ギンリョウソウ
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#187 [向日葵]
「笑うな……」
「え?」
椿は笑顔を崩さない。
それにじれったさを感じた要は怒鳴る。
「どうして笑うんだ!無理に笑うなと言った僕の言葉を君はもう忘れたのか!僕の言葉は、君にとってそんな薄っぺらいものなのか!?」
ビクリと怯える椿を、後ろから聖史が引き寄せる。
「椿、彼は本当に婚約者なの?」
「さっきそう言った筈だ」
「それにしては、随分色々と強引だ。要くん。君は本当に椿が好きで婚約者を立候補したのか……」
「やめてください聖史さま……っ」
:08/08/09 22:29
:SO906i
:☆☆☆
#188 [向日葵]
椿が聖史の言葉を遮る。
本当の事を突き詰めても答えは分かっている。
要が自分との結婚を望むのは、利益があるからだ。
そんなの分かってる……。
分かってるのに……今、本人の口からそれを聞くのが嫌だった。
「私は幸せです……。要さまはとてもお優しい……。だから、そんな風に言うのは……やめてください……」
「……説得力ないよ椿。今の君は幸せそうになんか見えない」
「――――っ!」
「それはそちらの考えだろう?椿は幸せだと言ってるんだ」
:08/08/09 22:34
:SO906i
:☆☆☆
#189 [向日葵]
聖史が触れているのが嫌な要は、聖史を睨みながら椿の手をとる。
強引だと言われたので引っ張って椿を自分の所へ持ってきたいが、今は出来ずにいた。
何より聖史に何もかも分かった風に口をきかれるのが、要の癇に障る。
だが、聖史も負けてはいない。
「要くん、君は椿の性格を何1つ分かっちゃいないよ。椿は君の暇つぶしの道具じゃない。もっと大切にしてくれ」
「なんだと……っ!」
「聖史さま……っ」
「椿、まだ正式に婚約発表はしていないのだろ?なら……僕も立候補していいかな?」
:08/08/09 22:41
:SO906i
:☆☆☆
#190 [向日葵]
これには椿も要も驚く。
「椿、僕はね、幼い頃から君が大好きだったんだ……。なのにその君が、婚約したと聞いて胸が潰れそうだったよ。……けど」
聖史は要を睨む。
それも静かに怒りを含んだ目つきで。
「相手がこんな人なら、僕は納得しないよ」
「納得しようがしまいが僕が椿の婚約者だ。今更出てきても遅い」
「そうかな?見たところ椿の心は揺れ動いてるみたいだし……まだはっきりとしないなら、僕にだってチャンスはあると思うよ」
聖史は余裕なのか、微笑みを浮かべる。
それが挑発しているように見えて、要はこめかみの青筋を更に1つ増やした。
:08/08/09 22:46
:SO906i
:☆☆☆
#191 [向日葵]
そして行き場のない怒りは、椿へぶつけられた。
「椿、君もなんで否定しないの?そんなに僕じゃ不満って事かっ!?」
いきなり怒鳴りつけられた椿は驚き、目を見開いた。
「ふ、不満なんて……感じた事は……っ!」
あるけれど言うべきことではないし、今言っては火に油だ。
椿はそれ以上何を言っていいか分からず、口を閉じた。
「君は……僕じゃなくてもいいのか……?」
眉を寄せて、泣きそうな顔をする要に、椿は戸惑う。
:08/08/09 22:53
:SO906i
:☆☆☆
#192 [向日葵]
「要さま……」
「僕は……君が……」
言いかけて、要は口を閉ざす。
そして聖史を睨みつける。
本人にしか言いたくない事を、コイツの前で言う必要はないと思ったようだ。
「言っておくけど、売られたケンカは倍額で買う。こちらだってプライドがあるからね。でも、椿の事は、フェアで戦おうとは思わない。もともと椿は僕のものなのだから」
「プライドがあるのにフェアで戦わないなんておかしいよ」
「どうせフェアで無くなるのは分かってる。それとも何かい?君は椿の事を反則を犯してまで欲しいとは思わないのか?」
:08/08/09 22:59
:SO906i
:☆☆☆
#193 [向日葵]
これには、冷静を装っていた聖史もムカッときたのだろう。
眉を寄せて、怒りを露にする。
「そこまで言われると、心外だな。いいだろう。フェアに戦わないと言った言葉を後悔するといい」
フッと笑うと、要は踵をかえして玄関ホールを去って行った。
「あ……」と思った椿は、追いかけようとする。
が、聖史に腕を引かれた。
「追いかけてどうするの?あんな人だよ?椿が気を遣う必要なんてないよ」
「……放して……くださいませ……」
しばらく腕を掴んでいた聖史は、ゆるりと椿の腕を放した。
:08/08/09 23:06
:SO906i
:☆☆☆
#194 [向日葵]
そして椿は要を追った。
要は門までまっすぐ続く道を歩いている。
「か、要さま……っ!」
どうして追ってるか分からない。
ただ足が進むままに、椿は要の元まで走る。
「要さま……っ!」
さっきより少し大きな声で要を呼ぶと、要は足を止めてこちらを見た。
「……何……?」
少し冷たい要の言葉が、椿の胸に突き刺さる。
切なげに彼を見れば、彼も椿を見る目が切なく変化した。
:08/08/10 00:46
:SO906i
:☆☆☆
#195 [向日葵]
「私……私……」
「……椿は、さっきの人が好き?」
「え……?ち、違っ……!」
すると要がふわりと椿を抱き締める。
空気を抱くように抱き締められてると、その力は段々と強くなり、細い椿の体は少し痛みを感じた。
けれど椿は戸惑う事なく、要を受け入れていた。
「例えそうでも、争う事をやめろなんて言わないで。僕は戦う。そして完璧に君を僕のものにする」
「要……さま……」
:08/08/10 00:51
:SO906i
:☆☆☆
#196 [向日葵]
要は椿を放すと、近くで見つめる。
椿は胸が高鳴る。
「僕は…………。なんでもない……。とにかく僕は勝つつもりだから」
椿はどちらを応援するなんて考えていない。
ただ少し、ほんの少し、揺れ動いている自分の心が、聖史を好きになったらどうしようと思っている。
……でも、その方がいいのかもしれないとも思っている。
―――――ユイコ……。
切なげな声で、呼ばれたその名……。
まだ頭から離れない……。
:08/08/10 00:55
:SO906i
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