ギンリョウソウ
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#254 [向日葵]
[第6話]

聖史の帰る日が段々と迫ってきた。
もし帰る時に、ついて来て欲しい等と言われたらどうしようと戸惑っていると、聖史は思いもよらぬ事を言った。
それは、長袖じゃないと寒いなと感じた朝の事だった。

「やっぱり再来週に帰る事にしたんだ」

「え?どうしてですか?」

「そりゃ椿ともっと一緒にいたいからだよ」

ストレートにそう言われては、顔を赤くするしかなかった。
その一方で気になる事があった。

要の事だ。

⏰:08/08/20 01:38 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#255 [向日葵]
何の連絡もないまま1週間がたった。
相変わらず連絡はない。
何度携帯を見て、ため息をついたことか。
あの倒れた時、やっぱり追いかければ良かったと、今更ながら椿は後悔していた。

「――き。椿、聞いてる?」

ぼんやりとしていた椿は聖史の声にハッとして顔を上げた。

「ごめんなさい……っ。なんでしょうか……?」

「もしかして、要くんが気になる?」

「い……いえ、あの……」

返事に困っている椿を、聖史はふわりと包みこんだ。

⏰:08/08/20 01:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#256 [向日葵]
「僕が、椿の心に入る隙間はもうないのかな……?」

聖史は優しい人だ。
入る隙間がないなんて言っては悲しむだろう。
それは隙間がないことなのだろうかと、椿は心の中で首を傾げた。

第一、椿は好きと言う感情がいまいち分からないでいた。

傷つけたくない人と、どうしても気になってしまう人は、どう違うのだろうか。

椿が答えないでいると、聖史はゆるりと腕をほどいて微笑む。

「ごめん。困らせるつもりじゃなかったんだ。それにしても、最近僕は椿にくっつきすぎだね。今日は帰るよ」

⏰:08/08/20 01:50 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#257 [向日葵]
額に触れるか触れないかのキスを落とし、聖史は颯爽と去って行った。

顔を赤くしながらも、聖史が帰った事に少しホッとしている自分に嫌気がさした。

―――――――――…………

「3針……ねぇ……」

自宅のベッドの上で、包帯を巻いた掌をヒラヒラさせながら要は呟いた。

今は痛み止めを飲んでいるから痛みはない。

こんなのじゃ仕事は出来ないと、しばらくの休暇を取ると言って部屋に引きこもったのは4日前の事。

⏰:08/08/20 01:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#258 [向日葵]
さすがに暇になってきた。

仕事をしたいが、肝心の利き手がこうでははかどる事もなく、結局ベッドの上で寝そべっている。

読書でもしようかと半身を起こした要は、読みかけの本の隣に置いてある携帯に目をやった。

「……はぁ……」

毎日のように、椿から電話やメールが来ていた。
だが自分は返せないでいた。
すると2日ほど前からピタリと来なくなった。

愛想をつかされたかと心配になり、何度返信ボタンを押したか。
しかし文を作成しているうちに指は止まる。

今更何を言ったらいいのかが分からない。

⏰:08/08/20 02:00 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#259 [向日葵]
押し倒すわ、強引に唇を奪うわ、泣かすわ……。
考えてみれば最悪な事しかしていないではないかと頭を抱える。

それでも、気持ちは伝えた。
ただ椿から何の返事も返ってこない。

毎日のメールからは、前の事ならきにするなという文や、今日どんな出来事があったのかが書かれていた。

今すぐ返事をしてくれないのは、要自身が言った最初の言葉や、突然の兄的存在が現れたせいだろうと考える。

最初の言葉は、これからの自分の誠実な接し方で帳消しにすると意気込んでも、あの聖史がやはり邪魔だと要はイラついた。

⏰:08/08/20 02:06 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#260 [向日葵]
苦々しいため息をはいた後、ドアをノックされた。

「要さま」

大久保だった。

「なんだ」

「お客様が来ていますが、お通ししてもよろしいですか?」

「もしかして」と、微かな期待が胸をよぎる。

「誰だ」

「早乙女 聖史さ……」

「通すな追い返せ」

大久保が最後まで言う前に要は言った。

なんで奴が来るんだ。

⏰:08/08/20 02:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#261 [向日葵]
大久保は部屋から出ていかない。
戸口で誰かと喋っている。

「あの、要さま。ならばドア越しに話さないかと、早乙女さまがおっしゃってます」

要は大久保に聞こえないように舌打ちした。

きっと要と喋るまで帰る気がないのだろう。
なら早く喋って早く帰ってもらった方が無駄な抵抗を続けるよりマシだ。

「分かった。大久保、下がっていいよ」

大久保は一礼すると、ドアを開けたまま去って行った。

要はドア近くの椅子に移動する。

⏰:08/08/20 02:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#262 [向日葵]
「久しぶりだね」

「君には2度会いたくなかったけどね」

「手の調子はどう?」

「言っただろ。柔じゃない。これくらい痛くも痒くもないね」

微かに笑い声が聞こえる。

なんだか馬鹿にされている気がした要は、青筋をこめかみに浮かべながらさっさと帰ってもらおうと用件を訊く。

「僕も暇じゃないんだ。何の用かな」

「それは失礼。確かめたい事があってね」

「雑談はいい。要点だけ言ってくれ」

⏰:08/08/20 02:18 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#263 [向日葵]
「作戦なのかな?」

要はドアの方を向いて眉間にシワを寄せる。

「何が?」

「そうやって、拗ねてるみたいに頑なに椿に会わないのは、彼女の気をひく作戦なのかって訊いてるんだよ」

「拗ねてるだと……?」

事の元凶の奴が、こちらの心情も知らずに馬鹿にして……。

要は立ち上がるとドアに近づき、聖史がいるだろう場所を思いきり拳で叩く。

「君には吐き気がするほどイラつくよ。拗ねてるだと?ふざけた事を言われたものだ。君に僕や椿の何が分かるんだっ!」

⏰:08/08/20 02:23 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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