・・万華鏡・・
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#930 [○○&◆.x/9qDRof2]
「間違えたの」

は?どう間違えんだよ

「勝手に見て悪いんだけどあの待受何………?」

待受


何でそんなこと
あれは

誰が見ても絶対意味は分からねぇ



「…別に何もねぇよ」

⏰:22/10/18 18:22 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#931 [○○&◆.x/9qDRof2]
「…そっか」

あいつは少し顔をふせた


何だよ…



「もう帰るね」

ばっと立ち上がる

こんな時間に一人でかよ

「送る」

「いいよ」

⏰:22/10/18 18:22 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#932 [○○&◆.x/9qDRof2]
「俺がよくねぇ」

「じゃあ近くまでね」

振り向くあいつ


俺の少し前を歩く細くて華奢な体

ちゃんと食ってんのか


「お前…何で前歩くんだよ」

「んー?癖なの」

「癖って…変な癖だな」

⏰:22/10/18 18:22 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#933 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そうかな」

それからしばらく俺達は喋らなかった

でも不思議とこの空間が

心地よかった

ドンッ


「痛ぇー」

あいつの頭にぶつかった俺の顎

「いきなり止まんなよ」

「ここ」

⏰:22/10/18 18:23 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#934 [○○&◆.x/9qDRof2]
「は?」

「君に送ってもらうのはここまで」

くるっと振り返るあいつ


ここってあの丘の前かよ


「ありがとね」

素直だな

「あぁ」

「見て」

あいつが指差す方向には


綺麗に輝く満月

⏰:22/10/18 18:23 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#935 [○○&◆.x/9qDRof2]
「君が狼男だったら私死んでるね」

いきなり何だよ

「はっそうだな」
「はい」

差し出された手

「何だよ」

「お別れの握手」

⏰:22/10/18 18:23 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#936 [○○&◆.x/9qDRof2]
お別れ?

「お前どっか行くのか?」

「行かないよ」

「じゃあ何で…」

「今日のお別れの握手」

「あぁ」

俺は少し強くその手を握った

⏰:22/10/18 18:24 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#937 [○○&◆.x/9qDRof2]
「君…まだ熱あったんだ」



そういえばそうだったな


「たいしたことない」


「強がんないでさ…ゆっくり休みな」



「あぁ」

ぱっと離れた手

「さぁそろそろ帰るね」

「本当にここまででいいのかよ」

⏰:22/10/18 18:24 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#938 [○○&◆.x/9qDRof2]
「いいの」


「そうか…気ぃつけて帰れよ」
「うん」

「明日…」
「ん?」
「明日も会えるか…?」

⏰:22/10/18 18:24 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#939 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>870-900

⏰:22/10/18 18:25 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#940 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれの彼女は、とんでもない猫かぶりだった。

 容姿はこれといって秀でていたわけではない。ただ、コミュニケーション能力は抜群にあったし、声と笑顔はめちゃくちゃかわいかったもので、おれはすぐさま虜になった。

⏰:22/10/18 18:29 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#941 [○○&◆.x/9qDRof2]
「ねえね、きみ、頭いいの?」

 それがおれと彼女の、初めての接触だった。猫みたいなふうに首を傾げながら、それでもすこし高慢な雰囲気を漂わせながら、彼女はおれに話しかけてきた。

「え、ああ、まあ、うん」
「ふうん、勉強すき?」
「う、うん」

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#942 [○○&◆.x/9qDRof2]
「じゃ、今度教えて?」

 おれは言葉もなく頷くほかなかった。きらきらした瞳に見つめられると、言葉が恥ずかしがって喉元から出てこなくなってしまうのだ。

 しかしそれきり、彼女と会話を交わすことはなかった。おれは至極ふつうな男子生徒だったし、彼女はクラスメイトとのコミュニケーションで、毎日駆け回っていた。

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#943 [○○&◆.x/9qDRof2]
 すこし、寂しい。いや、かなり寂しい。
 彼女がほかの誰かに笑いかけるたびに、おれのなかの焦燥感が鎌首をもたげた。どうしようもなく愛しいその姿に、ただ一度でも触れてみたいと思った。いけないと知りながらも、情欲の炎は燃え上がるばかり。

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#944 [○○&◆.x/9qDRof2]
 そしておれは、見てしまった。

 彼女が、泣いている。斜陽を一身に浴びながら、ただただ泣いているのだ。
 音はない。しゃくりあげる様子もない。ただ静かに、口元をかたくつぐんでいる。

「……見ないでよ」

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#945 [○○&◆.x/9qDRof2]
 おれの存在は、いつの間にか彼女にバレていたらしい。彼女はおれをねめつけて言った。

「あんたなんかには、ぜったい分かりっこないんだから」

 おれはもうどうすればいいのかわからなかった。いつも愛らしい笑顔を振りまいている彼女が、泣きながら牙を剥いているのだ。

⏰:22/10/18 18:30 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#946 [○○&◆.x/9qDRof2]
 おれは彼女にとって気の許せる人間でないから、触れることなんてできない。当然ながら同情さえも、いまの彼女にとっては余計なお世話といったところか。
 ほんとうは、その涙を拭ってやりたいと思ったし、冷え切った心身を抱き締めてやりたいと思った。行き場を失った衝動が、彼女のうちを食い破るのなら、それがすべておれに向けばいいのにと思った。

⏰:22/10/18 18:31 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#947 [○○&◆.x/9qDRof2]
 それでも、おれは彼女にとって他人であり、さしたる会話を交わしたわけでもない。彼女からすればおれは日常を彩るただの記号で、下手をすれば踏み台にすらならない程度の存在なのだから、今のおれには彼女のためにしてやれることなど、なにひとつないのだ。

⏰:22/10/18 18:31 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#948 [○○&◆.x/9qDRof2]
 どうしようもない沈黙がおれと彼女を包み込む。それでも彼女の涙が止むことはないし、おれの緊張が治まることもない。どうすればいいのだろうと思案したところで、おれにはなにも出来ない。

「出てって」

⏰:22/10/18 18:31 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#949 [○○&◆.x/9qDRof2]
 そのときのおれには、彼女の言葉に従うのが精一杯だった。動揺が喉元でせせら笑って、声すら出せない状況において、むしろなにが出来たというのだろうか。
 おれは彼女を救いたいという衝動に後ろ髪を引かれながら、やむなく背を向けた。

⏰:22/10/18 18:31 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#950 [○○&◆.x/9qDRof2]
 彼女の特別になりたい。もう二度と泣くことのないよう、おれの胸で暖めてやれるよう。彼女がおれだけを、見てくれるように。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#951 [○○&◆.x/9qDRof2]
 そう一度覚悟を決めてしまえば、もうなにも躊躇うことなどなかった。
 まず真っ先におれは彼女の友達になった。いや、友達というのはいささか無理があるかもしれない。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#952 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女のグループの一員となった、というのが正しい。まだ彼女はまっすぐにおれを見ることはなかったけれども、おれは確かに彼女の周囲に溶け込み、また、上辺といえども定期的に彼女と談笑を交わすようになった。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#953 [○○&◆.x/9qDRof2]
 そして彼女の周囲にいて改めて気付いたことといえば、やはり彼女の笑みは花も綻ぶほどにかわいいということである。笑うと、ちいさく口角がへこむ。すると年中赤いほっぺがすこし持ち上がって、やけに突っつきたくなる衝動に駆られる。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#954 [○○&◆.x/9qDRof2]
もしかしたらおれは、彼女のことを加護すべき小動物だと認識しているのかもしれないとも思う。背丈は小さいし、よく転ぶ。おまけにちょこまかと、動き回る。正直言ってしまえば、我が家のハムスターにそっくりである。

⏰:22/10/18 18:32 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#955 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>930-960

⏰:22/10/18 18:33 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#956 [○○&◆.x/9qDRof2]
 笑ってごまかそうにも俺の頭をよぎったのは、さっき呼ばれた「カケルちゃん」の一言。え?まさか?うそ、だって.......。

⏰:22/10/18 18:35 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#957 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そう、そのまさかだよ。正真正銘、藤堂 雛太、本人だ」

踏ん反り返る圭太郎に目の前の七川さんもコクリと頷く。は?え?有り得ないだろぉ!?

⏰:22/10/18 18:35 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#958 [○○&◆.x/9qDRof2]
「だって、雛太は男だし!一緒に木ぃ登ったし!だいたい名字が違うじゃん!アイツ藤堂!目の前にいるの七川さん!!」
「親が離婚して.......こっちに帰ってきたの」

申し訳なさそうに上目使いでそう言ったのは七川さん。

⏰:22/10/18 18:35 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#959 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あはは、あ、そう‥そうなんだ?」

 多分俺いま、涙目。

「改めまして。七川雛多です。ただいま、カケルちゃん」

ひなたは、女で.......七川さん?しかも“雛多”って!なになに?いつから漢字を間違ってたの?遠ざかる意識の中で“雛多”と圭太郎の手が俺を支えてくれるのがわかった。いつかもこんなことあったっけ。

⏰:22/10/18 18:35 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#960 [○○&◆.x/9qDRof2]
嗚呼、そうだ、あの時。


 それは俺達がまだ木に登ってじゃれ合っていた日のこと。俺が木の枝にひっついてた何かのサナギを取ろうとして、木から落ちそうになったのを二人が支えきれずに三人一緒に落っこちて、仲良く病院送りになった日までさかのぼる。

⏰:22/10/18 18:36 📱:Android 🆔:h3l12Mig


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