を延々と一時間も聞かされるなんて、苦痛以外のなにものでもない。
きっと全校生徒がそう思ってるはずだ。
俺は、サボる場所を見つけるために歩いていたら、学校の隅に追いやられるように咲いていた桜を見つけた。
:08/05/28 21:06
:P902iS
:☆☆☆
#7 [果樹]
ちょーどいいや!
桜の下で一寝することに決めた俺は、そこに近付く。
しかし先客がいたようだ。
桜の木に寄りかかる様にして座る少女。
黒く長い髪が風が吹く度に揺れる少女は、制服の感じからいって新入生だろう。
まだ着慣れない感じと制服の新品具合いがそれを物語っていた。
ちぇ、ここは駄目か。
俺は別の場所を探そうと回れ右をしようとした時、桜の方から声が聞こえた。
:08/05/28 21:10
:P902iS
:☆☆☆
#8 [果樹]
「あなたもサボリ?」
一瞬桜が喋ったのかと思ったが、それは紛れもなく少女の声。
澄んだ綺麗な声は、まだ世の中の醜さも何も知らないようだった。
俺は回れ右をしようとした足を止めて、少女の方に向き直る。
「まぁな。昼寝の場所取られちまったけど」
:08/05/28 21:12
:P902iS
:☆☆☆
#9 [果樹]
俺はちょっと意地悪く言う。
しかし少女はそれに気を悪くした感じもなく笑っている。
「あ、ごめんなさい。よかったら隣どうぞ。別にお昼寝の邪魔するつもりはないから」
寝れるならなんでもいーやと思った俺は、少女の誘いを受ける事にした。
:08/05/28 21:12
:P902iS
:☆☆☆
#10 [果樹]
ごろんと桜の下の芝生に寝転ぶと空よりも鮮やかな色の桜が目に飛込んできた。
暖かい陽気にはうってつけのそよ風と桜の花の隙間からたまに溢れる日射しが気持ちよかった。
ふと少女に目線を移すと少女はさっきと変わらず木に寄りかかったまま本を読んでいた。
「なぁ、あんたさっきから何読んでんだ?」
俺の声に気付いたようで少女もこっちを見たが、その顔は何だか笑っている。
:08/05/28 21:49
:P902iS
:☆☆☆
#11 [果樹]
「寝ないの?」
「う、うるせぇな!聞いてんだから答えろよ!」
少女につっこまれた俺は、軽く動揺してしまった。
「詩よ」
「詩?なにそれ」
「うーん。分かりやすくいうと自分の思った事を文章にしたもの・・・かな?」
少女は説明してくれたが、詩を読んだことのない俺にはいまいちよく分からなかった。
:08/05/28 21:49
:P902iS
:☆☆☆
#12 [果樹]
「ふーん。面白いの?」
「読んでみる?」
「いい」
笑顔で勧める彼女に俺は寝返りをうち、背中を向けて答えた。
「そう?以外とハマるかもよ?」
後ろでクスクスと笑う彼女。
そんなのに俺がハマるわけがない。
俺が今度こそ眠りにつこうと目を閉じて数分。
:08/05/28 21:50
:P902iS
:☆☆☆
#13 [果樹]
体育館の方から生徒のざわつきが聞こえた。
「あ、始業式終わったみたい。それじゃあさようなら」
パタンと本を閉じた声に俺は反応し、上体を起こすと少女は校舎に歩いていってしまった。
「あっ・・・。」
はぁ。名前くらい聞いとけってんだ俺のバカ!
しょうがねぇ俺も教室に行くとするか。
俺は軽く伸びをして、自分の教室へと向かった。
:08/05/28 21:51
:P902iS
:☆☆☆
#14 [果樹]
教室に行くと、中は入学式独特のざわつき感があった。
まぁ廊下も大概煩かったけど・・・。
俺は黒板に貼ってあった座席表で自分の席を確認し、椅子に座ると机に突っ伏した。
女どもの甲高い笑い声や男たちのくだらない話声を聞かないように目を閉じて、さっきの桜の木の下で会った少女のことを思い出した。
:08/05/29 05:14
:P902iS
:☆☆☆
#15 [果樹]
綺麗な子だった。
純粋そうで儚げで、でもどこか影のある子。
やっぱり名前聞いときゃよかった。
また会えるかな・・・。
「千晃ー!お前入学式サボったろー!」
名前を呼ばれて顔を上げると目の前の席に馴染みの顔があった。
「あれ猛。お前いたの?」
:08/05/29 05:16
:P902iS
:☆☆☆
#16 [果樹]
目の前のこいつは、木田猛。
中学からつるんでる奴で、明るくていい奴なんだ。
高校が一緒なのは知ってたけどまさかクラスまで一緒だとは・・・。
「“いたの?”じゃねー!俺はなぁ聞きたくもねぇジジババの話を延々と1時間も聞かされたんだぞ?」
「あー悪かったって」
煩い猛を俺は適当にあしらう。
:08/05/29 05:16
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:☆☆☆
#17 [果樹]
「つかさーお前始業式の間どこにいたんだ?」
切り替えの早さが猛のいいところだ。
「どーせどっかでサボってたんだろ?」
「あー・・・まぁな」
俺の頭の中に少女の顔が浮かぶ。
「なんだなんだ?なんか楽しいことでもあったのか?」
「あったところでお前には教えてやらねーよ」
:08/05/29 05:18
:P902iS
:☆☆☆
#18 [果樹]
「なんだよー。千晃のいけずぅ」
ベッと舌を出すと猛は気色悪い声をだした。
「やめろ。気持ち悪い」
俺は猛から遠退くように椅子の背持たれに身体を預ける。
「あ、つーか聞いて聞いて。耳より情報♪」
「耳より情報?」
「おぅ!聞きたい?」
:08/05/29 05:19
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:☆☆☆
#19 [果樹]
猛は目を爛々と輝かせて聞いてきた。
「つーか話したいんだろ?」
にひひと笑う猛。
これは話したくてうずうずしている顔だ。
「それがさー今年の新入生にすんげー美少女がいるらしーんだ!」
「美少女?くだらねぇ」
女ってゆーのはどうも煩くて敵わない。
:08/05/29 05:20
:P902iS
:☆☆☆
#20 [果樹]
「まぁそう言うなって。俺もチラッとしか見てねぇんだけど確かにあれは美少女だった!」
「ふーん」
「黒髪サラサラの可愛い子だったぜ」
「黒髪ねぇ」
一瞬だけ桜の下で出会った少女が脳裏よぎった。
まさかな・・・。
:08/05/29 05:21
:P902iS
:☆☆☆
#21 [果樹]
「ん?どした」
「いや・・・なんでもねぇ。」
「ふーん。あ担任きた。そんじゃまた後でな!」
猛は自分の席に戻っていった。
:08/05/29 05:22
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:☆☆☆
#22 [もも]
次の日
猛と昼飯を食った俺は、昼寝のために桜の木のところまでやってきた。
「あ」「あ」
昨日と同じ場所にこれまた昨日と同じ少女がいた。
「昨日はドーモ」
「こちらこそ」
俺は軽く挨拶をして、また昨日と同じところに寝転んだ。
:08/05/29 13:03
:P902iS
:☆☆☆
#23 [もも]
「随分この桜が気に入ってるみたいね」
少女が桜を見上げながら言う。
「あ?あーまぁな」
少女の問掛けに俺は曖昧な返事を返す。
ちらりと少女を見るとまた本を読んでいた。
「また詩読んでんのか?」
「うん!」
満面の笑みで答える少女。
:08/05/29 13:04
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:☆☆☆
#24 [もも]
「本当に好きなんだな。その本」
「え?」
「昨日も同じの読んでただろ?」
俺の言葉に少女はにっこりと微笑んだ。
「覚えててくれたんだ」
「べ、別に・・・」
俺は何だか顔が赤くなっている気がして寝返りをうって少女に背中を向けた。
:08/05/29 13:04
:P902iS
:☆☆☆
#25 [もも]
「そんなに好きなのか?」
俺は背中を向けたまま聞く。
「うーん・・・どうだろ?共感出来るの。だからつい読んじゃって」
「ふーん」
少女の顔は見えなかったが声は何だか寂しそうだった。
キーンコーンカーンコーン
:08/05/29 13:05
:P902iS
:☆☆☆
#26 [もも]
授業開始5分前を告げるチャイムが鳴った。
「あ、授業始まっちゃう。それじゃあさようなら」
「あ・・・」
俺が振り返った時には、少女はもう校舎に向かって歩いてしまっていた。
また名前聞けなかった。
全く・・・俺は何してんだ。
:08/05/29 13:06
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:☆☆☆
#27 [果樹]
自分の不甲斐無さに嫌気が差しながら俺は教室へと戻った。
――――――――・・・・・
「千晃ー。どこ行ってたんだよー」
「ヤボ用」
俺はガタンと椅子を引いて座ると、机に突っ伏した。
俺は授業なんか耳にも入らず、ずっと少女のことを考えて一時間過ごした。
:08/05/29 18:10
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:☆☆☆
#28 [果樹]
「なぁ猛」
俺は休み時間に目の前で漫画を読んでいる猛に声をかけた。
猛は「んー?」と生返事を返す。
「この間お前が言ってた美少女って・・・」
“美少女”のフレーズを出すと猛は読んでいた漫画を閉じ、身を乗り出してきた。
「お?ついに興味持ったかぁ?」
:08/05/29 18:11
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:☆☆☆
#29 [果樹]
「あー・・・まぁな」
適当に返した答えにも関わらず猛はうんうんと頷いている。
「それでこそ男だ!あ、そういやー美少女について新情報だぞ」
「ん?」
表面上は関心の無さそうに聞くが内心では、聞きたくて仕方がなかった。
「美少女の名前は水嶋咲良チャン♪かんわいー名前だろぉ」
:08/05/29 18:11
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:☆☆☆
#30 [果樹]
「咲良・・・ねぇ」
俺が名前を口にすると、猛はにんまりと怪しい笑みを浮かべる。
「なんだなんだぁ?恋の予感か?」
「さーあ。どうだろうな?」
恋か・・・。
そんなんじゃないだろ。
俺はこの時は、そう思っていた。
:08/05/29 18:12
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:☆☆☆
#31 [果樹]
すいません(。_、

)
上の名前で“もも”ってなってますがこちらも果樹です!!
ほんとややこしくてすみません

:08/05/29 18:13
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:☆☆☆
#32 [果樹]
次の日の昼休み
また桜の木のところにいくと例の少女は、また木に寄りかかるようにして本を読んでいた。
俺は何も言わずに側へ行き、また例の如く寝転ぶ。
「あんたの名前、咲良っていうんだろ?」
俺が唐突に聞くと少女は本から俺に視点をずらし驚いたようにこっちを見ていた。
「そうだけど。何で知ってるの?」
:08/05/30 15:06
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#33 [果樹]
あ、やべぇ。
いきなり名前知ってたら変だよな。
でも口にしてしまったものは仕方がない。
俺は正直に答える。
「だちに聞いた」
すると少女、いや咲良はあの時と同じように気を悪くした様子もなくにこっと笑った。
「ふふッ・・・随分情報通のお友達なのね」
「ただのおせっかい野郎だ」
:08/05/30 15:07
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:☆☆☆
#34 [果樹]
俺が悪態をつくと咲良はクスクス笑ってまた本に目を戻した。
何分くらいたった時だろう。
咲良が突然口を開いた。
「あなたは?」
「え?」
俺は桜を見ながらぼーっとしていたのでその言葉を聞き流してしまった。
:08/05/30 15:09
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:☆☆☆
#35 [果樹]
ばっと上体を起こし咲良の方を見るとふわっと柔らかい笑顔で笑っていた。
「あなたの名前はなんていうの?」
「中村・・・千晃」
何故か俺の顔に身体中の熱が集まってくる気がした。
「ふふッもう何度も会ってるのに自己紹介するのが今日だなんてね」
咲良はそういいながらまたクスクスと笑っていた。
:08/05/30 15:10
:P902iS
:☆☆☆
#36 [果樹]
それから俺は昼休みになると必ず桜の木の下へ行った。
咲良は俺が行くより先に必ずいて、いつのまにか咲良に会うのは俺の日課になっていた。
――――――――・・・・・
「ちっあっきくーん♪」
猛がなんだか楽しそうに俺の元へスキップでやってきた。
:08/05/30 15:12
:P902iS
:☆☆☆
#37 [果樹]
「あ?ていうか猛きしょい!」
おれは眉間に皺を寄せ、猛を見るがそんな俺はお構い無しに猛はにまにま笑っている。
気味が悪い。
「そんなこと言っていーのかなー?俺ばっちりこの目で見ちゃったもんねー♪」
「何を?」
にまにま笑いを止めない猛に呆れた顔で聞き返す。
:08/05/30 15:13
:P902iS
:☆☆☆
#38 [果樹]
「桜の木の下での噂の美少女との密会♪」
「なっ・・・!」
猛のいきなりの言葉に俺はつい椅子から立ち上がって猛を見るが、猛は相変わらずだ。
「まぁまぁ落ち着けって」
とりあえず俺は椅子に座り直して頬杖をつくと猛と目を合わせないようにした。
:08/05/30 15:14
:P902iS
:☆☆☆
#39 [果樹]
「なるほどなー。美少女に会うために千晃は昼食うと必ず消えてたんだなー」
「うるせーな。別にいーだろ」
猛の言葉につい俺は、喧嘩腰っぽい口調になってしまった。
「やだなー千晃。俺は応援してんの♪千晃モテんのに今まで女作んなかっただろ?だから美少女が千晃の彼女になればいーなぁって♪」
:08/05/30 15:17
:P902iS
:☆☆☆
#40 [果樹]
あー確かに今まで複数なら女はいたけど一人の女と付き合うってのはなかったなー。
猛の言葉につい納得してしまう。
いや待てよ。
「つか咲良は別にそんなんじゃねぇし」
「咲良とか呼んじゃってるくせに何言ってんだか・・・。まっ頑張れよ♪」
猛は俺の肩をぽんぽんと叩いて席に戻って行った。
:08/05/30 15:18
:P902iS
:☆☆☆
#41 [果樹]
昼休み
弁当を食い終わってガタンと席をたった俺に、猛は顔を上げた。
「あれ?千晃どこに・・・ああ!愛しの咲良チャンのとこ?」
分かっているくせに聞いてくるところがわざとらしい・・・。
「うるせー」
「いってらっしゃーい♪」
:08/05/30 23:28
:P902iS
:☆☆☆
#42 [果樹]
ぶんぶんと手を振って見送る猛を無視して俺は桜の木へと向かった。
――――――――・・・・・
「あれ・・・?」
桜の下まで来た俺は、いつもと違うことに気付いた。
咲良がいない。
珍しいな咲良が俺より早く来てないなんて。
:08/05/30 23:29
:P902iS
:☆☆☆
#43 [果樹]
いつもは必ず俺より早く来ているのに、と少し不安になったが、とりあえずいつも通り桜の木の下に寝転び咲良を待つことにした。
もう葉桜になってきたか・・・。
俺の上では桜の花が散り始め、段々と葉が茂ってきていた。
俺は、目を瞑って瞼の裏に咲良を思い浮かべる。
黒髪の綺麗な髪。
ぱっちりとした二重の目。
:08/05/30 23:30
:P902iS
:☆☆☆
#44 [果樹]
少し茶色みがかった瞳と薄いピンク色の唇。。
全てが綺麗で俺を惹き付ける存在。
「千晃!」
名前を呼ばれて俺は現実に引き戻された。
校舎の方から走ってくるのは猛だ。
「なんだよ猛こんなところまで・・・」
「ばか!んなこと言ってる場合かよっ!!」
「は?」
:08/05/30 23:31
:P902iS
:☆☆☆
#45 [果樹]
猛は息を切らせて俺のところまでくるといきなり怒鳴りつけてきた。
意味が分からない俺はただただ目を丸くする。
「咲良ちゃんが教室で倒れて保健室に担ぎ込まれたらしいんだ!」
「――――っ!」
猛の言葉を聞いた俺はすぐさま立ち上がって猛には目もくれず保健室へ走った。
:08/05/30 23:32
:P902iS
:☆☆☆
#46 [果樹]
咲良っ!
咲良――――!!
――――――――・・・・
「宮ちゃん!!」
勢い良く保健室のドアを開け、俺は保険医である宮ちゃんの名前を呼ぶ。
「なんだ中村ー。またサボリ?」
宮ちゃんは回転式の椅子に座って笑っていう。
:08/05/30 23:33
:P902iS
:☆☆☆
#47 [果樹]
「違くて!咲良が・・・運び込まれたって・・・」
気持ちが焦って言葉がうまく出てこない。
宮ちゃんは「ああ」と目線を動かし部屋の奥にある窓際のベッドを指差した。
「そこのベッドに寝てるよ。あたしちょっと職員室いってくるからくれぐれも変なことしないよーに!」
カタンと椅子から立った宮ちゃんは、部屋から出ていく際に俺の方を向いて忠告してきた。
:08/05/30 23:33
:P902iS
:☆☆☆
#48 [果樹]
「しねーよ!」
俺はカァっと顔が赤くなる。
宮ちゃんはケラケラと笑って部屋を出ていった。
窓際のベッドに行くと咲良が気持ち良さそうに寝息を立てて眠っていた。
俺はなんだかほっとして、近くに立掛けてあったパイプ椅子に座って、咲良の寝顔を見る。
:08/05/30 23:34
:P902iS
:☆☆☆
#49 [果樹]
「咲良・・・」
名前を呼ぶと咲良は身じろいでから目を開けた。
「ん・・・千晃・・・くん?」
まだ少し朧気な咲良は、上体を起こそうとするので、俺は椅子から立ち上がり、咲良の背中に手を回してそれを手伝う。
「お前大丈夫なのか?」
「あ、ごめんね?心配かけちゃった?軽い脳震盪みたいなものだから心配ないよ」
:08/05/30 23:35
:P902iS
:☆☆☆
#50 [果樹]
優しく笑う咲良はどこか儚げで今にも消えてしまいそうだった。
「本当に?」
「心配しすぎ。大丈夫だから」
不安を拭い切れない俺が聞き返すと、咲良は笑って返事をした。
「今日桜の木の下、行けなかった」
窓の外を見ながら言う咲良に一瞬俺は目を奪われた。
:08/05/30 23:37
:P902iS
:☆☆☆
#51 [果樹]
「また明日があるだろ?」
「・・・そうだね!」
咲良は一瞬哀しそうな目をして、にこっと屈託のない笑顔を見せた。
でも咲良。
お前はこの時にはもう分かってたんだな。
自分の体のこと・・・。
:08/05/30 23:40
:P902iS
:☆☆☆
#52 [果樹]
次の日の昼休み
いつものように桜の木に向かおうとしていた途中俺は、女に話しかけられた。
名前までは知らないが、顔に見覚えがあった。
たぶん同じ1年だろう。
彼女は、顔を真っ赤にして体をもじもじとさせ、さっきから俺をチラチラと見ている。
あーこの感じ。
なんか身に覚えがある。
たぶんこれは・・・
:08/05/30 23:42
:P902iS
:☆☆☆
#53 [果樹]
「中村くん!」
「へ・・・?」
あ、俺か。
いきなり名前を呼ばれた俺は一瞬思考が止まる。
「中村くんのことずっと好きだったの・・・!良かったらあたしと付き合ってくれませんかっ?」
顔を真っ赤にさせた彼女はぎゅっと目を瞑り、少し震えていた。
:08/05/30 23:43
:P902iS
:☆☆☆
#54 [果樹]
やっぱり・・・。
これは属に言う愛の告白。
「あー・・・悪いけど、俺あんたに興味ないんだわ」
俺が頭をかきながら言うと彼女は目にいっぱい涙を溜めて、走って行ってしまった。
俺はその後ろ姿を見ながらはーぁと盛大に溜め息をつく。
「見ーちゃった♪」
:08/05/30 23:44
:P902iS
:☆☆☆
#55 [果樹]
「なっ・・・咲良!!」
ひょこんと木の後ろから顔をだした咲良に俺は、驚いて少し後退る。
「見てたのかよ・・・」
「見えるところにいたのは千晃くんの方でしょー?」
咲良はぷくっと頬を膨らませた。
:08/05/30 23:48
:P902iS
:☆☆☆
#56 [果樹]
まあ確かに此処は桜の木から目と鼻の先で、咲良がいつも通りあの場所にいたなら見られて当然だった。
なんかいろんなことに後悔だ・・・はぁ。
「それより」
俺が片手で頭を抑えながらうなだれていると、ズイッと視界の真ん中に咲良が現れた。
なんだか顔が怒っている感じだ。
:08/05/30 23:49
:P902iS
:☆☆☆
#57 [果樹]
「駄目じゃん千晃くん!!女の子は繊細なんだからあんな言い方したら傷付いちゃうよ!」
ああ、断る時の台詞まで聞いてたのか。
俺は、はぁーとまた溜め息をつき、咲良の額にデコピンをくらわせた。
「バーカ。どーせ諦めるならこっぴどく振られた方が諦めるもつくだろ!?」
:08/05/30 23:50
:P902iS
:☆☆☆
#58 [果樹]
咲良は面食らった顔をしたが、すぐにいつもの笑顔になった。
「ふふッ」
「なんだよ・・・」
「千晃くんは優しいなーと思っただけ♪」
「ばーか」
そんなことを笑顔で言う咲良に俺はなんだか恥ずかしくなった。
:08/05/30 23:51
:P902iS
:☆☆☆
#59 [果樹]
「ふふッ・・・っ!」
「咲良!?」
笑っていた咲良の顔が歪み、いきなり足元から崩れるようによろけたので、俺は急いでその身体を受け止めた。
「ごめ・・・ちょっとよろめいちゃった」
弱々しく笑顔を見せる咲良が俺はなんだか愛しくて堪らなくなった。
:08/05/30 23:58
:P902iS
:☆☆☆
#60 [果樹]
「ばか無理すんな。保健室行くぞ」
「え・・・?」
俺は咲良の背中と膝の裏に手を回し、抱え上げた。
属に言うお姫様抱っこだ。
腕の中では咲良が目を丸くしていた。
「掴まってろな?」
「へ・・・?あ・・・うん」
:08/05/30 23:59
:P902iS
:☆☆☆
#61 [果樹]
俺の言葉に咲良はおずおずと胸元のカーディガンに手を伸ばしそれをぎゅっと握り締めた。
それを確認した俺は、なるべく咲良に負担がかからないように、歩いて保健室に向かった。
――――――――・・・・
保健室のベッドに咲良を下ろすと安心したのか、咲良はいつの間にか眠りについていた。
:08/05/31 00:00
:P902iS
:☆☆☆
#62 [果樹]
俺は5限目をサボって咲良についている。
今は宮ちゃんが入れてくれた茶を一緒に飲んでいるところだ。
「なぁ、宮ちゃん・・・。咲良どっか悪いのか?」
俺はこの間からずっと思っていたことを宮ちゃんに聞いた。
:08/05/31 00:05
:P902iS
:☆☆☆
#63 [果樹]
本当は、咲良本人から聞きたいが、きっと咲良に聞いたって、なんでもない大丈夫と返されるのが落ちだから咲良には聞けなかった。
宮ちゃんは「んー・・・」と俺の顔を見ながらしばらく考えて、はぁと短い溜め息をついた。
そしてゆっくりと口を開く。
:08/05/31 00:08
:P902iS
:☆☆☆
#64 [果樹]
「水嶋はね・・・心臓の病気なんだ」
「え!?」
俺の頭に衝撃が走る。
一瞬理解が出来なかった。
どうしてだろう身体が震える。
「本当なら病院にいないといけないのに本人の希望で学校に通ってるらしいんだけど・・・もう限界かもな」
宮ちゃんが少し寂しそうに言った。
:08/06/01 02:03
:P902iS
:☆☆☆
#65 [果樹]
「そんな・・・」
咲良が病気・・・?
俺はうまく自分の中で今聞いた事が処理できなかった。
うつ向く俺の肩を宮ちゃんはぽんぽんと叩いて、「ついててやんな」と一言残して保健室を出ていった。
俺は立ち上がって咲良が眠っているベッドに行き、パイプ椅子に腰を下ろすと布団の上に出ていた咲良の白く細い指を握り締めた。
:08/06/01 02:03
:P902iS
:☆☆☆
#66 [果樹]
なぁ咲良・・・。
俺はどうすればいいんだ・・・っ!?
「千晃くん・・・?」
名前を呼ばれ、顔を上げると咲良がこっちを見て笑っていた。
「咲良・・・!」
「私の病気のこと聞いちゃった・・・?」
起き上がって俺の方を見て、どこか悲しげに聞いてくる咲良。
:08/06/01 02:04
:P902iS
:☆☆☆
#67 [果樹]
なんでわかったのだろうかと疑問に思っていたら、咲良の指が延びてきて、俺の目元に触れる。
「泣いてる・・・」
見ると、咲良の指には水滴がついていた。
俺の涙・・・?
いつのまにか俺の目からは涙が溢れていた。
俺は急いでそれをカーディガンの袖口で拭った。
:08/06/01 02:04
:P902iS
:☆☆☆
#68 [果樹]
「もうっ宮島先生のお喋り!」
と咲良は冗談めかしげに怒っていた。
そして咲良はうつ向き哀しそうな表情でぽつりぽつりと話し始めた。
「私ね・・・学校ってまともに行ったことなかったの。小さい頃からずっと病院にいて、病院の中だけしか知らなかった。だからこの学校に通えた時すごく嬉しかったんだ。友達もできて、毎日楽しかった。でも、もう限界かなぁ・・・」
:08/06/01 02:05
:P902iS
:☆☆☆
#69 [果樹]
「咲良・・・」
咲良の目から一筋の涙が流れ落ちた。
「自分と同じ名前の・・・桜の花の下で千晃くんにも会えたのに・・・。なんであたしの心臓はちゃんと動いてくれないのかなぁ・・・っ」
ポタポタと咲良の目から流れ落ちた涙が布団に染みをつくった。
咲良は声を出すまいと下唇を噛んで必死に声を押し殺していた。
:08/06/01 02:05
:P902iS
:☆☆☆
#70 [果樹]
俺はそんな咲良が無償に愛しく感じて心臓がぎゅうっと痛くなった。
気が付けば俺は、自分の腕の中にその小さな身体を収めていた。
「俺が毎日見舞いに行くから!桜の花持って見舞いに行くからっ・・・だから早く治せよ!そんで元気になったらいっぱい遊びに行こう!なっ?」
:08/06/02 13:29
:P902iS
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#71 [果樹]
俺の目からは拭ったはずの涙がまた溢れていたが、そんなことも気にせず俺は力いっぱい咲良を抱き締めた。
今俺にできることはこれくらいしかなかった。
すると咲良も俺の服をぎゅっと掴んで、「・・・・うん!」と涙を流しながらも笑顔で答えた。
:08/06/02 13:31
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#72 [果樹]
それから咲良は、ちゃんと病院に戻った。
もちろん俺は桜の花を持って見舞いに行ったが、最初、枝を折って持っていったら咲良にこっぴどく叱られた。
咲良いわく、桜の枝は生えてきたりしないから折っちゃ駄目だったらしい。
それからは花びらを持って見舞いに行くと、咲良は笑って「ありがとう」と大事そうにその花びらを栞にしていた。
:08/06/02 13:33
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#73 [果樹]
でも桜は咲いている時期が決まっているため散ってしまうと中々手に入れるのが難しかった。
でも俺はどうしても咲良に桜を見せてやりたくて、ネットや雑誌を使ってたくさん調べて毎日毎日なんとか咲良の元に桜の花を届けた。
その度に咲良は嬉しそうに笑うから俺はそれだけで、心が温かくなった。
そして季節は過ぎていった。
:08/06/02 13:34
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#74 [果樹]
いつだったか嬉しそうに咲良が話してくれたことがあった。
「あたしの読んでいる本の詩の中にね、一番好きな詩があるの。それはね」
それは・・・――――
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:08/06/02 13:36
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#75 [果樹]
“僕はいつも窓から外を見ている
楽しそうな笑い声に耳を傾けるだけの僕
そんな僕をいつも励ますのは窓から見える桜の花
そこから動けない君はまるで僕そのもの
でもいつかこの足で陽の光のあるところに出られたなら僕はまず君の側で本を読もう
そしてこう言うんだ
『ああ、幸せだな』”
:08/06/02 13:40
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#76 [果樹]
話し終えた後、「素敵でしょ?」と咲良は笑っていた。
なぁ、咲良。
お前は桜の木の下で本を読んでいるだけで、それだけで幸せだったんだな・・・。
お前が共感できるって言った意味が、今なら分かるよ。
:08/06/02 13:42
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#77 [果樹]
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――――――――・・・・
あれから二年・・・。
時が過ぎ、今日俺は卒業式を迎える。
去年より少し早く咲いた桜の木が俺の門出を祝ってくれているようだ。
いや、俺たちか・・・。
:08/06/02 13:44
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#78 [果樹]
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「千晃くーん!もーまたここにいたー。卒業式始まっちゃうよー?」
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:08/06/02 13:45
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#79 [果樹]
桜の木の下で寝転がっていた俺に、咲良が駆けよって来た。
「ああ」
返事をするだけで一向に起き上がろうとしない俺に諦めたのか、咲良は隣に腰を下ろした。
咲良をみる度、咲良がここにいるのが不思議な感じがする。
:08/06/02 14:31
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#80 [果樹]
出席日数やら何やらいろいろ大変だったらしいが、咲良も無事、一緒に卒業できることになった。
「この桜ともお別れだね。」
上に咲く桜を見ながら寂しそうに言う咲良。
綺麗だ・・・。
とただそう思えた。
「咲良」
「ん?」
:08/06/02 14:33
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#81 [果樹]
上体を起こした俺に咲良は小首を傾げる。
「ずっと言えなかったんだけどさ・・・。俺、お前が好きだよ」
「―――――っ!」
咲良の顔は驚いていてみるみる真っ赤になっていった。
「さっ卒業式に行くか!」
:08/06/02 14:34
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#82 [果樹]
立ち上がって制服についた葉を手でぱんぱんと払いとり校舎に歩き出そうとした俺は、強い力に引き留められ進むことが出来ない。
後ろを振り返ると、咲良が俺のブレザーの裾をぎゅうっと両手で掴んでいた。
「あっあのね!」
「うん?」
俺は肩越しに咲良を見る。
:08/06/02 14:36
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#83 [果樹]
咲良はうつ向いているが耳まで真っ赤になっていた。
「あたしも!あたしも千晃くんのこと・・・好きだよ」
「うん♪知ってる」
「なっ・・・!」
咲良は真っ赤な顔で俺をみて口をぱくぱくしている。
俺は咲良の方に振り向き、咲良と向き合う。
:08/06/02 14:37
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#84 [果樹]
「クス・・・大好きだ咲良」
ちゅっと不意打ちで咲良の唇にキスをすれば咲良は顔を更に真っ赤にして「もうっ」と俺の胸を叩いてきた。
そしてすぐにいつもの優しい笑顔でふわっと笑ったんだ。
:08/06/02 14:45
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#85 [果樹]
なぁ咲良。
俺たちの出会いはこの桜からだったな。
じゃあ今度はここから恋愛を始めようか・・・。
【桜咲クミライ恋ユメ】
―End―
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:08/06/02 14:51
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