・・万華鏡・・
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#202 [果樹]
「おい。・・・・おい!」

煩い・・・。

「呼んでんだから返事くらいしろよ」

私は、はぁと溜め息をつき、シャーペンを机に置いて後ろを振り替える。

「お言葉ですが時田先生。私の名前は“おい”じゃありません」

さっきから煩く話しかけてくるこの男は、一週間前私の家庭教師になった時田総一郎。

⏰:08/06/05 15:01 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#203 [果樹]
椅子に座って足と腕を組んで、とても偉そうにしている。

これが家庭教師の姿なのだろうかと神経を疑う。

「じゃあつかさ」

しかも馴れ馴れしい。

「呼び捨てにしないでください」

私はばっさりと時田先生の言葉を切り捨て、また机に向かって勉強を始める。

⏰:08/06/05 15:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#204 [果樹]
「ったく可愛くねー女だな」

「あなたに可愛いとか思われたくありません」

ていうか教える気がないなら出ていって欲しい。

「お前さぁ顔は綺麗なんだから笑えばいいのに」

時田先生は私の横まで椅子を持ってきて、顔を覗き込んできた。

「先生、それは勉強に関係ないと思いますが」

⏰:08/06/05 15:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#205 [果樹]
相手をしても仕方がないので、私は時田先生と目を合わせないでひたすら目の前の問題を解いた。

「つーかお前さ。頭良いんだから家庭教師なんかいらなくね?」

今のは家庭教師としてあるまじき言葉だろう。

私は、また溜め息をつくと時田先生をちらりと見る。

「先生何も知らないんですね」

⏰:08/06/05 15:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#206 [果樹]
私が言葉を掃き捨てるように言うと先生は「何を?」と言って全く分からないという顔をした。

だから私は、問題を解きながら淡々と言葉にする。

「家庭教師っていうのは建前です。父の目的は私の監視ですから」

「監視・・?」

先生は眉間に皺を寄せ、怪訝な顔をする。

⏰:08/06/06 00:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#207 [果樹]
私は、手を休めることなく問題を解きながら先生の疑問に答える。

「私は父が決めた道を歩んで将来は父の跡を継ぐ。全て決められた事柄を私は実行するだけ。あなたは私が変な行動をしないように監視するんです」

淡々と述べる私に、先生は更に眉間に皺を寄せて、私を見てくる。

「お前はそれで満足なのか?」

⏰:08/06/06 00:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#208 [果樹]
満足・・・?

私はついふふっと笑ってしまった。

「私に自由はありませんから・・・」

満足だなんて一度も思ったことない。

いくら高いお洋服やブランド品を買って貰っても心までは満たされない。

一人で買い物も行けず、遊びに行くことも出来ない。

⏰:08/06/06 03:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#209 [果樹]
ただ籠の中でじっとして、父に飼われている鳥そのもの。

いくら籠の中で羽ばたいたって飛べるわけもなく、ただただ必死にもがくだけの滑稽な姿。


自由になりたいって何度も思った。

でもそれは叶わない夢。
籠の中で飼われている鳥は、籠の中から出ることを許されない。

⏰:08/06/06 03:03 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#210 [果樹]
「自由が欲しいなら俺がくれてやるよ」

そう言ってにっと笑った先生は、いきなり椅子から立ち上がると、テラスに通じる窓を開ける。

8月とはいえ、少し涼しい風が部屋の中に入ってくる。

一瞬風の冷たさに驚いて目を瞑る。

目を開けると、先生はテラスの手摺に片足をかけていた。

⏰:08/06/06 03:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#211 [果樹]
「え?ちょ・・先生何してるんですか?!危ないですよ!」

私はありえない光景に驚き、止めるために近付こうとした時、先生が振り返った。

「あれ?心配してくれんの?」

「ばっばかだって言ってるんです!」

にっと笑って言う先生に対して、私は何故か顔が熱くなった。

⏰:08/06/06 03:04 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


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