・・万華鏡・・
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#71 [果樹]
俺の目からは拭ったはずの涙がまた溢れていたが、そんなことも気にせず俺は力いっぱい咲良を抱き締めた。
今俺にできることはこれくらいしかなかった。
すると咲良も俺の服をぎゅっと掴んで、「・・・・うん!」と涙を流しながらも笑顔で答えた。
:08/06/02 13:31
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#72 [果樹]
それから咲良は、ちゃんと病院に戻った。
もちろん俺は桜の花を持って見舞いに行ったが、最初、枝を折って持っていったら咲良にこっぴどく叱られた。
咲良いわく、桜の枝は生えてきたりしないから折っちゃ駄目だったらしい。
それからは花びらを持って見舞いに行くと、咲良は笑って「ありがとう」と大事そうにその花びらを栞にしていた。
:08/06/02 13:33
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#73 [果樹]
でも桜は咲いている時期が決まっているため散ってしまうと中々手に入れるのが難しかった。
でも俺はどうしても咲良に桜を見せてやりたくて、ネットや雑誌を使ってたくさん調べて毎日毎日なんとか咲良の元に桜の花を届けた。
その度に咲良は嬉しそうに笑うから俺はそれだけで、心が温かくなった。
そして季節は過ぎていった。
:08/06/02 13:34
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#74 [果樹]
いつだったか嬉しそうに咲良が話してくれたことがあった。
「あたしの読んでいる本の詩の中にね、一番好きな詩があるの。それはね」
それは・・・――――
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:08/06/02 13:36
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#75 [果樹]
“僕はいつも窓から外を見ている
楽しそうな笑い声に耳を傾けるだけの僕
そんな僕をいつも励ますのは窓から見える桜の花
そこから動けない君はまるで僕そのもの
でもいつかこの足で陽の光のあるところに出られたなら僕はまず君の側で本を読もう
そしてこう言うんだ
『ああ、幸せだな』”
:08/06/02 13:40
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#76 [果樹]
話し終えた後、「素敵でしょ?」と咲良は笑っていた。
なぁ、咲良。
お前は桜の木の下で本を読んでいるだけで、それだけで幸せだったんだな・・・。
お前が共感できるって言った意味が、今なら分かるよ。
:08/06/02 13:42
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#77 [果樹]
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――――――――・・・・
あれから二年・・・。
時が過ぎ、今日俺は卒業式を迎える。
去年より少し早く咲いた桜の木が俺の門出を祝ってくれているようだ。
いや、俺たちか・・・。
:08/06/02 13:44
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#78 [果樹]
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「千晃くーん!もーまたここにいたー。卒業式始まっちゃうよー?」
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:08/06/02 13:45
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#79 [果樹]
桜の木の下で寝転がっていた俺に、咲良が駆けよって来た。
「ああ」
返事をするだけで一向に起き上がろうとしない俺に諦めたのか、咲良は隣に腰を下ろした。
咲良をみる度、咲良がここにいるのが不思議な感じがする。
:08/06/02 14:31
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#80 [果樹]
出席日数やら何やらいろいろ大変だったらしいが、咲良も無事、一緒に卒業できることになった。
「この桜ともお別れだね。」
上に咲く桜を見ながら寂しそうに言う咲良。
綺麗だ・・・。
とただそう思えた。
「咲良」
「ん?」
:08/06/02 14:33
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