・・万華鏡・・
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#801 [果樹]
「幸香?」
「結女・・・」
結女の顔を見たら涙が出そうになった。
結女は、そんな私を何を聞くわけでもなく、優しく抱き締めてくれた。
私はそのぬくもりに身を委ねるように、結女の胸で声を出して泣いた。
「ゆめぇ・・・ぐすっ・・ひっ」
:08/12/19 10:46
:P902iS
:☆☆☆
#802 [果樹]
――――・・・
どのくらい泣いたのか覚えてないけど、結女は、私が泣き病むまで何も言わずにただ抱き締めてくれた。
涙も収まり落ち着いた頃を見計らって、結女が静かに話だした。
「学校に来ないから心配したよ?メール送っても返事ないし」
「ごめん」と小さな声で言うことしか出来なかった。
:08/12/22 03:15
:P902iS
:☆☆☆
#803 [果樹]
「幸香が学校に来ない間に、冴木先輩来たよ」
先輩の名前に心臓がドキッと反応する。
「事情聞いた・・・」
「そっか・・・。もう・・ね、終わっちゃったんだ」
無理矢理笑顔を作って、結女に笑いかけると結女は辛そうな顔をする。
あたしのことなのに結女はまるで自分のことのように悲しんでいた。
:08/12/22 03:15
:P902iS
:☆☆☆
#804 [ピノ]
頑張ってください!
:08/12/27 15:59
:P703i
:☆☆☆
#805 [我輩は匿名である]
:08/12/27 19:47
:F906i
:DX2CQXoM
#806 [果樹]
ピノさん、我輩さん
ありがとうございます

久々の更新です!
:09/01/15 14:04
:P902iS
:☆☆☆
#807 [果樹]
「先輩、幸香と話したいって言ってたよ」
「うん・・・」
「元気になったら学校おいでね?待ってるから」
「うん・・・」
私の返事を聞いた結女は優しい笑顔を見せて、部屋を出ていった。
ぽつんと一人になった部屋で私は再び写真を見る
:09/01/15 14:05
:P902iS
:☆☆☆
#808 [果樹]
その中では私が幸せそうに笑っていた
先輩は私のことすきだったのかな
それも、もうわからない
付き合えたから好かれてると思ってたけど
本当はいつも不安だった
先輩は人気があって格好いいから
いつか私から離れていくんじゃないかって
:09/01/15 14:05
:P902iS
:☆☆☆
#809 [果樹]
いつも不安で押し潰されそうだった
先輩・・・先輩・・・
本当は今でも大好きです・・・
――――・・・
重たい足を引きずるように私は学校に向かう
周りでは朝の挨拶が飛び交うけどそんな晴れやかな気分になれない私は、うつ向いたまま教室に入る
:09/01/15 14:06
:P902iS
:☆☆☆
#810 [果樹]
「幸香・・・!」
教室に入るといきなり名前を呼ばれた
振り替えると心配そうに私を見る結女が立っていた
「結女・・・おはよう」
「おはよう・・・」
私が力なく笑うと結女も悲しそうな顔をした
心配させちゃ駄目ってわかってるのに
情けないね
:09/01/15 14:07
:P902iS
:☆☆☆
#811 [果樹]
ぼーっとしていると先輩のことばかり考えてしまう私は、出来るだけ授業に集中して何も考えないようにただただぺンを走らせた
――――・・・
「また月曜ねー」
「ばいばーい」
放課後になると教室内には帰りの挨拶が飛び交う
そして次々に生徒は教室を去っていく
:09/02/14 02:22
:P902iS
:☆☆☆
#812 [果樹]
なんとなくまだ帰りたくない私は、机に頬杖をついてぼんやりと茜色の空を眺めていた
「幸香・・・」
弱々しく呼ばれて振り向くと結女がいた
「先輩に連絡とった?」
結女の質問に私はただ静かに首を横に振る
:09/02/14 02:23
:P902iS
:☆☆☆
#813 [果樹]
「これ・・・読んで」
結女から手渡された1枚の紙切れ
結女は私にそれを手渡すと教室から出ていった
一人になった教室で私は綺麗に折り畳まれた紙切れを開く
そこには見慣れた綺麗な文字が刻まれていた
:09/02/20 06:39
:P902iS
:☆☆☆
#814 [果樹]
幸香へ
傷付けて悪かった
幸香は俺の前ではいつも笑っていたから、初めて涙を見たとき、俺は取り返しのつかないことをしたんだと思ったよ
まだ怒ってる・・・よな
あたりまえだよな
:09/02/20 06:40
:P902iS
:☆☆☆
#815 [果樹]
でもあれは浮気なんかじゃなかったんだ
酔った勢いって言ったらそれまでかもしんねぇけど、俺は今でも幸香を大切に思ってる
高校の時は、なんだこのしつこい女って思ってすげぇうざかったたけど、大学になってからもお前は、俺のことを好きでいてくれて・・・
俺はお前に会えてよかったと思ってる
:09/02/20 06:40
:P902iS
:☆☆☆
#816 [果樹]
また幸香とやり直したい
今度は俺がお前を追い掛けるから
手紙の最後の行には、書いてから恥ずかしくて消したのであろう文字が薄く残っていた。
「ばか・・・」
憎たらしい事を言う口とは裏腹に、私の目からは暖かいものが流れて、紙に染みを作った。
:09/02/20 06:43
:P902iS
:☆☆☆
#817 [
]
あげ

:09/08/24 09:36
:SH904i
:xGNd0/7M
#818 [
]
:09/08/24 18:53
:SH904i
:xGNd0/7M
#819 [
]
:09/08/24 18:56
:SH904i
:xGNd0/7M
#820 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑
:22/10/08 20:24
:Android
:xK0uSzd2
#821 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/08 20:26
:Android
:xK0uSzd2
#822 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/08 20:27
:Android
:xK0uSzd2
#823 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/08 20:27
:Android
:xK0uSzd2
#824 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/08 21:02
:Android
:xK0uSzd2
#825 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/08 21:03
:Android
:xK0uSzd2
#826 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/08 21:04
:Android
:xK0uSzd2
#827 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age
:22/10/18 00:33
:Android
:h3l12Mig
#828 [○○&◆.x/9qDRof2]
cosmic dust
夕方になり、長い勤務時間から解放されても、帰りの電車がたまたま空いていてゆったり座れても、こころにかかったモヤモヤが消えることは無かった。気だるいのは、会社に忘れていた傘を二本と、取手の小さいカバンを持っているからではない。
:22/10/18 13:58
:Android
:h3l12Mig
#829 [○○&◆.x/9qDRof2]
何ヵ月も開いていないスケジュール帳が、カバンの底で異様に重たく、自分の存在よりも大きな影として、そこに鎮座(ちんざ)しているのだった。わたしは、湖の底と同じくらい「暇」なのだ。
:22/10/18 13:59
:Android
:h3l12Mig
#830 [○○&◆.x/9qDRof2]
去年の末から春に向けて、世の中がめまぐるしく変化して行く中で、わたしの暇に歯止めがかかることは無かった。それは新しいスマートフォンを買っても解決しなかった。わたしには考えることすら見当たらなかったので命や人生について考えようとした。
:22/10/18 13:59
:Android
:h3l12Mig
#831 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし、わたしの生命とか存在なんていうものは、もう潰すところが無くなったプチプチのようなもの。これにすらエアークッションという、仕組みと目的が明確にされた素晴らしい名前が付いている。
:22/10/18 13:59
:Android
:h3l12Mig
#832 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしは大学を卒業し、なんとなくいまの会社に入り、名前を奪われたのだ。千と千尋の神隠しのように、それはとても忙しい毎日を過ごしていた。しかし、わたしは忙しいということに満足してしまい、自分という個性の存在を求められていないことに気付かなかったのだ。
:22/10/18 13:59
:Android
:h3l12Mig
#833 [○○&◆.x/9qDRof2]
そして、木から葉っぱが散るように、わたしの予定はポツポツと穴が開き、誰もいなくなった教室の扉を閉めるように、スケジュール帳は閉じられた。夕暮れ時の、小雨が降る中を電車は走っている。
:22/10/18 13:59
:Android
:h3l12Mig
#834 [○○&◆.x/9qDRof2]
天井の裏にあるパンタグラフが火花を散らす音がする。大きい駅に着いたとき、大勢の乗客が乗り込んできた。わたしは椅子の端にからだと鞄と傘を寄せ集め、ひとりでも多くの乗客が座れるようにと心がけた。車内は瞬く間に人で埋め尽くされた。
:22/10/18 14:00
:Android
:h3l12Mig
#835 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし、わたしが座る椅子にだけ誰も座ることは無かった。大きい駅から発車するとき、わたしの目の前に立つ乗客たちは慣性(かんせい)の法則にしたがい斜めに傾いた。それはまるでシンクロナイズドスイミングのように統率された動きだった。
:22/10/18 14:00
:Android
:h3l12Mig
#836 [○○&◆.x/9qDRof2]
そして窓の外を見ると、建物までがシンクロしているように傾いて見えた。わたしは、このまま世界に取り残されるのではないかという錯覚がした。わたし以外のすべてのものはこのまま進行方向に走り、ビルや高速道路、地球の自転、そして太陽を回る軌道からも放たれて、宇宙空間にただ座っているだけの自分になってしまうのではないか、そう思うと寒気がした。
:22/10/18 14:00
:Android
:h3l12Mig
#837 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかしわたしの運命は、火の鳥に罰せられて無限の彼方を放浪(ほうろう)させられる訳でもなく、ただ電車の時刻通りに進行方向に運ばれて行くだけだった。きっとわたしは、からだが緊張していて慣性の法則を辛うじて防いだだけなのだ。
:22/10/18 14:00
:Android
:h3l12Mig
#838 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしは何も特別では無いのだ。ただ楽しそうに音楽を聞いていたり、スマートフォンを指で擦って楽しんでいる人が目の前に立っていたせいで緊張していただけなのだ。鉄道や道路は、都市という巨体を動かすための血管のような物だ。
:22/10/18 14:00
:Android
:h3l12Mig
#839 [○○&◆.x/9qDRof2]
血液である乗客は、それぞれの役割を果たすために毎日運ばれ、同じところをグルグル廻ることでしか生きられないのだ。しかしわたしは、鞄の底に眠っているスケジュール帳の重みを感じれば感じるほど、まるで耳栓をしているように、血液の流れる音が遠くに消えていく気がするのだ。
:22/10/18 14:01
:Android
:h3l12Mig
#840 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしは乗客を見渡し、彼らが蝋人形(ろうにんぎょう)のように見えることに気が付いた。他人の表情を読み取れないなんて、自分の感性が錆びてしまったのでは無いかと思い、一瞬ヒヤリとしたのだが、やはり彼らの顔はのっぺらぼうのようになっていた。
:22/10/18 14:01
:Android
:h3l12Mig
#841 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしの椅子の横に、ひとりの男が腰掛けた。静止したように思える車内で、わたしと彼だけが鮮明にそこに存在しているような気がした。彼は声を掛けては来ないが、明確な目的を持ってわたしの横に座ったことに間違いはない。
:22/10/18 14:01
:Android
:h3l12Mig
#842 [○○&◆.x/9qDRof2]
そして彼は、首をくるっと廻してわたしの方を見た。男はまんまるとした眼球をこちらに見やり言った。
「あなたは宇宙に必要とされていません」
意味が分からなかった。
:22/10/18 14:01
:Android
:h3l12Mig
#843 [○○&◆.x/9qDRof2]
「次の駅で降りるか、このまま消えて無くなるのかを選ばせてあげます」
頭のおかしい奴もいるものだと思った。わたしは元々次の駅で降りるつもりだったので、電車が止まると黙ってそこから離れたのだ。
:22/10/18 14:01
:Android
:h3l12Mig
#844 [○○&◆.x/9qDRof2]
ホームに降りると、背後で扉のしまる音が聞こえた。いつもは乗り降りのたくさんある駅だが、いま、ホームにいるのはわたしだけだった。電車が発進し、走り去る姿をなんとなく見ていた。
:22/10/18 14:02
:Android
:h3l12Mig
#845 [○○&◆.x/9qDRof2]
すると、進行方向の空が、曇り空を割って急に光輝いた。電車はそのまま光に向かい、大蛇が鎌首を持ち上げるように、線路から離れ、雲の向こうに走って行った。未知なる存在によって、人々が誘拐されている。
:22/10/18 14:02
:Android
:h3l12Mig
#846 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし世間は、誰もそのことに触れようとしなかった。わたしの会社でも、毎日のように従業員が減っていったのだが、居なくなった者のことは、一切話題にならなかった。いつもと変わらない毎日の中で、ただ周りからひとが消えて行ったのだ。
:22/10/18 14:02
:Android
:h3l12Mig
#847 [○○&◆.x/9qDRof2]
ある晩、両親と妹とわたしの四人で晩御飯を食べていた。テレビのニュースキャスターは毎日のようにひとが変わっているが、無論、そんなことは話題にならなかった。わたしは家族に話しかけることはほとんどしないのだが、自然と涙がポツポツとこぼれて来て、自分が体験したこと、世の中が異常なことを話し始めた。
:22/10/18 14:02
:Android
:h3l12Mig
#848 [○○&◆.x/9qDRof2]
一通り話し終えてから三人の顔を見ると、蝋人形のようなのっぺらぼうになっていた。わたしは思わず叫び声を上げ、自分の部屋に逃げ込む。部屋の扉に鍵をかけ、ベッドに飛び込んだ。そして扉のほうを見ると、あの丸い目をした男が立っていた。
:22/10/18 14:02
:Android
:h3l12Mig
#849 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしは男に、一体なんのつもりなのかを聞いた。男が両手を翼のように広げると、部屋の天井がなくなり、大きな映像が映し出される。そこには、空中に浮かぶ大きな都市が写し出されていた。画面は拡大され、巨大なビル群の間を、スーツを着た人々や、作業着を着た人々が規則正しく、碁盤の目のように整備された道を往来していた。
:22/10/18 14:03
:Android
:h3l12Mig
#850 [○○&◆.x/9qDRof2]
みんな顔は無表情だったが、ただ働くことだけに集中しているようだった。男は語り始めた。
「ある一定の水準まで文化を成長させた種族を、我々は迎えに来たのだ。この星に住む生物の種は元々は我々が蒔いたのだよ。我々は天に住まうもの、あなた方は労働力なのです。特にこの日本という島に生息するホモサピエンスは、よく働いてくれるのです」
:22/10/18 14:03
:Android
:h3l12Mig
#851 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あなたはなぜ、宇宙に必要とされていないのか解りますか?」
わたしは、カバンの底に眠るスケジュール帳の存在を思い出した。わたしがどうしても暇だから、そして何も努力をしないからだろうか。
:22/10/18 14:03
:Android
:h3l12Mig
#852 [○○&◆.x/9qDRof2]
周りの友人や家族や、いろんなひとがあの空中に浮かぶ都市に連れて行かれているのに、自分はそんなにも必要とされていないなんて。
「あなたは、地球人ではないのです」
わたしは宇宙人だったのだ。
:22/10/18 14:03
:Android
:h3l12Mig
#853 [○○&◆.x/9qDRof2]
わたしのまわりはそのことに気付いていたのかも知れない。だからみんな、自分に仕事をさせなかったのだ。わたしは、自分の両親が橋の下で拾ってきた子だと言われて育てられてきた。冗談だと思っていたが、わたしは地球人に拾われた宇宙人だったのだ。
:22/10/18 14:03
:Android
:h3l12Mig
#854 [○○&◆.x/9qDRof2]
「二十年前、この星を調べに来たあなたの本当の両親は、あなたを実験台に使ったのです。地球人に育てられた者は、一体どう育つのか。そして、あなたの目を通して地球人の暮らしや、文明の水準を探ろうとしたのだ。しかしあなたは、我々にも、地球人にも成れなかったのです。あなたは明らかに、パワーがありませんから」
:22/10/18 14:04
:Android
:h3l12Mig
#855 [○○&◆.x/9qDRof2]
会社や学校に、何を考えているのか、やる気があるのか無いのか分からない、宇宙人のような若者はいないだろうか。どうか彼らを、温かく見守ってあげてほしい。
:22/10/18 14:04
:Android
:h3l12Mig
#856 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 14:04
:Android
:h3l12Mig
#857 [○○&◆.x/9qDRof2]
躊躇いも嘘も、
おれの彼女は、とんでもない猫かぶりだった。
容姿はこれといって秀でていたわけではない。ただ、コミュニケーション能力は抜群にあったし、声と笑顔はめちゃくちゃかわいかったもので、おれはすぐさま虜になった。
:22/10/18 17:54
:Android
:h3l12Mig
#858 [○○&◆.x/9qDRof2]
「ねえね、きみ、頭いいの?」
それがおれと彼女の、初めての接触だった。猫みたいなふうに首を傾げながら、それでもすこし高慢な雰囲気を漂わせながら、彼女はおれに話しかけてきた。
「え、ああ、まあ、うん」
「ふうん、勉強すき?」
「う、うん」
「じゃ、今度教えて?」
:22/10/18 17:54
:Android
:h3l12Mig
#859 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれは言葉もなく頷くほかなかった。きらきらした瞳に見つめられると、言葉が恥ずかしがって喉元から出てこなくなってしまうのだ。
⏰:11/12/28 00:54 📱:H001 🆔:☆☆☆
#3 [我輩は匿名である]
しかしそれきり、彼女と会話を交わすことはなかった。おれは至極ふつうな男子生徒だったし、彼女はクラスメイトとのコミュニケーションで、毎日駆け回っていた。
すこし、寂しい。いや、かなり寂しい。
:22/10/18 17:54
:Android
:h3l12Mig
#860 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女がほかの誰かに笑いかけるたびに、おれのなかの焦燥感が鎌首をもたげた。どうしようもなく愛しいその姿に、ただ一度でも触れてみたいと思った。いけないと知りながらも、情欲の炎は燃え上がるばかり。
そしておれは、見てしまった。
:22/10/18 17:55
:Android
:h3l12Mig
#861 [○○&◆.x/9qDRof2]
#4 [我輩は匿名である]
彼女が、泣いている。斜陽を一身に浴びながら、ただただ泣いているのだ。
音はない。しゃくりあげる様子もない。ただ静かに、口元をかたくつぐんでいる。
「……見ないでよ」
おれの存在は、いつの間にか彼女にバレていたらしい。彼女はおれをねめつけて言った。
「あんたなんかには、ぜったい分かりっこないんだから」
:22/10/18 17:55
:Android
:h3l12Mig
#862 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれはもうどうすればいいのかわからなかった。いつも愛らしい笑顔を振りまいている彼女が、泣きながら牙を剥いているのだ。
おれは彼女にとって気の許せる人間でないから、触れることなんてできない。当然ながら同情さえも、いまの彼女にとっては余計なお世話といったところか。
:22/10/18 17:56
:Android
:h3l12Mig
#863 [○○&◆.x/9qDRof2]
ほんとうは、その涙を拭ってやりたいと思ったし、冷え切った心身を抱き締めてやりたいと思った。行き場を失った衝動が、彼女のうちを食い破るのなら、それがすべておれに向けばいいのにと思った。
それでも、おれは彼女にとって他人であり、さしたる会話を交わしたわけでもない。彼女からすればおれは日常を彩るただの記号で、下手をすれば踏み台にすらならない程度の存在なのだから、今のおれには彼女のためにしてやれることなど、なにひとつないのだ。
:22/10/18 17:56
:Android
:h3l12Mig
#864 [○○&◆.x/9qDRof2]
どうしようもない沈黙がおれと彼女を包み込む。それでも彼女の涙が止むことはないし、おれの緊張が治まることもない。どうすればいいのだろうと思案したところで、おれにはなにも出来ない。
「出てって」
そのときのおれには、彼女の言葉に従うのが精一杯だった。動揺が喉元でせせら笑って、声すら出せない状況において、むしろなにが出来たというのだろうか。
おれは彼女を救いたいという衝動に後ろ髪を引かれながら、やむなく背を向けた。
:22/10/18 17:56
:Android
:h3l12Mig
#865 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女の特別になりたい。もう二度と泣くことのないよう、おれの胸で暖めてやれるよう。彼女がおれだけを、見てくれるように。
そう一度覚悟を決めてしまえば、もうなにも躊躇うことなどなかった。
まず真っ先におれは彼女の友達になった。いや、友達というのはいささか無理があるかもしれない。彼女のグループの一員となった、というのが正しい。
:22/10/18 17:56
:Android
:h3l12Mig
#866 [○○&◆.x/9qDRof2]
まだ彼女はまっすぐにおれを見ることはなかったけれども、おれは確かに彼女の周囲に溶け込み、また、上辺といえども定期的に彼女と談笑を交わすようになった。
そして彼女の周囲にいて改めて気付いたことといえば、やはり彼女の笑みは花も綻ぶほどにかわいいということである。笑うと、ちいさく口角がへこむ。すると年中赤いほっぺがすこし持ち上がって、やけに突っつきたくなる衝動に駆られる。
:22/10/18 17:56
:Android
:h3l12Mig
#867 [○○&◆.x/9qDRof2]
もしかしたらおれは、彼女のことを加護すべき小動物だと認識しているのかもしれないとも思う。背丈は小さいし、よく転ぶ。おまけにちょこまかと、動き回る。正直言ってしまえば、我が家のハムスターにそっくりである。
:22/10/18 17:57
:Android
:h3l12Mig
#868 [○○&◆.x/9qDRof2]
「おはようチロル!」
わたしは五十嵐千広(いがらしちひろ)。あだ名は何故か中学の頃からチロルなのだ。そんな可愛いあだ名の顔じゃないんだけどねぇ。
「おはよう、暁子(きょうこ)ちゃん。」
暁子ちゃんは私と同じ美術学科で、とてもいい子だ。こんな私と仲良くしてくれてすごく嬉しい。
「聞いてよ暁子ちゃん。あたくし今朝痴漢に会っちまいましたよ。」
「え?!大丈夫?!」
「なんか素敵なお兄さんが助けてくれたよ〜。いやぁ好青年でねー。」
:22/10/18 17:57
:Android
:h3l12Mig
#869 [○○&◆.x/9qDRof2]
私はまるで年とったおばはんみたいな喋り方をした。私が可愛いかったり積極的だったらお兄さんの名前とか聞いて恋に発展するんだろうなぁとしみじみ思う。はぁ……私はあと何年こんな思いをしなくてはならないのだろうかねぇ……。
:22/10/18 17:57
:Android
:h3l12Mig
#870 [○○&◆.x/9qDRof2]
「チロル……もしかしてそな人に惚れたとか?」
「あーないない。それ以前に向こうが私をお断りだよ。」
いかにも気のない素振りだが、少しもう一度会えないかと思う自分に少し呆れた。アンタそんな身分の奴じゃないだろうっちゅーのに。
:22/10/18 17:58
:Android
:h3l12Mig
#871 [○○&◆.x/9qDRof2]
「さ、イーゼル用意しよ!」
ガラガライーゼルを用意しながら、私達はいつもの他愛ない話をした。
――――――――……
「じゃバイバーイ!」
「バイバーイ。」
あ゛ー今日も終わったぁー。家帰って早く漫画読みたーい。私は少女漫画が大好きだ。あの胸を切り裂かれるような痛み……そして感動的な告白。甘い2人の時間。全てが憧れ。私もあんな恋がしたいなぁと読んだ後は悶えに悶えてそして落ち込む。
:22/10/18 17:58
:Android
:h3l12Mig
#872 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……私には無理だっけと……。現実なんてつまらない。漫画みたいな奇跡、偶然、運命はそうそうそこらに転がっているものじゃない。ホームの向かいでイチャつくカップル。思わず履いてる靴を脱いで力一杯叩いてやりたい衝動にかられた。
:22/10/18 17:58
:Android
:h3l12Mig
#873 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……つくづく思う。人生は辛いと。電車に乗り、窓の外の暗くなった街並みを見ながらため息を吐いた。耳から流れてくる音楽はこんなにも素敵なのに……どうして私は素敵じゃないかねぇ。窓に映る自分。にらめっこは決着つくけとなく、私とのにらめっこは引き分けで終わった。
:22/10/18 17:58
:Android
:h3l12Mig
#874 [○○&◆.x/9qDRof2]
味わってみたいな……。冬に一緒に手を温めてくれるような相手。甘いキスをくれて、ギュッと抱き絞めてくれる相手。私にとって全て幻想。いいんだ。行きてるだけで幸せなんだと思うし……。そうだよ。私は幸せなんだよ。そう思って、私は良しとした。
――――――――……
:22/10/18 17:59
:Android
:h3l12Mig
#875 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……今日もホームに人が溢れかえってる……。何故……。
プシュー……
電車到着と共にドアが開き、人が入れ替わる。なんとかして車内に乗り込む。今日も昨日と変わらずギュウギュウだ。あぁ嫌だ……。すると、前にいた人が揺れのせいで私にもろにぶつかってきた。私は顔がその人の胸元に埋まった。
:22/10/18 17:59
:Android
:h3l12Mig
#876 [○○&◆.x/9qDRof2]
「んぐっ……!」
思わず少し声を漏らす。全く……満員電車はやっぱり好かない。まぁ好きな人はいないだろうけどさ。ってか昨日から微妙についてないな私……。
「オイッたら!」
ん?もしかして私に言ってる?聞いてる音楽の間間に人の声が混ざって聞こえた。多分頭上からだろうと顔を少し上に上げた。
:22/10/18 17:59
:Android
:h3l12Mig
#877 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あっ。」
「やっと気付いた……。」
話かけた相手は昨日痴漢から私を助けてくれたあのお兄さんだった。……そうすると何かい?さっきまでこのお兄さんの胸に顔を埋めてたっていう……。顔が暑くなって、少しだけ汗ばんでしまった。
:22/10/18 17:59
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#878 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あ、その節はどうも…。」
「別に。あーゆーの嫌いなだけだから。」
おぉ。正義の見方ですか。凄いなお兄さん。最近の若者にしては珍しい。私はそう思いながら会話は終了したと思い、またうつ向いて音楽に集中し始めた。するとまたもや揺れ。
:22/10/18 17:59
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#879 [○○&◆.x/9qDRof2]
人が垂れているイヤホンのコードを引っ張ってしまったせいで、それでなくても私の耳の穴にしては少し大きいイヤホンなのに簡単に外れてしまった。次の駅まで片耳状態は嫌いなので、なんとかして手を出そうとした。
「ねぇ、何聞いてんの?」
突然お兄さんが話出したので、出そうとしていた手がまた引っ込んでしまった。
:22/10/18 18:00
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#880 [○○&◆.x/9qDRof2]
「何……って……。色々ですけど……。」
「何を一番聞いてるの?」
「え、EXIL●とか……。Y●Iとか……。」
ってか何でんな事聞く?自分でも顔を少し歪めているのが分かった。何故こんな私にそこまで構うかな。
:22/10/18 18:00
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#881 [○○&◆.x/9qDRof2]
「何かいつも真剣に聞いてるからそんなに好きなのかなと思って。」
「はぁ、そうですか……。……ん?いつも?」
「ウン。俺いつもアンタ見かけてたから知ってるんだよね。アンタは全然ぽいけど。」
だって周りになんて然程(さほど)興味ないんだもん。逆に興味持ってキョロキョロしてる方が怪しいだろうし……。また会話が途切れた時、すぐに駅についた。
:22/10/18 18:00
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#882 [○○&◆.x/9qDRof2]
「じゃあな。」
「あ、ハイ。どうも。」
私はお兄さんを見ながらイヤホンをつけた。なるほど。昨日お兄さんがいなくなったのはこの駅で降りるからだ。着いた駅は昨日降りた駅と同じ。それにしても変わったお兄さんだ。私が近くにいても嫌な顔ひとつしないなんて。大抵は私の様なデブスは遠ざける筈なのに。……まぁ満員電車で動けって方が無理か。
:22/10/18 18:00
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#883 [○○&◆.x/9qDRof2]
お兄さん私なんかが近くでスイマセンでした……。私は心の中でそっとお兄さんに手を合わした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校までは坂道だ。
涼しくなったとは言え坂道を登れば多少は汗をかいてしまう。この体が1つは原因だろうがね。タオル片手に私はひーこらひーこら上がり、やっと学校に着いた。教室に行って、即効でさらさらシートと脇シューをする。体が少し清潔になった気がする。
:22/10/18 18:01
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#884 [○○&◆.x/9qDRof2]
念のため帰りの電車乗る前にもしておこう。汗臭い奴が乗ってきたら迷惑だよね。ただでさえデブって邪魔なのに。
「おはよーチロル!」
「あぁ暁子ちゃん。」
暁子ちゃんは私の隣に座ると、何だか意味あり気に私を見つめてきた。私は暁子ちゃんを見つめ返しながら瞬きを何回かする事で「何?」と言う意味を示した。暁子ちゃんはにまぁと笑った。
:22/10/18 18:01
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:h3l12Mig
#885 [○○&◆.x/9qDRof2]
「いやね、昨日の王子様とは会えたのかなってっ。」
私は思わず大笑いしてしまった。
「アハハハハハ!!お、お、王子さ…っまって!んな素敵な言葉ウチの人生にはないねっ。」
「えーっ!そんなことないよ。で、やっぱり昨日っきり?」
:22/10/18 18:01
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:h3l12Mig
#886 [○○&◆.x/9qDRof2]
「今朝会ったけど?」
それを聞くと暁子ちゃんは目を輝かせた。可愛いらしいのう……と私は暁子ちゃんのキラキラした目の光を浴びながら思った。
「名前は?!」
「さぁ。」
「歳は?!」
「さぁ。」
「どこの人?!」
「さぁ。」
「えぇー!」
:22/10/18 18:01
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:h3l12Mig
#887 [○○&◆.x/9qDRof2]
「えー。」
私の答えに暁子ちゃんは心底がっかりした。だって何故に名前やら歳やらを聞かねばならないのだろうか。別に私がその人にズキュン!ときた訳じゃないのに。いやズキュン!ときたとしても、私はそんなに積極的タイプではないし。
:22/10/18 18:02
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:h3l12Mig
#888 [○○&◆.x/9qDRof2]
「暁子ちゃん。知ってるでしょ?私が男の人恐いって。」
「でも彼氏は欲しいでしょ?なんならその人好きになったらいいじゃない!」
どちらかと言えば相手に選ぶ権利があると思うんだが……。第一私なんかに好きになられたら相手は困るだろうに。私は遠い目をしながらそう思った。
:22/10/18 18:02
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#889 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あ、そういえば、どっかの大学から生徒が美術学科の作品見に来るらしいよ。」
え、何その迷惑な話。
「何の為に……。」
「知らない。でも来るって。今日。」
「今日―――――っ?!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
授業の油絵で私は頭を悶々とさせながらキャンバスに向かっていた。飾られているのならまだしも、今からここに来てじろじろ見られるだなんて辛抱ならなかった。
:22/10/18 18:02
:Android
:h3l12Mig
#890 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……どこかへ消えてしまいたい……。唯一それを止めてくれるのが聞いてる音楽だった。何かに集中したい時はこうするのが一番なのだ。
「こんにちわー。」
!!!!
来た……。
先生達の挨拶を微かに聞きながら私はキャンバスに集中しようとしていた。しかしチロリと視線を来た人達に向けると私は絶句した。なんと女の子だけじゃなく男の子もいたのだ。あぁー最悪……。一切私はそちらに気にならない様に音楽の音量をさっきより上げた。これでいいだろう。筆をまた動かせた。
:22/10/18 18:02
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:h3l12Mig
#891 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:02
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:h3l12Mig
#892 [○○&◆.x/9qDRof2]
「おはようチロル!」
わたしは五十嵐千広(いがらしちひろ)。あだ名は何故か中学の頃からチロルなのだ。そんな可愛いあだ名の顔じゃないんだけどねぇ。
「おはよう、暁子(きょうこ)ちゃん。」
:22/10/18 18:10
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:h3l12Mig
#893 [○○&◆.x/9qDRof2]
暁子ちゃんは私と同じ美術学科で、とてもいい子だ。こんな私と仲良くしてくれてすごく嬉しい。
「聞いてよ暁子ちゃん。あたくし今朝痴漢に会っちまいましたよ。」
「え?!大丈夫?!」
「なんか素敵なお兄さんが助けてくれたよ〜。いやぁ好青年でねー。」
:22/10/18 18:10
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#894 [○○&◆.x/9qDRof2]
私はまるで年とったおばはんみたいな喋り方をした。私が可愛いかったり積極的だったらお兄さんの名前とか聞いて恋に発展するんだろうなぁとしみじみ思う。はぁ……私はあと何年こんな思いをしなくてはならないのだろうかねぇ……。
:22/10/18 18:10
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:h3l12Mig
#895 [○○&◆.x/9qDRof2]
「チロル……もしかしてそな人に惚れたとか?」
「あーないない。それ以前に向こうが私をお断りだよ。」
いかにも気のない素振りだが、少しもう一度会えないかと思う自分に少し呆れた。アンタそんな身分の奴じゃないだろうっちゅーのに。
:22/10/18 18:10
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#896 [○○&◆.x/9qDRof2]
「さ、イーゼル用意しよ!」
ガラガライーゼルを用意しながら、私達はいつもの他愛ない話をした。
――――――――……
「じゃバイバーイ!」
「バイバーイ。」
あ゛ー今日も終わったぁー。家帰って早く漫画読みたーい。私は少女漫画が大好きだ。あの胸を切り裂かれるような痛み……そして感動的な告白。甘い2人の時間。全てが憧れ。私もあんな恋がしたいなぁと読んだ後は悶えに悶えてそして落ち込む。あぁ……私には無理だっけと……。
:22/10/18 18:11
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#897 [○○&◆.x/9qDRof2]
現実なんてつまらない。漫画みたいな奇跡、偶然、運命はそうそうそこらに転がっているものじゃない。ホームの向かいでイチャつくカップル。思わず履いてる靴を脱いで力一杯叩いてやりたい衝動にかられた。あぁ……つくづく思う。人生は辛いと。電車に乗り、窓の外の暗くなった街並みを見ながらため息を吐いた。
:22/10/18 18:11
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#898 [○○&◆.x/9qDRof2]
耳から流れてくる音楽はこんなにも素敵なのに……どうして私は素敵じゃないかねぇ。窓に映る自分。にらめっこは決着つくけとなく、私とのにらめっこは引き分けで終わった。味わってみたいな……。冬に一緒に手を温めてくれるような相手。甘いキスをくれて、ギュッと抱き絞めてくれる相手。私にとって全て幻想。
:22/10/18 18:11
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:h3l12Mig
#899 [○○&◆.x/9qDRof2]
いいんだ。行きてるだけで幸せなんだと思うし……。そうだよ。私は幸せなんだよ。そう思って、私は良しとした。
――――――――……
あぁ……今日もホームに人が溢れかえってる……。何故……。
プシュー……
電車到着と共にドアが開き、人が入れ替わる。なんとかして車内に乗り込む。今日も昨日と変わらずギュウギュウだ。あぁ嫌だ……。
:22/10/18 18:11
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#900 [○○&◆.x/9qDRof2]
すると、前にいた人が揺れのせいで私にもろにぶつかってきた。私は顔がその人の胸元に埋まった。
「んぐっ……!」
思わず少し声を漏らす。全く……満員電車はやっぱり好かない。まぁ好きな人はいないだろうけどさ。ってか昨日から微妙についてないな私……。
:22/10/18 18:11
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#901 [○○&◆.x/9qDRof2]
「オイッたら!」
ん?もしかして私に言ってる?聞いてる音楽の間間に人の声が混ざって聞こえた。多分頭上からだろうと顔を少し上に上げた。
「あっ。」
「やっと気付いた……。」
話かけた相手は昨日痴漢から私を助けてくれたあのお兄さんだった。……そうすると何かい?さっきまでこのお兄さんの胸に顔を埋めてたっていう……。顔が暑くなって、少しだけ汗ばんでしまった。
:22/10/18 18:12
:Android
:h3l12Mig
#902 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あ、その節はどうも…。」
「別に。あーゆーの嫌いなだけだから。」
おぉ。正義の見方ですか。凄いなお兄さん。最近の若者にしては珍しい。私はそう思いながら会話は終了したと思い、またうつ向いて音楽に集中し始めた。するとまたもや揺れ。人が垂れているイヤホンのコードを引っ張ってしまったせいで、それでなくても私の耳の穴にしては少し大きいイヤホンなのに簡単に外れてしまった。
:22/10/18 18:12
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#903 [○○&◆.x/9qDRof2]
次の駅まで片耳状態は嫌いなので、なんとかして手を出そうとした。
「ねぇ、何聞いてんの?」
突然お兄さんが話出したので、出そうとしていた手がまた引っ込んでしまった。
「何……って……。色々ですけど……。」
「何を一番聞いてるの?」
「え、EXIL●とか……。Y●Iとか……。」
ってか何でんな事聞く?自分でも顔を少し歪めているのが分かった。何故こんな私にそこまで構うかな。
:22/10/18 18:12
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:h3l12Mig
#904 [○○&◆.x/9qDRof2]
「何かいつも真剣に聞いてるからそんなに好きなのかなと思って。」
「はぁ、そうですか……。……ん?いつも?」
「ウン。俺いつもアンタ見かけてたから知ってるんだよね。アンタは全然ぽいけど。」
だって周りになんて然程(さほど)興味ないんだもん。逆に興味持ってキョロキョロしてる方が怪しいだろうし……。また会話が途切れた時、すぐに駅についた。
:22/10/18 18:12
:Android
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#905 [○○&◆.x/9qDRof2]
「じゃあな。」
「あ、ハイ。どうも。」
私はお兄さんを見ながらイヤホンをつけた。なるほど。昨日お兄さんがいなくなったのはこの駅で降りるからだ。着いた駅は昨日降りた駅と同じ。それにしても変わったお兄さんだ。私が近くにいても嫌な顔ひとつしないなんて。大抵は私の様なデブスは遠ざける筈なのに。……まぁ満員電車で動けって方が無理か。
:22/10/18 18:12
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#906 [○○&◆.x/9qDRof2]
お兄さん私なんかが近くでスイマセンでした……。私は心の中でそっとお兄さんに手を合わした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校までは坂道だ。
涼しくなったとは言え坂道を登れば多少は汗をかいてしまう。この体が1つは原因だろうがね。タオル片手に私はひーこらひーこら上がり、やっと学校に着いた。教室に行って、即効でさらさらシートと脇シューをする。体が少し清潔になった気がする。
:22/10/18 18:13
:Android
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#907 [○○&◆.x/9qDRof2]
念のため帰りの電車乗る前にもしておこう。汗臭い奴が乗ってきたら迷惑だよね。ただでさえデブって邪魔なのに。
「おはよーチロル!」
「あぁ暁子ちゃん。」
暁子ちゃんは私の隣に座ると、何だか意味あり気に私を見つめてきた。私は暁子ちゃんを見つめ返しながら瞬きを何回かする事で「何?」と言う意味を示した。暁子ちゃんはにまぁと笑った。
:22/10/18 18:13
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#908 [○○&◆.x/9qDRof2]
「いやね、昨日の王子様とは会えたのかなってっ。」
私は思わず大笑いしてしまった。
「アハハハハハ!!お、お、王子さ…っまって!んな素敵な言葉ウチの人生にはないねっ。」
「えーっ!そんなことないよ。で、やっぱり昨日っきり?」
「今朝会ったけど?」
:22/10/18 18:13
:Android
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#909 [○○&◆.x/9qDRof2]
それを聞くと暁子ちゃんは目を輝かせた。可愛いらしいのう……と私は暁子ちゃんのキラキラした目の光を浴びながら思った。
「名前は?!」
「さぁ。」
「歳は?!」
「さぁ。」
「どこの人?!」
「さぁ。」
「えぇー!」
:22/10/18 18:13
:Android
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#910 [○○&◆.x/9qDRof2]
「えー。」
私の答えに暁子ちゃんは心底がっかりした。だって何故に名前やら歳やらを聞かねばならないのだろうか。別に私がその人にズキュン!ときた訳じゃないのに。いやズキュン!ときたとしても、私はそんなに積極的タイプではないし。
:22/10/18 18:13
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#911 [○○&◆.x/9qDRof2]
「暁子ちゃん。知ってるでしょ?私が男の人恐いって。」
「でも彼氏は欲しいでしょ?なんならその人好きになったらいいじゃない!」
どちらかと言えば相手に選ぶ権利があると思うんだが……。第一私なんかに好きになられたら相手は困るだろうに。私は遠い目をしながらそう思った。
「あ、そういえば、どっかの大学から生徒が美術学科の作品見に来るらしいよ。」
:22/10/18 18:14
:Android
:h3l12Mig
#912 [○○&◆.x/9qDRof2]
え、何その迷惑な話。
「何の為に……。」
「知らない。でも来るって。今日。」
「今日―――――っ?!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
授業の油絵で私は頭を悶々とさせながらキャンバスに向かっていた。飾られているのならまだしも、今からここに来てじろじろ見られるだなんて辛抱ならなかった。
:22/10/18 18:14
:Android
:h3l12Mig
#913 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁ……どこかへ消えてしまいたい……。唯一それを止めてくれるのが聞いてる音楽だった。何かに集中したい時はこうするのが一番なのだ。
「こんにちわー。」
!!!!
来た……。
先生達の挨拶を微かに聞きながら私はキャンバスに集中しようとしていた。しかしチロリと視線を来た人達に向けると私は絶句した。なんと女の子だけじゃなく男の子もいたのだ。あぁー最悪……。
:22/10/18 18:14
:Android
:h3l12Mig
#914 [○○&◆.x/9qDRof2]
一切私はそちらに気にならない様に音楽の音量をさっきより上げた。これでいいだろう。筆をまた動かせた。
:22/10/18 18:14
:Android
:h3l12Mig
#915 [○○&◆.x/9qDRof2]
白い君
「…ぃ」
「おーい」
ん…
うるせぇな
ゆっくりとまだ重たい目を開く
「…うわっ!」
ガタン
「っ…痛ぇ」
「何落ちてんだよ」
:22/10/18 18:16
:Android
:h3l12Mig
#916 [○○&◆.x/9qDRof2]
目の前にはぎゃはぎゃは笑っている健太
「うっせぇな…何で俺ここいんの」
「お前俺の電話中に急に喋んなくなってさーおかしいと思って、まぁ一回切ったんだよ
担任が呼んでこい呼んでこいうっせぇから屋上に避難してたわけ
そしたらお前から着信あってさ」
:22/10/18 18:16
:Android
:h3l12Mig
#917 [○○&◆.x/9qDRof2]
「は?俺かけてねぇぞ」
「まぁ最後まで聞けって」
⏰:09/08/17 21:04 📱:SH001 🆔:cN1dyu0A
#34 [:ゆりか:]
「女が喋って…」
「女?」
:22/10/18 18:16
:Android
:h3l12Mig
#918 [○○&◆.x/9qDRof2]
「「この人道で倒れてるよ」って。俺疑問ばっか浮かんで質問したんだよ」
健太の事だからばーって質問攻めしたんだろうな
「俺の質問にその娘全く答えねぇで「公園に捨てときます」だってさ!」
:22/10/18 18:17
:Android
:h3l12Mig
#919 [○○&◆.x/9qDRof2]
#35 [:ゆりか:]
捨てときますって…
その女って
何かあいつっぽい
本当にあいつだったり?
「しょーがねぇから公園まで行ったんだぜ俺」
「へー…」
「何だよその反応!もっと感謝の気持ちはねぇのか」
:22/10/18 18:17
:Android
:h3l12Mig
#920 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あーども」
「はぁ…もうお前しらねぇぞ」
⏰:09/08/17 21:35 📱:SH001 🆔:cN1dyu0A
#36 [:ゆりか:]
「女は」
「あ?」
「その女どんな感じだった」
「それがさ、いなかったんだよ」
「いなかった?」
:22/10/18 18:17
:Android
:h3l12Mig
#921 [○○&◆.x/9qDRof2]
「お前だけだったよ」
⏰:09/08/17 22:29 📱:SH001 🆔:cN1dyu0A
#37 [:ゆりか:]
「何か不思議だよなー」
ガラガラ
「あら起きたの?」
「お、先生じゃーん」
鼻の下をのばす健太
俺この先生嫌いなんだよな
保険室に来たくない訳
こいつがいるから
:22/10/18 18:18
:Android
:h3l12Mig
#922 [○○&◆.x/9qDRof2]
男には美人で有名な先生
でもすげぇ香水でいい女って感じが嫌だ
「長島くん大丈夫?」
「…あぁ」
まだだるい体を起こして布団からでようとする
「ちょっと、まだ熱あるのよ」
「うるせぇよ」
:22/10/18 18:18
:Android
:h3l12Mig
#923 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺を触ろうとした手をはらいのけて保健室を出る
「おい祥ー忘れてんぞ」
健太の手には俺の荷物
「あぁ悪いな」
「お前本当に嫌いだよなーあの先生」
「あいつうぜぇ」
「そうかー?俺にはマリリンモンローにしか見えねんだけど笑」
:22/10/18 18:18
:Android
:h3l12Mig
#924 [○○&◆.x/9qDRof2]
「お前見る目ねぇなー全然似てねぇよ」
「いや胸とかそっくりだろ」
胸…知らねぇよ
「おい長島ー」
後ろを振り向くと担任の姿
「げっ森岡じゃん」
健太が顔をしかめる
「何だよ」
:22/10/18 18:19
:Android
:h3l12Mig
#925 [○○&◆.x/9qDRof2]
「何だよじゃないだろー今日は体調悪かったみたいだが、ちゃんと学校に来い」
「あぁ」
健太は森岡が苦手
俺は…別に嫌いじゃねぇけど
「帰るわ」
「はぁー…今日は見逃してやるから明日は来い」
「行くっつの」
森岡に背をむけて歩き出す
「お前どうやって帰んだよ」
:22/10/18 18:19
:Android
:h3l12Mig
#926 [○○&◆.x/9qDRof2]
あぁそうか
俺今日バイクじゃねぇんだ
「健太のバイ「無理」」
「んなフラフラしてるお前に貸したくねぇ」
何だかんだでこいつも心配してくれてんだな
「そんなけちけちしてっと女できねぇぞ」
「なっ!うるせぇよ。帰りよるとこあるから先行くぜ」
「じゃあな」
「おお」
歩いて帰るか…
ポケットから携帯をとりだそうとする
あれ…ねぇじゃん
はぁ、ついてねぇな
保健室では使ってねぇし
なくなったとしたら…あの公園か
めんどくせぇなー
:22/10/18 18:20
:Android
:h3l12Mig
#927 [○○&◆.x/9qDRof2]
重たい足で公園に向かった
健太は確か…俺ベンチに倒れてたたっつってたな
この公園にベンチはひとつしかねぇし
これのことか
目の前には古ぼけたベンチ
「汚ぇな」
10分ぐらい探したけど携帯の姿は見当たらない
「ねぇじゃん」
:22/10/18 18:20
:Android
:h3l12Mig
#928 [○○&◆.x/9qDRof2]
諦めるか…
煙草を取り出して火をつけた
フー
「君これ探してる?」
後ろを振り向くと
あいつの姿…と手に持った携帯
「何で持ってんだよ」
「助けてあげたのに」
:22/10/18 18:21
:Android
:h3l12Mig
#929 [○○&◆.x/9qDRof2]
やっぱりこいつか
「助けたじゃなくて捨てただろ」
「ははっお友達に聞いたの?」
「あぁ」
「だって君の友達ちょっとうるさかったからさ」
あいつはベンチに座る
服汚れねぇのかよ
「はい」
携帯を突き出す
「あ、そういえば何で持って帰ったんだよ」
さっき答えてねぇよな
:22/10/18 18:21
:Android
:h3l12Mig
#930 [○○&◆.x/9qDRof2]
「間違えたの」
は?どう間違えんだよ
「勝手に見て悪いんだけどあの待受何………?」
待受
何でそんなこと
あれは
誰が見ても絶対意味は分からねぇ
「…別に何もねぇよ」
:22/10/18 18:22
:Android
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#931 [○○&◆.x/9qDRof2]
「…そっか」
あいつは少し顔をふせた
何だよ…
「もう帰るね」
ばっと立ち上がる
こんな時間に一人でかよ
「送る」
「いいよ」
:22/10/18 18:22
:Android
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#932 [○○&◆.x/9qDRof2]
「俺がよくねぇ」
「じゃあ近くまでね」
振り向くあいつ
俺の少し前を歩く細くて華奢な体
ちゃんと食ってんのか
「お前…何で前歩くんだよ」
「んー?癖なの」
「癖って…変な癖だな」
:22/10/18 18:22
:Android
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#933 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そうかな」
それからしばらく俺達は喋らなかった
でも不思議とこの空間が
心地よかった
ドンッ
「痛ぇー」
あいつの頭にぶつかった俺の顎
「いきなり止まんなよ」
「ここ」
:22/10/18 18:23
:Android
:h3l12Mig
#934 [○○&◆.x/9qDRof2]
「は?」
「君に送ってもらうのはここまで」
くるっと振り返るあいつ
ここってあの丘の前かよ
「ありがとね」
素直だな
「あぁ」
「見て」
あいつが指差す方向には
綺麗に輝く満月
:22/10/18 18:23
:Android
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#935 [○○&◆.x/9qDRof2]
「君が狼男だったら私死んでるね」
いきなり何だよ
「はっそうだな」
「はい」
差し出された手
「何だよ」
「お別れの握手」
:22/10/18 18:23
:Android
:h3l12Mig
#936 [○○&◆.x/9qDRof2]
お別れ?
「お前どっか行くのか?」
「行かないよ」
「じゃあ何で…」
「今日のお別れの握手」
「あぁ」
俺は少し強くその手を握った
:22/10/18 18:24
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#937 [○○&◆.x/9qDRof2]
「君…まだ熱あったんだ」
そういえばそうだったな
「たいしたことない」
「強がんないでさ…ゆっくり休みな」
「あぁ」
ぱっと離れた手
「さぁそろそろ帰るね」
「本当にここまででいいのかよ」
:22/10/18 18:24
:Android
:h3l12Mig
#938 [○○&◆.x/9qDRof2]
「いいの」
「そうか…気ぃつけて帰れよ」
「うん」
「明日…」
「ん?」
「明日も会えるか…?」
:22/10/18 18:24
:Android
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#939 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:25
:Android
:h3l12Mig
#940 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれの彼女は、とんでもない猫かぶりだった。
容姿はこれといって秀でていたわけではない。ただ、コミュニケーション能力は抜群にあったし、声と笑顔はめちゃくちゃかわいかったもので、おれはすぐさま虜になった。
:22/10/18 18:29
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#941 [○○&◆.x/9qDRof2]
「ねえね、きみ、頭いいの?」
それがおれと彼女の、初めての接触だった。猫みたいなふうに首を傾げながら、それでもすこし高慢な雰囲気を漂わせながら、彼女はおれに話しかけてきた。
「え、ああ、まあ、うん」
「ふうん、勉強すき?」
「う、うん」
:22/10/18 18:30
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#942 [○○&◆.x/9qDRof2]
「じゃ、今度教えて?」
おれは言葉もなく頷くほかなかった。きらきらした瞳に見つめられると、言葉が恥ずかしがって喉元から出てこなくなってしまうのだ。
しかしそれきり、彼女と会話を交わすことはなかった。おれは至極ふつうな男子生徒だったし、彼女はクラスメイトとのコミュニケーションで、毎日駆け回っていた。
:22/10/18 18:30
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#943 [○○&◆.x/9qDRof2]
すこし、寂しい。いや、かなり寂しい。
彼女がほかの誰かに笑いかけるたびに、おれのなかの焦燥感が鎌首をもたげた。どうしようもなく愛しいその姿に、ただ一度でも触れてみたいと思った。いけないと知りながらも、情欲の炎は燃え上がるばかり。
:22/10/18 18:30
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#944 [○○&◆.x/9qDRof2]
そしておれは、見てしまった。
彼女が、泣いている。斜陽を一身に浴びながら、ただただ泣いているのだ。
音はない。しゃくりあげる様子もない。ただ静かに、口元をかたくつぐんでいる。
「……見ないでよ」
:22/10/18 18:30
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#945 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれの存在は、いつの間にか彼女にバレていたらしい。彼女はおれをねめつけて言った。
「あんたなんかには、ぜったい分かりっこないんだから」
おれはもうどうすればいいのかわからなかった。いつも愛らしい笑顔を振りまいている彼女が、泣きながら牙を剥いているのだ。
:22/10/18 18:30
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#946 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれは彼女にとって気の許せる人間でないから、触れることなんてできない。当然ながら同情さえも、いまの彼女にとっては余計なお世話といったところか。
ほんとうは、その涙を拭ってやりたいと思ったし、冷え切った心身を抱き締めてやりたいと思った。行き場を失った衝動が、彼女のうちを食い破るのなら、それがすべておれに向けばいいのにと思った。
:22/10/18 18:31
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#947 [○○&◆.x/9qDRof2]
それでも、おれは彼女にとって他人であり、さしたる会話を交わしたわけでもない。彼女からすればおれは日常を彩るただの記号で、下手をすれば踏み台にすらならない程度の存在なのだから、今のおれには彼女のためにしてやれることなど、なにひとつないのだ。
:22/10/18 18:31
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#948 [○○&◆.x/9qDRof2]
どうしようもない沈黙がおれと彼女を包み込む。それでも彼女の涙が止むことはないし、おれの緊張が治まることもない。どうすればいいのだろうと思案したところで、おれにはなにも出来ない。
「出てって」
:22/10/18 18:31
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#949 [○○&◆.x/9qDRof2]
そのときのおれには、彼女の言葉に従うのが精一杯だった。動揺が喉元でせせら笑って、声すら出せない状況において、むしろなにが出来たというのだろうか。
おれは彼女を救いたいという衝動に後ろ髪を引かれながら、やむなく背を向けた。
:22/10/18 18:31
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#950 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女の特別になりたい。もう二度と泣くことのないよう、おれの胸で暖めてやれるよう。彼女がおれだけを、見てくれるように。
:22/10/18 18:32
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#951 [○○&◆.x/9qDRof2]
そう一度覚悟を決めてしまえば、もうなにも躊躇うことなどなかった。
まず真っ先におれは彼女の友達になった。いや、友達というのはいささか無理があるかもしれない。
:22/10/18 18:32
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#952 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女のグループの一員となった、というのが正しい。まだ彼女はまっすぐにおれを見ることはなかったけれども、おれは確かに彼女の周囲に溶け込み、また、上辺といえども定期的に彼女と談笑を交わすようになった。
:22/10/18 18:32
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#953 [○○&◆.x/9qDRof2]
そして彼女の周囲にいて改めて気付いたことといえば、やはり彼女の笑みは花も綻ぶほどにかわいいということである。笑うと、ちいさく口角がへこむ。すると年中赤いほっぺがすこし持ち上がって、やけに突っつきたくなる衝動に駆られる。
:22/10/18 18:32
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#954 [○○&◆.x/9qDRof2]
もしかしたらおれは、彼女のことを加護すべき小動物だと認識しているのかもしれないとも思う。背丈は小さいし、よく転ぶ。おまけにちょこまかと、動き回る。正直言ってしまえば、我が家のハムスターにそっくりである。
:22/10/18 18:32
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#955 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:33
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#956 [○○&◆.x/9qDRof2]
笑ってごまかそうにも俺の頭をよぎったのは、さっき呼ばれた「カケルちゃん」の一言。え?まさか?うそ、だって.......。
:22/10/18 18:35
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#957 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そう、そのまさかだよ。正真正銘、藤堂 雛太、本人だ」
踏ん反り返る圭太郎に目の前の七川さんもコクリと頷く。は?え?有り得ないだろぉ!?
:22/10/18 18:35
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#958 [○○&◆.x/9qDRof2]
「だって、雛太は男だし!一緒に木ぃ登ったし!だいたい名字が違うじゃん!アイツ藤堂!目の前にいるの七川さん!!」
「親が離婚して.......こっちに帰ってきたの」
申し訳なさそうに上目使いでそう言ったのは七川さん。
:22/10/18 18:35
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#959 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あはは、あ、そう‥そうなんだ?」
多分俺いま、涙目。
「改めまして。七川雛多です。ただいま、カケルちゃん」
ひなたは、女で.......七川さん?しかも“雛多”って!なになに?いつから漢字を間違ってたの?遠ざかる意識の中で“雛多”と圭太郎の手が俺を支えてくれるのがわかった。いつかもこんなことあったっけ。
:22/10/18 18:35
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#960 [○○&◆.x/9qDRof2]
嗚呼、そうだ、あの時。
それは俺達がまだ木に登ってじゃれ合っていた日のこと。俺が木の枝にひっついてた何かのサナギを取ろうとして、木から落ちそうになったのを二人が支えきれずに三人一緒に落っこちて、仲良く病院送りになった日までさかのぼる。
:22/10/18 18:36
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#961 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺だけ処置が長引き、あとの二人は待合室で俺のことを待っててくれた。その時、まさかこんな会話がされてたなんて、当時の俺が知るはずもなく、
「転校、するんだ.......」
雛多のいきなりの告白にうろたえる圭太郎。
:22/10/18 18:36
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#962 [○○&◆.x/9qDRof2]
「もう会えないの?」
「わかんない.......だけど、次会う時にはちゃんと女の子らしくなってるから」
大きな目をさらに大きくして驚く圭太郎。
「カケルちゃんには、そのいつかまで言わないで。いまはまだ、このサナギにもなれてないけど。絶対、蝶々みたいに綺麗になって、綺麗に、なって.......カケルちゃんのとこへ戻ってくるから!」
:22/10/18 18:36
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#963 [○○&◆.x/9qDRof2]
「てな事があったわけよ!」
なんとか意識を保った俺は、引き続き昼休みの音楽準備室で昔話を聞かされた。俺の隣には、雛太改め、雛多がいる。もちろん俺と同じくらい顔を真っ赤にして。
「何て言うかその.......」
:22/10/18 18:36
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#964 [○○&◆.x/9qDRof2]
まごつく俺を見るに見兼ねた圭太郎が「ま、そういう事だから!後は二人でごゆっくり!」と、また意地悪そうにヒヒヒと笑って俺達を残し準備室から去って行った。
「.......ひ、雛多?」
ここにいるのがあの、ひなた?信じられない思いでいっぱいの俺を、雛多が笑顔で包んでくれる。
:22/10/18 18:36
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#965 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あの時は、おてんばだったし、みんなわたしのこと男の子だって思ってたから.......でも、騙すつもりはなかったの、ごめんなさい」
そんな事はどうでもいい!
「俺んとこに戻ってくるって.......どういう意味?」
ヤベっ、圭太郎の意地悪がうつっちゃったかな。
:22/10/18 18:37
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#966 [○○&◆.x/9qDRof2]
「えっ」と小さく呟くと、さらに顔を赤くしてうつむく雛多。
「こっこういう意味って思っても、いい?」
そんなきみがめちゃくちゃ可愛い過ぎて、思わず日向を抱き寄せる。コクンとわずかに首が揺れて、きみの甘い香りが俺達を包む。人ってこんなにあったかいんだ。窓から漏れる光に反射して、きみの髪がキラキラ光る。
:22/10/18 18:37
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#967 [○○&◆.x/9qDRof2]
そういえば、雛太の髪も、柔らかかったっけ.......だけど、こんなにいい匂いはしなかったな。なんて、幼い頃の“雛太”の面影を、俺の傍らで小さくなってる“雛多”の姿に重ねてみる。すると、わずかに白い息を吐きながら、雛多がぽつりと呟いた。
「.......カケルちゃん、知ってる?」
:22/10/18 18:37
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#968 [○○&◆.x/9qDRof2]
その声が少しかすれてて、思わず耳を傾けると同時に、雛多の肩をもう一度強く引き寄せた。
「知ってる?青虫はね、空に恋い焦がれて一生懸命綺麗になるの。少しでも空に近づきたくて、羽まで伸ばして空を翔けるの.......」
:22/10/18 18:37
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#969 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺の胸にうずくまりながら、雛多が窓の外を見る。
「ねぇカケルちゃん.......わたし、蝶々になれた?」
「あぁ、俺にはもったいないくらい、綺麗.......に、なったよ」
自分で自分が恥ずかしい。俺ってこんなセリフ言えるんだ。
:22/10/18 18:37
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#970 [○○&◆.x/9qDRof2]
「まっまさか蝶に帰省本能があるとは知らなかったけどな!」
照れ臭いのを隠すように、わざとおどけて話してみる。その勢いできみの頭に俺のこめかみがコツンとぶつかる。そのまま、顔を見合わせるとお互い耳まで真っ赤っか。俺ときみの笑い声が、甘い香りと共に準備室をいっぱいにする。俺が空だと笑う、きみ。
:22/10/18 18:38
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#971 [○○&◆.x/9qDRof2]
どうせ翔けるなら青空がいい。空にたどり着いた蝶には、一体どんなご褒美が待ってるんだろう?
「雛多、」
きっと空だって蝶が可愛くて仕方ないから、優しく見守るだけじゃ済まないだろ。そんなこじつけを考えながら、きみのおでこにキスをする。顔を見合わせると、またも笑顔がこぼれてしまう。
:22/10/18 18:38
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#972 [○○&◆.x/9qDRof2]
「こんな.......俺でいいの?」
おでこをくっつけて、きみにだけ聞こえるくらいの声で話す。まばゆい程の甘い笑顔で頷くきみは可愛過ぎて.......時が止まったんじゃないかと思えるくらい、長い長いキスを交わした。いつも見上げればそこにあるあの空ように、永遠にきみを見守り続ける。
:22/10/18 18:38
:Android
:h3l12Mig
#973 [○○&◆.x/9qDRof2]
甘ったるいこの感覚は、さしずめ、花の蜜ってとこかな?
□■■■■■■■■ END
■■■■■■■■□
:22/10/18 18:38
:Android
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#974 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:39
:Android
:h3l12Mig
#975 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:39
:Android
:h3l12Mig
#976 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:40
:Android
:h3l12Mig
#977 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:40
:Android
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#978 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:41
:Android
:h3l12Mig
#979 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:42
:Android
:h3l12Mig
#980 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:42
:Android
:h3l12Mig
#981 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:42
:Android
:h3l12Mig
#982 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:43
:Android
:h3l12Mig
#983 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:44
:Android
:h3l12Mig
#984 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 18:44
:Android
:h3l12Mig
#985 [○○&◆.x/9qDRof2]
よしっ!と、いちかばちかで、いつもは通らない左に曲がる。二分ぐらいバイクを走らせると、大きな屋敷が見えた。
「は?」
ああ、マジで迷った。何処か全然分かんねぇ。ふと前を見ると白いワンピースを着た女がいた。道…聞くしかねぇな。
:22/10/18 18:48
:Android
:h3l12Mig
#986 [○○&◆.x/9qDRof2]
「すいません、影山高校どうやって行ったら近いっすか?」
女が振り返る
一瞬
時が止まったかと思った
黒い大きな瞳
白い肌
俗に言う美人
:22/10/18 18:48
:Android
:h3l12Mig
#987 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あっち」
女は俺の後ろを指差した
「は?」
戻らねぇといけねぇのかよ
「君のすぐ後ろの道を曲がって左行ったらすぐ」
「どーも」
女のいうとおりに行ったら本当に近かった
バイクに鍵をかけてヘルメットをはずす
:22/10/18 18:49
:Android
:h3l12Mig
#988 [○○&◆.x/9qDRof2]
3時20分
「ぎりぎり…」
俺は走って教室にむかう
ドアを開けると皆が一斉にこっちを見た
ガタンと席に着く
「お前またサボりかよ」
唯一仲のいい前の席の健太
:22/10/18 18:49
:Android
:h3l12Mig
#989 [○○&◆.x/9qDRof2]
「うっせぇ」
「今日遅刻したら留年じゃねぇの?」
「ばーか休んでねぇから大丈夫だっつの」
「後5分で終わりだぜ?」
「それでも来てんだからいいだろ」
「かーっ!甘ぇなこの学校も」
「俺が校長だったら即退学させるな〜」
ケラケラと笑う健太
:22/10/18 18:49
:Android
:h3l12Mig
#990 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そしたらお前ボコボコにして学校やめてやるよ」
「はっ怖い怖い。笑 そういえば女の子が祥探しに来てたぜ」
永野祥(ながのしょう)
俺の名前
結構モテる
女には困らねぇし
自分から誘ったりしねぇ
そういうのは正直めんどい
:22/10/18 18:49
:Android
:h3l12Mig
#991 [○○&◆.x/9qDRof2]
「誰だっけ?顔は見た事あんだけどなー」
「いいよ思い出さなくて。めんどくせぇし」
「えーでも結構可愛い子だぜ?」
「興味ねぇ。俺帰って寝るわ」
チャイムが鳴り終わってかばんを持つ
「来た意味ねぇな」
「まぁな。」
:22/10/18 18:50
:Android
:h3l12Mig
#992 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あっ今度バイク貸せ」
「無理に決まってんだろ」
「何でだよ」
「お前に貸してもいいことねぇから」
健太がバイクを貸してくれって言うときはだいたい…ろくなことがない
「ちょっと走りてぇんだよ」
ほらな
:22/10/18 18:50
:Android
:h3l12Mig
#993 [○○&◆.x/9qDRof2]
健太の走るは暴走すんのと同じぐらいスピードが出る
前に貸してボロボロになって返ってきた
まあ当然一発殴って修理代貰ったけど
「何回も言うけど自分勝手ので走りゃいいだろ」
「俺のじゃ気分がのらねぇの。祥のは渋いかんなー」
「とりあえず却下」
文句を言う健太を置いて教室を出る
帰りも…あの道で帰るか
:22/10/18 18:50
:Android
:h3l12Mig
#994 [○○&◆.x/9qDRof2]
近道だから
なんて本当は言い訳かもしれない
少しだけあの女に会えるかもって期待がある
俺は速めにバイクを走らせた
朝見かけた大きい屋敷
行きは気付かなかったけどこの屋敷の横には丘がある
「でけぇなー」
屋敷を見て改めて思う
丘も負けないぐらい高い
:22/10/18 18:50
:Android
:h3l12Mig
#995 [○○&◆.x/9qDRof2]
何故か丘にすっげー登ってみたくなってバイクを降りた
登ってみると意外と暑くて
すぐ降りた
まぁ景色はいいんだけどな
一人暮らしはたまに嫌になる
かと言って女も呼びたくもないし
健太ぐらいしか来ねぇな
:22/10/18 18:50
:Android
:h3l12Mig
#996 [○○&◆.x/9qDRof2]
時計を見ると9時
そろそろ腹減ったし…コンビニでも行くか
俺は財布と携帯を持って家を出た
「ありがとうごさいました」
ウィーン
コンビニから出ると知らない女に声をかけられた
:22/10/18 18:51
:Android
:h3l12Mig
#997 [○○&◆.x/9qDRof2]
「祥じゃん!」
誰だよこいつ
「あ?誰」
「ひっどーい。ねぇ遊ばない?」
絡まりついてくる腕
「うぜぇよお前」
ぎゃあぎゃあ言う女を振り払う
お、こっからでもあの丘見えるのか
:22/10/18 18:51
:Android
:h3l12Mig
#998 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あれ…あいつ」
間違いない
あの女だ
俺はその丘に向かった
あいつは座って空を見ていて
俺は後ろで横に行っていいのか迷った
:22/10/18 18:51
:Android
:h3l12Mig
#999 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そんなとこいないでこっち来なよ」
あいつの言葉に少し驚いた
「あぁ、気付いてたんや」
「まぁね」
「何で君こんなとこ来たの」
:22/10/18 18:51
:Android
:h3l12Mig
#1000 [○○&◆.x/9qDRof2]
あいつは俺に視線をうつすことなく言う
「たまたまに決まってんだろ」
「何それ」
「お前は?」
「ん?」
「お前は何してんの?」
「見てんの」
「何を」
「見て分かるでしょ。空だよ」
:22/10/18 18:51
:Android
:h3l12Mig
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