ギンリョウソウ
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#152 [向日葵]
優しく包みこまれ、優しい言葉を向けられたら、椿はまた一段と泣いた。

心のどこかでは、簡単に許してはいけない、この人に弱い自分を見せてはいけないと思っているのに、温かい腕からは逃げる事は出来ず、逆にすがりついてしまう。

せめて今だけは、要の気持ちを信じたいと感じる椿は、そう思う反面でこれが本当の要のような気もしていたのだった。

「明日になるまで……ずっとそばにいるよ……」

次から次へと流れてくる涙を止めようとは思わなかった。
要なら、受け止めてくれるように思った。

この寂しかった日々も。
この形容しがたい温かな嬉しさも……。

⏰:08/07/29 01:11 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#153 [向日葵]
[第4話]

「え、風邪ですか……っ」

爽やかな朝。
朝食を取っていた椿の耳に驚く出来事が入ってきた。

「ハイ。どうやら高熱をお出しになったみたいで……」

それを告げているのはいつも椿の面倒を見てくれている佐々木だ。

「大変……」

実は要が風邪で寝込んでいるという。
原因は2日程前の雨が原因と見られる。

椿は私のせいだと落ち込む。

⏰:08/07/29 01:16 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#154 [向日葵]
それに昨日も雨が降って、嵐程でもないのに要はまた来た。
もしかしてその時から体が辛かったのではないかと思えば、更に落ち込んだ。

膝に敷いていたナプキンをのけて、椿は立ち上がる。

「今日、学校の帰りにお見舞いへ行って参ります。帰りは遅くなると思います」

「かしこまりました」

―――――――…………

「椿椿椿ぃー!今日帰り、アイスでも食べて帰らない!?」

学校が終わる前、美嘉が無邪気に椿に笑いかける。

「あ、えと、ごめんなさい……。今日、要さまのお見舞いに行こうと思っているんです……」

⏰:08/07/29 01:23 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#155 [向日葵]
要の名前が出れば、美嘉の顔が険しくなった。
彼女にとって要は椿を苦しめる最低な奴としか認識されていないのだ。

「ほっとけばいいじゃんっ。忘れたの椿。アイツのせいで椿1回倒れたのよ?」

そう言われてしまっては椿も苦笑いするしかない。

でもあの嵐の日、自分がそう仕向けたとは言え、1人ぼっちになった自分を支えてくれたのは要だ。

要がいなければ、今こんなに心が軽くなってはいないだろう。

「それでも……行きます……。今日は、私が率先して行くと言ったので……」

⏰:08/07/29 01:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#156 [向日葵]
そう言えば、美嘉はため息をついた。
1度決めた椿を止めるのを無理と知っているから諦めの意味もこもっていただろう。

「風邪って言う口実でなんかされそるになったらすぐ報せなさい」

「何か……ですか……?」

「いい!?椿」

美嘉はズズイッと椿に顔を近づけた。
椿はパチパチと瞬きを繰り返し美嘉の話を聞く。

「風邪をひいたらなんでも言うことを聞いてくれるって勘違いする奴がいるの。それを利用して無理難題押しつけてくるんだからね!」

⏰:08/07/29 01:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#157 [向日葵]
椿は美嘉が言っている事が分からないながら、とりあえず相づちを打つ。

「アイツはその見本品よ……」

今にも口から火を吐きそうな恐ろしい顔をしながら、妙に力を入れて言う美嘉に、椿はやっぱり苦笑いを浮かべるしかなかった。

―――――――――…………

要の屋敷は椿の屋敷より大きい。

デザイン職なだけあって家もデザインされた作りになっている。

例えば玄関なんて床は透明ガラスで出来ていてその下にある空色の床が見えていたり、階段は木で出来ているが色はとてもポップで、段になっている所のみ赤、青、黄色で構成されている

⏰:08/07/29 01:41 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#158 [向日葵]
男でも女でも楽しめそうなこの空間に、椿は感嘆のため息をもらした。

「いらっしゃいませ、椿さま」

年若い従者が椿を迎える。

「こんにちわ。お忙しい所、押し掛けた形になって申し訳ありません」

「いえ、要さまもお喜びになることでしょう。案内させて頂きます」

柔らかく微笑んだ従者と椿は、要の部屋まで歩き始める。

歩きながら、ふと従者の方を見ると、その人の耳には小さな赤いピアスがされていた。

椿の家では使用人達はアクセサリー類のは禁止されているので、物珍しそうにじっと見つめる。

⏰:08/07/29 01:47 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#159 [向日葵]
その視線に気づいた従者は、椿ににこりと微笑む。

「これですか?要さまが似合いそうだからとプレゼントしてくださったんです。それと、私が要さまの友人のようになるようにと言う証でもあるようなのです」

柔らかい雰囲気をまとった彼にそのピアスをする事によって、その柔らかさが良い意味で少し無くなる。

「えと……お名前をお聞きしてもよろしいですか……?」

「もちろんです。大久保と申します」

そう言われれば、この頃入ったあのメイドを思い浮かべた。

「あの大久保さん……兄弟はいらっしゃいますか?」

⏰:08/07/29 01:54 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#160 [向日葵]
そう言うと、大久保はクスクス笑った。

「要さまにも言われましたよ。どうやら同姓の方が、椿さまのお屋敷にもいらっしゃるようで……」

「ハイ……そうなんです……」

「後から聞いた話ですが、その方大変だったそうですね……。でも、それを聞いて、要さまが「兄弟がいるのか」と尋ねた理由が分かったんです。私の事を心配して下さったようです」

と、大久保は足を止めた。

「椿さま。要さまは優しいお方です。たまに意地悪をおっしゃったりするかもですが……彼にとっては愛情の裏返しでもあるのですよ」

⏰:08/07/29 02:00 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#161 [向日葵]
椿は静かに微笑む。

もしかしたらそうなのかもしれない……。
ただ彼は、伝える事に関してはとても下手で、たどたどしい。
それでも、気持ちは入っているのかもしれない……。

「あぁ、申し訳ありません!ベラベラと……。では、こちらが要さまのお部屋でございます」

カチャリとドアを開け、中へ誘導する。

開くと同時に、要の声が聞こえた。

「大久保……?喉が乾いた……。水をくれないか?」

大久保は口に人差し指を当てて、水差しを椿に渡した。
どうやら驚かせたいらしい。
そして静かに部屋を出ていく。

⏰:08/07/29 02:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


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