ギンリョウソウ
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#264 [向日葵]
言い終えてすぐに、反対側からもドンッ!と叩かれた。

「君のせいで……椿は僕に集中してくれない……。僕もそんなに気長じゃないんでね。作戦なら見事だねと、賛辞を贈りにきたんだよ」

冷静な口調だが、要と同じくらい彼もイラついているのだと分かった。
だからわざと要をイラつかせたのだろう。

「フェアに戦わないと言った筈だ。椿が僕で頭がいっぱいなら、僕は万々歳だね」

「なら僕にも考えがある。椿を今度帰る時に、泣き叫んでも連れて行くよ」

それを聞いた要は、戸口に出て聖史の姿を見つける。
聖史はドアに背を預けるようにして腕を組んでいた。

⏰:08/08/20 02:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#265 [向日葵]
「焦らなくても、君が姿を見せればそんな事はしないよ。僕も鬼じゃない。椿が嫌がるのを無理矢理……って言うのは好まない」

「今……僕が悩んでるって分かってて言ってるのか……っ」

どんな状況になろうと、自分が有利に立とうとしむける聖史。
そんな聖史に、要は歯噛みしながら睨みつける。

「フェアには戦わないんだろ?」
ニヤリと笑って、聖史は去って行った。

椿に会いに行かねば。
いや、会いたいんだ。

でも、どんな顔で、椿の前にいけばいいかが、要には分からなくなっていた。

⏰:08/08/20 02:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#266 [向日葵]
―――――――…………

「3針……ですか……」

聖史がいなくなったので、最近なかなか聞けなかった要の様子をメイドの佐々木に訊いて、椿は驚いていた。

「はい。どうもガラスで掌をお怪我されたそうで、痛みと熱があったので担当医に診てもらったところ、3針縫ったらしいです」

たしか要が怪我をしたのは右手。

私生活にも困っているのではないのだろうか……。
でも……。

「ありがとうございました。では……」

「え?椿さま……?」

⏰:08/08/20 02:40 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#267 [向日葵]
佐々木は少し驚きながら椿を呼び止める。
椿は首を傾げ、佐々木を見る。

「あの……お見舞いに行かれたりしないのですか……?」

「どうしてですか?」

「椿さまは……要さまにご好意があるのではと思いまして……」

椿は佐々木を見つめたまま固まった。
佐々木は続ける。

「こんな事言っては失礼なことを承知で言わせて頂きます……。聖史さまはとてもいい方です。お優しいですし、椿さまを大事にしてくれるでしょう。……ですが……。椿さまは、要さまと一緒の方が、椿さまらしくいるような気がします……」

⏰:08/08/20 02:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#268 [向日葵]
椿は今までの要との時間を思い出していた。

不器用で、でもどこか優しくて……。
弱い部分の自分を怒らないと言ってくれた人……。

「佐々木さん……。好きという感情は、私にはまだ分かりません。傷つけたくない人と、どうしても気になってしまう人はどう違うのでしょう……」

聖史は傷つけたくない人。
要はどうしても気になってしまう人。

どちらも大切な人。
でも椿には、どちらがより大切かなんて決めることは出来なかった。

「佐々木にも……分かりません……」

⏰:08/08/20 02:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#269 [向日葵]
佐々木は椿の両手をソッと握る。

「ですが、傷つけたくない人より、気になる人の方が、心が惹かれている気がします。気になるのは、もっとその人を知りたいから気になるのではないでしょうか……」

「もっと……?」と小さく呟く椿に、佐々木は優しく、まるで母のように微笑む。

「椿さまがもっと知りたいと思っている方を、お選び下さいませ。佐々木は、どちらの方になっても、椿さまがお幸せなら嬉しいですわ……」

椿は佐々木に心からの笑みを向ける。
佐々木だけは、この屋敷の中で、、唯一椿の理解者なのだ。

⏰:08/08/20 02:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#270 [向日葵]
「ありがとうございます……佐々木さん……」

・・・・・・・・・・・・・・・・

部屋に帰った椿は佐々木に言われた事を色々と考えていた。

ふと顔を上げると、何かがピカピカ光っている。
携帯のランプだった。

手に取り、開くと、不在着信の知らせが表示されていた。
誰だと思い、ボタンを押す。

「え……っ」

驚くのも無理はないだろう。
その電話をかけて来た相手は、もう諦めかけていた要だったのだから。

「要……さま……?」

⏰:08/08/20 02:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#271 [向日葵]
どうして?なんて疑問が浮かび上がる前に、椿はリダイヤルを押していた。

耳の奥で、呼び出し音と鼓動が合唱している。

出て……。
出て……お願い……。

―――――しかし。

椿の願いは届かなかった。
いつまでも鳴り響く呼び出し音に、椿は絶望した。

でも冷静に考えれば、電話で話したところで、何を話せば分からないでいた。
「元気ですか?」なんて、怪我をしてる人に訊ける訳もない。
「大丈夫ですか?」と訊けば、きっと強がるだろう。

⏰:08/08/22 00:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#272 [向日葵]
部屋に敷かれている、ふわふわの絨毯の上に、椿はペタリと座り込む。

[気になる人は、その人をもっと知りたいのでは……?]

もっと……知りたい……。

確かに要の事はもっとよく知りたい。
彼の言葉はほとんどが最初と矛盾していて、はっきり言ってどれが本当か分からなくなってきている。

態度だって、優しくしてくれたと思ったら、今みたいに突き放したり……。

それに、訊きたい事も沢山……。

陽射しが、温かく椿を包む。

⏰:08/08/22 00:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#273 [向日葵]
その温かな光を受ける事で、最近の疲れを癒そうとした。
そこで彼女は首を傾げたくなった。

……疲れ?
何も疲れてなんて……。

[要さまといる方が……]

そんな佐々木の言葉を思い出す。
聖史といる事が、椿にとって疲れる事なのだろうか。

あんなに優しい人を……。
そんな事思っちゃいけない。
いいや、思う資格なんて、ないのに……。

――――――――…………

美嘉はドキドキしていた。

やっぱりこんなのしなくていいのでは……?

⏰:08/08/22 00:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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