ギンリョウソウ
最新 最初 🆕
#167 [向日葵]
「い、いつもは……もっと熱い筈なんですが……」

クスリと要が笑う。
椿は胸が高鳴るのを感じていた。

ただ、手を握っただけだ。
それなのに胸の中で疼くこの感情が何か分からない。
でもなんだか苦しくて、切なくて、しまいには泣きたくなるような感覚に、椿は困惑した。

「……でも今日は、冷たくて良かった……。おかげで……」

と言いながら、要は自分の額に椿の手を当てた。

「気持ちいい……」

「あ……っ」

⏰:08/08/01 01:29 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#168 [向日葵]
椿は赤くなるしか出来なかった。

すると急に要から寝息が聞こえた。
やっばり体に限界があったらしい。

要が寝つくまで……。そういう約束だったが、握られた手は寝ても尚放す気配がないし、それに椿自身、今要から離れたくないと思った。

だから彼の眠った顔を見る。

苦しそうに寝ておらず、ちゃんと規則正しく寝息をたてている彼は、忘れていたが同い年の男の子だった。

その言動、その態度。
全てが彼を大人びて見させる。

⏰:08/08/01 01:33 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#169 [向日葵]
しかし彼はこうなるしかなかったのだろう。
じゃなきゃこの若さで世界へのし上がり、世界中を飛び回り、鬼のような仕事の量をこなせる訳がない。

椿の胸が、チクリと痛む。
そして大久保の言葉を思い出す。

――本当は、優しい人……。

椿は自分の立場を改めて考えた。
ただ黙って、嫁ぐ日を待っているだけの自分。
そんな自分でも、要はもらってやろうと言ってくれた。
その時は、きっと愛など無いと思っていた。

始めの方だってそうだった。
今はどうか分からない。

⏰:08/08/01 01:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#170 [向日葵]
だが以前よりは親しみを持ってくれてるのではないかなと感じる時はある。

もし、要と最初の頃のまま結婚していたとしても、椿は徐々に要に心許せるような気がした。

そう思うのも、子供が不安がるように手を握ってとすがり、握った瞬間安心して眠る要の本質的なものが段々と見えてきたからかもしれなかった。

―――――――――…………

ドアをノックする音が聞こえた。

ハッとした椿は、要のベッドに突っ伏すようにして自分の手を枕にして寝ていたらしい。

ドアの方を向き、進もうとすれば、手が誰かに引っ張られた。

要だ。

⏰:08/08/01 01:45 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#171 [向日葵]
寝てるのに手をしっかりと握って放さない。
かと言って離れているドアに向かって大きな声で返事をしてしまっては要が起きるのではと心配した椿は要とドアを交互に見ながら焦る。

するとありがたい事に向こうからドアが開いてくれた。

入ってきたのは大久保だ。

「あ、大久保さん……すいません、出られなくて」

そばまでやって来た大久保は状況を把握して椿ににっこり笑いかける。

「気にしないで下さい。水差しに水を足しに来ただけですから。しかし、熟睡してますねぇ」

⏰:08/08/04 01:44 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#172 [向日葵]
まるでそれが珍しいかのように、大久保は要の顔を覗き込む。
そして心配そうな椿を見る。

「汗もよくかいてましたから、直に熱も下がるでしょう。椿さまも無理をなさらずお帰りになってもよろしいのですよ」

もう心配ない。

椿もなんとなく分かっている。
それでも、頼りなく、それでいてしっかりと握られている手を見れば、もう少しいた方がいいいような、いたいような……。

「まだ、あと少し、いてもよろしいですか……」

椿の言葉に、大久保は笑みを深くする。

「お帰りの際は、声をおかけになって下さいね。お送りいたします」

⏰:08/08/04 01:51 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#173 [向日葵]
そう言うと、大久保は部屋を出て行った。

再び要に視線を戻した椿は、首に少し流れている汗をタオルで拭いてやる。
すると寝巻きのシャツの隙間から、綺麗な鎖骨が見える。

ドキリとした椿は首にタオルをおいたまま赤くなってま固まる。

そういえば、自分はこの人に抱き締められたではないか。

あの時は、溢れ出した気持ちで一杯いっぱいになっていたから、そんなに意識はしなかったけれど、体を完璧要に預けていた。

そうした自分の行動に、恥ずかしさを隠せなかった。

「……ん……っ」

⏰:08/08/04 01:58 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#174 [向日葵]
要の声に、椿は我に返った。

首に置いてあったままの手を慌ててのける。

すると要がうっすらと目を開けた。

「何椿……。殺す気……?」

「ち、違っ……!汗を拭いていただけです!ごめんなさい……っ!」

「分かってるよ……からかっただけ……」

クスクス笑う要は、少し元気になったように思う。
ホッとして、椿も頬を緩める。
それを要が眩しそうに見ると、ゆっくりと椿の髪の毛をひとふさ取る。

⏰:08/08/04 02:03 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#175 [向日葵]
そしてそれに口づける……。

「か……要さま……?」

先ほどから赤くなってばかりの椿は、次は自分が熱を出して倒れるんじゃないかと心配になった。
そして要はそんな椿を見て、またクスリと笑う。

髪から手を放すと、今度は椿の頬に触れる。
椿はピクリとする。

「今日、来てくれて……ありがとう……。嬉しかった……」

力なくいい終えると、要は手をパタリと落として、また眠りについた。

嬉しかった……?
私が来て……?

⏰:08/08/04 02:08 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#176 [向日葵]
椿はなんとも言えない顔で、寝ている要を見つめる。

「要……さま……」

私は、あなたの心の中にいるのですか……?
でも何故?
あなたが言ったのに。

好きになれそうにないって……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ぼんやりと要のそばに座ったままだった椿は、ふと時計を見た。

もう8時。
そろそろ帰って、しっかりと要を休ませた方がいいだろうと思った椿は、腰を上げた。

すると要がまた唸る。

⏰:08/08/04 02:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194