ギンリョウソウ
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#315 [向日葵]
[だから僕は君が放っておけないのかもね]
と笑う要に、椿も笑った。
要はどうやら妹が可愛くて仕方ないらしい。
[そういえば、唯子の事知ってるような感じがしたんだけど、どうして?]
それは訊かれるとは思ってなかったので、椿は顔を赤らめながら事情を話した。
すると要は意地悪そうに笑った。
[へぇー……妬きもち妬いてたんだ]
やっぱり顔を赤くする椿に、要は頭を撫でる。
[また唯子とも遊んでやってよ。じゃあね、おやすみ]
:08/08/24 13:21
:SO906i
:☆☆☆
#316 [向日葵]
自分の部屋についた椿は、着替え始める。
膝ぐらいまである花柄のチュニックを着た途端、後ろから誰かに抱き締められた。
驚いた椿は声が出せず、固まってしまう。
するとクスクスと笑い声が聞こえた。
「ゴメンネ。驚かしちゃった?」
「聖史さま……」
「でも着替え中にこんな事するのは、男として最低だね。向こう向いてるから、早く下を履いた方がいい」
そこで気づけば、下着は見えていないが、チュニックを来ただけの椿は白い足が出たままだった。
急いでジーパンを履く。
:08/08/24 13:34
:SO906i
:☆☆☆
#317 [向日葵]
「着替えました」
聖史は振り向き、にっこり笑う。
椿のベッドに腰かけると、手招きして自分の隣をポンポンと叩く。
座れと言いたいらしい。
素直に椿は座る。
「今日は遅かったんだね」
「あ、ハイ……えと、ちょっと用事がありまして」
「そう。なんか良いことがあったのかな?」
「え?」
「表情が柔らかくなってる」
そう言われて、椿は自分の顔の両手を添える。
:08/08/25 00:37
:SO906i
:☆☆☆
#318 [向日葵]
そんな事自分では分からないから、もしそうならば、今日要に会えたからだろう。
そう感じる自分に少し恥ずかしくなって、椿は頬を桃色に染める。
その一方で、聖史がは自分がまとっている柔和な空気をふと消す。
椿はそれにまだ気づいていない。
「椿をそこまで喜ばすなんて、きっとすごい人なんだろうね」
「ハイ。本当にすごいと言うか、優しい方で……。……え?」
椿はおかしいと感じる。
だって聖史には、“誰か”と会っただなんて一言も言ってない。
:08/08/25 00:42
:SO906i
:☆☆☆
#319 [向日葵]
聖史の方を見るのを何故か躊躇う。
そろりと徐々に首を回していく。心臓が不規則に跳ねるのは何故だろう。
そしてようやく聖史の方を見れば、微笑んでいた。
無機質な目をして。
その笑顔に、椿は背中がゾクリとした。
―――コワイ。
そう思いさえした。
要に襲われそうになった時の不安のような恐怖とはまた違う。
ただ恐いのだ。
「あ、あの……」
「何?」
:08/08/25 00:48
:SO906i
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#320 [向日葵]
「お、同じクラスの、神田越さんと言う方がいまして、その人のお家にお、お邪魔、してまして……」
椿は咄嗟に嘘をつく。
けれど聖史にはそれが嘘だと分かっているだろう。
なのに聖史は「へぇ……」と椿の嘘に何故か付き合い、話の先を促す。
まるで、追い詰める事を楽しんでいるかのように……。
だから椿は余計に恐くなる。
気づけば膝の上に置いていた手が、小刻みに震えている。
それを抑えるように、もう片方の手を重ねる。
「越さんのお家は4人兄妹でして、すごく、仲が良いんです……。う、羨ましいくらい……に」
:08/08/25 00:56
:SO906i
:☆☆☆
#321 [向日葵]
いつの間にか、少し空いていた椿と聖史の間を埋めるように聖史は椿に接近していた。
「そう。その越さんのお家で何をしてきたの?」
「4才の妹さんがいるんですが……妹さんと遊んだり、していました……」
「どんな?」
「い、色塗りや、お人形で……」
「そうか……。それは是非会ってみたいね。僕は子供が好きだし、椿みたいに色塗りや人形でその子と遊んでみたいよ。明日会えないかな?」
「え、越さんは忙しいので、たまにしか、遊べなくて……」
:08/08/25 01:01
:SO906i
:☆☆☆
#322 [向日葵]
言い訳のようになってしまっている。
いや実際越が忙しいのは事実なのだが、今この状況では、椿の苦しい言い逃れのようだ。
「ねぇ椿、何故嘘をつくの?」
耳元で低く囁く聖史に、ビクリと肩が震える。
今から、攻撃が始まる……。
椿はそう予感した。
「う、嘘では……」
「残念ながら君が要くんの家に行った事は知ってるんだよ」
「……っどうして……!」
「なんだ、やっばりそうだったのか」
:08/08/25 01:06
:SO906i
:☆☆☆
#323 [向日葵]
「え……」と椿は呟く。
そして頭を思いきり叩かれたように、重みを感じる衝撃を受ける。
聖史は要の家に椿が行ったと言う確かな証拠がなかったが、予想はしていた。
そして椿自身に真実を吐かした。
つまりカマかけていたのだ。
「それでその嬉しそうな様子かぁ……。僕は完全に出遅れてしまったのかなぁ……?」
喉の奥でクククと笑い出す聖史。
椿の頭に、「この人は誰?」と言う疑問が浮かんでは消える。
あの優しい聖史は?
逃げたい衝動にかられる。
しかし足に力を入れたくても入らない。
:08/08/25 01:12
:SO906i
:☆☆☆
#324 [向日葵]
「椿、はっきり言ってよ。僕はもう君達の間に入る余地はないのかい?」
口の端を上げただけの奇妙な笑い方。
でも椿は言わなければならない。
自分は選ぶ権利などないと思ったが要がそばにいてくれれば嬉しいと思ってしまうから……。
毅然として、背筋をしっかり伸ばす。
はっきり言わなければ、それこそ聖史に失礼だと椿は思った。
「ごめんなさい聖史さま……。聖史さまは素敵な方ですし、私には勿体無いと思う程です。……ですが私は……」
そこまで言うと、きつく抱き締められる。
:08/08/26 01:05
:SO906i
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