・・万華鏡・・
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#60 [果樹]
「ばか無理すんな。保健室行くぞ」

「え・・・?」

俺は咲良の背中と膝の裏に手を回し、抱え上げた。

属に言うお姫様抱っこだ。

腕の中では咲良が目を丸くしていた。

「掴まってろな?」

「へ・・・?あ・・・うん」

⏰:08/05/30 23:59 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#61 [果樹]
俺の言葉に咲良はおずおずと胸元のカーディガンに手を伸ばしそれをぎゅっと握り締めた。

それを確認した俺は、なるべく咲良に負担がかからないように、歩いて保健室に向かった。


――――――――・・・・


保健室のベッドに咲良を下ろすと安心したのか、咲良はいつの間にか眠りについていた。

⏰:08/05/31 00:00 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#62 [果樹]
俺は5限目をサボって咲良についている。

今は宮ちゃんが入れてくれた茶を一緒に飲んでいるところだ。


「なぁ、宮ちゃん・・・。咲良どっか悪いのか?」


俺はこの間からずっと思っていたことを宮ちゃんに聞いた。

⏰:08/05/31 00:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#63 [果樹]
本当は、咲良本人から聞きたいが、きっと咲良に聞いたって、なんでもない大丈夫と返されるのが落ちだから咲良には聞けなかった。


宮ちゃんは「んー・・・」と俺の顔を見ながらしばらく考えて、はぁと短い溜め息をついた。

そしてゆっくりと口を開く。

⏰:08/05/31 00:08 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#64 [果樹]
「水嶋はね・・・心臓の病気なんだ」

「え!?」

俺の頭に衝撃が走る。

一瞬理解が出来なかった。

どうしてだろう身体が震える。

「本当なら病院にいないといけないのに本人の希望で学校に通ってるらしいんだけど・・・もう限界かもな」

宮ちゃんが少し寂しそうに言った。

⏰:08/06/01 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#65 [果樹]
「そんな・・・」

咲良が病気・・・?

俺はうまく自分の中で今聞いた事が処理できなかった。

うつ向く俺の肩を宮ちゃんはぽんぽんと叩いて、「ついててやんな」と一言残して保健室を出ていった。


俺は立ち上がって咲良が眠っているベッドに行き、パイプ椅子に腰を下ろすと布団の上に出ていた咲良の白く細い指を握り締めた。

⏰:08/06/01 02:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#66 [果樹]
なぁ咲良・・・。
俺はどうすればいいんだ・・・っ!?



「千晃くん・・・?」

名前を呼ばれ、顔を上げると咲良がこっちを見て笑っていた。

「咲良・・・!」

「私の病気のこと聞いちゃった・・・?」

起き上がって俺の方を見て、どこか悲しげに聞いてくる咲良。

⏰:08/06/01 02:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#67 [果樹]
なんでわかったのだろうかと疑問に思っていたら、咲良の指が延びてきて、俺の目元に触れる。

「泣いてる・・・」

見ると、咲良の指には水滴がついていた。

俺の涙・・・?

いつのまにか俺の目からは涙が溢れていた。

俺は急いでそれをカーディガンの袖口で拭った。

⏰:08/06/01 02:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#68 [果樹]
「もうっ宮島先生のお喋り!」

と咲良は冗談めかしげに怒っていた。

そして咲良はうつ向き哀しそうな表情でぽつりぽつりと話し始めた。

「私ね・・・学校ってまともに行ったことなかったの。小さい頃からずっと病院にいて、病院の中だけしか知らなかった。だからこの学校に通えた時すごく嬉しかったんだ。友達もできて、毎日楽しかった。でも、もう限界かなぁ・・・」

⏰:08/06/01 02:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#69 [果樹]
「咲良・・・」

咲良の目から一筋の涙が流れ落ちた。

「自分と同じ名前の・・・桜の花の下で千晃くんにも会えたのに・・・。なんであたしの心臓はちゃんと動いてくれないのかなぁ・・・っ」

ポタポタと咲良の目から流れ落ちた涙が布団に染みをつくった。

咲良は声を出すまいと下唇を噛んで必死に声を押し殺していた。

⏰:08/06/01 02:05 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#70 [果樹]
俺はそんな咲良が無償に愛しく感じて心臓がぎゅうっと痛くなった。


気が付けば俺は、自分の腕の中にその小さな身体を収めていた。


「俺が毎日見舞いに行くから!桜の花持って見舞いに行くからっ・・・だから早く治せよ!そんで元気になったらいっぱい遊びに行こう!なっ?」

⏰:08/06/02 13:29 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#71 [果樹]
俺の目からは拭ったはずの涙がまた溢れていたが、そんなことも気にせず俺は力いっぱい咲良を抱き締めた。


今俺にできることはこれくらいしかなかった。


すると咲良も俺の服をぎゅっと掴んで、「・・・・うん!」と涙を流しながらも笑顔で答えた。

⏰:08/06/02 13:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#72 [果樹]
それから咲良は、ちゃんと病院に戻った。

もちろん俺は桜の花を持って見舞いに行ったが、最初、枝を折って持っていったら咲良にこっぴどく叱られた。

咲良いわく、桜の枝は生えてきたりしないから折っちゃ駄目だったらしい。

それからは花びらを持って見舞いに行くと、咲良は笑って「ありがとう」と大事そうにその花びらを栞にしていた。

⏰:08/06/02 13:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#73 [果樹]
でも桜は咲いている時期が決まっているため散ってしまうと中々手に入れるのが難しかった。

でも俺はどうしても咲良に桜を見せてやりたくて、ネットや雑誌を使ってたくさん調べて毎日毎日なんとか咲良の元に桜の花を届けた。

その度に咲良は嬉しそうに笑うから俺はそれだけで、心が温かくなった。


そして季節は過ぎていった。

⏰:08/06/02 13:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#74 [果樹]
いつだったか嬉しそうに咲良が話してくれたことがあった。

「あたしの読んでいる本の詩の中にね、一番好きな詩があるの。それはね」



それは・・・――――

.

⏰:08/06/02 13:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#75 [果樹]
“僕はいつも窓から外を見ている

楽しそうな笑い声に耳を傾けるだけの僕

そんな僕をいつも励ますのは窓から見える桜の花

そこから動けない君はまるで僕そのもの

でもいつかこの足で陽の光のあるところに出られたなら僕はまず君の側で本を読もう

そしてこう言うんだ

『ああ、幸せだな』”

⏰:08/06/02 13:40 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#76 [果樹]
話し終えた後、「素敵でしょ?」と咲良は笑っていた。


なぁ、咲良。

お前は桜の木の下で本を読んでいるだけで、それだけで幸せだったんだな・・・。
お前が共感できるって言った意味が、今なら分かるよ。

⏰:08/06/02 13:42 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#77 [果樹]
.
――――――――・・・・


あれから二年・・・。

時が過ぎ、今日俺は卒業式を迎える。

去年より少し早く咲いた桜の木が俺の門出を祝ってくれているようだ。

いや、俺たちか・・・。

⏰:08/06/02 13:44 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#78 [果樹]
.



「千晃くーん!もーまたここにいたー。卒業式始まっちゃうよー?」



.

⏰:08/06/02 13:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#79 [果樹]
桜の木の下で寝転がっていた俺に、咲良が駆けよって来た。

「ああ」

返事をするだけで一向に起き上がろうとしない俺に諦めたのか、咲良は隣に腰を下ろした。


咲良をみる度、咲良がここにいるのが不思議な感じがする。

⏰:08/06/02 14:31 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#80 [果樹]
出席日数やら何やらいろいろ大変だったらしいが、咲良も無事、一緒に卒業できることになった。


「この桜ともお別れだね。」

上に咲く桜を見ながら寂しそうに言う咲良。

綺麗だ・・・。
とただそう思えた。


「咲良」

「ん?」

⏰:08/06/02 14:33 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#81 [果樹]
上体を起こした俺に咲良は小首を傾げる。

「ずっと言えなかったんだけどさ・・・。俺、お前が好きだよ」

「―――――っ!」

咲良の顔は驚いていてみるみる真っ赤になっていった。

「さっ卒業式に行くか!」

⏰:08/06/02 14:34 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#82 [果樹]
立ち上がって制服についた葉を手でぱんぱんと払いとり校舎に歩き出そうとした俺は、強い力に引き留められ進むことが出来ない。

後ろを振り返ると、咲良が俺のブレザーの裾をぎゅうっと両手で掴んでいた。

「あっあのね!」

「うん?」

俺は肩越しに咲良を見る。

⏰:08/06/02 14:36 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#83 [果樹]
咲良はうつ向いているが耳まで真っ赤になっていた。

「あたしも!あたしも千晃くんのこと・・・好きだよ」

「うん♪知ってる」

「なっ・・・!」

咲良は真っ赤な顔で俺をみて口をぱくぱくしている。

俺は咲良の方に振り向き、咲良と向き合う。

⏰:08/06/02 14:37 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#84 [果樹]
「クス・・・大好きだ咲良」

ちゅっと不意打ちで咲良の唇にキスをすれば咲良は顔を更に真っ赤にして「もうっ」と俺の胸を叩いてきた。


そしてすぐにいつもの優しい笑顔でふわっと笑ったんだ。

⏰:08/06/02 14:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#85 [果樹]
なぁ咲良。


俺たちの出会いはこの桜からだったな。

じゃあ今度はここから恋愛を始めようか・・・。



【桜咲クミライ恋ユメ】

―End―
.

⏰:08/06/02 14:51 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#86 [果樹]
.

あなたを見ている時間だけは幸せに包まれる。



story 2

【レンズ越しの恋】

.

⏰:08/06/03 02:27 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#87 [果樹]
あーやっぱり冴木先輩かっこいいなぁ。

あの取り巻きさえいなければ私が今頃!

・・・って何自惚れているんだろう私は。

はぁ・・・。


私は神田涼子。

私は毎朝、この渡り廊下から登校してくる冴木先輩を見ている。

⏰:08/06/03 05:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#88 [果樹]
冴木先輩とはあたしの想い人。

学校の中でもかっこいいと有名で、いつも周りには取り巻きの綺麗なお姉さま方。

三年生の冴木先輩に二年生の私が寄り付けるわけもなく、ここから見てることしか出来ない私。

はぁあー。

「また明日来よう」

私は渡り廊下を降りて教室に向かった。

⏰:08/06/03 05:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#89 [果樹]
だけど冴木先輩にみとれていた私は、渡り廊下にもう一人居たことに気が付かなかった。


「んーええ写真や。タイトルはさしずめ『切ない心』やろか?」


――――――――・・・・


あー今日も冴木先輩かっこいい。

また今日も私は、渡り廊下で冴木先輩を見ている。

⏰:08/06/03 05:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#90 [果樹]
軽くストーカーだ・・・。


今日は青空で気持ちがいいし、天井の無いこの渡り廊下はあたしの大好きな場所だ。

なんていったって冴木先輩も見れるし!


カシャッ

え?

「タイトルは『熱視線』。んー我ながらええタイトルや!」

⏰:08/06/03 05:45 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


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